だから、ここに来た!

いらっしゃいませ! 英国旅行記の他、映画や音楽、テレビドラマ、演劇のレビューを中心にお贈りしております!

古き良きロマコメの王道を行く! 映画「恋人を取り戻すには」

2022-02-16 | movie/【今週のウチシネマ】

2月14日に、Amazonプライムビデオで配信開始された映画恋人を取り戻すには(I Want You Back)」
(元はこいびとをとりもどすにはというタイトルだったのですが配信後に変更したらしい。)
映画「パシフィック・リム」や「レゴ・ムービー」などで知られる
チャーリー・デイが出演するロマコメということで以前から配信を楽しみにしていました。

ジム・トレーナーのノアに突然振られたエマ(ジェニー・スレイト)、
そして女優の夢を追いかけたいという理由で長年の恋人アンに振られたピーター(チャーリー・デイ)。
同じビルに勤める2人は偶然知り合い、振られたもの同士で意気投合。
相手は自分といるべきなのに分かっていない、と信じる2人は、
新しい相手と付き合い始めたお互いの元カレ&元カノを別れさせるため、
エマはアンの学校にボランティアとして忍び込み、相手を誘惑。
ピーターはジムに入会し、ノアと仲良くなってエマとよりを戻すようそそのかす計画を立てる…

 

作中で引用されている「クルーエル・インテンションズ」は実は見たことないんですが、
元カレを別れさせようと奮闘させる「ベスト・フレンズ・ウェディング」を思い起こしたりするロマンティック・コメディです。

正直、それほど期待はしていなかったのですが、
私にとっては「マン・アップ!」以来のお気に入りロマコメの一つに仲間入りしました!

わかりやすくてありがちなコメディと思わせておいて、最後まで紆余曲折あるのが見所。
何より、最後のオチが古典恋愛映画のように伏線がキマってて嬉しくなりました。
主人公たちの出会い方と結末。ここ大事。
ベタなようだけど、クラシックな定石をキッチリ押さえてるから、そこまで退屈にならないんですよね。
会話の多さも好きなポイントの一つ。

 

エマとピーターが出会った時点で、2人でくっついちゃえば簡単なのに、なんて思っちゃいますが、
ハンサムなノアと付き合ってたエマ曰く、ピーターは1、2年かけて愛を育んていくタイプの男性なので眼中にないらしく、
ピーターがノアの相手を誘惑するアイディアも却下されます。

(ピーター「みんな僕と友達になりたがるんだ。大学時代も女の子たちが『あなたはいい友達ね』って」
 エマ「あー、かわいそ」ってやり取りに笑う。言い方!笑)

でも、ピーターは子供と遊ぶのが得意で高齢者思いの好男子だし、
生徒の相談に乗ってあげられるエマはユーモアがあり気さくな大人で、
失恋仲間(劇中では「悲しみの姉妹」なんて表現されてるのがまた良い)というだけでなく、
お互いの良さを見つけて相手の本質を褒め会える間柄になっていくのです。

最近「ルパン三世」Part.6の中の某エピソードを見てから
関係を構築する登場人物の稚拙な描写に対してずっとムカッ腹立ってたので、(引きずりすぎ・笑)
このそれぞれの関係性が深くなる過程を見てかなり満足しましたし、
腹の立つ対象には「少しはこういう王道ロマコメでも勉強してこいや!!」と思ったりしました(笑)。

 

エマが学校演劇に無理やり出席する羽目になった男子生徒に明かす大人の秘密にも共感します。

「大人はみんなしっかりしてるふりをしてるの
 ヘマをやらかさないようにって思いながら
 で、本当に失敗すると本当に惨めな気持ちになる」

大人になって恋愛映画見ると、彼らが経験する辛い&恥ずかしい出来事も割と経験済みで、
自分のことのように痛みを感じるから、
このセリフで冒頭の非常階段で泣いてるエマとピーターを思い出すし、
過去に非常階段で泣いてた自分のことも思い出す(笑)。
ホント、大人って辛いよね…。

終盤でエマとピーターがもう会うこともない、となった時も、自分のことのように辛く感じたなー。
感情移入できるということは楽しめているという証拠ですね。

まぁ、本編は90分くらいでもいい長さだとは思いましたが、
久しぶりに楽しいロマコメを見て、心からスッキリしました。

 

ちなみに、チャーリー・デイの吹替を高木渉さんが担当しているのも嬉しい。
声のトーンが似てるのに、意外と「モンスター上司」以来?の吹替なのかも。
もしチャリデイが日本語喋ったら高木さんそのものだと思うんだよなー。

あと「パシフィック・リム:アップライジング」で共演してたチャリデイとスコット・イーストウッドが
一緒にランニングしてるのを見るのも、異世界感があって面白いです。
ネイトと一緒に走る羽目になるニュート(笑)。

I Want You Back - Official Trailer | Prime Video

 

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「文豪と女優とエロスの風景~『四畳半物語 娼婦しの』」

2011-02-18 | movie/【今週のウチシネマ】


神保町シアターの特集上映「文豪と女優のエロスの風景」。
先日、テアトル新宿で「たまの映画」を見た時にチラシを見かけ、なんとはなしに手にしたのですが、
「おおっ、『四畳半物語 娼婦しの』の上映があるじゃないか!」
一気に鼻の穴が広がりました。

それというのも、露口茂さんが出ているからであります。
見られる作品はCSなどもこまめにチェックして見るようにしていますが、
なかなか見られない作品を映画館で見られるとは!
主演は三田佳子と田村高廣。
三田佳子の作るしなと、田村高廣のちょっと線の細い感じが色気があって、
エロな雰囲気というよりは、艶のある映画という感じがしました。



不忍池のそばに佇む一軒家の襖に綴られた物語を
永井荷風らしき男が読み進めるところから物語が始まります。

明治末期、その家で客をとっていた娼婦のおしげは、
ある日、客としてやってきた男を一目で気に入ります。
しかし、同じようにしげを気に入ったその男がしげに贈り物として手渡したのは、しげの紙入れ。
それはしげの情夫である車夫の竜吉が持っていたものを、
部屋に案内するまでの間に男が抜き取ったものでした。
男はスリ師だったのです。

スリ師であることを気付きながらも、しげはその男のために黙って受け取り、
何事もなかったように、竜吉に再び預けるのでした。

竜吉の方は、しげが男に本気で夢中になっていることを知ると、
わざわざ男を連れてきて、2人を会わせたり、
「うちのおっかさんが…」とこれ見よがしに女房であることを主張して、2人を試したりします。

