だから、ここに来た!

いらっしゃいませ! 英国旅行記の他、映画や音楽、テレビドラマ、演劇のレビューを中心にお贈りしております!

『カラフルメリィでオハヨ~いつもの軽い致命傷の朝』

2006-04-30 | stage
○4月14日(金)・4月29日(土)

ケラリーノ・サンドロビッチは、しばらく新作を書かないらしい。
海外の作品の演出(『ヴァージニア・ウルフなんて怖くない』とか)はするけれど、
ナイロンの本公演も再演が続くみたいです。

それで、再演の一弾が『カラフルメリィでオハヨ~いつもの軽い致命傷の朝』。
これは、作者にとっても観客にとっても、
4回も上演されていることもあって、思い入れ深い作品。

カラフルメリィでオハヨ

私にとっても、ナイロン作品でも映像で一番多く触れているのが
この『カラフルメリィ…』です。
だからこそ、今回、芝居の幕が開いたとき、なんだか懐かしい気がしてしまいました。

今まで映像で見ていた三演とまったく同じようにふたりの“みのすけ”のモノローグが始まり、
常に時間が動かない世界の中に、舞い戻ってしまったかのような錯覚。

それこそ、老“みのすけ”が見ているカラフルメリィの幻想のようで。

痴呆症(もとい、認知症)の老人を抱えた家族と、
病院からの脱走を計画するちょっと変わった患者たちを
交互に描いていくこのお話は、
見ていくうちに、老人と脱走する少年が同一人物であると分ります。
ただ、そのどちらともいえない存在や、
リアルに考えると深刻な家庭の事情などは、
間が抜けたとしかいいようのないギャグで煙に巻かれてしまうのですが。


ケラさんは、昔からナンセンスコメディの作家というイメージがありますが、
私は、悲劇を描く才能のある作家と思っています。
今まで、ケラさんの芝居をいくつか見てきて、
笑いよりも、悲劇的な要素の多い作品の方に、私は強く惹かれました。

この『カラフルメリィ…』は、
ケラさんが病床の父のそばで書き上げた「私戯曲」。
深い悲しみと、それを笑って受け止めようとする明るさが、
共存している芝居だと思えます。

私も母の死を経験し、やっとそのことについて触れられるようになってきて、
学生時代にこの芝居を見たときとは、確実にその受け止め方は変わりました。

そのせいか、今回、父役(大倉孝二)に一番感情移入しました。
…元々大倉さんのファンではあるのですが、
トレードマークである奇妙な動きや大げさな演技、
祖父(山崎一)、妻(峯村リエ)との息のあったくだらないやり取りの中で、
ふと顔を伏せて泣く姿は、すごく共感しました。
怒ったり騒いだり気がまぎれていると辛いことなんて忘れてしまえますが、
ある瞬間、ぷつんと切れたように弱い自分が出てきてしまうものです。

大倉さんは「おちつきのない芝居が似合う役者」とどこかで紹介されていたりしましたが、
こんなにシリアスな泣き演技がうまい役者さんなのに、もったいないですね。
ケラさんが、こうやってシリアス路線でプレゼンしていることが嬉しいです(笑)。


クライマックスの場面、
患者の仲間である(と幻想を見ている)杉田(犬山イヌコ)を抱きあげて
カラフルメリィに歩み寄ろうとするみのすけと父の、
「メリィ…」「父さーん!」の叫びには、
ケラ作品で初めて(たぶん…自信ないけど。)泣いてしまいました。

そしてラスト、「田端とか鶯谷」の場面、
救われたような気分になります。
みんなが田端とか鶯谷にいくのなら、
死亡率100%でも、暗くはならないかなと微笑んじゃいます。

休憩時間に、ロビーでコーヒーを飲んでいると、
あるカップルが「誰に感情移入していいのか分からない」と言っているのを聞きました。
そうだなー…私も今観ていなかったら、ただ笑って終わっていたかもしれない。
でも今、社会人になって、ひとりであることを知り、死を意識するようになって、
初めてこの芝居の意味が分かった気がしました。


