「ああ、入笠の・・・牛の人」その人は険しい顔を破願して言った。今朝、第2堰堤の手前で、木材運搬用の大型トラックと出くわした時の会話だ。芝平の集落を少し下った所が地滑りで2トン以上のトラックは通行できなくなっている。諏訪神社近くの広場には、伐り出した落葉松の木が山のように積まれていて、そのまま越冬させれば、材木としては使い物にならなくなる恐れがある。それでやむなく、オオダオ(芝平峠)、枯木の頭、千代田湖という大迂回する方法で搬出を始めたのだろう。
どちらにとっても狭い山道でのすれ違いは大変なことだ。およその通行時間を知っていればその時間を避けてもいいと思って声をかけてみたのだが、それにしても「牛の人」だと、笑ってしまう。考えてみれば、こんな山の中のこと、言葉を交わさなくても見知った相手の素性ぐらいは分かってしまうのだろう。もちろん、そんなふうに承知してもらっていて全く異議はない。上に来るまでの道中、思い出し笑いを何度もした。
手元の古い作業日誌を見るとその年は、第1牧区の電牧落としに3日もかけている。他の冬支度と並行してやっていたのだろうが、同じ作業を第3、4の牧区でもやらなければならなかったころのことだ。そんなころと比べれば、今年は第1牧区だけで済む。牧場との契約は20日で終わるが、その後であっても、とにかく初雪を待って上がってきて、その作業をしようと考えている。そうしたからといって、どれほどの鹿対策になるかは分からないのだが、どうせ冬の間も牧場との縁が切れるわけではない。クマの眠りをじゃましないようにしてやるつもりだ。
クマといえば、最近のクマは冬眠しないと言う人がいる。しかしそうなると、出産はどうなるのだろう。雪の森をたまには徘徊することもあるかも知れないが、長い間のクマの習性である、少なくとも雌クマは安全な洞穴の中で元気な仔を産むだろう。
「訪ふ人も思ひ絶えたる」山となり、周囲の初冬の雰囲気がいい。富士見のゴンドラは定期点検で止まっているようだが、降雪、凍結が確認されるまで、富士見側の道路の交通規制はとりあえず解除されてるだろう。冬支度も大方終わり、この時季恒例の道路にかぶさるコナシの枝打ちを始めた。
そういうわけで「冬の営業案内」をご覧ください。予約は早めに頂ければさいわいです。