そんな竜吉に愛想をつかして、しげは家を飛び出し、仕事場の家に越してきます。
さらに男に入れあげるしげに嫉妬し、しげの妹分・きみに言い寄る竜吉。
竜吉ときみの関係を見抜いているしげは
「熨斗付けてあげます」
と竜吉をきみに押し付けるのでした。

男はスリをやめ、印刷工として働くようになり、
わずかな稼ぎでしげに簪を買ってやります。
自分には高価すぎるとためらうしげでしたが、
男の気持ちに喜びは隠せません。

しげは男に、自分の本当の名前を教え、言います。
「これは竜さん…(ハッと手を口に当てて)あの人も知らないんです。あなたはしの、って呼んでくださいネ」

お互いの想いを確かめ合う二人。
しかし、娼婦であるしげにゆっくりと仲睦まじく過ごす時間はないのでした。

そんな中、とうとう竜吉が男の正体を知ります。
しげの紙入れから金が抜き取られていたことに気付いたわけです。
これ幸いと、竜吉は男を捕まえ、別れなければしげを朝鮮に売り飛ばし、スリであることをバラすと脅迫。
男は迷った末、彼女のために別れを決意します。

いずれはこうなることと分かっていたと、
別れを告げられながらも気丈に振る舞うしげ。
愛する男に去られたことを忘れようとするかのように、竜吉から強引に決められた朝鮮行きをも受け入れます。
そう、竜吉は男が別れを告げても、しげを朝鮮に行かせるつもりだったのです。
ところが、しげと竜吉の朝鮮行きの会話を男が聞いてしまい…。



三田佳子のしげと露口さんの竜さんは、切っても切れない腐れ縁、って感じで、
しげもスリ師の旦那が登場しなければそのまま竜さんの言われるがままの人生だったのかもしれません。
スリ師と出会って違う人生を歩める可能性を夢見たんでしょう。
しかし実際は…という、ほろ苦いお話です。

エロい場面は、竜さんがきみちゃんを襲うところと、エンディング近くのしげの“仕事中”の場面でしょうか。
どちらかと言えば女性の美しさが印象に残るので、いやらしさは感じられませんでした。

私の語りたい、露口さんの演技については、
コミカルな場面あり、人間臭い部分ありと、非常に見応えがありました!
特に印象に残ったのは、きみちゃんが初めて相手したお客のおっさんが腹上死したと知らされたときの
「こりゃめでてえや!」ですwww 吹き出してしまいました。
そのあとにおっさんの奥さんがやってくる場面も、劇場に笑いが起こってました。

露口さん見たさに足を運んだ作品でしたが、映画好きとしても楽しめるものでした。
ソフト化されたら買って何度でもみたいのに。
せっかくニュー・プリント版で上映したんだし、ねえ?

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無意識な女の性『女のみづうみ』

2010-02-13 | movie/【今週のウチシネマ】

CS放送で「太陽にほえろ!」や「木曽街道いそぎ旅」を見ながら、
「山さん、かっこえぇぇぇ…」
「銀次、渋ぅぅぅうい!」
とひとり、ひたすら呟いている毎日です。

そんなわけで、今日も露口茂様、出演作です。
吉田喜重監督の「女のみづうみ」



川端康成の「みづうみ」を元にしているようですが、
監督の奥様でもある岡田茉莉子演じる
裕福な日常の中にいる主婦、宮子が本作の主人公。

家のリフォーム担当のデザイナー北野(早川保)と不倫関係にある宮子は、
密会中に自分のヌード写真を撮影させますが、
帰宅途中の暗い夜道で見知らぬ男にネガを奪われてしまいます。

それからというもの、宮子の元には
その男から、写真を返してほしければ会えという、
脅迫の電話がかかってくるように。


男の要求で北陸に向かった宮子、
それを追って駅で合流する北野。

北野が追ってきたことを知った宮子は不服そう。
ネガを取り返し、北野との関係も清算する気まんまんだったわけですから。
自分が強迫男に体を投げ打つ覚悟はとうに出来ているわけです。


北野は写真屋で、現像の注文をする例の男を発見。
露口さん扮するその男、銀平に、
ネガを返さなければ、強盗容疑で警察に突き出すと食いつきますが…

「言ってもいいのかな。
 みんなバレるよ、君とあの女とのこと。
 それでもよかったら警察もいいね。」


銀平は目が泳いでるわりに、口調は冷静。

「君もいい気なもんだね。人の奥さんとのんびりこんなところまで遊びにきて」
「君のせいだ」
「けっこう楽しんでいるようだな」
「君は薄汚い野郎だ。最低の男だ」
「それはあんたに言われなくたって自分が一番よく分かってる」




「惚れた女を脅迫してでも手に入れたいストーカーですけど、なにか?」
てなくらいの勢いの銀平…。


宮子と北野は、ついて回る銀平の無言の圧力を感じつつも
ちゃっかり2人の時間を楽しみますが、そこに北野の婚約者が登場。

婚約者までやって来てうんざりぎみな宮子は、写真屋に出向き、
好色なそこの主人が焼き増したヌード写真を買い取った後、
浜辺で銀平と出くわします。


「あれ、返していただけます?」
「あれを返してしまっては、
 せっかくあなたと結ばれた線がぷっつり切れてしまう」
「私、覚悟はしてきましたわ」
「覚悟? どういう意味ですか」
「そんなことまで私に言わせるおつもりですの」
「ハハハハ…」
「からかってらっしゃるのね。私帰ります」
「(女の手を掴み)…冷たい手だ、あなたの手は」





銀平は彼女に、予備校の建物で
ホテルから出てくる2人の姿を見ていたことを明かします。


映画の中では特に触れられませんが、
原作の設定に基づいているとすると、
銀平は女生徒との恋愛が元で教師を辞めているはず…

欲望に身を任せて後がなくなった銀平と、
彼のために平穏な生活の危機を迎えた宮子。
どちらもある意味崖っぷち。




「僕は、あの写真のあなたを愛していたらしい
 現実にはいない写真の女を」



岬に向かった銀平は、ついて来た宮子にそう語り、
彼女は、銀平が宮子からの愛情を欲していることに気づくのです…。



何不自由のない人妻をめぐる男たち、
の物語ではなく、
不倫→写真→脅迫と続く、後ろめたい行為と事実、
さらに、北陸の地での脅迫者との対面でさらなる深みにはまっていく、
女の性を描いていると言えます。

