モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

壁面棚オーディオルームでの響きを考えてみる

2020-11-30 00:01:18 | オーディオ
先日に投稿した、オーディオルームはとにかく可変性調整性に特化すればいいんだ、あとは試行錯誤すればいいんだという、
今までの考察を無に帰す身も蓋もない結論で自分の中では考察を終了しかかっていたが、
試行錯誤するにしても、それなりに正解の仮説は必要だろうと思い返し、
本棚ルームでどういう音響処理をすればいいのかを再考察してみることにする。

2回反射までのシミュレーション。棚のみでも多少拡散する作用はあり、深さや間隔を考えると低域に効果は期待できるが、基本的にはリブの間隔が広すぎて棚のみでは不十分。
棚がないときと同じように側面と後壁の反射の到来するパワーの強さが気になる。


側面と正面の一次反射面をDefrectionした時のシミュレーション
リスニングポジションに入りやすい反射は減少する。


他の設計に影響されて正面をどうすべき、側壁をどうすべきか混乱していたが、
今まで論文で抑えた見識を用いると、そもそも正面側面で分ける問題ではないのではないかと我に返った。
自分としてエリアを下図の6つに分けてみた。


①エリアは正面壁のスピーカーの内側の部分である。
推奨の壁面処理は表層に拡散、深層にDefrectionまたは吸音

そのままにしておくと正面からの一次反射がリスニングポジションに入ってくる。そのまま入れると音源の近さ部屋の狭さを感じさせる。
奥行きはでないがボーカルは前に出る。音像が近く、小空間の雰囲気は出せるが、デメリットの方が多いかもしれない。
そして強力な一次反射を回避するにしても、この部分からの早期反射音は音の明瞭度を下げ、ASWを拡大する効果もない。
そして残響音としてもLEVを感じさせる効果が少ない。
総合して考えるとあまり魅力的なポイントではないことが分かる。
AcousticFieldが拡散を推奨し、アキュフェーズの新試聴室で吸音しているのはその辺りにあるのではないだろうか。
とは言っても指向性の問題から中高域はそもそも正面壁には直接音が多くは放射されないので、何が何でもうまく対処しないといけない場所ではない。
低域中心の直接音を無害に処理するために深部にDefrectionまたは吸音の処理しつつ、後壁から返ってきた中高域も含まれた反射音を側面の多次反射音の源にするために表層に拡散体を置くのが良いのではないだろうか。

②エリアは正面壁のスピーカーの外側と、側壁のスピーカーの真横から後ろ部分である。
推奨の壁面処理は拡散である。(ただし定在波処理を考えない場合)

このエリアはそのままにしても一次反射面にはならない。
この部分からの早期反射音は音の明瞭感を与え、ASWを拡大する効果がある。
なので使えば有益と考えられる。
真後ろと真横も含まれるのでフラッターエコーになりやすいことともあり積極的に拡散していくと良いように思える。
最初から一次反射面にはならないのでDefrectionの必要性が感じられず、使えば有益と思えるので吸音する必要も感じない。
ベーストラップを置くことの多い場所なので、部屋の特性的にベーストラップが必要ないことが前提の話ではあるが。

③は側壁の中でスピーカーとリスニングポジションの間にある部分である。
推奨の壁面処理は表層に若干の拡散をいれつつ深層にしっかりとしたDefrectionまたは吸音

このエリアは最も強力な低域から高域までの音が反射してリスニングポジションに入ってくるポイントである。
特に反対の側壁からの反射音は定位を悪くする。
スピーカーともリスニングポジションとも距離を確保しづらいので拡散が効かせにくい。
だが早期反射音はASWを広くする効果があり、場合にもよるが音の明瞭感を向上させる効果もある。
残響音としてもこのエリアからの残響音はLEVを感じさせやすい。
薄い拡散体のみでは十分な効果が得られないが、ひたすら吸音するだけでは勿体ないように思える。
吸音なりDefrectionなりをメインに据えてしっかり減弱はさせつつ、表層には多少の拡散体を設置して完全には殺さないのが良いと思える。

④は側壁の中でリスニングポジションよりも後ろにある部分である。
推奨の壁面処理は多少方向性のある拡散

この部分は何もしなくても一次反射面にはならない。なのでケアしないと有害という場所ではない。
ASWの観点からはこの方向までワイドにする必要性は感じられない。
音の明瞭度への寄与も逆効果であるようだ。
残響音としてはLEVを感じさせるのに有用である。
なので、基本的には無処理と同じように後壁に向かって反射させ、後壁にバトンタッチする仕事は変えない。
それを前提として後壁に送る前の下処理として多少の拡散はしておいてもいいのかもしれない。LEVを期待するという意味でも拡散させておくメリットはある。
ただし後壁に送るという第一の仕事を違えないため、拡散するにしてもリスニングポジションに迷入しづらいように多少の方向性を持っておくのが良いように思える。中途半端くらいがちょうど良いのかもしれない。

⑤は後壁の中でも外側にある部分である。
推奨の壁面処理は高度な拡散

この部分も何もしなくても一次反射面にはならない。
だが低域から高域までしっかり入った直接音がこの壁に向かって放射されるので、二次移行の反射音や残響音の源になる。
ASWや音の明瞭感には寄与しない。
LEVへの寄与は比較的大きい。
ここはシンプルに残響に寄与してくれればいいし、上手く拡散できなくても悪いことにはならない。
余裕があればしっかり拡散しておきたい。

⑥は後壁の中でも内側にある部分である。
推奨の壁面処理は部屋が大きくなければDefrectionまたは吸音中心が無難。

この部分は後壁の一次反射面になるので無処理はよろしくない。
後壁からの一次反射音が強烈だと音像が異様なほど近くなる。
部屋の大きさや配置の仕方によってではあるのだが、リスニングポジションと後壁の一次反射面が非常に近い事例が多い。
壁と近いと拡散が効果を発揮しづらい。大きな部屋で無い限りはピンポイントでもいいので吸音中心の処理をしておくと無難な場所に思える。
音像は処理しやすい中域高域で認識されるのでDefrectionでも経験的には副作用はしっかり減少してくれる。

コメント
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