どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

アザラシ女房・・アイルランド

2024年02月28日 | 昔話(ヨーロッパ)

     世界の水の民話/日本民話の会・外国民話研究会:編訳/三弥井書店/2018年

 

 人間の女の姿をして岩の上で髪をとかしていたのは、アザラシの化身。そのことを知っていた一人の男が、女のそばにある上着を、さっと取り上げて、それをもって家に向かって一目散に走った。女は、上着を取り戻すため男のあとを追っていくしかなかった。その上着がないとアザラシはもとの姿に戻って海に帰れないからだ。男は家に入ると、すぐに上着を暖炉のそばにある中二階のずっと奥のほうに投げ込んだ。

 海に帰ることができなくなったアザラシの女は、男の家に住み、時がたつうちに数人の子が生まれた。その子どもたちの足の指と指にはガチョウやアヒルのような水かきがついていた。

 ある日、男が収穫したカラスムギを中二階に運び入れることを思いついた。中二階にはずいぶん長い間上がったことがなかったから、その間に投げ込まれたものでいっぱいだった。男はガラクタをつぎつぎに上から下に投げはじめた。そうしているうちに、あの上着も投げてしまったのだ。下で夫の仕事ぶりを見ていた女は、上着をすかさずそれをとって、自分が座っている椅子の尻の下に隠した。男は中二階が片付くと、カラスムギの袋を運び入れた。夫が仕事を終えて外へでていくと、女は上着をもっと安全な場所に隠した。

 夕方近くなると、女は家の中をきれいに掃除し、夕食の準備をした。それから子どもたちの一人一人の体を洗い、服をきちんと着せ、テーブルにつかせると、自分は外に出て、上着をはおると、浜辺に向かって一目散におりていった。

 

 羽衣伝説のひとつですが、アザラシというのは、地域の特徴を表しているようです。その後、誰も女の姿をみたことがないという結末なので、子どもたちがどうなったかが気になりました。


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