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とはいえ、今はまだ3月中旬、牡丹を鑑賞するのは季節的に早すぎるであろう。つまり、前回は閉館時間間際であったため、図録などをゆっくり漁れなかった(学芸員らしきスタッフに本作が掲載されているものは何かあるかと尋ねたところ、「いやあれはどれにも掲載されていない」という残念な返事が返ってきた)。だが、きょうはゆっくりと漁って見つけることができたというわけである(『当館蔵 煎茶具名品展』なる10年前のバックナンバーの中に発見)。学芸員のおぼろげな記憶力を鵜呑みにしなくてよかった。
屈託なく咲き誇る牡丹の花々は、この女性画家(元は上海の名妓にして、のちに葛征奇の愛妾となった人らしい)の「没骨描」なる技法によって鮮やかに、艶やかに、墨と水で濃淡づけられている。葉が、初夏の力強い光を浴びて色濃く脈打っているのも嬉しい。李因はおそらく相当な美女だったはずで、そんな人がすわっすわっと、少量の墨を浸けた筆を走らせている姿となると、これはもう、恐ろしく魅惑的な想像をかき立てられる。侯孝賢監督の映画『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(1998)の原題は『海上花』というのだが、李因には、まさにこの海上花という表現がぴったりである。
右上の賛は、パトロンである葛征奇の七言絶句。文言内容は、下記のリンク記事を参照していただけると幸いです。
2007年7月8日付記事〈李因について〉を参照