理性ではなく、肉体で解決を図る宮子。
女の私から見ても、確信たっぷりにことに及んでいるにも関わらず、
ついつい流されてしまったような言動をしているように思える。
時代の違いでしょうか…
欲望に直面しながらそれを最後まで認めていない
そんな女性だと受け止めました。



“松竹ヌーヴェルバーグ”と呼ばれた映像は、
写真映画ともいうべき美しさですが、
凡長さもいなめません。
最近だと写真的な「ゼラチンシルバーLOVE」なんかがあったけれど、
ストーリーだけなら1時間でまとめられる内容。

後半に出てくる、映画の撮影場面は、
性の対象としてみられる偶像の女性の暗喩なのでしょう。

宮子の裸を撮影した北野、
その写真に魅了された銀平、
それぞれが、彼女を「生活する女」として見ていないということなのかも。



それにしても、銀平が教師と聞いて、
「絶対生徒にいかがわしいことしてるに違いない…!」

と思ったら、やっぱり元は恋愛がらみで退職しているとは。
キモい!粘着野郎!
なのに素敵だと思ってしまう自分がこわい。うひゃひゃ。

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【今週のウチシネマ】女が奏でる復讐のワルツ-『霧の旗』

2010-02-02 | movie/【今週のウチシネマ】

海老蔵、現代劇初主演…日テレ系で松本清張「霧の旗」
http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20100119-OHT1T00042.htm


ということで、婚約が話題になったばかりの海老様が
初めて現代劇に主演するらしいですぜ。

わざわざこの話題を取り上げたのは、
つい最近、この「霧の旗」の映像化作品を見たからなのですが、
何故この作品を見たのかといえば、
海老様がらみでもなんでもなく、
“露様”…つまり露口茂さんが見たかったから。

そう、目下わたくしは露口さんの現役バリバリ時代の演技に惚れて
夜も眠れないくらいなのであります。
わけはのちのちじっくり語ることにして…
今日は「霧の旗」について。



「霧の旗」には1977年に山口百恵主演で制作された映画がありますが、
ここで触れるのは1965年、山田洋次監督、倍賞千恵子主演の「霧の旗」です。



熊本から上京してきた20才の娘、桐子が
日本でも有数の敏腕弁護士、大塚の事務所を訪れるところから話は始まります。

 金貸しの老婆殺しの罪で捕まった、唯一の肉親である兄の冤罪を晴らすために
 大塚に弁護してほしいとやってきた桐子。
 だが、高額な弁護料と多忙を理由にすげなく断られてしまう。

 1年後、死刑判決を受けた桐子の兄が獄死。
 大塚は、自分が弁護すれば彼女の兄を救えたのかを確認するため、
 熊本の弁護士に事件資料を送るように手配する。
 そして同じころ、桐子は東京のバーでホステスとして働いていた…



山田洋次倍賞千恵子の組み合わせというだけで、
人情話を想像してしまいますが、
山田監督には珍しいミステリー作品

後に寅さんの妹さくらとして親しまれる倍賞千恵子は、
静かに憎しみをつのらせるしたたかな女性であり、
偶然に遭遇した殺人事件を利用し、
自分の願いを聞き入れなかった大塚を罠にはめようとします。



前半は兄が死に至るまでのいきさつと回想、
後半は妹がいかにして弁護士の大塚を陥れるのかが描かれます。



で、露口さんが演じておられるのが
小学校の教員である桐子の兄。

修学旅行のために生徒から集めた金を紛失し、その分を借金。
返済を待ってほしいと金貸しの老婆を訪れた際に、死体を発見したため、
容疑者にされてしまいます。

すっかり衰弱しきった兄が
取調室で刑事たちに自白を強要させられている場面では、
「あぁ、落としの山さんにも、落とされる時代があったのか…」
と感慨深いものが。



気弱そうに九州弁で喋る姿がたまらないですが、
この融通効かなそうなまじめ人間なら、
ついうるさい取り立てに我慢出来ずに老婆を殺したのかも?と
思えなくもありません。



回想場面では、兄妹肩寄せ合って暮らしている姿が映しだされ、
2人が親子のような関係でもあったことを分からせます。


妹をひとりに出来ないためか、縁談を断ってしまう正夫兄さん。
桐子も近所のおばちゃんに、あんたが早く嫁に行けば…とお小言をもらいますが、
その支えあっている姿に、結局最後には
「あんたたち兄弟は特別」とまとめられてしまったりして。


たとえば自分が兄とそんな固い絆で結ばれていたとしても、
(そしてその兄が露口さんであるとしてもw)
彼女ほど執念深く、仇を討つことができるかというと、
そんな決心はなかなか持てない気がしますね。
それだけ、桐子のしぶとさ、異色さが実感できます。





この話のなにが怖いって、兄が本当に無実なのか、
明らかにされていない点。

大塚が、真犯人は左利きであるという特徴に気付き、
桐子に兄が左利きであったか確認しようとするのに、
彼女はそれに答えない。

もはや、彼女にとっては兄が犯人であろうが
真犯人が他にいようが関係なく、
弁護士が死んだ肉親を救おうとしなかったことだけが真実なのです。

(…上のキャプチャ見たらわかりますが、
 正夫兄さん、お茶碗を左手で持っているから、
 普通に考えると右利きでしょうね。)



おそらく、桐子は大塚先生に兄並みの生真面目さや
自分を犠牲にしてまでも仕事に尽くす姿勢を要求していたのでしょうが、
世渡りのうまい、遊びも仕事も器用にこなす大塚先生は
彼女の願いに応えられるはずもなかったわけです。

桐子は、その思想の格差を叩きつけようとしたのかもしれませんね。

(ちなみに、海老蔵さんはこの大塚先生を演じるらしい。)




霧がかった銀座周辺の薄暗い街並みと、
エンディングで流れる、ワルツ調ののんびりした曲が、
さらにこのミステリーの恐ろしさを引き立てます。

桐子にとっては、ワルツを奏でるような
おだやかで冷静な作戦だったのかもしれません。
かわいいけれど、こわいこわい。
こわいけれど、不思議とすがすがしい。
観終わったあともワクワクさせられる、傑作でした。

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【今週のウチシネマ】MJ rocks my world.

