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【今週の亜州影帝】終われない愛の行方

2006-01-26 | movie/【今週のウチシネマ】

たまってます、ユンファ関係のレヴューが。
年末年始もいくらか見てたんですが、
もうすっかり書いた気でいました。


ちょっとドンパチあるのは食傷気味だったので、
今回はしっとりとしたものから。


『終わらない愛をさがして』('83)
探してましたよー、終わらない愛。
ユンファがまだ「興行成績のガン」と言われていたころでしょうね。

舞台はパリ。
友達のビンの結婚式に出るために、
ドゥドゥ・チェン演じるユーチンはフランスにやってきます。

夫とうまくいっていないユーチンは、自由な時間を得て、ひとりで観光に回ります。
そして、グォンビンという学生に出会うのです。

このグォンビン、いわゆる女を惑わす男なのです。
女でいうところのファム・ファタール。
女に気をひかせて、裏切っても悪気がない。
女に優しくして何が悪いの?って感じなわけです。
しかもそれが若い潤發なんだから、もうそりゃあ男前なんですよ!

もうたまんない! 美しすぎて罪。
そりゃユーチンも一目惚れるよ。
あの美しさで興行成績があがるってことはなかったんでしょうかね?
美男で妖しさを隠していて本性が分かりにくい、
ミステリアスな青年として描かれてます。
自分にだけならいいけど、ダレにでも色気だされるとなると、困っちゃいますね。


実はグォンビンはビンの友人で、彼らは再会すると急激にひかれ合い関係をもちますが、
グォンビンが女を悲しませるタイプの男であると知っているビンは、
ユーチンが彼と付き合うことをよく思いません。

実際、彼の周りには他の女の影がちらつきます。
それでもユーチンは、夫から離れて初めて得た
ひた向きに愛する相手であるグォンビンを、決して手放したくないと思います。
しかし、グォンビンの部屋を訪れたユーチンは、
彼とビンが一緒にベッドにいるのを目撃してしまい…。


終わり方は、まぁ、この手の話はこうなるだろうという見本のような結末です。
舞台がフランスというのが、物語の美しさと狂気の部分を際立たせていて、
ありがちで緩やかなストーリーを、影を残しながら俯瞰するように柔らかく映しています。

また、女性たちのファッションに古さを感じないのも、魅力でした。
薄手の生地で真っすぐなラインのワンピースを太いベルトで少し絞り、
首周りは前がボートネックで、後ろは背中ちかくまで開いている。
(もちろんノーブラ。)

お洒落だわー。
これだけ時代の古さを感じさせない香港映画はないんじゃないかな。
あくびが出るほどの話の単調さはともかく、
異国情緒がうまく表現されている点で好ましい映画だと思いました。

しかし、グォンビンは天使の顔した悪魔ですね。
自分でも俺は清純だと思ってそうな気がします。
そういう描写をするつもりがなくても、なんだか潤發だとそう見えます。



もう一本。
『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』('92)
ジョン・ウー監督のハリウッド進出直前の作品。



潤發の演じる役は腕利き刑事のテキーラ。
銃の闇取引を捜査するテキーラは、
現場を押さえようとした食堂での銃撃戦で相棒を死なせてしまいます。

しかも、銃撃戦の中、射殺した相手(国村隼)が、
上司の潜入させていた捜査官だと分かり、
テキーラは相棒を失った上に、自分の手で警官を撃ってしまったことに
ショックを受けます。

一方、巨大密売組織のボス・ホイの下で暗殺者として動く
トニー(トニー・レオン)は、その腕を見込まれ、
ホイに敵対する若い組織のボスであり、
組織壊滅を狙うジョニー(アンソニー・ウォン)の誘いを受け、
ホイを裏切り、共に銃器庫を襲撃し、銃撃戦となります。

そこに、テキーラも乗り込んできますが、
激しい撃ち合いの中、テキーラを追い込んだトニーは、
何故か彼をしとめることはなく、そのまま去っていきます。
テキーラはその彼の行動で、
まだ自分の知らない潜入捜査官がいることを知るのです。



