すでに一ヶ月ほど前の話になりますが、山梨県立博物館で行われていた秋期企画展『甲州食べもの紀行』の話をしましょう。
山梨は内陸県です。つまり、海がありません。
ともすれば貧しく見られがちな食文化ですが、そんなことは決してなかったというのが、今回の企画展のテーマです。
確かに山国ゆえ、米などの農作物は育てづらいと面はありますが、逆に言えばそれでも人々は生きてきた。
貧しいなら貧しいなりの創意工夫を施し、結果意外なほど豊かな食文化を築くことが出来たのです。
天領であったとはいえ、城下町であった甲府では実にいろいろなものが食べられていたようです。
特に鮮魚を出す料亭が多くあったといいますし、現在でも実は一世帯あたりのまぐろ消費量が、静岡市に次いで甲府が二位だといいます。
内陸県のくせに、かなりのマグロ好きなんですねー。
この企画展の目玉として、信玄(1521~1573)が食べていたとされる饗宴料理がありました。
『甲陽軍艦』を中心としたたくさんの文献を参考にして作られ、式三献から七ツの膳を経て、菓子で締めくくられます。
これを一人で食べるのかどうかはわかりませんが、かなりの量です。
それ以外にも、果樹・粉食・米・肉・魚などの幅広い食材に関する考察、食材の生産を支える農林漁業まで実に幅広い展示が行われていました。
非常に興味深い内容でしたが、いささかテーマが広くて、いささか小難しくなりすぎたかもしれません。
でも、貴重な資料を多く見ることも出来ましたし、ユーモアに富んだ展示は、多くの人に受け入れられたのではないかと思います。
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あと、果樹にしても「山梨は古くからフルーツ王国であった」と紹介されていましたが、近世において葡萄はじめ果樹栽培はかなり限定された産業であったはずで、戦後に養蚕から切り替わった現代の「フルーツ王国」的様相をそのまま当てはめてしまうのはちょっと誤解を招きかねない、とは思いましたね。
あと、マグロ消費量が多いのは無尽文化が影響しているかもと思いました。
確かに、「食」のための苦労という点を、もう少しクローズアップしてもよかったかもしれませんね。
後半、奈良田の焼き畑についての展示がありましたが、もしかしたらそこに当てはまるかも知れませんが、いかんせん後半は疲れてしまって…。
小学校の頃の山梨の学習では、養蚕から果樹栽培への転換、精密機械工業の発達が地理での大きな柱だったと思います。
確かに、昭和初期までの果樹栽培と現代のそれとは大きな隔たりがありますよね。
「食」というテーマは、山梨という地域に限定したとしても、かなりの広がりを持つってことですね。
テーマの設定は、なかなか難しいですね。
個人的には、広重が「まづし」を連発していたのが爆笑でしたが。