どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

石になった男・・カナダ・インディアン

2024年05月29日 | 昔話(北アメリカ)

      大人と子どものための世界のむかし話20/カナダのむかし話/高村博正ほか編訳/偕成社/1991年

 

 こどもにきかせるのは二の足をふむ話。

 カナダのフレーザー川とハドソン川のぶつかるところで、まほうつかいの兄弟たちがキャンプをしていました。兄弟たちは、あっちの悪者をやっつけたり、こっちの人をたすけたり、そしてたまにはいたずらしながら川をさかのぼっていたのです。

 ある日、兄弟たちは村人をころしてたべている悪い魔女のうわさをきき、弟のひとりが、すぐに魔女をやっつけようとしました。夜に魔女のところへついた弟は、魔女の手をひっぱろうとしました。そのとたん、弟の右手は女のからだの中に、はいってしまい いくらひっぱってもぬけません。こまった弟はとうとう刀でじぶんの手を手首のところできりおとし、やっと魔女からはなれることができました。弟はキャンプにかえると、そしらぬ顔で、手首をかくしていましたが、すぐにみんなにばれてわらいのたねにされてしまいました。兄たちが弟の右手をとりかえしにいきますがだれも弟の右手をとりかえすことができませんでした。さいごに、末の妹がでかけ、すばやく魔女にちかづくと、じぶんの腕をつけねのところまで、ぐぐっと魔女のからだの中にいれ、さっとひきぬくと、その手には弟の右手がにぎられ、魔女は死にました。

 リロエの湖にやってきた兄弟は、岸の近くで水面を棒きれでかき回している男にあいました。なにをしているか兄弟が聞くと、魚をとっているがさっぱりとれないという。木の枝で魚をとろうとしても、とれるはずがありません。男は背中に大きな刀をしょっていて、「女房のはらが大きくなったので、刀できりひらいて赤ん坊をだすんじゃ。これまでなんどもそうしてきたが、きまって女房は死んでしまう。だからまた新しい女房をもらわないといけないのじゃ」といいます。

 兄弟たちが、じぶんのすねの毛をひきぬいて、そこらじゅうにまくと、毛のおちたところには、あっというまに草がはえてきました。兄弟たちは、その草で網をつくり、使い方までおしえ、さらに、こんどは魚の料理の仕方まで男におしえてやりました。男の妻にこどもがうまれるときがくると、妹は桜の木の皮でひもをつくって、赤ん坊にやさしくひっかけ、そっとひっぱりだしたので、こどもも母親も元気でした。兄弟たちはこうして、いろいろなことを夫婦におしえてやりました。しかしどう考えても、男がこれまで何人もの妻をころしてきたことを見逃がすわけにはいかず、男を石にかえてしまいました。

 「この石をみて、あとにつづく人間たちが、正しい生き方を学ぶように。」というわけで、いまでもカナダにあるという。

 

 兄弟たちが、「まほうつかい」とされているのですが、旅をしながら人びとに手を差し伸べるのは、「魔法使い」のおなじみのイメージとは違う存在でしょうか?


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