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ラッパ屋 第49回公演 「七人の墓友」/ナイロン100℃ 49th SESSION「江戸時代の思い出」

2024-07-14 | stage

日本の演劇は随分ご無沙汰になっていましたが、
気になっていた芝居を6月中に2本見ることが出来ました。

1本目はラッパ屋 第49回公演 「七人の墓友」
ラッパ屋を劇場に見に行くのは、第47回公演の「君に贈るゲーム」ぶり。
前回はまだコロナの影響が残っていたため、客席もいつもより空席が目立っていて、
ボードゲームを楽しむ登場人物たちもマスクをしていました。

今回は劇団の取り置きシステムを利用して前日にチケットを確保しましたが、
今回は平日でも席がかなり埋まっていて、観客が着実戻っているのを実感。

家族恒例のバーベキューパーティーに
食品会社に勤める長男、アラフォーで独身の長女、芸術家としてNYに住む次男が集まる。
次男はNYから恋人を連れてきて自分がゲイであることをカミングアウトし、
長男は職場の上司でもある一人暮らしの義父と同居することを告げると、
次々と納得いかない告白をされた頑固者の父は憤慨。
さらには、長年本音を押し込んでいた母が
「お父さんと同じお墓に入りたくない」と言い出す。
実は母は朗読サークルの仲間たちと一緒のお墓に入りたいと考えていた。
朗読サークルのメンバーは元水商売や大学の教授、熟年離婚した女性など様々。
母は父方の墓が岡山にあるが、遠いし「隣に八つ墓村のモデルになった村がある」から入りたくないと、
パーティーの前から長女に打ち明けていた。
父の理解を得られないまま、朗読サークルのメンバーは、
次男の恋人の従兄が住職を務めるお寺の桜の幹の下に骨を埋める樹木葬を見学することになる。

老後が心配になってきたお年頃の私にとっても気になるお墓が主題とあって、
これは勉強のためにも見ておかねば!と思った次第。

今作は主宰の鈴木聡さんが俳優座のために書き下ろした作品で、
当て書きをするラッパ屋では珍しく「当て書きしていない台本」を使っての公演だそうです。
それなのに、まるで演じる役者を想定して書いているように、
キャラクターと配役がぴったりあっていました。
俵木藤汰さん演じる鉄鋼業界にいた頑固おやじや、
対照的に能天気な雰囲気のおかやまはじめさん演じる友人、
弘中麻紀 さんは年齢よりも年上の、のんびりしていそうなのに芯が強そうなお母さん。

常連の客演陣、松村さんや谷川さんは、今回朗読サークルのメンバー役。
松村さんは女性役でビックリ!でも全然違和感なし!

劇団メンバーそれぞれの個性が際立っていて、それぞれのキャラクターが立っていて覚えやすい。
それが40年も劇団が続く秘訣のひとつなのかなと思ったりしました。

果たしてお母さんは友達と共同墓地に入ることになるのか?
お父さんは許してくれるのか?が最後までの注目ポイントになるわけですが、
最後のシーンが説明は最小限にとどめられているけれど、
その後の未来がわかるような幕引きになっていて、なるほど!と納得。
個人の意思を尊重することも、家族でお墓に入ることもどちらも肯定するような終わり方に、ホッとさせられました。

ただ、上演時間が長いわりに、ちょっと内容がのんびりしているようにも感じられたので、
もう少し端折れたところがあった気もする。
「筋書ナシコ」のように、繰り返し見たい!とまでは至らないまでも、
見たことを忘れられないような温かい1本でした。

2本目はナイロン100℃ 49th SESSION「江戸時代の思い出」。ナイロンこそ数年ぶりの観劇。
私は仕事の都合上、先行予約でチケットを取ることが難しいので、
当日券をチャレンジすることが多く、それでも大抵は立ち見でも入場できるのですが、
ナイロンは以前、当日券に並んでも入れなかったことがあり、
その失敗経験の印象が残っていて、確実に確保できる日程でないと無理だろうなと、
足が若干遠のいていました。

しかし、今は日にちによって直前に予約出来る当日引換券が出ているではありませんか!
席の場所は期待できないかもしれないけれど、見られるという確約が得られるだけで万々歳!
仕事終わりに見に行ける平日に席を確保しました。

 

ナイロン100℃が紡ぐ“笑いのための笑い”、30周年記念公演「江戸時代の思い出」開幕(舞台写真 / コメントあり)

「ナイロン100℃結成30周年記念公演 第2弾 ナイロン100℃ 49th SESSION『江戸時代の思い出』」が、6月22日に東京・本多劇場で開幕した。

ステージナタリー

 

