荻野洋一 映画等覚書ブログ

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祇園にて村上華岳に震撼す

2011-06-28 03:18:35 | アート
 あくまで個人的な趣味で言わせてもらうなら、近代日本画とどうも相性がよくない。長年にわたり、多くの大家の作品をこれでもかと眺めてきたが、今のところ、否定的な意見は変わっていない。ただ、もちろん例外もあって、鏑木清方、小林古径はやっぱりいいし、福田平八郎もおもしろい。
 そんな中で私が無条件でひれ伏してしまうのが、じつは村上華岳である。芒洋とした、とらえどころのない怖い絵ばかりである。京都の祇園にある、5階建ての大型私有ギャラリー「何必館」で、村上華岳のまとまった数を見ることができた。ざっとメモしたところで、展示室に『牡丹花之圖』『空山欲雪圖』『不動降魔剣 観音慈悲涙』『山峰』『岩足鄭足蜀』『放牛』『朝顔之圖』『月宵飛鷺圖』の8点。さらに、吹き抜けになっている最上階にしつらえられた茶室の床の間に、最高傑作のひとつ『太子樹下禅那』。これらには、非常に言葉にしにくい怖さがある。
 それにしてもこの「何必館」、オーナーの梶川芳友という人は、建築家など多方面に活躍するクリエイターらしいのだが、いったいどんな「ズル」をしたら、こんな立派な私立ミュージアムを建てることができるのだろうか? 村上華岳以外にも、山口薫、北大路魯山人が各フロアで巧妙に並べられていたり、パウル・クレーの遺作なんてものが「ついでに」といった風にさりげなく展示されている。最近までMAYA MAXXの個展も開催していた。所蔵作品、展示作品もすごいが、建物自体もそうとうこだわりのある造りで、金も掛かっている。世の中には、恵まれた人というのは実在するのだ。これだから京都はよくわからない。


P.S.
夕方、初夏の祇園花街を歩き、予約してあった板前割烹「C」にて舌鼓。すばらしい器を使っているから、そのことを主人と話そうとしたら、「先代が集めたものを、ただ使うてるだけどす」と防波線を張られてしまった。その後、先斗町を北上し、三条大橋きわの「スターバックス」の川床にて涼みつつ「なんとかフラペチーノ」をずるずると啜り、おとなしく宿に戻る。