2006-06-15 | movie/【今週のウチシネマ】
久々にウチシネマ。
でも紹介するのは結構前に見た作品ですけどね。


『RENT』や『プロデューサーズ』のおかげで、
すっかりミュージカル熱が燃え上がってしまった私は、
もっと他にミュージカル映画を観たい!と思っていたのですが、
あまり古典的なものでなく、
(どちらもミュージカルとはいっても発展系の作品ですからね)
普通の娯楽映画を楽しめるノリで見られるミュージカル映画はないものかと、
ツ○ヤの棚を探っていたところ、
『THE WIZ』を見つけたわけです。

私は、この映画のサントラをすでに持っていました。
好きだったテレビ番組『テレバイダー』の、ほとんどの音楽がこの映画から使われていて、
番組の掲示板で存在を知り、買って聴いていたんですね。
映画を見ていなくても、音楽だけで世界観が広がっていくような、名サントラです。

なのに、レンタルでなかなか置いてあるのを見かけなかったせいか、
映画の方は見ていなかったので、
これを機会に見ておかなきゃと思ったわけです。


『THE WIZ』は、簡単に言ってしまえば「黒人版“オズの魔法使い”」です。
元々ブロードウェイで上演されていた作品を映画化したもので、
主人公ドロシーも、登場人物もすべて同じですが、多少設定は異なります。


舞台はニューヨーク。
小学校の教師である24歳のドロシーは、
同居している叔父叔母からもっと違う職業について独立すべきだと説得されます。
彼女が自分の住む町から外へは出たことがない世間知らずだからなのですが、
ドロシーは今の職業を気に入っているし、外に出て行く気もありません。

何故変わらないといけないの? 理解しないといけないの?
叔母たちの言葉を、涙を流し歌いながらドロシーは拒みます。
そんなとき、愛犬のトトが街の外に飛び出して雪の吹雪に巻き込まれ
追いかけたドロシーも一緒に空に飛ばされてしまいます。


ここからは『オズ』の竜巻後と同じ展開なのですが、
ウィズの面白いところは、テクニカラーの本家と対照的に、
世界の舞台が、ニューヨークの裏側…
人気のない公園、地下鉄のホーム、寂れた街、いかがわしい夜の街角だったりするところです。
ブリキ男と出会う場所もコニーアイランドだったり、
ライオンは、博物館のような建物の前にいる石像の中から出てきたりします。

しかし、ただ現実のニューヨークを切り取るのではなく、
そこに幻想のスパイスが効いていて、
同じ街でも、鏡の中の誰も知らない世界に紛れ込んだ気分にさせられます。

謎の婦人・ミス・ワンに導かれ、
魔法使いウィズの住むエメラルドシティを目指す
ドロシーの前に現れた黄色いレンガの道、
この道が、リボンのように摩天楼の景色に流れ込み、
太陽の変わりに空に大きなりんご=ビックアップルが上る光景は、
まるで夢の中で見るような素晴らしい場面です。

まぁ、本家とどうしても比べると、ストーリーに強引さが目立つし(西の魔女の必要性とか)
夢オチではなかったり(一般的にズルい手法だが、オズでは別。)しますが
それを差し引いても、ファンタジックで心に残る作品であることには違いないです。

ドロシー役はダイアナ・ロスが演じていますが、
ドロシーを演じるのには年が行き過ぎ、という意見がけっこうあったようで、
演技の面でも活躍を期待していた彼女ですが、
この映画の興行的な成績で、そのあとの映画出演はあまりなかったとか?

それでも、私は彼女の声をこの映画で聴けてよかったです。
他の人が演じていたら、ここまで感動できなかったかも。
最後の「home」という歌を聴いたときには、涙が止まりませんでした。
私も世間知らずの24歳だったので。(苦笑)


そして、なんといってもマイケル・ジャクソンでしょう!
彼のかかしのかわいいこと!!
女の子のような高くてやわらかい話し声がすごい合ってる。
それに、ダンスシーンはそれほど出てきませんが、
時折見せる鮮やかな高速ターン!! こんなに美しく回る人がいたのか!!
そして、初めて歩き始めたときの足のぐらつき具合。(生まれたての子羊みたいなね。)
もうすべてが魅力的!! 私はこの映画でマイコーに落ちてしまいました。

もちろん、彼にとってもこの映画は重要なものだったはずで、
この映画に出演したことによって、音楽監督であるクインシー・ジョーンズと出会い、
あの、世界で一番売れているモンスターアルバム『Thriller』や、
『Off The Wall』『BAD』を生み出したんですから。
『THE WIZ』なくしてKING OF POPはナシでしょう。



そんなわけで、そのあとはすっかりMJの映像を
買いあさり見あさっている毎日を過ごしています。

彼は自分の音楽につけた映像を
「プロモーションビデオ」とは呼ばず、「ショートフィルム」と呼んでいますが、
映画といっても過言ではない、充実したPVばかりです。

特に有名なのは、白いスーツで体が45度に傾く「Smooth criminal」、
世界各地を飛び回り、最後には黒豹と化したMJが踊り狂う「Black or White」あたりでしょうか。

「Smooth Criminal」に関しては、ストーリーを通したヴァージョンを
『ムーンウォーカー』という映画で見ることができます。
とにかく、これを全編通してみると、
独特なダンススタイルといい、最後の変身!する展開といい、
いろんな意味でMJって、やっぱまともじゃないと思えてしまいます。
少年役で出演している幼き日のショーン・レノンがかわいい…

ちなみに、私は、小学生の頃、喫茶店でよく流れてて大好きだった
「Leave Me Alone」がお気に入りです。
コラージュのような映像で、MJ版スモールワールドって感じ。
(もっとも、この曲だったということは最近知った。)

「Black or White」は『DANGEROUS』のフィルムコレクションDVDで。
このDVDが一番充実してるショートフィルム集のような気がする。
「IN THE CLOSET」って、ライブもいいけどPVも色っぽい。
ナオミ・キャンベルって、どうしてるんだろ?

でもなんだかんだいって、一番のパフォーマンスは、
motown 25周年ライブの、記念すべき初ムーンウォークを披露した「Billie Jean」と、
MTVアワード1995年時の、「DANGEROUS~Smooth Criminal」のパフォーマンスなので、
DVD『HIStory~Vol.2』を見てください。
motownライブは、振り付けを周りには内緒で披露したそうですが、
パフォーマンス後、「うまく踊れなかった」と言って泣いたというのは本当でしょうか?
あんなにかっこいいのに? 