でもただ笑ったっていいんだと思う。
それが、この芝居のメッセージなんじゃないか。…あるとしたらね。


そうそう、今回付け加えたいのは映像のかっこよさ。
おなじみの上田大樹さんの手によるものですが、
実際はそこにいないのに、セットに登場人物が横たわっているように見せたり、
壁にあたかもドアがあってそこから出入りしているように見せたり、
今まで挿入されていた映像の中でも特にかっこよかったです。


ちなみに、今私は「MOTHER3」というゲームをやっているのですが、
このゲームの「MOTHER」という存在は
なんとなく「カラフルメリィ」の存在を思い起します。
「巣鴨の次」は、「マジカント」であるように思えます。
夢とは違うんだけど、現実から遠く離れた精神世界の源、みたいな?
コメント (4)
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シティボーイズMIX PRESENTS『マンドラゴラの降る沼』

2006-04-30 | stage
○4月20日(木)

シティボーイズMIX PRESENTS『マンドラゴラの降る沼』を見てまいりました。
場所は池上本門寺境内特設テント。

お寺までは池上駅から徒歩で10分もかからないほど。
静かな商店街のような通りを通って、川を渡ると、長い階段が見えてきます。
息を切らしながら上りきると、仁王様の待ち構える門が。
門をくぐって先に行くと、見えてきました、境内の中に特設テント!(ベルギー製らしい。)
テントとは言っても、アングラ的な突然現れたかのようなものではなく、
仮設の体育館といったような雰囲気。
赤い背景に桜の花が舞い散る幕の目の前、
前から二列目の桟敷席に陣取り、たっぷり彼らの笑いを堪能してまいりました。

上演前に、池上本門寺の住職さまが登場し、("いきいき推進委員会会長"らしい。)
ありがたいお話があったんですが、内容はほとんど覚えていません。
すみません。
覚えていることといえば、その住職がゲネプロまで見ていて、
ちょっとしたプロデューサーのような目線でいたことでした。
こんなお寺で、CBのライブなんてやって、罰当たりなんじゃないか?
だいたい、きたろうなんて罰当たりなことしでかしそうなのに…
と思っていましたが、
とても暖かく見守られているんですね。よかった。



いやぁ笑った笑った。
こんなに笑ったのは久しぶりだった。
今回は古き良き三木聡時代を思い起こさせる構成で、
冒頭の、崖から落ちていく途中で止まっている自分たちを、
なんとか落下を阻止しようとする彼ら
(幽体離脱でもしたのか、タイムワープしてきたのかは不明)
のコントでは、『愚者の代弁者、うっかり東へ』での
冒頭の地面に埋まっている人たちを思い起こさせる。
彼らは助かりたいのか、ただ、その状況を眺めて楽しんでいるだけなのか、
無駄なやり取りが続いて、これこそCBの公演の始まりという感じ。

私が好きだったのは、まず「柏木さん」。

上司と部下(きたろう、いとうせいこう)らしき二人のサラリーマンが窓の外を見ると、
建物の外には花束を抱えた男性(大竹まこと)が微笑んで立っている。
二人が恐る恐る会社の外に出ると、男は黙って花束を上司である男に渡し、
一歩二歩近づいて、ぐっと上司の男を抱きしめる。

この柏木さんという人は、知り合った人たちの好みや家族構成、誕生日など、
友達でもないし、仕事仲間でもないくせに、
誰にも教えてないことまで知り尽くしてプレゼントやサービスをしてくれる男なのです。

優しくしてくれるのはいいけど、教えてないことまで知っている不気味さから、
上司と同じ団地に住む住民たち(斉木しげる、中村有志)で会議を開いて、
今度こそ柏木さんに「迷惑だ」とガツンと言ってやろうと思っているのですが、
どこで会議するかもすぐに決められず、優柔不断にしているうちに、
当の柏木さんが現れ、「よかったらうちにきませんか」と誘われてしまいます。
そこでハッキリ言えばいいのに、何もいえない4人。
結局柏木さんの家にお邪魔してしまい、
コーヒー(もちろんそれぞれの好みにあわせて砂糖なんかがついている)が出てきたり、
隣の部屋には4人のふとんまで用意してある。
奥さんは?と訊くと「今、刺身買わせにやってますから」と徹底したもてなしぶり。

