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胡錦濤主席アフリカ訪問に関するメモ

2007-02-12 02:13:23 | 時事問題
「工業は大慶に学べ」などということを昔聞いたが、大慶は油田で有名であり、日中国交正常化後、日本が中国から輸入したのは石油であった。その中国も今や石油輸入大国である。近代化のためにエネルギーが必要であり、エネルギーの獲得のために国家が努力するのは当たり前だ。1月30日からの12日間にわたる、胡錦濤国家主席のアフリカ8ヶ国(カメルーン、リベリア、スーダン、ザンビア、ナミビア、南アフリカ、モザンビーク、セーシェル)訪問は、その観点から眺められることが多かった(国家主席就任以来、アフリカ訪問は3度目)。以下はその情報に関する備忘録である。

中国は対外援助をするとき政治的条件を付けない。援助を受ける側からすれば、人権侵害が指弾されていれば、中国の援助は西側の人権に五月蝿い国のものよりもありがたい場合がある。であるから西側の観点からすれば「人権、債務不問の「資源外交」」という批判が出てくる。
「…欧米などから中国の人権問題無視のなりふりかまわぬ資源外交への批判が高まった。今回の胡主席のアフリカ歴訪では、大量虐殺などで国際的に批判を浴びるスーダンで、人権問題の解決の糸口を探る調停役も試みる見通し。欧米などからの対中批判をかわす狙いもある。
 欧米など批判は人権無視外交だけではない。パリクラブ(主要債権国会合)などを通じてアフリカの最貧国が抱える債務削減に取り組んでいる最中だが、一方で中国が資源獲得を狙ってアフリカ最貧国への資金支援を増やしている点で、「国際ルールを逸脱している」(ブラウン英財務相)との批判も高まっており、中国は対応を迫られている。
(胡主席アフリカ8カ国歴訪へ 人権、債務不問の「資源外交」;http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200701230034a.nwc)」

ところで2月2・3日のスーダン訪問時の首脳会談では次のようであった。
「国営スーダン通信によると、胡主席は会談で「AUと国連がダルフール地方での平和実現に建設的な役割を果たすべきだ」と指摘。大統領に対し、昨年5月の和平協定に調印していない同地方の反政府武装勢力との対話促進と紛争解決を求めた。」

内政不干渉の中国からすれば一歩踏み込んだ表現だが、しかしAUと国連がダルフール地方で平和維持活動をすることの道が開けるかどうかわからない。さらに
「両首脳は会談後、「戦略的協力関係」を再確認し、ダルフールでの人道支援活動などのための4000万元(約6億2400万円)の資金提供や、新大統領宮殿建設のための1億元(約15億6000万円)の無利子融資など7項目の協定に調印した。(胡錦濤主席、スーダン大統領にダルフール紛争解決要請;http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070203i313.htm)」

毎日新聞では次のように胡錦濤のアフリカ訪問を総括している。援助を与えるだけでなく、中国企業進出のための経済協定も締結したという。
「従来の中国のアフリカ外交は援助や借款を相手国に供与する見返りとして原油や鉱物資源を獲得する形が基本だ。胡主席は▽最初の訪問国カメルーンに総計1億ドル(約120億円)の融資など▽内戦後の経済復興が進むリベリアに2500万ドル(約30億円)の融資--を約束、従来型手法で関係強化を図った。
だが、今回、目を引いたのは中国企業の対アフリカ投資を促進するため、歴訪国で多数の経済協定を締結したことだ。世界有数の銅産出国ザンビアでは経済特区の設置に合意、特区内で操業する中国の鉱山関連企業への課税廃止を取り付けた。南アでは鉱物エネルギー資源に関する合意文書に署名した。」(胡主席 アフリカ歴訪終了 各国には中国への警戒と活用論:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070208-00000008-maip-int)

ところで中国の経済進出は必ずしも好意的に見られているばかりではない。たとえばザンビアに関して次のような情報がある。胡錦濤主席の中国系銅山訪問がデモの懸念のために中止されたという。
「180前後の中国企業が進出、衣料業界などでの劣悪な労働環境や低賃金、度重なる工場閉鎖には現地住民の不満も強い。2005年、現地職員50人の死亡事故が起きた中国企業経営の銅山【胡錦濤主席の】訪問は抗議デモへの懸念から、中止された。」(http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070208/chn070208000.htm)

もちろんアフリカの側の中国を利用しようというしたたかな動きがあることも事実である。南アフリカのムベキ大統領は、6日の胡主席との会見で、南アフリカと経済にとって中国はもっとも重要なパートナーと持ち上げた。その背景が毎日新聞の記事では次のように指摘されている。
「ムベキ大統領が中国を重視する背景には、国際社会での中国の政治力への期待もある。大統領は記者会見で「国連安保理常任理事国の中国との関係を強化すれば、アフリカが抱えるさまざまな問題で国際社会から素早い対応を引き出すことにつながる」と中国の効用を説いた。」

単純な善悪二分論の評価では不十分であることを再認識させられた。
コメント (2)
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