とにかく、来日したときは、大騒ぎされたものの、
結局、みんな珍しいもの見たさという部分が大半を占めていたわけで、
気持ちは分かるが、彼の言動や顔ばかりに注目してないで、
パフォーマーとしての輝かしい歴史を見て噛み締めようぜ、と私は言いたい!!
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【今週のウチシネマ】続・ジューンアリソン嬢

2006-03-04 | movie/【今週のウチシネマ】
次は『甦る熱球』。
監督はサム・ウッド、というと私にとっては
『オペラは踊る』の監督という知識しかありませんが。
この作品も、ジューン・アリソン嬢とジェイムズ・スチュアートの共演。
内容も『グレン・ミラー物語』に近い夫婦の絆を描いてますが、
こちらは挫折と再生エピソードも加わってます。

テキサスの田舎で母と二人、
農場と綿で生計を立てているモンティ(J・スチュワート)の楽しみは
野球チームでピッチャーとしてプレイすること。
野球場までの何キロもの道を徒歩で歩いて帰っても苦痛に思わない。
そんな彼の投球を見て、ひとりの浮浪者然とした男が声をかけてくる。
なんでも彼はかつては名捕手として知られ、
酒が原因で球界を去ったバーニー・ワイルだという。
彼はバッテリーを組んでいたホワイト・ソックスの監督に掛け合うから、
一緒にカリフォルニアへ行こうと誘う。
大好きな野球で稼げる!と喜んで誘いを受けたモンティだったが、
堅実な生活を望むモンティの母は、もちろん反対。

バーニーは仕方なく様子を見ることにし、
農場の手伝いをするという名目で家に住み込み、
作業のスキをぬってはモンティに投球のアドヴァイスを与えた。

そして、モンティの腕がバーニーの理想に近づいたころ、
やっといとこに農場の仕事を手伝わせると母を説得し、
カリフォルニア行きの承諾を得ることができた。

カリフォルニアにやってきたモンティは、
成り行きでエセル(J・アリソン)という女性とデートすることになる。
見るからに田舎もののモンティに、始めは嫌悪するエセルだったが、
女性に誠実で、エセルがまだよく知らない野球に対する情熱を語る姿を見て、
しだいに親しみを抱き、交流を深めていく。

バーニーの紹介で投球テストを受け、
何とかホワイトソックスの監督と契約を交わし、
バーニーも彼のトレーナーとしてチームに加わることになった。

これでやっと野球が出来ると信じていたモンティだが、
契約したものの、なかなかマウンドには上げてもらえない。
バーニーもやきもきしていたが、やっと出番を指名されたと思うと、
相手は強豪、ヤンキース。
モンティは完全にヤンキース打線に打ち負かされ、
メジャーからはずされることになってしまう。

失意を抱えて二軍に送られたモンティは、
オマハにあるエセルの実家を訪れる。
そこで、彼女の励ましを受けた彼は
エセルのために再びメジャーで活躍することを誓う。


オマハで活躍してメジャーに復帰出来たモンティは、
改めてヤンキースとの試合で投げきって、見事勝利します。
エセルと結婚し、子供ももうけ、幸せな生活が始まると思われたのですが、
実家で狩猟に出かけていた彼の持っていた銃が暴発し、
片足を切断する事故が起きてしまいます。

そこからが、この映画の一番の見せ場でもあるんですが、
足を失って、野球人生も同時に失い、
自分の子供が歩けるようになっても、
「足があるんだから歩けて当然」と
愚痴ばかり言うようになってしまったモンティを、
エセルや母たちはどうすることも出来ません。
それでもエセルだけは、めげずにボールやグローブを持って彼に、
「これはもう捨てちゃってもいいの?」をまっすぐに問いかけます。



セミロングの髪を二つわけにしたエセルは可愛いです。
カリフォルニアの頃の上品なお嬢さんの雰囲気もよいけど
テキサスのアメリカ娘って感じで魅力的。
モンティとキャッチボールをするシーンは、
特に印象に残るシーンのひとつです。

それと、モンティとのダンスシーン。
これはネタバレになっちゃいますけど。
素敵なエピソードです。

『グレン・ミラー…』よりは劇的な感触が足りないんですが、
伝記もので、苦悩する主人公を家族が支える映画っていうのは、
アメリカの映画の一ジャンルともいえるのではないかと私は思うのであります。

そしてそこにはJ・アリソン嬢がやっぱりいた!ということで、
私の理想は、やはり間違っていなかったなーと思うのであります。

次は『姉妹と水兵』を見たいんだけど、
…探してもなかなかないんだよねー。
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【今週のウチシネマ】憧れのジューン・アリソン嬢

2006-02-12 | movie/【今週のウチシネマ】
憧れの女性はどんな人かと訊かれたら、私はのけぞるほどに胸を張ってこう答える。
「ジューン・アリソンの演じるような女性ですっ!」

しかし、果たしてジューン・アリソンと言って
彼女の顔が浮かぶ同世代はいるのかどうか。

私が彼女を慕い始めたのは、映画「若草物語」がきっかけである。
実写の「若草物語」といっても何本かあり、
キャサリン・ヘップバーン主演の1933年作品、ウィノナ・ライダー主演の1994年作品、
この2本が一番知られているらしいのだが、
私は、誰がなんと言おうとマービン・ルロイ監督のMGM創立25周年作品である
1949年制作の「若草物語」が一番だと勝手に思っている。

エリザベス・テイラーの“エイミー”、マーガレット・オブライエンの“ベス”、
ジャネット・リーの“メグ”、そしてジューン・アリソンの“ジョー”。
「クリストファー・コロンブス!」(おそらくOh my god!程の意味なんだろう)と
ハスキーな声で叫ぶジョーは、ドレスの裾をたくし上げて柵を飛び越え、
床に座り込んではスカートに暖炉の火を移して、
継ぎはぎだらけにしてしまってダンスもまともに踊れない。
しかし、ボーイフレンドからの愛の拒絶し、
家族と離れた生活、妹との別れを経験した彼女は、
大人の女性として、知的で自立した人間になっていく。
その姿が、幼い私にはどんな女性の成長よりも美しく見えた。

アリソン嬢のジョーは、見ていて屈託がない。
明るさと怒りと悲しみが、まっすぐに観ているこちらに向かってくる。
まるで私たちに向かって泣いたり喜んだりしてくれているように感じる。
なにより笑顔が素敵なのである。
(しかも10代の役なのに彼女はすでに30代、当時妊娠していたというから驚きである)