心底気の利いた優しい人のように思わせながら、
奥さんが刺身が売っていなくて買って帰らなかったことを知ると、
玄関の方から柏木さんの怒鳴り声と奥さんを殴る音が…

ビビッてしまった3人は、柏木さんにいい加減迷惑だと言ってやろうと、
一人柏木さんと面識もない部下だけを残したまま部屋を出て行きますが、
しばらくして部屋に戻ってきたのは柏木さんだけ。
「皆さん、お帰りになられたようです」
ひとり残された部下は、柏木さんにビールでもてなされ、
出会いを祝福する花束を受け取り、ゆっくりと抱きしめられるのでした。
怖い、柏木さん!


他には、同窓生(銀粉蝶)に誘われたバーが、
実はサイクリング・バイク野郎が集う飲み屋だった「サドルバー」。
客は椅子の代わりにサドルを棒にさして座り、
恐ろしいほどに鍛え抜かれた太い太ももを持ち、やたらと触らせたがる。

酔った勢いで人間大砲になると言ってしまった男(きたろう)。

あとは殺人事件を捜査する刑事が出会った、
あるアングラ劇団の公演を収録したテープ。
(これは最後に忠実に再現されてフィナーレになる)

ちゃんと理解していないのに、
人の質問にいかにも知っているように答える人ばかりが集まって
喫茶討論に花を咲かせる「生わかりの人」。
(ここのせいこうさんの存在が絶妙。「生わかりバンザイ!」)

原子力発電所を前向きにアピールしようとして、
結局原子力の危なさばかりを主張してしまう発電所の人々。
(「チョイ悪発電、ってどうでしょう?」by斉木さん)

ガラ先生ことナイアガラ先生。
(キラキラの衣装の袖から、霧=マイナスイオンが発せられる)

美輪明宏もどきの「ネガティブオーラ夫人」。
(「ネガティブシンキングターイム!」)

などなど。
結構説明しても面白くないんだけど、
あの三人と、せいこうさん、中村さんが揃うと、いるだけで雰囲気が可笑しい。
絶妙な個性の集まりだと思う。
そこに、大人の女なんだけど妙にチャーミングな銀粉蝶さんが入ってきて、
テント公演=アングラ的な雰囲気も感じなくもない。
新しいシティボーイズのスタイルが出来上がった感じがする。

「来年も池上本門寺でお会いしましょう!」って言ってたよ!
来年も絶対行きたい!
(でもせいこうさんは教○になっちゃうから無理なのかしら…)

ちなみに音楽が私の好きなスチャダラパーのシンコだったことに観始めてから気付き、
感動してしまいました。好きなものはつながりを持ってますよね。
分からなくても、「音楽かっこいいなー」と思ってました。
コメント (3)
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『ブロークバック・マウンテン』

2006-04-30 | movie/劇場公開作品
○4月7日(金)

『ブロークバック・マウンテン』を見てきましたよ。
色々評判を聞いてる限りでは
「これがアカデミー賞…?」
っていう意見が多数だったので、期待しないで観に行ったのですが、

…感動しました。

感動、というのとは違うか。共感したというのかな。
本当に愛する者同士のラブストーリーで、
こういう恋は羨ましいけど、辛いな…。
男同士だろうが男女だろうが、恋愛には障害や偏見が付き物で、
それを乗り越えようとして、絶対乗り越えられないこともある。
だから、私はけっこう同性愛の映画が好きだったりします。
その障害を、真っ向から受け止めようとする、
または辛さに挫折しそうな姿に共感します。

