荻野洋一 映画等覚書ブログ

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『ガンジャ&ヘス』 ビル・ガン

2014-11-08 07:01:02 | 映画
 レアな黒人ホラー映画が上映されている。フィルムセンターの《MoMA ニューヨーク近代美術館 映画コレクション》で日本初上映された、黒人監督のパイオニア、ビル・ガン(1929-1989)による『ガンジャ&ヘス』(1973)である。
 主人公の人類学者ヘス博士は、黒人の古代研究の最中に呪われて、ヴァンパイアとなった。広大な豪邸で世をはばかって生きながら、病院で入手した血液をチビチビやりながら、なんとかしのいでいる。そこに美しい人妻が、蒸発した夫の消息をたずねて、ヘス博士の邸宅にやってくる。この人妻ガンジャを演じた黒人女優マーリーン・クラークが非常にセクシーだったが、IMDbによれば他の出演作はほとんどテレビドラマばかりのようである。後半は、このヴァンパイアカップルの恋愛映画となる。夢幻的なイメージ映像が中心となり、ホラーとしての恐怖感は減じてしまう。このあたりはサイケ時代というか、70年代のインディーズらしい点である。
 ヘス博士とガンジャの黒人カップルは、ジム・ジャームッシュの最近作『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013)におけるトム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンの白人カップルをも想起させる。ジャームッシュがこの伝説のブラック・ムーヴィーを下敷きにシナリオを書いたとしても、不思議ではない。
 ところで今年、スパイク・リーがこの『ガンジャ&ヘス』を『Da Sweet Blood of Jesus』の題でリメイクしたそうである(日本公開予定については不明)。スパイク・リーは先だっても韓国映画『オールド・ボーイ』のリメイクが公開されたばかりだが、どうもリメイクづいているようだ。
 今回の『ガンジャ&ヘス』、レアな上映機会なので、黒人映画に興味ある方は、ぜひ見逃すべからず。教会ミサのシーンにおけるゴスペルのグルーヴ感は、もはやホラー映画の域を超え、ある種異様な高揚感に達している。


本日(11/8)午後2時より、東京国立近代美術館フィルムセンター(東京・京橋)にて最終上映
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