どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

シッカとマルガレータ・・戦争の国からきたきょうだい

2023年06月17日 | 絵本(社会)

   シッカとマルガレータ/ウルフ・スタルク・作 スティーナ・ヴィルセン・絵 きただい えりこ・訳/子どもの未来社/2023年

 

 海の東側に住むシッカは、戦争がはじまり、両親と別れ、犬のぬいぐるみのトイボをだきしめ、船で平和な国へ。

 海の向こうの西側でシッカをむかえてくれたのは、同じ年ごろのマルガレータという女の子がいる家庭。

 言葉が違うふたり。マルガレータの両親は、シッカのことをおもい、遊園地へつれていきますが、シッカとマルガレータの距離はちぢまりません。

 シッカが、マルガレータのドールハウスの家具にさわったとき、ハエがブーンととんできて、いきなりドールハウスをハエに投げつけたので なかの テーブル、いす、お皿、コップは 床に散らばってしまいます。それをみたマルガレータは、「あんたなんか出ていって!」と 叫びます。ハエを見たとき、シッカは爆弾が空からふってきたと思ったのです。

 なにかとシッカにはやさしい両親。マルガレータは、お母さんから言われ、シッカを公園につれていきますが、わざといろんな道を通り、「あんたなんか、どこか めんどうみてもらえば」と、ひとり家に帰ってしまいます。まもなく雨がふりはじめてもシッカはかえってきません。

 両親から聞かれ「しらない。かってにいなくなっちゃった」と、マルガレータ。

 「きっとまよっているんだわ」「道をたずねることだって、できないだろうに」、両親が、でかける準備をしますが、マルガレータは、それより先に公園に向かって走り出しました。シッカは、遊び小屋のなかで、トイボをかかえてうずくまり両手で耳をふさいでいました。帰ろうと声をかけると、シッカはマルガレータを小屋になかにひっぱり、「きをつけて 戦闘機がくる。爆弾がふってくるよ」といいます。それはかみなりがゴロゴロ鳴る音でした。

 一人取り残されたことをマルガレータの両親にはだまっていたことから、距離がつかずいた二人。シッカが大事な家族の写真を海に落としたとき、泳げないシッカの代わりに海に入って写真をもってきてくれたのはマルガレータでした。自転車にのる練習も、マルガレータが手伝ってくれます。

 やがて戦争が終わって、無事に家に帰ることになったシッカは、別れのとき、マルガレータにトイボをさしだし、トイボは”希望”という意味だとつげます。

 「うれいしいでしょ?」マルガレータ

 「うん。あんたは?」シッカ

 「あんまり」マルガレータ

 「うれしいけど、かなしいな」シッカ

 最後の会話が、すべてを 物語っています。

 

 さまざまな事情で難民になった子がいれば、ウクライナのように、戦火から避難せざるをえない子どもたち。この子たちの将来に、希望はあるのでしょうか。そんなことを考えさせてくれる絵本でした。

 

 作者はスウェーデンの代表的な児童文学作家のかた。


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