母と繰り返しビデオを見ながら、
この映画のジョーのようになれたら素敵だねと話し合った。
そして私は、ジョーのような男顔負けで、家族のためなら髪でもなんでも売りさばき、
創作意欲に燃えた知的な女性であろうと決意したのであーる。
もっとも、今実現している点は、ハスキーな声くらいだが…。

そんなことを熱く語りながらも、
実は私はジューン・アリソン嬢の他の出演作を見たことがなかった。
大人になって、急に思い出したように彼女のことが気になってしまい、
ジョーの中に見出していた理想の女性像が、
作品が変わっても存在するのか確かめて見たかった。

そして、その疑問にアリソン嬢はまたしても笑顔で答えてくれる。
『グレン・ミラー物語』と『甦る熱球』の中でも。



グレン・ミラーは言うまでもないが、トロンボーン奏者であり、
アレンジャーとしてバンドを率いたジャズ・ミュージシャンである。
彼がトロンボーンを質屋に入れながら貧しい生活をしているところから物語は始まる。

なんとか自分の才能を生かして新しい音楽を生み出したいと思い続けている
グレン(ジェームズ・スチュワート)は、
友人のチャミィの知らせで受けにいったオーディションで、
運良くベン・ポラックのバンドにアレンジャーとして採用されることになり、
バンドメンバーとして演奏旅行に出ることになった。
そしてデンバーに来たときに、彼は学生時代からの恋人に電話をかけ、彼女に会いに行く。

これがアリソン嬢演じるヘレンなんだけれど、
グレンは勝手に恋人と言ってはいるが、ヘレンに会うのは二年ぶりで、
彼女にはすでに婚約者もいる。
強引に自分の恋人と決め付けるグレンに、呆れ気味なヘレンだが、
それでも明るい人柄と音楽の夢に溢れている彼になんとなく惹かれてしまうのである。

ポラックのバンドを抜けて、しばらく編曲の勉強に時間をつぎ込んだグレンは、
またしてもトロンボーンを質にいれて生活費を捻出し、
寂しくなった懐で冬の街を歩いていると、ふと聞こえてきたのが「茶色の小瓶」。
へレンが唯一好きだと言っていた曲だ。
グレンは突然思い出したようにヘレンに電話をかけ、すぐにこっちにきて結婚しようと伝えた。
わけもわからず、しかし、彼女独特の「何か素敵なことが起こる」という
予感を感じながらニューヨークに駆けつけたヘレンは、
迎えにきた彼の求婚に承諾、グレンに連れられて小さな教会で式を挙げ、
初めて彼の愛するジャズの演奏を間近で聴くのだった。



よくヘレンはこんな急な申し出にOK出すなー、と思うけれど、
彼女の彼の才能を信じる確信がそうさせたんだろう。
編曲の勉強を再開するべきだとアドヴァイスを与えるのもヘレンだし、
資金をこっそり貯めて、楽団を作るために夫に渡したり、
妻となったヘレンの、グレンに対するサポートは現代の女性でも学ぶべきものがあると思う。
ただし、グレンほどの才能があればの話かもしれないけれど。

ジェームズ・スチュワートのグレンとアリソン嬢のヘレンは、
まさにこの二人を演じるにピッタリなキャストだ。
音楽への夢を決してあきらめず、献身的な妻への愛情を常に忘れないグレンと
自分の体を気遣う暇もなく夫の夢が叶うための支えとなるヘレンの姿は、
まさにアメリカの良心ともいえる二人。
キスシーンの美しさだけでうっとりしてしまえるほどだ。

この映画の素晴らしいところは、見事な伏線の張り方だ。
実際のエピソードとして残っているのかもしれないけれど、
前出の「茶色の小瓶」は最後まで感動させるキーワードになっているし、
「真珠の首飾り」「ペンシルヴェニア6-5000」というグレンの名曲は、
ヘレンとの思い出のエピソードから、絶妙なところで演奏される。
楽しいことを予感すると「首筋がゾクッとする」というヘレンの癖も、
各所で生きてきて、グレン自身の音楽家としての成功も示唆させる
うまい効果になっている。

それに加えて、なんといっても本編で流れてくる音楽が最高だ。
音楽に興味のない人間でも一度は耳にしたことがあるであろう
グレン・ミラーの名曲が次々と出てきて、二時間近い時間の中で飽きることがない。
これを見ることによって、今多くの場所で聴くことの出来る「茶色の小瓶」が、
彼のアレンジであるものだということを初めて知るのではないだろうか。
ルイ・アームストロング、ジーン・クルーパー、ベン・ポラックなどの音楽家たちが、
本人の役で出演しているのも嬉しい。

現代の映画界には、アメリカ映画の予定調和を嫌う傾向があるように思えるけれど、
この映画のように、鮮やかな物語の展開を持っていて、
誰を傷つけることもなく、家族と仲間の愛情を感じさせる美しい映画は、
どんな映画よりも希望を与え、映画らしいといえると私は思うのだ。


(次回に続く…)
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【今週の亜州影帝】終われない愛の行方

2006-01-26 | movie/【今週のウチシネマ】

たまってます、ユンファ関係のレヴューが。
年末年始もいくらか見てたんですが、
もうすっかり書いた気でいました。


ちょっとドンパチあるのは食傷気味だったので、
今回はしっとりとしたものから。


『終わらない愛をさがして』('83)
探してましたよー、終わらない愛。
ユンファがまだ「興行成績のガン」と言われていたころでしょうね。

舞台はパリ。
友達のビンの結婚式に出るために、
ドゥドゥ・チェン演じるユーチンはフランスにやってきます。

夫とうまくいっていないユーチンは、自由な時間を得て、ひとりで観光に回ります。
そして、グォンビンという学生に出会うのです。

このグォンビン、いわゆる女を惑わす男なのです。
女でいうところのファム・ファタール。
女に気をひかせて、裏切っても悪気がない。
女に優しくして何が悪いの?って感じなわけです。
しかもそれが若い潤發なんだから、もうそりゃあ男前なんですよ!

