どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

木いちごの王さま

2022年10月16日 | 創作(外国)

    木いちごの王さま/きしだえりこ・文 やまわきゆりこ・絵/集英社/2011年

 

 テッサとアイナが山盛りの木いちごを洗っていると、その中に虫がいてびっくり。弟のラウリが、「ころしちゃえ!」といいます。

 虫はテーブルのうえを はいだしました。「ふみつぶしちゃえ!」と、またラウリが わらっていいました。でもふたりは、木いちごのはっぱのうえに そうっと虫をすくいあげ やぶのなかに にがしてやりました。

 お昼に、木いちごとクリームをたべると、木いちごは 全部なくなりました。ふたりは、お姉さんからいわれて、冬のジャムにする木いちごを 森へとりにいきました。森の中はすずしくていい気持でしたが、たおれた木などがあって、ふたりをじゃましました。それでも ふたりは、どんどん森の奥深くに入っていきました。ようやく大きな木いちごのしげみにぶつかり、かご二つとエプロンに 木いちごをつむと、歩き出しました。ところが、森の奥まできたことがなかったので、迷子になってしまいました。

 日が暮れ、草や花に夜露がおりてきました。森を歩いていると、いつの間にか、木いちごの森へ もどっていました。

 ふたりは、大きな石に こしかけて なきはじめました。「おなかが すいた!」「ああ、バターパンと お肉が すこしあったら!」といったとたん、ふしぎなことに、アイナのひざのうえに、とりのフライがのった バターつきパンが 落ちてきました。テッサの手にも、バターつきパンがありました。「これで ミルクが あったらね!」といったとたん、ふたりの手には、ミルクのコップがありました。食べおわり、「ちょっとでいいから、やわらかい ベッドで ねむれたら いいのにねえ。」というと、そばには ふんわりと したベッドが。

 つぎの日、目をさますと、またミルクコーヒーとブドウパンが。不思議に思っていると、白いマントをきて、赤い帽子をかぶった 小さな おじいさんが しげみのなかからでてきて ふたりに わけを話してくれました。

 おじいさんは 木いちごの国の王さまで、何千年も 森をおさめていますが、王として、けっして うぬぼれないように、百年に 一日だけ 虫になり 朝から晩まで小さな虫として生きるよう 神さまから命令されていたのです。小さな虫ですから 小鳥に食べられたり、踏みつぶされるかもしれません、昨日は、ちょうどそんな日でした。ふたりが、助けてくれなかったら、たぶん死んでいたでしょう。夜になって 王の力をとりもどし、あなたがたをさがしました。どうしても お礼をしたかったのです。それで いっしょうけんめい おもてなしを したという わけです。

 心配していたお姉さんと弟のところへ帰ると、たくさんの おいいしいジャムを 作りました。

 

 原作は、フィンランドの作家サカリアス・トペリウスといいます。タイトルに「王さま」とありますが、不思議なできごとがおこりはじめると、ようやく結びついてきます。

 やさしくほっこり、ちょっと夢を感じさせるお話です。

 

 山脇さんが、今年の9月に亡くなられたというニュースがあったばかり。子どもたちが大きくなっても「ぐりとぐら」シリーズは まだ書棚にのこっています。

 岸田衿子さんも2011年5月に亡くなられています。

 亡くなられても 残されたものは ずうっと 生き続けます。


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