金のニワトリ/文・エレーン・ボガニー 絵・ウイリー・ボガニー 訳・光吉夏弥/岩波の子どもの本/1954年
ロシアの詩人プーシキンの物語詩を、ハンガリー生まれの画家ポガニー夫妻が絵本にされています。かなり長い話で、絵本の枠を超えています。
ダドーン王は、昔はいくさ上手で暴れまわっていましたが、いまは年をとって、ふとってしまい、ごちそうを食べ、昼寝ばかりして、のらりくらりと暮らしていました。
王さまの幸せな暮らしをうらやむ、となりの”くらやみ山”に住む魔法使いが、まっくろなすみずみから手下どもを呼び集めて、平和なダドーン王の国へせめこませます。
ダドーン王が、兵隊を北に差し向けると、魔法使いの軍隊は南から、東をふせごうとすると、敵は西からやってきて、ダドーン王の軍隊は、どうしても、この不思議な敵にめぐりあうことはできませんでした。
敵がどっちの方からやってくるか検討しようと、学者をよびあつめ相談しますが、さっぱりいい案がうかびません。
そこへ、とても年とった男がやってきて、金のニワトリをとりだし、この金のニワトリは、危険や敵が攻めてくるような気配があると、すぐさまなきだし、敵のおしよせてくる方角に向きをかえるといいます。いい案がなく、よわりきっていた王さまは、とにかくなんでもやってみようと、ニワトリを塔の上にとまらせるようにいいつけます。もちろん、ただではありません。王さまは、礼には、なんなりとすきなものをやろうと約束します。男は魔法使いが変装していました。
それからしばらくのあいだ、金のニワトリは、お城の塔のてっぺんに、じっと、とまっていました。
ところが、王さまがいつものように羽のベッドでいい気持ちで」ぐうぐう 昼寝をしていたとき、金のニワトリがとつぜん、「コケコッコー! 目をさませ! となりのてきが せめてくる! さあ、さあ、槍をとれ、刀とれ! みんなで、国をまもりなさい !コケコッコー!コケコッコー!」と、大声でなきだしたのです。
王さまのひとりむすこのイゴール王子が、敵をふせぐため軍隊をひきつれて、でかけますが、一年と一日たっても、王子からは、なんのたよりもありませんでした。王子はタチアナ姫と婚約したばかりでしたが、姫は ごはんも のどにとおらないほど。
金のニワトリが、御殿じゅうに、ふるえあがるほど大きな声でなき、こんどは王さま自らがいくさにでかけます。
山のなかの深い真っ暗な谷で見たのは石にかえられた王子と兵士たち。このとき、ひとりのうつくしい月のお姫さまのシャカ姫がでてきました。うつくしさに見とれた王さまが、きさきになってくれるよういうと、姫は快諾し、都へむかいます。
都へ帰ると、魔法使いがあらわれ、金のニワトリのお礼に、シャカ姫をもらいたいといいます。魔法つかいは、月の姫をほしいと思い、姫がすきだった若者を金のニワトリにかえていました。姫を王さまといっしょにくる気にさせたのは、魔法使いのたくらみでした。
ところが魔法使いが、シャカ姫の手をとろうとすると、金のニワトリは、コケコッコーとなき、矢のようにまいおりて、魔法使いの、ひたいのところをコツンとひとつき、くちばしでつつきます。すると、魔法使いは、ころりと死んでしまいました。
ニワトリの左の下の金の羽で、王子や兵隊にさわると、みんな生き返り、ダドーン王も、若いシャカ姫をおきさきにしようなどとは、おもわなくなりました。そして金の羽でさわると、ニワトリもうつくしい王子にかわりました。シャマカ姫と王子は、七日七夜のおいわいがおわると、自分たちの国に帰っていきました。王さまは、また羽のベッドで、お休みです。音楽のかかりのものは、ようきな、にぎやかな曲をやめ、しずかな子もりうたにかえ、しずかに歌をうたいました。
魔法使いが、あっというまに死んでしまうという急展開で、魔法使いの目論見が、よくわからないのご愛敬でしょうか。
この岩波版はプーシキンの原作を歪曲しているとして斎藤さんが、編集している絵本がありました。
魔法使いは出てきませんし、王子は二人。その王子も同士討ちで死んでしまっています。
金のニワトリも王子に変身することなく、王さまを頭をつつくと、王さまはしんでしまいます。
金のにわとり/作・プーシキン 絵・ゾートフ 斎藤公子・編集/創風社/1990年