もうたまんない! 美しすぎて罪。
そりゃユーチンも一目惚れるよ。
あの美しさで興行成績があがるってことはなかったんでしょうかね?
美男で妖しさを隠していて本性が分かりにくい、
ミステリアスな青年として描かれてます。
自分にだけならいいけど、ダレにでも色気だされるとなると、困っちゃいますね。


実はグォンビンはビンの友人で、彼らは再会すると急激にひかれ合い関係をもちますが、
グォンビンが女を悲しませるタイプの男であると知っているビンは、
ユーチンが彼と付き合うことをよく思いません。

実際、彼の周りには他の女の影がちらつきます。
それでもユーチンは、夫から離れて初めて得た
ひた向きに愛する相手であるグォンビンを、決して手放したくないと思います。
しかし、グォンビンの部屋を訪れたユーチンは、
彼とビンが一緒にベッドにいるのを目撃してしまい…。


終わり方は、まぁ、この手の話はこうなるだろうという見本のような結末です。
舞台がフランスというのが、物語の美しさと狂気の部分を際立たせていて、
ありがちで緩やかなストーリーを、影を残しながら俯瞰するように柔らかく映しています。

また、女性たちのファッションに古さを感じないのも、魅力でした。
薄手の生地で真っすぐなラインのワンピースを太いベルトで少し絞り、
首周りは前がボートネックで、後ろは背中ちかくまで開いている。
(もちろんノーブラ。)

お洒落だわー。
これだけ時代の古さを感じさせない香港映画はないんじゃないかな。
あくびが出るほどの話の単調さはともかく、
異国情緒がうまく表現されている点で好ましい映画だと思いました。

しかし、グォンビンは天使の顔した悪魔ですね。
自分でも俺は清純だと思ってそうな気がします。
そういう描写をするつもりがなくても、なんだか潤發だとそう見えます。



もう一本。
『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』('92)
ジョン・ウー監督のハリウッド進出直前の作品。



潤發の演じる役は腕利き刑事のテキーラ。
銃の闇取引を捜査するテキーラは、
現場を押さえようとした食堂での銃撃戦で相棒を死なせてしまいます。

しかも、銃撃戦の中、射殺した相手(国村隼)が、
上司の潜入させていた捜査官だと分かり、
テキーラは相棒を失った上に、自分の手で警官を撃ってしまったことに
ショックを受けます。

一方、巨大密売組織のボス・ホイの下で暗殺者として動く
トニー(トニー・レオン)は、その腕を見込まれ、
ホイに敵対する若い組織のボスであり、
組織壊滅を狙うジョニー(アンソニー・ウォン)の誘いを受け、
ホイを裏切り、共に銃器庫を襲撃し、銃撃戦となります。

そこに、テキーラも乗り込んできますが、
激しい撃ち合いの中、テキーラを追い込んだトニーは、
何故か彼をしとめることはなく、そのまま去っていきます。
テキーラはその彼の行動で、
まだ自分の知らない潜入捜査官がいることを知るのです。



トニー・レオンで潜入、というとどうしても底の浅い私としては
「ヤンさん…」と思ってしまいます。
しかもクライマックスでは「俺も警官だ」って言ってるし。
まんま無間道じゃないっすか。

しかしながら、『インファナル・アフェア』を撮影するにあたって、
トニー・レオンは、この作品と同じ印象にならないように心がけていたそうですね。

確かに同じ潜入でも、この作品のトニーは一見冷静に見えて
実はひとり殺すと鶴を折っちゃうような繊細な部分と、
すぐカッとなる直情的なところのある人物ですが、
ヤンは、基本的に苦痛を押し殺し、
冷静に行動する理知的な部分が見受けられます。

その一方で、テキーラは、誰よりも正義感のある熱い男に見えますが、
トニーの落ち着きの無さをたしなめるところなど見ると、
中身は非常に冷静な人物に映ります。

この映画のみどころといえば、やはり後半の病院での銃撃戦なわけですが、
あまりのドンパチぶりに、ちょっと気持ちが萎えないことはないです。
(この映画のおかげで私は銃撃戦はもうお腹いっぱい、になっちゃいました。)

ここまで民間人が大量に死んじゃう映画もなかなかないんじゃないか?
しかも病院という場所も、ただでさえ患者は哀れだし、
ウーさん、最後だからやっちゃえって感じなんでしょうか。
ご自身も『挽歌』よりも洒落た役でちゃんと出ちゃってますし。

それと、アンソニー・ウォンの怖いこと!



今でこそ、ダンディな香港映画の紳士というイメージがありますけど、
このころは顔立ちがおもいっきりハーフであることが分かる色白さで、
本当にいかにも異常なことしそうな雰囲気醸し出してます。
『八仙飯店之人肉饅頭』、まだ見てないけど…
そのうち観てみます。怖いものみたさ。

今回のユンファのベストショットは、
トニーと一緒に地下のドアを開けるシーンですね!
パイプに火薬と銃弾を詰めて、そこを打ち抜くところ。

『狼…』にもあった、銃を構えて緊張感を持たせてから、
一度震える手をおろして、ホッとさせたところで、今度は構えずにすぐ撃つ。
あのタイミング、ありがちだけどたまりません。
手をおろした時のフーっと息を吐いたりする感じがよいです。

あとは、病院内の赤ちゃんを抱えたまま敵と戦うシーンですが、
これはちょっと狙いすぎかなと。
でも、他の人がやったらわざとらしいだろうけど、
ユンファだからこそ、優しさが感じられるという場面ではあります。
(※のちに趙雲へのオマージュであることを知りました。)



さて、他にも何本か残ってはいますが、
それはまたの機会に。

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【今週の亜州影帝・番外編】チョウ・ユンファDVD-BOX

2005-12-24 | movie/【今週のウチシネマ】



私のクリスマス・プレゼントがやってきました!
周潤發DVD-BOX。

30過ぎのチンピラの純愛『誰かがあなたを愛してる』
コメディセンスがキラリと光る『大丈夫日記』
長髪カツラで父親役を熱演『過ぎゆく時の中で』
ジョン・ウー監督、レスリー・チャン、チェリー・チェン共演の
豪華アクション作品『狼たちの絆』



今回、改めて『誰かがあなたを愛してる』を見直してみたら、
とっても切なくて腕がウズウズしちゃいました。
(切ないラブストーリーを見ると必ず腕が痛くなるんです…何故か。)

最初に観た時は、まるで私の卒制のようだなーと…
というのは、名作を繋げて一本の作品にしたような映画だと思ってたんだけれど、
良質なアメリカ映画のオマージュと受け取れる作品だと思えました。

