世界の花と草木の民話/外国民話研究会・日本民話の会:編訳/三弥井書店/2005年
ジャック・フォックスという男が、ご自慢の大麦畑で、靴を作っているレブラコーン(こびと)を見つけました。ジャックは母親から、もしレブラコーンから目を離さないでいたら金の壺のあるところに案内してくれると聞いていました。
レブラコーンは、ジャックの目を離させようと、酒を進めたり、ジャックの牛が野原から逃げたとか、脅かしたりしますが、ジャックは目を離そうとしません。
するとレブラコーンは一面にタンポポが咲いている野原につれていき、タンポポの根元を掘るようにいいます。そのときジャックはレブラコーンの目に、ちらっと何かがよぎるのを見た気がしました。用心したジャックは用心のために、レブラコーンが指したタンポポの上に靴下をうえにかぶせました。こうしておけばほかのタンポポと見分けがつきます。
それからジャックは、シャベルを取りに家に帰り、おかみさんに、自分たちの幸運を話します。
ところが、ジャックが野原に行ってみると、一面に咲くタンポポの全部に、ジャックと同じ靴下がかぶさっていました。風が吹いてきて、野原の靴下をゆらしました。それはジャックがはじめてレブラコーンを見たとき、帽子が前後に揺れていたように、何百ものタンポポがわらっているのを聞いたような気がしました。
がっかりして、うなだれて家に帰ると、ジャックはおかみさんに今見てきたことを話しました。「そうね、でもひとつだけいいことがあったのよ。これからはあんたの靴下を編む必要がなくなったっていうことさ」
他力に頼っていては幸運はなかなかつかめません。おくさんはジャックの話を聞いて、新しい家と納屋と、いままでずっと夢見ていたものを期待しますが、期待が裏切られると別のしあわせをちゃんと見出します。