入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’24年「夏」(14)

2024年06月12日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 足場の悪い谷の中にいた。流れ下る水の量は大したことはなかったが、やがてもう一方からの流れと合流し、「初の沢」となるその源流である。こんな支流のような谷にもそこへ流れ込む枝沢がさらにあって、初めてその場所へ行った時には牧柵はそこを上手く渡れ切れず先人の苦労した跡が残っていた。
 
 いや、先人ばかりか、自分でも随分と同じような思いをした記憶があり、普段なら「こんな所まで牛は来ない」と決めて、わずかな手直しで済ませて早々に立ち去る場所であった。
 ところが昨日は違った。2本の太い倒木に巻き付けた有刺鉄線をいじっているうちに、長年手を焼いてきたこの箇所を何とかしないと気が済まなくなってきたのだ。

 昨日はこの沢の上に拡がる第2牧区の電気牧柵を立ち上げ、さらにその最終点からは通常の有刺鉄線の牧柵に変わるが、その点検と補修を続けていた。牧柵は谷へ下り、さらにはそこを渡ると流れに沿って上流へと向かい、問題の支流はその先にあった。
 
 この辺りの渓相は自分でも気に入っている場所だが、鹿の群れが通過する獣道が何本もある。3年前に区画変更を考え、約1㌔に及ぶ距離に新たに牧柵を設置する際にはその被害を覚悟した。しかし牧柵は急な斜面を落ちていくためか思っていたほど痛んではおらず、それで気持ちに余裕ができたのかも知れなかった。
 
 話はまた問題の支流に戻るが、思案の末、やはり2本の倒木を始末することにした。そのためにはチェーンソーが必要であり、小屋までそれをを取りに行き、再び重い物を持って戻ってきた。
 
 時々呟くように、倒木の処理というのは簡単ではない。木には複雑に力が溜まっているし、事前によく見ておかなければ切り込むうちにチェーンソーの歯が噛まれてにっちもさっちもいかなくなることもある。薪ストーブに使う丸太を切るのとは話が違う。
 1本は枯れていたが、それより太い木の方はまだ生きていて、多くの枝には葉が茂っていた。
 
 有難いことにチェーンソーはよく役立った。ものすごい勢いで切りくずを飛ばしながら気持ちの良いほど切れ、作業は捗った。お蔭でそれほど時間をかけずに終わったが、もう牧柵を設置するだけの余力はなかった。
 足場の悪い場所で緊張を強いられ、何度もよろけ、チェーンソーの歯を庇い自分から倒れたりもした。

 こんな呟きを聞かされても面白くも何ともないだろうが、かくして孤軍奮闘の一日が終わった。牛が来るまでに残り8日、その準備がまだまだ続く。
 
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