だから、ここに来た!

いらっしゃいませ! 英国旅行記の他、映画や音楽、テレビドラマ、演劇のレビューを中心にお贈りしております!

【今週のウチシネマ】臥せる虎、隠れる龍

2005-11-25 | movie/【今週のウチシネマ】


チャン・ツィイーと言えば、近日公開の『SAYURI』ですね。

彼女が日本の芸者を演じるにあたって、
違和感を持っている人はアメリカにもいるらしい。
なんて言ってるかというと「なぜ小雪を使わない?」だって。

やれやれという感じですが、
私が気になるのは、渡辺健の演じる会長役を、
キャスティング次第ではユンファ先生が演じていたかもしれない
ってことで。

それはツィイーとのツーショットの画像見ただけでもわかる。
「わー、これは潤發先生のハマり役のはずじゃん! 素敵!」
ですが、出なくてよかったかもね。
この手の映画はもう出る人なんて決まってる。
それにミシェル・ヨーも出てるし、
まるっきり『グリーン・デスティニー』ですもんね。

そんなわけで、『SAYURI』は置いておいて、『グリーン・デスティニー』です。
食わず嫌いでずっと避けてきたのですが、とうとう見ちゃいました。



女剣士シューリン(ミシェル・ヨー)の元に、
師にあたる剣の名手リー・ムーバイ(チョウ・ユンファ)が、瞑想の修業を中断し、
自身が持つ名刀・碧銘剣を手放し北京の名士に届けるように頼むところから始まるんですが、
そもそも、ムーバイが本当に剣を手放す気があるのか謎。

その他にも分からない点が多い。
貴族の令嬢イェンがこの剣を盗むけど、その意味も分かりにくい。
彼女は本当に剣の道を極めたいのか、
それとも自由な愛を求めたいのか、気持ちを抑えているのか。
すべてぼんやりしている。

万人向けに中国の伝統の描写を妥協するなら、完璧に妥協して
もっと登場人物の描き方に明確さを出していいんじゃないかと思う。
コメンタリーを聞いていても、悪役の死に方とか気にしてる問題が違う。
本当に意味の深い作品として世に出すならともかく、
スタンスがちょっと半端なのではないだろうか。
耐えて秘められた愛なら、もっとそれだけの圧力を感じたかった。

それに中盤の回想場面は、中だるみしているような気がする。
後でこの映画が二時間だと知って、本当に?と思ったほど。
三時間あるのかと思っていたから。

もしかしたら、もっと中国の思想の根底にあるものを理解していたなら、
そのそれぞれの繊細な気持ちを感じ取ることが出来たのかもしれないけど、
だとしたら、アカデミー賞を獲った理由はなんだったんだろう。
アジアのエキゾチックな要素ですか? ワイヤーワーク?

ワイヤーワークを否定したりはしませんが、私はあんまり好きではないなー。
というか、これだけ美しい映像なら、ワイヤーワークなんていらないのに。

有名な竹林での戦闘ももちろんですが、
ムーバイとシューリンのツーショットの場面の窓から見える竹林の美しさといったら!
そして、賊のローとイェンが馬で走る中国北部の広大な風景。
スタッフがCGと見紛うほどの現実離れした自然の神秘です。
撮影監督はピーター・パオ。
今まで見てきた『フル・ブラッド』や『狼…』なんかもこの人だったので、
妙に好感が持てたりして。
美しい背景にスクリーン映えする俳優たち。うっとりです。

ところでタイトルに【今週の亜州影帝】と入れなかったのは、
この映画の主役がチャン・ツィイーだからです。
当時はまだ知名度が今ほどあったわけではないけど、
この映画を見て心奪われる部分があるとすれば、チャン・ツィイーの活躍です。
酒場での戦闘シーンは最後のキメポーズで笑っちゃいます。
一番、香港映画的な場面な気もする。

イェンとシューリンの一騎打ちも素晴らしいアクションです。
可憐なチャン・ツィイーと成熟したミシェル・ヨーのアクション。
闘う女って素敵だ!





テレビで観てもよかったかなーなんて思ってたら、
12月16日に日本テレビで『グリーン・デスティニー』をやるそうです。
あちゃー! タイミング間違った!
これも『SAYURI』にあわせての放送なんだな。
なんで放送する可能性を考えなかったんだろう。
またよく見てその奥深さをしっかり考えますよ…。

それと、テレビ東京で12月9日には深夜に『非情の街』を放送します。
ティ・ロンさんとユンファ先生の『…挽歌』コンビですね。

 


グリーン・デスティニー [Blu-ray]