ジェニファーが野球のグローブで料理するところとか、『アパートの鍵…』的です。
BGMも控えめで、音楽がジーンと沁みてくる。
クライマックスの疾走場面も、本当に感動しちゃう。

特典のメイベル・チャンのインタビューもよかった。
ユンファのこと、ベタボメです。

もしかしたら『男たちの挽歌』のヒットがもうちょっと早かったら、
この映画、出られなかったかもしれないね。よかったよかった。
生まれるべくして生まれたラッキーな作品ですね。

『大丈夫日記』の特典映像で、
「ベリーナイス」の広東語練習用の字幕が付いていて笑った!
一瞬いらねーだろ!と思ったけど、練習して歌えるようになりたいかも(笑)

『過ぎゆく時の中で』のオリジナル予告編って見たことなかったんだけど、
カツラかぶって親指グッと立ててるのが可笑しかったな。
全然似合ってないのに(笑)。
しかし、何度見ても髪切った後の(正確にはカツラを脱ぎ捨てた後の)
バイクに跨るアロンの姿は惚れます。


『狼たちの絆』も改めて見ました。
レスリーもチェリー・チェンも素敵だよー☆

ストーリーは他のジョン・ウーものに比べたらちょっとばらつき感がありますが、
一本でたくさん美味しい作品ではあります。
だけど、ひとりあぶれてしまったブッジャイがかわいそうな気がする…。
名バイプレイヤー、『挽歌』のキンさんことケネス・ツァンのインタビュー付きです。
この作品では三人の育ての親役ですね。

ところで、このDVD発売に合わせてか、新しい予告編が入っていますが、
シーンを順番に繋げただけでなんだか適当感が否めません…。

 


🎁 チョウ・ユンファ DVD-BOX

💿  誰かがあなたを愛してる [Blu-ray]誰かがあなたを愛してる デジタル・リマスター版 [DVD]
💿  大丈夫日記 デジタル・リマスター版 [DVD]
💿  過ぎゆく時の中で デジタル・リマスター版 [DVD]
💿  狼たちの絆 デジタル・リマスター版 [DVD]

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【今週の亜州影帝】影帝&米国青年

2005-12-21 | movie/【今週のウチシネマ】

潤發先生の映画を追っていくなかで、
観た人たちの評判が悪く、あんまり観たくないなーと思っていたのが
『バレットモンク』

いつ観ようか迷っていましたが、最近体調も悪いし、
そんなに真面目に映画を観る気分ではないなーということで、
ちょいと観てみる気になりました。



もし、これから観る予定があるという方がいるなら、

絶対に期待するべからず!

と言っておきたい。

潤發が亜州影帝であることは忘れるんだ!
メイン画像の二挺拳銃なんてないと思え!
潤發が主役だなんて思うんじゃない!
「弾丸坊主」じゃなく、
「軽くグリーンデスティニーをしょぼく再現した」作品だと思いなさい!


これだけ言えば大丈夫か?


さて、本題ですが、
私はあまりに期待していなかったために、意外と楽しめました。
だから、皆さんもたっぷり期待しないで観た方がいいかと思います。
観る迄はshit映画と思っておきましょう。
わりと見所もあるし、B級であると認めてしまえば、なかなか悪くはないですよ。

この映画の実質的主人公・カーは、ラッシュアワーの地下鉄でのスリをなりわいにし、
一方で日本人(マコ)が経営する香港映画をかける名画座の映写バイトでもある。

彼の前に突如現れたのが謎のチベット僧侶(チョウ・ユンファ)。
彼は何ものかに追われている最中に、
ホームに落ちた少女を、カーの目の前で不思議な力を使い助ける。

実は彼は60年もの間、巻き物に書かれた教典を守り続けるために、悟りを開き、
不思議な力と不老不死の体を持った選ばれし名も無き僧なのである。
彼は、自分の次に守護者の使命を果たす者がカーであると信じ、
このスリの若者に付きまとう。
だが、二人は教典の秘密を追う結社に襲われ、巻き物を奪われてしまい…


どうです?
見方によっちゃあおもしろそうでしょ!


カーとモンクの絡みが、なんとなく微笑ましくて好きなんですよ。
ちょっとしたギャグめいた会話も、この映画のなかではバランス取れててよいです。
カーの部屋にモンクが勝手に入り込んでココアパフ食べてるのも、なんか可愛らしい。
だいたい潤發がアメリカの若造に「おっさん」呼ばわりされてるのが痛快なんですけど。
それに大らかに受け答えるモンク、優しさを感じます。

それにカーが、カンフーファン?ってところも、
ちょっとナードな子なのか?と親近感覚えたり。
映画にあわせてカンフー勉強してるなんて、健気じゃないですか!(笑)
しかし、それがモンクのお眼鏡にかなうってのはどうなんでしょうね。

カーの惚れるお嬢さんもなかなかすごい設定のお嬢さんで、
チベット語は話せるわ、父親は大物マフィアだわ、
自分で爆弾集めちゃってるわ、
もうどういう生活してそうなるんですか!
確かにバッドガールだ。

映画館のマコさんは配役としてはもったいないくらいですね。
でも、若者たちとモンクやマコさんの見守る立場の関係が暖かく感じられて、
そこがこの映画のよさでもあります。
深さはないけどね。


バレットモンク [DVD]


あとハリウッド二作目の『NYPD15分署』
これは、中国系ベテラン刑事の潤發先生と、
彼のチームに配属された新人刑事、マーク・ウォルバーグの友情もの。

中国系マフィアとの繋がりを持つことで出世してきた汚職刑事であるニックと、
彼と同じ道を辿ろうとする新人ダニー。

疎まれていると思っていたら、実は自分と同じ過ちを犯してもらいたくないと、
わざと突き放した態度をとってきた後輩思いのニックとの間に、
先輩後輩ではなく、相棒としての信頼関係が生まれます。

これは、テレビドラマでも十分いけると思うんですが、
映画にしちゃうと、妙に薄味です。
たとえば、『インファナル・アフェア』シリーズの、
「俺は警官として死にたいんやー!!」
という世界が好きな方には、普通にたのしめるんじゃないかと。
多くは望めませんが。

始めに出てくるランプ店の銃撃戦は潤發ファンには満足出来る場面かも。
二挺拳銃だし、トランプ出てくるし。
鼻歌混じりにお金置いてランプ持っていくところまでで拍手したくなる。

 


NYPD15分署 [Blu-ray]

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