トニー・レオンで潜入、というとどうしても底の浅い私としては
「ヤンさん…」と思ってしまいます。
しかもクライマックスでは「俺も警官だ」って言ってるし。
まんま無間道じゃないっすか。

しかしながら、『インファナル・アフェア』を撮影するにあたって、
トニー・レオンは、この作品と同じ印象にならないように心がけていたそうですね。

確かに同じ潜入でも、この作品のトニーは一見冷静に見えて
実はひとり殺すと鶴を折っちゃうような繊細な部分と、
すぐカッとなる直情的なところのある人物ですが、
ヤンは、基本的に苦痛を押し殺し、
冷静に行動する理知的な部分が見受けられます。

その一方で、テキーラは、誰よりも正義感のある熱い男に見えますが、
トニーの落ち着きの無さをたしなめるところなど見ると、
中身は非常に冷静な人物に映ります。

この映画のみどころといえば、やはり後半の病院での銃撃戦なわけですが、
あまりのドンパチぶりに、ちょっと気持ちが萎えないことはないです。
(この映画のおかげで私は銃撃戦はもうお腹いっぱい、になっちゃいました。)

ここまで民間人が大量に死んじゃう映画もなかなかないんじゃないか?
しかも病院という場所も、ただでさえ患者は哀れだし、
ウーさん、最後だからやっちゃえって感じなんでしょうか。
ご自身も『挽歌』よりも洒落た役でちゃんと出ちゃってますし。

それと、アンソニー・ウォンの怖いこと!



今でこそ、ダンディな香港映画の紳士というイメージがありますけど、
このころは顔立ちがおもいっきりハーフであることが分かる色白さで、
本当にいかにも異常なことしそうな雰囲気醸し出してます。
『八仙飯店之人肉饅頭』、まだ見てないけど…
そのうち観てみます。怖いものみたさ。

今回のユンファのベストショットは、
トニーと一緒に地下のドアを開けるシーンですね!
パイプに火薬と銃弾を詰めて、そこを打ち抜くところ。

『狼…』にもあった、銃を構えて緊張感を持たせてから、
一度震える手をおろして、ホッとさせたところで、今度は構えずにすぐ撃つ。
あのタイミング、ありがちだけどたまりません。
手をおろした時のフーっと息を吐いたりする感じがよいです。

あとは、病院内の赤ちゃんを抱えたまま敵と戦うシーンですが、
これはちょっと狙いすぎかなと。
でも、他の人がやったらわざとらしいだろうけど、
ユンファだからこそ、優しさが感じられるという場面ではあります。
(※のちに趙雲へのオマージュであることを知りました。)



さて、他にも何本か残ってはいますが、
それはまたの機会に。

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『THE 有頂天ホテル』試写会

2006-01-14 | movie/試写会・映画祭など
ブログ、さぼってました。
完全に正月ボケ。なんもやる気がしませんでした。
そんななか、職場主催の試写会に行きました。

『THE 有頂天ホテル』。三谷幸喜「監督と脚本」の最新作です。
大晦日のあるホテルを舞台に、
昔の妻に再会してしまった副支配人(役所広司)、
汚職事件でマスコミに追い掛けられている国会議員(佐藤浩市)、
その元愛人でシングルマザーの客室係(松たかこ)、
ホテルに忍び込んでは追い出されるコールガール(篠原涼子)、
夢を諦め田舎に帰るために仕事をやめるベルボーイ(香取慎吾)などなど、
カウントダウンまでの従業員や宿泊客たちの人間模様を描いた群像喜劇。

