どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

スイショウの国の妖精・・ギリシャ

2024年06月03日 | 昔話(ヨーロッパ)

     子どもに聞かせる世界の民話/矢崎源九郎編/実業之日本社/1964年

 今年(2024年)は、ギリシャと国交が開始されてから125年。そういえばギリシャといえば神話のイメージがおおきく、あまり昔話を読んだ記憶がないことにきがつきました。この話は典型的な昔話でしょうか。

 

 王さまが亡くなるとき遺言を残しました。王さまには三人の王女と三人の王子がいましたが、三人の王女が三人とも結婚してから、王子が結婚することでした。ただ三番目の王子には、小箱にしまっておいた妖精と結婚するように言い残しました。

 さて、王さまが亡くなってまもなく、ライオンがやってきて一番上の王女に結婚を申し込みました。人間だったら五年はかかるという遠いところへ、妹を、お嫁に行かせるわけにはいかないと、年上のふたりの王子はかくそうとしましたが、三番目の王子は、「妹をライオンにあわせてみなくては、いけませんよ」と、一番上の王女の手をとって、ライオンのところへ、つれていきました。ふしぎなことに、王女はライオンが気にいりました。

 つぎの日、トラがやってきて二番の王女に結婚を申し込みました。人間だったら十年はかかるという遠いところへ、妹を、お嫁に行かせるわけにはいかないと、年上のふたりの王子はかくそうとしましたが、三番目の王子は、「妹をトラにあわせてみましょう」と、二番目の王女を、トラのところへ、つれていきました。トラと王女は、すっかり気があいました。

 あくる日、三番目の王女は、おなじようなやりとりで、人間だったら十五年かかるという、ワシのところへいきました。

 王女が三人ともおよめにいったので、一番上の王子、二番目の王子も結婚しました。三番目の王子が、王さまの遺言にあった小箱のふたをあけると、妖精が「ダイリセキの山をこえて、スイショウの牧場で、まっています」と、うたって見えなくなってしまいました。

 王子が五年歩きつづけてライオンの家につき、王子が戸をたたくと、一番上の王女が出てきて、王子を ほうきにかえてしまいます。ライオンのおくさんになった王女はしあわせにくらしていました。王女が、帰ってきたライオンに、「一番上のにいさんが、ここへきたらどうしますか」と、たずねると、ライオンは「ずたずたに、ひきさいてやる」と、こたえました。「じゃ、二番目のにいさんがきたら」「こまぎれにして、くっちゃうさ」「三番目の兄さんがきたらどうなさいますか」ときくと、「あのにいさんなら、大好きだ。丁寧に迎えてやるよ」とライオンは、こたえます。このこたえをきいた王女が戸口にたてかけておいた、ほうきをポンとたたくと、ほうきは王子になりました。ライオンは両手をひろげて王子をむかえ、心から喜んで、もてなしました。王子は、「ダイリセキの山をこえた、スイショウの牧場」の場所をたずねると、ライオンも、けものたちも誰も知りませんでした。

 王子がライオンの家を出て、五年の間歩きつづけ、トラの家につくと、王女は、王子を紙屑箱にかえ、トラが危害をくわえないことを確認してから、また王子にもどします。ここでも、王子は、「ダイリセキの山をこえた、スイショウの牧場」の場所をたずねますが、トラも、動物たちも誰も知りませんでした。

 さらに五年歩きつづけ、ワシの知り合いのタカばあさんといっしょに、「ダイリセキの山をこえて、スイショウの牧場」につきました。そこにはとくべつうつくしい妖精が、ひとりまっていました。ここでようやく、王子は妖精と結婚することができました。


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