全然内容は違いますが、見ている間なんとなく
バーナード・スレイド作の「セイムタイム・ネクストイヤー」を思い出しました。
年月を重ね、違う相手と過ごした時間が深まるほどに、
お互いにさらに深い愛情を感じ合うイニスとジャック。
二人でいるときには見えないそれぞれの生活が観客には見えて、
イニスとジャックには、お互いに明かさない限り見えない。
それだけに、彼らの口にはしない苦しみと愛情が
はっきりと分かって切ない。
私は好きでした、彼らの一生の恋。
ちなみにヒース・レジャーの声が印象的で、頭から離れません。
風景が、またたまらんくらい素敵でしたなー。
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コクーン歌舞伎『東海道四谷怪談』南番

2006-04-05 | stage
コクーン歌舞伎『東海道四谷怪談』を本日見ることが出来ました。
やったー!!
一方で試写会の誘いを断っちゃった。ごめんなさい…。

今回の公演は、12年前に上演された『…四谷怪談』の再演で、
初演をベースにリニューアルして演出された南番と、
南番では上演されない「三角屋敷」を含めて上演する全く新演出の北番、
二種類で上演されています。

私が今日見にいったのは南番。時間は北番より若干短め(約3時間)。
歌舞伎の公演だし、金曜の夜とだけあって、
お客さんも、いつもの劇場の雰囲気とは違った
華やかな印象がありました。

歌舞伎は、浅草公会堂とか歌舞伎座で見たりしましたが、
普通の中劇場でやると、しょぼくならないのかしら?と、
始めのうちはそんなに大きな期待せず、
しかも、前の席の人が前ノメリで舞台が見えないし、
深く腰掛けろゴラーッ!!と思うことしばしばだったのですが、
話が進むにつれてどんどん引き込まれ、夢中に!
勘三郎が出てきて、地獄(私娼)にいるお袖と会う場面あたりには、
顔がにやけて仕方なかったです。
内容が進んでいくとかなり怖い話ですけどね。

下手に書いて、検索で見た人がネタバレてると
楽しみがなくなっちゃうので、
演出については詳しく書かないですが、
もうなんていうか…


生きててよかったなー。(笑)


観終わってから、神様に感謝している自分がいました。
見たこともないような、満場のスタンディングオベーション。
サービス満点の演出に、客席は(特に2幕が)悲鳴?と歓声と
笑い声でいっぱいでした。
こういうのをエンターテイメントっていうんだよな。
人の憎しみや欲望から生まれた恐ろしい物語であるのに、
私たちは楽しくて仕方ないわけです。おかしなことです。

串田和美さんの演出が素晴らしかった。
後半の畳み掛ける展開は、
絶叫系ジェットコースターよりもずっとスリリングでした。

南番は本水(本物の水)を使った演出も含まれていて、
前方の席のお客さんは合羽を着込んで、
さらにビニールシートを持って観劇してました。
北番で上演する「三角屋敷」の場面はカットされてるので、
その舞台替えの合間に笹野高史さんと七之助君が出てきて、
水が飛ぶときにかからないようにする練習を指導したりして、
ここで一気に客席が和んだように思います。

勘三郎さんも本当にかっこよくてさー。
特にお岩さまの演技は本当にジックリ演じていたけど、
全然長いとは感じなかった。
絶命の場面で倒れこむところなどはゾクっときました。
橋之助さんとのクライマックスの殺陣なんか、
思わず「かっけぇー」と呟いてしまいました。
襲名披露公演は見られなかったけど、
これを観られただけでもすごく幸せな気分です。

七之助君を、生の歌舞伎では初めて見たけど、かわいかったなー。
それと、おいろ役の小山三さんもかわいかったな。
勘三郎に「変な生き物」呼ばわりされてたけど(笑)。



こうやって受け取った感動を
どこかにOUTPUTしたいという想いが益々強くなりました。
このまま体の中に詰め込んでも意味がない。
この春は、その目標を実現させるために頑張って行きたいです。

ちなみに、パンフレットを見ていたら、
大学時代の同級生が載ってて驚き。
あんまり面識ないけど、新歓合宿で同じ班だったかも。
大学で串田さんの講義とか、出てたのかな。
全然気がつきませんでした。
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