「江戸時代の思い出」は主宰のKERAさんがX(Twitter)でタイトルだけは決まっていると投稿していたので、
そこからどのように話が作られていくのか興味津々。
かなりくだらない内容だろうなと想像はしていましたが、
想像通り出鱈目で、なんの教訓も得られない、ただただ脱力するような笑いが続いていくナンセンスコメディでした。

茶屋の前で通りがかった侍、人良(大倉孝二)に声をかける町民の武士之介(三宅弘城)。
彼は自分の思い出を通りがかりの者に話して聞かせているらしい。
人良は断るが、しぶとい武士之介はこれから起こる出来事の「思い出」を話して聞かせるという。
興味を持った人良に、30年前に地面に埋めたタイムカプセルを掘り起こすために集まった
小学校の同級生たちの再会を話して聞かせる武士之介だったが…

今回の舞台は珍しく全4話オムニバス形式になっていて、
第一話がタイムカプセルを掘り起こそうとする小学校の同級生の話、
第二話が飢饉の中の茶屋を舞台にした話
第三話が顔が尻の形をした侍の話、そしてエピローグと言った具合。

KERAさんもパンフレットで話していたように、
特にオムニバスである意味はなさそうな内容ではあるけれど、
このエピソードの合間に、客席の一人にスポットライトが当たって、
「なんなんだこの話は…」とスポットライトが当たった人の心の声のようなモノローグが勝手に流れる演出が入る。
3人目はただ、いびきの音が流れたり(笑)。
4人目に上手最前列にスポットがあたり(これは役者)、
「こんなつまらない芝居、我慢できない!」と連れの女性を連れて劇場を出て行こうとする。
「イギリスではつまらなければ観客は途中で出ていく。野田秀樹が言っていた」と言いながら。
そこに、「本多劇場の者」を名乗る落ち武者が登場して、
「この国では途中退場は許されません!」と道をさえぎる。
…とこんなバカバカしい繋ぎが入るのが面白い。

かと思えば、武士之介と人良が江戸時代なのにゴザひいて(将棋ではなく)チェスをやり始めてて、
それに誰もツッコむ様子もなく、お尋ね者の「顔が尻の形」のケツ侍(!)が現れたものだから
2人は驚いてチェス盤をひっくり返してしまい、
驚かせたケツ侍がどちらも勝っている状態に駒を置き直してあげて二人が
「なんて優しいやつなんだ!」と感動するくだりがあったりもする。
尻の顔を持つ侍も訳がわからないし、そもそも何故チェスなのかもわからないし、
どちらも勝っている状態ってのはありえないし、とにかく全てが出鱈目

そんな感じで、とにかくオチもなく意味もない緩やかな笑いが連綿と続き、文字通り脱力させられてしまう。
爆笑というよりはずっとクスクスさせられる感じ。

そして、終演後に劇場を出た時、びっくりするほど体が軽い。なんで!?
下手なマッサージよりもよほど体がほぐれる!びっくり!
芝居を見終わってこんな感覚を味わったのは初めて。

ナンセンスは、一見適当に作ればいいように思えるけれど、実はとても高度なコメディ。
「江戸時代の思い出」も、適当な要素を並べ立てているように見えるけれど、
同じことは3回以上は繰り返さない等、体が心地よく感じる笑いのセオリーに則って書かれているのがわかります。
職人によって醸造された良質な日本酒のように
水のように飲みやすく見えても、中身は高度な技術によって構築された度数高めの喜劇。
こんなナンセンス喜劇は長年作り続けてきた職人でないと作り出せない味だなと、
馬鹿馬鹿しくも上質な時間を過ごせて満足致しました。

偶然にも、ラッパ屋もナイロンも今回が第49回公演。
そしてラッパ屋は40周年、ナイロンは30周年を迎えました。

ラッパ屋のパンフレットを読んでいると、外部でも活躍している劇団員の皆さんが
それぞれ劇団をホーム=戻る場所だと感じているのが分かって、なんだかとても羨ましい気持ちになるし、
一方ナイロンは最近劇団員の訃報が続いている中で、今でも高度なコメディを手練れな役者の皆さんが上演し続けていて、
長く上演しづつける大変さやその尊さを観客としてヒシヒシと感じます。
それと同時に、近年ロンドンの舞台のことばかり考えていた私ですが、
日本の演劇を好きになり始めた10代後半から20代の頃のワクワクする興奮も思い出して、
ああ、やっぱり演劇っていいな…としみじみ感じた次第です。

 

 

 


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