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【今週の亜州影帝】「祝いの酒は買ってやれんぞ。」

2005-11-22 | movie/【今週のウチシネマ】

私、駆け引きができないたちなので、恋愛もカードゲームもかなり苦手です。
ハッタリかますこととか出来ないんですよね。
だから、ギャンブルの話はすごく好き。憧れの目で見てしまいます。

そんなギャンブルの憧れ部分と、
ある意味『大丈夫日記』より笑えるズッコケ部分が混在した、
バリー・ウォン監督の『ゴッド・ギャンブラー 完全版』
実在の人物を元にして、
潤發先生が負け知らずの伝説のギャンブラー〔賭神〕こと、
コウ・ジョンを演じています。



日本のヤクザとの対戦に勝利したコウ・ジョンは、
その腕を見込まれ、組の小宮山に、
チョウという指名手配されている狡猾な大物賭博師との勝負を依頼される。
対戦するには危険な相手だが、
組の行く末がかかっていることを知り、依頼を受けるコウ。

香港に戻り、コウは弟分のドラゴに代わってバカラの負けを取り戻すが、
そこで勝って受け取った大金の小切手をめぐって狙われるはめに。
ボディガードのロンの助けもあり、なんとか追っ手をまいたコウだったが、
足を踏み外して坂を転がり落ちてしまう。

実は、けちな博打に明け暮れるチンピラのトウ(アンディ・ラウ)が、
気に入らないインド人を罠にはめるために仕掛けた悪戯に
引っ掛かってしまったのである。



…はい。
ここまでだけでもいっぱい突っ込みどころが出てきますよー。
まず、日本での勝負。

鐸のなかにサイコロを6つ入れて、より小さい目を出した方が勝ちの試合で、
相手の、肩に入れ墨入った姉さんが出した目はなんと全て1の目。
そこでコウさんが勝つために採った勝負師らしい選択がちょっと笑えます。
そういうジョークみたいな結果で勝ちが決まってしまうのかー、
博打の世界も気が利いてるなー。

それに、トウが仕掛けた罠。
仕掛けてる最中は、そんなわかりやすい罠に引っ掛かる人いるんですかぁ?

と思って見てたんですが、

コウさん、見事に引っ掛かってました

インド人が連れてる犬を見つめるだけでおとなしくさせてしまうような、
賭博師というかもはや催眠術師のコウさんが、
なんであんなちゃっちい穴にはまっちゃうのか。
そこをもっと透視してみなさい!と言いたくなっちゃいます。
きっと突っ込むことで成り立つんだわ、この映画って(笑)。


そしてコウさんは、トウと恋人のザン、弟分のウーグワイに助けられるんですが、
頭を打ったショックから、自分が賭神であることを忘れ、
さらには、10歳児並みの知性に退行してしまいます。
身元もわからないまま、大好きなチョコレートばかりねだるコウに、
トウたちは「チョコレート」と名付け、
自分たちの出入りする賭博場に連れていって、
持っている大金を使わせて儲けようとしますが、
そこで、彼らは「チョコレート」にギャンブルの才能があることを知るのでした。


このへんが潤發先生の役者魂を感じさせる部分ですね!
始めの、余裕の微笑みを絶やさない、
常に冷静でスマートな切れ者コウさんを演じる一方で、
ぼさぼさ頭でぼんやり口が開きっ放しの小学生みたいにになっちゃった
「チョコレート」のわがままな不貞腐れぶり、吹っ切れたような演技は、
二挺拳銃と並ぶ彼の真骨頂です。

取って付けたような記憶喪失ですけどね。
だからこそ賭神が余計かっこよくみえるってもんです。

ドラゴの負けを取り戻すシーンで、
相手の挑発を受けたコウさんの
「いい雰囲気になってきたな…よし、俺がやろう」
には痺れましたよ。
そのあとの勝ちっぷりも。

後半のチャンとの勝負も、結果は分かっていてもドキドキしますな。
カードを片手で散らせて、最後の一枚をピッと相手に投げ付ける、
…あれ、やってみたい。
はぁ。コウさんはかっこいいし、
チョコレートは可愛いし(実際面倒見るのは大変そうだが…)、
やっぱり潤發先生素敵だ!

(気になるんだけど、記憶の戻ったコウさんは、
 自分のしでかした幼稚な言動に、頭抱えたりしないのかな?)