はっきり言ってしまうと、私はそれほど楽しめませんでした。
期待しすぎたのかもしれないし、群像劇がダメなのかもしれない。
昔、cxでやってた「ハートにS」のように、
ひとつひとつが最後にまとまる仕組みなら、
エピソードをじっくり味わえたのかもしれない。
映画の中で隠されているウソや、登場人物のつながりがすぐわかってしまうし、
中にはつながっている必要があるのか分からなかったり、
そんなこと言う必要あるの?と思ったりすることもしばしば。
舞台向きの俳優さんを見ると違和感があったり。
なにかとケチつけたくなっちゃってよくなかった。
散漫な感じがしちゃいました。

やりすぎると「姉さん、事件です」になりかねないけど、
せっかくなんだからもっとホテルらしい特色を生かしたらよかったのに。
三谷さんなら最高のホテルコメディが書けるだろうに。



今回の試写はティーチ・インで監督が登場。
監督はテレビ出演のはしごをしたあとなので、あんまり寝てないという噂。
そのせいか、あんまりいつもの覇気がなかったかも。
面白い話もそんなになかった。
もっと映画の内容に突っ込んで、もっともっと場面の思いいれも聞きたかった。

まずタイトルは、舞台がホテルなので「ホテル」をつけようというところから、
『ホテル・ビーナス』があるから、『○○ホテル』と後につけることになり、
(監督曰く「『ラッフルズ・ホテル』もありますけど、もう忘れられてるからいいかな」)
『踊る大捜査線』にあやかって、『踊る大紐育』+『夜の大捜査線』のように、
ハリウッドの映画タイトルをふたつ重ねて並べてみようということで、
『有頂天時代』+『グランド・ホテル』で『有頂天ホテル』に。
さらに、製作から「もっと豪華さが欲しい」と言われたので、
THEをつけてみました、とのこと。

他にもあやかっている部分があって、
役所さん主演の『Shall We ダンス?』の
タイトルの英語とカタカナの混ざっているところ、
それにこの映画の上映時間2時間16分(本当はもう少し長いらしい)は、
『Shall We~』の上映時間と全く同じらしい。
けっこう縁起を担いで、カット数を333にしたりしているらしい。

監督の映画を見ていると洋食を食べているような、
邦画っぽくなさを感じるというツッコミでは、
邦画特有の静止画が我慢ならない、
貧乏症なので、動かない場面があると不安になって、
人を必ず写したくなるそうです。
だから「今回の映画で人が映ってないのは灰皿のシーンだけ」だそう。
ちなみに今回の映画のテーマはグランドホテル方式ということで
火事の起こらない『タワーリング・インフェルノ』だそうです。

このティーチインの最中、お客さんがガンガン写メを撮っていて、
そこらじゅうで「カシャ!」「ピロピローン!」と音が鳴り、
あー、これだから嫌だよマナーの分からない観客はよー!!
とひとりでキレていたら、監督が脚本の説明の中で、
今のテレビドラマで見られるように、
登場人物が台詞で正直に本音を話したりはしないんじゃないか、
という話をしていて、
「例えば、僕は(写メの音が)“うるさいなー”と思ってても、言わないわけですよ」
と例えてて嬉しかった。
それから後は音が鳴らなくなったな。

おまけ。
私の好きなエピソードは、松たか子が仕事ほっぽり出す件でした。
世間の目なんて関係ないよ!と熱くなるところは好きです。
あと、逃げ惑う伊東四郎。一番笑いました。
西田敏行の間の取り方。アドリブの台詞に会場の笑いも最高潮でした。
YOUの歌がよかったなー。うまい。元々歌手だから。でもYOUはYOUにしか見えない!

それと、後藤田さん(佐藤浩市)の最後に会う人物が…!!!
私にとっては最高のサービスショットでした!
ありがとう三谷さん!!!
ちなみに、映画における食事についてのこだわりはあるかという質問で、
後藤田さんのキャラクターは、つまみ食いが多いところで
子供っぽい性格を表したそうです。
その代わり、バーなどの食事するところのシーンでは
一切食べ物を口にしていないんですって。

そんなわけで、なんだかんだ言って、この映画を楽しんでいる私でした。
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