以前も訪れたマイスターハウスのモニターハウスだが、外構が進んだとのことで見学に行った。
外構がほとんどできあがっていて、エントランスや庭は見違えるような落ち着いた上品な佇まいになっている。
だが、それより驚いたのは、高気密高断熱と空調管理のレベルの高さである。本日は最高気温33.8度の猛暑日手前。外が真夏の暑さであることにより、室内の快適さが際立っていた。
モニターハウスは206の内断熱(36kグラスウール)に6cm厚?のロックウール外断熱を付加し、窓にはトリプルガラスの樹脂サッシを備えた仕様(聞いていないが多分Q値は0.8W前後)。気密測定に立ち会った際にC値は0.16を叩き出していたと記憶している。換気は北側のダーティーゾーンから強制排気し、各部屋の給気口から給気する第3種換気。冷房機器は実質1つ?のみとなっている。2階の天井から吹き抜けを経由して1階に冷風を送り、2階の各個室には配管を通して冷風を送っている。暖房はヒートポンプを利用したパネルヒーターらしい。
素人目には空調の流れはざっくばらんにこんな感じに見えた。
吹き抜けというと、温度差が生じてしまい、冬は寒くなってしまうのが最大の弱点で、サーキュレーターが回っていることがよくある。高気密高断熱といれど、多少の温度差は出てしまい、冷房効率を落とすものだという認識だった。自分の家に吹き抜けを採用しなかったのはそのためだが、このモニターハウスには吹き抜けの床と天井に全く温度差がなかったのだ。
赤外線放射温度計というレーザーポインターの光の当たった部分の温度を測定する機械での測定結果、吹き抜けの床:23℃、吹き抜けの天井:23℃であった。小数点の値は忘れたが、1度以内の温度差しかなかった。誤差の範囲内である。設定気温が低めなのは、室内の温度管理能力を試すために室外との気温差を付けるためなのだと思う。下は寒くて、上は暑いという吹き抜けの弱点の温度差がこのモニターハウスでは微塵にも表れておらず、完全に克服されている。
しかも1階2階各部屋の温度もほとんどが23℃。キッチンやトイレ、バスルームなど、冷房の直接風が届かないところも、まんべんなく22~24℃で管理されていた。
唯一の例外は玄関ドア(スウェドア)の窓ガラス28℃。なかなか超高断熱の玄関ドアは世に出ないらしい。ただ、それ以外は全て同じ温度に保たれていたのだ。
ここまで均一な温度を冷房機1つで実現できたのは、断熱性能の高さにより外温の影響を全周的に受けない構造、高気密により外気の影響を受けず気流を思い通りにコントロールできること、計画的な冷風経路と換気経路により最低限の風量で全室内に冷風を行き渡らせていることにあるのだと思う。
今の住んでいるアパートの玄関、風呂、トイレでは不快な暑い空気が淀んでいるが、モニターハウスでのそれらは23℃のほぼ無風な空間で、周囲環境と温度差がまったくない。ここ最近の猛暑で実感したのは温度差を伴う移動の際に体への負担が大きいこと。空調の効いた空間と効かない空間の移動を繰り返すだけでバテてしまう。このモニターハウス内は少しの温度差もなく、快適極まりない。
自分の建設中の家の換気計画や空調管理、断熱性能は、このレベルまで注力していない。だが、それらに重点を置けば、ここまでの環境が作れるとは正直思っていなかった。少しそれは心残りではあるが、高断熱と温度管理には、そこそこ程度までしか入れ込める余裕が無かった。
少し気になった点を言うと、リビングに冷房の直接風が届く経路になっており、リビングでは冷房の風を感じ、キッチンやトイレ、洗面所には直接風が届かない空調経路となっている。だが、どちらも気温は23℃で同じである。なので風を感じるリビングより、無風のキッチンや洗面所の方がより快適なエリアになっていた。ここまで均一な温度にできるのであれば冷房の直接風が通る経路は、滞在時間の長いリビングよりも、滞在時間の短い玄関吹き抜けから吹き下ろすような流れにした方が快適性が増すのでは無いかと素人目に感じた。平時には快適とは言えない冷房の直接風が暑い外界から帰宅した直後には、とてつもなく気持ち良く感じるからだ。(南側は日光で加熱されやすいので冷房の直接風が来ないと気温が上がってしまうのかもしれないので、私案では暑いリビングになってしまう可能性もある)。
高気密高断熱は無暖房だとか、第1種の熱回収だとか、数字上のスペック競争の様相を呈している側面もあるが、快適な空間が作れることが一番で、機材のランニングコストやメンテナンスの容易性も優先されなければならない。冷房暖房を使うか使わないかが問題ではなく、熱回収率が何%であるかが問題では無く、微小なコストとメンテナンス労力で快適な空間が作れればそれが一番良いのだと思った。(湿度管理も不快指数的には重要であるが、ハイレベルに管理できる機器はまだ普及期にはない。)
何にしろ、吹き抜けの弱点は温度差とかそういった既成概念を完全に打ち砕く、驚きの性能であった。