なきむし せいとく/たじま ゆきひこ/童心社/2022年
今年は沖縄返還から50年の節目。この絵本は、1945年の沖縄が舞台です。
泣き虫”せいとく”とよばれた少年が、艦砲射撃と機銃掃射のなかを、アンマー(母)と妹と にげまどい、いきのびた10年後の思いまでが描かれています。
父親は30歳をすぎて兵隊になり島の外へ、中学生の兄は「鉄血勤王隊」へ。
ガマに逃げ込んだら、作戦の邪魔だと追い払われ、ようやく逃げ込んだガマでは、ちかくの赤ちゃんが泣きだし、兵隊に殺されてしまいます。
ひめゆり学徒隊のねえにすくわれ、左手をなくしたせいとくが、10年後、妹と畑をつくり、やっと作物がとれるようになったとき、土地をとりあげられ、畑の上には軍事基地ができあがりました。
「沖縄が日本にもどったら、こんなものは すぐに なくしてしまうさぁ。だって、戦争の苦しみを いちばんしっているのは、ぼくたちなんだから。」という、せいとくの願いとは別に、いまも市街地のなかに軍事基地が存在し、アメリカの飛行機が我が物顔に飛びまわっています。そして、新たに海を埋め立て基地をつくろうとしています。
戦前の沖縄県の人口は約49万人で、戦没者が約12万人。4人に1人が亡くなったことになります。
絵本の最後に、おもなできごとがまとめられています。
沖縄戦は、アメリカ軍が1945年3月26日座間味村三島に上陸してはじまりました。司令官、参謀長が自決したのが6月23日。しかしその後も残存兵による抵抗は続き、沖縄戦が最終的に終結したのは、9月7日のことでした。
住民の「強制集団死」があり、6月29日には、日本兵が、米軍のスパイとみなして、子どもを含む20人を殺害しています。
作者は沖縄の取材を40年以上を重ね、これまでにも「沖縄の絵本」を描かれてきましたが、「悲惨な戦争を子どもたちに見せて怖がらせる絵本を創るのではない。平和の大切さを願う心を伝えるために、沖縄戦を絵本にする取り組みを続けているのだ」といいます。
いったん戦争がはじまると止めるのは至難の業。何よりも戦争しないのが一番です。敵基地攻撃や先制攻撃論、軍事費の増額など、日本はどこへむかおうとしているのでしょうか。