国際学どうでしょう

私が気にしている情報のメモ

奇策を探して

2007-02-20 03:34:12 | 時事問題
2月12日の朝日新聞社説「G7 限界に来た円安頼み」には次のような部分がある。
「今回のG7は、成長重視の戦略を掲げる安倍政権の経済運営に影響を与えるだろう。
 金利をできるだけ低く抑えて脱デフレを確かにし、高い成長を求める。低金利を背景にした円安も輸出企業の業績を助け、景気をよくする。
 そんな成長戦略は、海外からの円安不満が広がれば、続けられなくなるからだ。低金利政策はデフレだから許された。貿易黒字を稼ぐための円安誘導策だと見られるようになれば、懸念や不満は不公正だとの非難に代わる。
 日本の経済実態から日銀の利上げには反対してきた英国の有力経済紙が、日銀はドル売り円買いの市場介入をせよ、という社説を載せた。そんな奇策を求めるほど事態は切迫している。
 正攻法の策は、はっきりしている。超低金利で息をついているのは、不良債権で体力を弱めた銀行業界、そこからの融資にすがる競争力のない企業、それに膨大な借金を抱える政府や地方自治体だ。こうした分野で、正常な金利水準に耐えられる体質へ改善を急ぐことだ。」

安倍政権が推進する「上げ潮政策」の前提である低金利が、国際的に継続できないおそれがあることを指摘して、「正常な金利水準」に上昇しても大丈夫なように体質改善することを訴えている。

私がとても気になったのは些末なことである。円安に対する国際的非難が高まっているという事態の切迫を伝えるため挙げられている「英国の有力経済紙が、日銀はドル売り円買いの市場介入をせよ、という社説を載せた。」という箇所である。ここで要約されていることにつきるのかもしれないが、一体どんな新聞がどのようなことを書いているのかが知りたくてたまらない。

ネットは便利なもので、この有力経済紙の社説と推測できるものにたどりつくことができた。しかも日本語訳である。「日本は円買いすべきだ─フィナンシャル・タイムズ社説」(http://news.goo.ne.jp/article/ft/business/ft-20070209-01.html)である。

この社説の認識は対ドル120円のレートは安すぎるということである。
「収益性の高い輸出業があり、巨額の貿易黒字がある以上、日本の今の円レートはやはり低すぎる。貿易黒字はふつう、為替レートを下げるものではなく、上げるものだ。にもかかわらず円が下落しつづけているのは、金利0.25%の日本では資本利益率(ROC)が低いからだ。このため、もっと利益率の高い海外資産へ投資を回すべく、円が売られている。」

しかし日銀は金利を上げるべきではないとする。「 経済データが弱いことや、インフレ圧力がないことを思えば、金利引き上げは愚行だ。」金利を上げずに円の為替レートを正常な形に持っていく一時的方策があるのだ。積み上げた外貨準備高を使う方法だ。
「しかし過去に円高抑止のために積み上げた8750億ドルの外貨準備高を、減らし始めていくことは可能だ。 …何よりも、外貨準備高を売り減らすことで、日本は円高だけでなく円安にも為替介入する用意があるのだと、よって、円安をずっと続けることよりも円相場の安定をこそ重視しているのだと、日本は世界に示すことになる。」

もちろんこれが一時的方策にすぎず、長期的方法は別であると明記されている。
「 外貨準備高を売却しての円買いは一時的な手法だ。長期的な解決策は、内需拡大による金利上昇と貿易黒字の削減だ。それには日本企業が高い企業貯蓄率を引き下げることが必要で、企業を買収の危険にさらすか、あるいは配当を増やした方が有利になるよう法人税法を改正するなどの策が考えられる。しかしとりあえず今のところは、日本の外貨準備高を上手に慎重に売却することで、かなりの効果を挙げられるはずだ。」

日銀の円買いを支持する声が上がらなかったのは、これが奇策であると認識されているからなのであろう。しかし円安の大本である低金利に対する懸念は、日本の新聞社説には根強い。フィナンシャルタイムズは「経済データが弱い」とする。しかしこれらの社説が出た直後に内閣府が発表した昨年10―12月期の国内総生産(GDP)は、実質で年率4.8%となった。日経新聞はこれに対して2月16日の社説で「さらに息の長い経済成長を目指すには」という題目で、留保付ではあるが利上げを予測している。
「4.8%の高い経済成長率は、超低金利の正常化を目指す日本銀行にとって追い風といえる。日銀は20、21日の金融政策決定会合で利上げの是非を議論するとみられる。現時点では0.25%程度の利上げなら経済に大きな悪影響は及ばないとみられる。ただし決定会合までの株価や為替相場の動き、発表される景気指標、さらには先行きの物価や景気の動向を読み込んで、成長の持続を妨げないよう、深い議論をしたうえで判断することを望みたい。」

経済にド素人の私は利上げが近いのであろうと素直に考えている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする