入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’18年「冬」 (10)

2018年11月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日「間違いない」と言ったように夕焼も、それから帰りの道中、山の中で眺めた月齢7.5の月や星々も、しみじみと胸に沁みた。落葉した木々の梢の遥かに、幾つかの星の煌めきが見え、溶暗されていく西の空と山際のわずかな境に、淡く滲んだ金色の残光がしばらく見えていた。



 こういう眺めは、仕事を終えた後の充足感があって、さらに感動は深いものになる。厄介なコナシの枝打ちに汗をかき、腹を立て、手に幾つもの傷を作るのも、言ってしまえばこの感動のためである。この満ち足りた気分を大切にして里に帰っていけば当然、酒とビールで始まる一人の祭りや夕餉もまた豊になる。「あはれ秋風よ情(こころ)あらば伝へてよ」などという情けない心境にはならない。

 入笠の将来のことは皆目分からない。どんな人たちが、どんなふうに考えているのかについても、何の情報も入ってこない。それでもありきたりな、どこでも目にするような観光地開発など、絶対に真似てはほしくないということだけは強く思う。ここは、これだけの価値の高い自然と景観が、人と牛によって育てられ、長い間にわたり守られてきたのだから、何かをやろうとするなら、そのことを忘れないでほしい。
 今やっている道路沿いの枝打ちの作業も最初は、いつか来るかも知れない観光バスを夢見て始めた。徒長した枝が、バスの車体を傷付けたりしてはいけないと考えたからだ。しかし今はそう思っていない。そんなことを期待してもいない。それでありながらなお枝打ちを続けている理由は、伊那側の悪路をやってきた人たちへのささやかな気遣い、配慮でもあるが、これも入笠の自然や景観を守るためだと答えたい。
 狭い日本の国土に億を超える人口だから、人気の高い観光地はどこも人で溢れている。加えて、この頃は海外からの観光客も多く、それを一般的には喜ばしいことと捉えられているご時世である。ここ入笠牧場も、そうなればいいと安易に考える人もいよう。
 しかしそういう人たちには、放置され、草の茂るに任せたスキー場跡や、錆び付いたリフトの残骸、廃墟と化した周辺の建物などを、まず目に焼き付けてからにしてもらいたいと思うが、如何だろう。

 そういうわけで「冬の営業案内」をご覧ください。予約は早めに頂ければさいわいです。




  
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     ’18年「冬」 (9)

2018年11月15日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 恐ろしいほどの快晴。北アの中腹に一条の雲があっただけで、まさに「蒼穹」と呼ぶに相応しかった。ただ、気温は昼になっても10度まで上がらず、第1牧区に行くまでの作業道の日陰には霜柱が残っていた。

 きょうから猟が解禁になった。上がってくるとき、それらしい車何台かとすれ違った。昨夕、ロケハンで案内した大沢山では50頭を超える鹿の群れを見たが、今朝行ってみたら、遠くのコナシの林に数頭を確認しただけだった。それも普段ならあの距離では動こうとしないのに、人の姿に全頭がアタフタと逃げ出した。早朝から銃声でもしたのか猟期初日、いつになく鹿の様子にも切迫したふうが感じられたのは気のせいか。
 以前に、野生鹿の数が急増したのはオオカミがいなくなったからだと言い、だからオオカミを森に放てと真顔で主張する人がいた。これだけの鹿の数に対して、一体どのくらいのオオカミが必要なのかを考えたのだろうか。
「大日本猟友会」という組織がある。会員数は減ったとはいえ全国で10万人はいる。有害駆除と狩猟を合わせれば、オオカミに匹敵するくらいの勢力にはなりそうに思えるが、どうだろう。同会は行政の支援も得て様々な努力、試みをやっている。それでも鹿の数はそれほど減っていかない。本当に減らそうと思えば、今のようなやり方では駄目なことはそろそろ分かってきていると思うが、その辺りの話あまり聞こえてこない。
 水産庁の資料によれば、全国の漁業就労者数は15万人ほどのようだ。輸入品もあるから全てではないが、それでもその人たちのお蔭でわれわれは日々海の幸を口にすることができている。
 漁業に携るのは生活手段であり、狩猟は多くの人にとっては趣味的な要素が大きい。当然一緒にはできないが、猟友会がこれだけの会員数を持ちながらオオカミにまで助けを借りるようでは、全国の名人たちが哭く。

 昨夜の山道では月と星が素晴らしかった。今夜も間違いない。しかっり肉体を使った後の長い帰りの夜道では、家に帰ってから一人でする酒の祭がことのほか楽しみだ。御年90歳の北原のお師匠からは「オレより先に死ぬなよ」とよく言われているが。

 そういうわけで「冬の営業案内」をご覧ください。予約は早めに頂ければさいわいです。





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     ’18年「冬」 (8)

2018年11月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午後になって、天気が良くなってきた。きょうはまたCM撮影のロケハンがある。夕暮れの映像を撮りたいのだそうだ。このPCの中にある幾つもの相応しい写真をあらかじめ用意しておくつもりが、見つからない。ようやく探した写真は、なぜかこんなに小さなサイズで、恐らくデジカメかUSBの中だろう。