アンディも、三枚目のお兄ちゃん役で、
変にかっこつけた二枚目より私はこっちの方が好きです。
虎の威をかる狐キャラというか、強気だけど威張れるのはウーグワイにだけ。
(この弟分、見た目ブシェミみたいでおもしろいけど、
 意外と兄貴よりしっかりしてそう)
トウはやんちゃなだけで根っからの悪者じゃないんだよね。
チョコレートを置き去りにする場面は、家族もの映画としても見られます(笑)。

彼女のザン=ジョイ・ウォンの可愛さを見るだけでも満足出来るし、
物語の完成度は低くても、見所は多いです(笑)。

バカラのトリックが妙に古めかしかったり、
悪者が時代劇ばりに
「これで私たちの勝利は間違いないですな…ワーハッハッハ」
なんて高笑いしたり、
全然意味のないスローモーションが多様されたり、
ちょっとどうかなーと思うところ多数ですが、
まあ、いいんじゃないですか、バリー・ウォンだし。

監督自ら出演もしてますが、監督の見た目と作品の色合いが
見事マッチしてる気がして、ひそかに笑っちゃいます。
確か、『狼…』にも、リーの上司役で出ていたような。

あとは、出ていると気になってしまう存在、
金貸し役のン・マンタもいい味出してます。

この作品はパロディと、
そのパロディをパクッてしまった続編の方がヒットしていますが、
下手に手を出してチャウ・シンチーにハマるのが恐いです。
何しろ世間の波に逆らって『少林サッカー』
(『カンフーハッスル』金馬奨受賞おめでとうございます)
も見ていない私。
ちょっと時間を置いてから見ようかと思ってます。
喜劇王まで追い掛けたら大変だ。
今は亜州影帝に浸かっていたいのよ。

ちなみに、今回の記事タイトルの台詞には、
あまりにかっこよすぎて、爆笑してしまいました。

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知久寿焼+滝本晃司=2 ni

2005-11-19 | music
寒さが私をダメにする。
私の冬の合言葉です。
冬の生活はこの一言で言い表わせる。
Tシャツ一枚で過ごせた夏が懐かしいよぅ。

17日は、これまた寒い日で、
先日買ったAラインのクラシックな薄手のコートを初めておろして、
毛糸帽子、革手袋で武装。

元「たま」の知久寿焼さんと、滝本晃司さんのライヴを観るため、
南青山MANDALAに行ってまいりました。


MANDALAに着いた頃には、
オープニング・アクトのサード・クラスの演奏が始まっていて、
なかなか素敵なバンドなのにしまった!と思いましたが仕方ない。
滝本さんの演奏に間に合ったんだからよしとしましょう。

サード・クラスの演奏が終わるとすぐ滝本さんが現れて、
「Gさんだ」「Gさんが来たよ」
とみんなコソコソ囁きあって、妙に静かな雰囲気でした。

私、こんなに近くで「たま」メンバーを見たのは初めてだったのですが、
もっと、客席が賑やかなのかと思ってました。
青山という土地のせいか?
みんな穏やかにステージを見つめてましたね。

Gさんは下手側にギターを持ってセッティング。
私は上手側。寂しい…。
「あ、どうも、滝本です」の挨拶の後、
静かに『星を食べる』が始まります。

オレンジ色の光に包まれて、足を組み、囁くように歌うGさんの姿。
とっても暖かい気持ちになりました。
この数か月、悲しい時にはGさんの曲を聴いていた気がします。
『さよならおひさま』とか。(やんなかったけど。)

さよならーおひーさま、
ぼくはーもういいや、
これでーおわりにすーるー。

これだけ読むとさみしいけど。
でも聴いていると、トゲトゲしていた気分が柔らかくなって、
イライラもなくっちゃいます。
だから、寝る前に聴くGさんの曲は最高。
ぐっすり眠れちゃいます。

そんな私なので、Gさんの生歌でちょっと眠たくなってしまいました(笑)。
だっていい声なんだもん。
ほんわか聴いていたので、おそらくやった曲は
『レインコート』『まばたき』『楽しい楽しい時間』あたりだったかなーと。

知久さんは後半あたりからGさんのステージを見ていましたね。
あ、まさかサード・クラスの演奏の時に脇にいたのは知久さんだったんじゃ…
来るとき邪魔しちゃいました。

Gさんの演奏が終わると、知久さんと交替。
今度は上手側です。
ギターを抱えてハープを首にかけている知久さんがすぐそこに!
弾き始めたのは『ゆめみているよ』。
ところが、PEの調整で低い弦の音を大きくしてもらい、
光のあたり具合の問題でやり直してました。
「影が出来るから…」って言ってたような…。
そして、改めて弾き始めた知久さんでしたが、
その姿がなんだか神々しくて、息を呑みました。


