毎日目にしていた風景にもかかわらず、きょうのような曇り空では、山の雰囲気はすっかり変わってしまった。想いは残るが、老いた秋にこれ以上は老醜を晒させるわけにはいかない。きょうからこの独り言のタイトルを「冬」に変え、いよいよその支度にかかることにする。
そう決めたら、急に何を呟いたらよいのか分からなくなってきた。支えになっていたものが急に消えてしまったような心許なさを感じる。できればこのまま冬眠状態で一冬を送ってもいいと思うくらいだが、そうもいかない。牧を閉じるまでのこれからの半月、それからの長い冬の過ごし方をあれこれ考えながら、新しい季節の重そうな扉を開けることにする。
とりあえず、ここの冬支度を進めながら、一度「法華道」の様子を見にいこうと思っている。昨日も、北原のお師匠は「通れるようにだけはしておかなければいけない」と言って、古道を邪魔している倒木のことをかなり気にしていた。去る8月、90歳の高齢を押して誰かを案内して途中まで行ったらしいが、それ以来、そのことが頭から離れないようだ。倒木はお師匠のせいではないのに、案内した人に「恥ずかしかった」とまで言った。もう少し若かったなら、当然自分で始末したはずだという無念の思いが、ついそんな言葉を吐かせたのだろう。
確かに、雪道を塞ぐ倒木をかわすのは、かなりの体力を消耗する。しかし、それにしてもあの山道を年間どれほどの人が通過するのだろう。旧芝平の住民が、キノコ採りに利用しているくらいのことは分かっているが、それ以外では人々からは忘れられた古道というしかない。味わいのある、いい山道なのだが、入笠へ来る大半の人はどうしても便利な方法を選ぶし、この道のことも恐らく知らない。
愛犬HALといつも一緒に、法華道を一冬に何度かは登り続け、またその季節が来る。12年目の冬だ。
今冬の小屋の営業を希望される方は、今から連絡いただけるとさいわいです。営業内容についてはカテゴリー別「冬季営業のお知らせ(29年度)」を参考にしてください。