 
 以前にも、映画で夕焼けの写真を撮ったことがあった。後日、完成した映画をわざわざ松本まで観にいったが、映っていたのは何秒かというほどの最後のシーンで、大切な場面であることは分かったが、撮影に漕ぎつけるまでの苦労と準備を思い出すと、少々呆気なかった。映画もだが、それがCMとなると30秒の世界。大型企画になると、たった一人の女性を撮るために、100人近くの関係者が来る騒ぎだ。
 ともあれ、実際に撮影が決まればいいが、いろいろな事情で流れてしまうこともある。また企画に合う場所でも、天候だったり機材搬入などがネックになることもある。さて、今回は、どうか。

 感触は悪くなかった。まずは、期待しておこう。

 漁労長サマ(山奥氏)が甘鯛を用意してくれてるが、この時間ではもう今夜は持ち帰れない。

 そういうわけで「冬の営業案内」をご覧ください。予約は早めに頂ければさいわいです。




 
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     ’18年「冬」 (7)

2018年11月13日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


「ああ、入笠の・・・牛の人」その人は険しい顔を破願して言った。今朝、第2堰堤の手前で、木材運搬用の大型トラックと出くわした時の会話だ。芝平の集落を少し下った所が地滑りで2トン以上のトラックは通行できなくなっている。諏訪神社近くの広場には、伐り出した落葉松の木が山のように積まれていて、そのまま越冬させれば、材木としては使い物にならなくなる恐れがある。それでやむなく、オオダオ(芝平峠)、枯木の頭、千代田湖という大迂回する方法で搬出を始めたのだろう。
 どちらにとっても狭い山道でのすれ違いは大変なことだ。およその通行時間を知っていればその時間を避けてもいいと思って声をかけてみたのだが、それにしても「牛の人」だと、笑ってしまう。考えてみれば、こんな山の中のこと、言葉を交わさなくても見知った相手の素性ぐらいは分かってしまうのだろう。もちろん、そんなふうに承知してもらっていて全く異議はない。上に来るまでの道中、思い出し笑いを何度もした。

 手元の古い作業日誌を見るとその年は、第1牧区の電牧落としに3日もかけている。他の冬支度と並行してやっていたのだろうが、同じ作業を第3、4の牧区でもやらなければならなかったころのことだ。そんなころと比べれば、今年は第1牧区だけで済む。牧場との契約は20日で終わるが、その後であっても、とにかく初雪を待って上がってきて、その作業をしようと考えている。そうしたからといって、どれほどの鹿対策になるかは分からないのだが、どうせ冬の間も牧場との縁が切れるわけではない。クマの眠りをじゃましないようにしてやるつもりだ。
 クマといえば、最近のクマは冬眠しないと言う人がいる。しかしそうなると、出産はどうなるのだろう。雪の森をたまには徘徊することもあるかも知れないが、長い間のクマの習性である、少なくとも雌クマは安全な洞穴の中で元気な仔を産むだろう。

 「訪ふ人も思ひ絶えたる」山となり、周囲の初冬の雰囲気がいい。富士見のゴンドラは定期点検で止まっているようだが、降雪、凍結が確認されるまで、富士見側の道路の交通規制はとりあえず解除されてるだろう。冬支度も大方終わり、この時季恒例の道路にかぶさるコナシの枝打ちを始めた。
 
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     ’18年「冬」 (6)

2018年11月12日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 この時季の山の良さを、一人だけで味わっている。きょうは水源地まで、沢の流れに沿って森の中を歩いて行った。その谷には水量にもよるが、良い水の音を聞かせてくれる小さな流れの段差がいくつもできている。一昨年の今と同じころ、水道管の埋設や養生をやっていたときは、下から聞こえてくるそうした流れの音に、遅々として進まない仕事から来る苛立ちを幾度となく和らげてもらった。
 きょうも、水の流れを名曲のように聴きながら、落葉したダケカンバの森の中を登っていった。そして、この谷の中でやったあれこれの仕事を思い返しながら、もう、ああした作業を繰り返すことはないだろうと思った。熱意も、努力も、忍耐もあったからできたことだが、それらは体力と協調する必要がある。それを期待できない。

 第1牧区へ上がっていく途中、谷を挟んで100メートルと離れていないダケカンバの林の中に、1匹の雄鹿が寝転がっていた。奴はこちらを注視しているようだったが、動かない。そんなふてぶてしい態度を見せるくらいなら、もうすぐ始まる猟期に真っ先に撃たれちまえ、と言ってやりたかった。 牛が下りてから特に鹿の活動が目立つ。多分牛というより、冬を目前にして行動が活発になったのだろう。第1牧区の放牧地には鹿の姿はなかったが、落とし物は増えるばかりだ。
 指標にしている3本のミズナラは、1日見なかっただけなのにすっかり落葉していた。確かにミズナラばかりでなく、この周囲のあらゆる広葉樹が葉を落としてしまった。落葉がこんなに短期に進むとは、毎年見ているはずなのにそれでも意外だった。
 御嶽山や中央アルプスは時雨れているようで、乗鞍は双頭の峰を雲の中に隠していた。北アは不機嫌そうな冬雲が厚く覆っていた。やはり、11月もここまで来てしまうと、冬の気配が一段と濃くなった。山の雰囲気がもうすぐ変わる。

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