どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

犬ロボ、売ります

2020年12月04日 | 創作(外国)

    犬ロボ、売ります/レベッカ・ライル・作 小栗麗加・絵 松波佐知子・訳/徳間書店/2008年

 

 新米発明家のトムがつくった本物そっくりの犬型お手伝いロボットのロボ・ワン。今日はお偉いさんの前でプレゼンテーション。料理をしたり掃除をする犬といっても、本当にしてもらえません。そこで拭き掃除、窓ふきをして見せますが「ロボ・ワンとやらを家に置いたら、家政婦の仕事がなくなるじゃないか。それに、うちのかみさんだって、ひまになって、どうやって一日をすごしたらいいか、わからなくなる。だめだ、ぜったいにだめだ!」と、却下されてしまいます。

 トムは「犬ロボット、売ります! ロボ・ワンは、奥さまの強い味方! ロボ・ワンがいれば、家じゅうが、いつもぴっかぴか。 アイロンがけよ、さようなら! 料理や皿洗いも、さようなら! ぜひ一家に一ぴき。 あと一ぴきかぎり」という広告をウッカリ雑貨店に張り出しました。

 ロボ・ワンを買ったのは、ヨゴレータ家。ヨゴレータ夫人は食事とよべるようなものはいっさいつくったことがありません。せいぜいできあがっている食べ物を買ってきて、レンジであたためるぐらい。おまけにからになったコップやお皿は積み上げられて、今にも崩れそう。床には、新聞紙やリンゴの芯、よごれた服や靴が、ちらばっています。

 ロボ・ワンは、来る日も来る日も、掃除して、洗い物をして、繕い物をして、いろんなものをピカピカに磨いて、買い物をしました。

 しかしロボ・ワンは、ちゃんと犬の心を持っていて、普通の犬のように散歩や遊ぶのがすきなのです。

 ところがヨゴレータ一家は、やさしく頭をなでたり、散歩にもつれていってくれません。そして食事も、みんなの食べ残しを、ひとりぼっちで食べていました。

 そんなある土曜日、助けてという叫び声をききつけ、川に落としたクマのぬいぐるみを、とろうとしておぼれた女の子をすくいあげました。女の子のお母さんは「いい子ね。ほんとうにありがとう!」と、ロボ・ワンの頭をやさしくなでてくれました。

 「これだよ! ぼくがずっとききたかった、すばらしいことばは!」

 ところが、だきしめられると、耳の中のブンブンという変な音が、ますます激しくなり、頭のなかに、いかりくるった何十ぴきもハチがいるみたいです。ぼく、こわれちゃったのかも。でもすごくいい気分。

 女の子はチェリースといいましたが、ヨダレータ一家にみつからないようにチェリースの家に入ると、ミルクをもってくれたチェリース。動物保護センターに電話をかけても、まいご犬のとどけをだした人はいませんでした。そのままチェリースの家で暮らすことになったロボ・ワンでしたが、体の中に水が入ってしまったせいで、それまでできていた特別なことができなくなっていました。でも、ちらかったおもちゃを片付け、ベッドのシーツをととのえ、服もきれいにたたむこともできました。

 チェリースは、ロボ・コンに<ヒーロー>という名前をつけ、公園に散歩につれていってくれました。

 

 産業用ロボットだけでなく、掃除機が自動になり、ホテルの受付、レストランの配膳などへのロボットの配置も進んできました。これからも進化を続けるロボットは、AIでうれしさや悲しさは表現できそうですが、心をもつことはできるでしょうか。

 人間の勝手さにロボットもあきれているかも知れません。


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