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6カ国協議のとりあえずの結論

2007-02-14 04:08:00 | 時事問題
喜ばしいことに、6カ国協議がとりあえず妥結した。北朝鮮は核施設無力化と査察要員の入国を認める代わりに、援助を受け取るということになった(もっとも日本は拉致問題が未解決であるために、北朝鮮援助には当面は関わらない)。外務省速報によれば、最初の60日以内に次のことが実行されるという。
"60日以内に実施する「初期段階の措置」
(1)北朝鮮
1)寧辺の核施設(再処理施設を含む。)を、最終的に放棄することを目的として活動停止(shut down)及び封印(seal)する。
2)すべての必要な監視及び検証を行うために、IAEA要員の復帰を求める。
3)すべての核計画(抽出プルトニウムを含む。)の一覧表について、五者と協議する。
(2)経済・エネルギー支援
 重油5万トンに相当する緊急エネルギー支援を開始する。(注:米中韓露が実施。拉致問題を含む日朝関係の現状を踏まえ、我が国は参加せず。)
(3)日朝
 日朝平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための協議を開始する。(「懸案事項」には、拉致も含まれる。)
(4)米朝
 完全な外交関係を目指すための協議を開始する。(テロ支援国家指定を解除する作業開始)。"
(外務省: 第5回六者会合第3セッションの概要(速報);http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/n_korea/6kaigo/6kaigo5_3g.html)

その次の段階は次の通りとなる。
"初期段階の次の段階における措置
(1)北朝鮮
すべての核計画の完全な申告の提出及びすべての既存の核施設の無能力化等を行う。
(2)エネルギー支援
 重油95万トンに相当する規模(上記1.(2)の5万トンと合わせ、合計100万トン。)を限度とする経済、エネルギー及び人道支援を供与する。(注:米中韓露が実施。拉致問題を含む日朝関係に進展が見られるまで、我が国は参加しないことにつき、関係国は了解。)"

大まかなことしか決められてない。今後さらに協議で詰められるということである。それにもかかわらず、これは北朝鮮が核施設を無力化するまで援助をしないと断言していた米ブッシュ政権の方針転換である。ブッシュ政権は、援助と核凍結を取引したクリントン政権の「枠組み協定」を批判してきたからだ。

北朝鮮が「枠組み協定」を反故にして、核開発の凍結を解除したことは記憶に新しい。それゆえ米政権は今回の協定は「枠組み協定」とは違うということをアピールすることに力を注いでいる。今回は「凍結」ではなく「停止」「封印」である。さらに今回は北朝鮮に軽水炉型原子力発電所が与えられることにはなっていないこと。今回の協定には、北朝鮮に影響力を持つ中国が関与していることがその差異としてあげられている。

今回の協定を好意的に解釈すれば、信頼醸成なくして北朝鮮の核施設の無能力化はありえない。今回はそのための段階的協定であり、最終的な核施設無能力化のためのスケジュールは決めることはできず、次回以降の協議に引き継がれるということになる。

これに対する批判としては、北朝鮮が核兵器を他国に引き渡すことはありえない。核兵器こそ北朝鮮の外交的切り札であり、金正日体制を保証しているものであるから。ゆえに今回の協定は、何だかんだ言っても単なる核開発凍結の約束に過ぎない(「枠組み協定」と一緒)。将来のことに対する北朝鮮の約束は意味がなく、反故にされるということである。

要するに北朝鮮との信頼をいかに醸成していくかというのがキモであろう。一部において北朝鮮は米国大統領選まで模様眺めを続けるであろうと予測されていたことから判断すれば、北朝鮮が少なくとも核凍結についてある程度具体的な行動を約束したのは、喉から手が出るほどエネルギーが欲しいということなのであろう。中国を巻き込んだ枠組みの効力がそれなりにあったということだ。もちろんあまり大きいことは望めないし、おそらく今後も駆け引きが続くのであろうが、この体制を使って北朝鮮の核開発の凍結を続けていくしかないであろう。
コメント (2)
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