Gさんの歌の穏やかな中に影のある、独特で静かな雰囲気も魅力的なのですが、
知久さんの演奏の迫力には、体が痺れそうでした。

ハモニカをガブリとくわえて、全身から息を流し込んでる姿。
左手はガッシリとギターをつかんで、
歌い始めると地面から掘り出してきたかのように身を捩らせて声を出す。

あの声が、あんなにも力強く発っせられるものだとは思いもしませんでした。
横からしか見られませんでしたが、
なんて男らしいんだろうかと、ほぉーっとなりましたよ。

こういう人をミュージシャンというんだよな。かっこいい。

今まで以上にお慕い申し上げます。
ずっとビール飲んでる部分も含めて(笑)。

私が最近ヘビーローテーションにしていた
『電車かもしれない』などを演奏した後は、
(『らんちう』の台詞は「昔むかし、あるところに…」から始まり、
 予想もしないところで「おしまい」になってズルッ!と滑るかと思いましたわ)
サード・クラスも入ってバンドでの楽しげな演奏。

途中、知久さんが合いの手ならぬ、「合いの手揉み」を要求してたんですが…
「はい、揉んで揉んでー!」と。
それを脇で見ていたGさんが、
「あー、やっちゃったね」
と、若干嬉しそうに言ってたので、何事かと思ってたんですが、
旭川の常連のおじさんたちが、
のれるねーって感じで話し掛けてきたときにやっていたのを真似たんだとか。
「サード・クラスはズンドコだから」みたいなことを知久さんがいってましたね。

最後はGさんも入って、『ハダシの足音』などをやりました。
大好きだー『ハダシの足音』!

これで前半が終わり、
休憩を挿んで後半は知久&滝本&ロケット・マツ&小俣佳久によるユニット
『2 ni』(に、と読む。厳密にはGさん知久さんのユニットなんで2なのでしょうが。)
の楽曲をサード・クラスのサポートで演奏しました。
『2』はインストアルバムで、タワレコで言えばOTHERSコーナーにあるような、
でもエレクトロニカには入れて欲しくない。
かといってパスカルズとはまた違うかも…

印象的だったのは「つぼみ」という曲。
鳥の鳴き声みたいな音が、現れては消える…
でも、タイトルをみたら「Bugs under the moon」と書いてあるので虫ですね。
あとは「ハモニカギター」。
これを聴きながら、好きな人と、川沿いから夕方の空を眺めたりしたいものです。

アンコールはふたりだけで「に」でした。
ふたりがお互い鍵盤に向かってやりとりするように演奏してる様子って、
すごく新鮮です。

久々に立ちっぱなしは辛かったけど、
全然苦痛に感じない短い三時間でした。
ちなみに帰りは寒くてすごく苦痛だった…。
「南風」を歌いながら、自分を元気付ける私でした。

今度は誰かと行きたいな。
一人で見るのはもったいないです。
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【今週の亜州影帝】Oh~、ベリーナイシー!!

2005-11-13 | movie/【今週のウチシネマ】
ユンファが歌う主題歌が頭から離れません。歌えるようになりたいくらいです。


誰が言ったか知らないが、
周潤發を好きになったものが、必ず一度は経験しなければならない映画、
それが『大丈夫日記』

私は、本当に潤發の映画が好きだと言い切れるようになったら、
この映画を観ようと心に決めていました。
なんとなく、刺激が強そうだからね。
そして今週、ついにその封印を解いたのです!

潤發演じる主人公・ファッツァイは「高給とり」の証券会社勤務。
雨の日に出会ったサリーとジョイ、ふたりの女性と付き合いだしたファは、
どちらと結婚すべきか悩んでいるところで、
ジョイに持っていた指輪を偶然渡してしまい、結婚に同意されてしまう。
それじゃあ、サリーとは別れるしかないと彼女に会いにいくと、
プロポーズされると勘違いされ、今度は指輪を渡される。
かくしてnoと言えないファッツァイの過酷な二重結婚生活が始まるのです。

あの、分かりにくいかもしれませんが、二重生活から寝不足のため、まぶたに目を書いています。この場面、なんか好きです…



はっきり言って、笑えます。
目を覆いたくなるような、ハラハラもののスクリューボールコメディ。
そしてチョウ・ユンファほどの人が、なぜこんな役を?と考えただけで
笑いが込み上げてきます。

これが『男たちの挽歌』のマーク?
これが『狼…』のジェフリー??
これが『アンナと王様』のシャムの王様???

この演技派俳優の欠片も感じられないマヌケっぷりはなんだ!

重婚がバレないように、その場しのぎで言い逃れ、
なんとか女たちをだまくらかし、しょっちゅう冷や汗タラタラ、
ビクビクしながら親友にすがる状況に陥っているにもかかわらず、
乗り切ると、妙に自信満々に
「ビック・マン(大丈夫)は俺だ!」と歌いだす陽気さ!
しかもその歌声もすばらしくヘタクソで最高!
ずり落ちたデカ縁メガネがまたまたマヌケさ倍増、面白すぎます!


酔った妻のご機嫌とりに、フランスパンを頭につけ、
眼鏡を逆にかけて「Drスランプ」の歌を踊り付きで歌いだしたときにゃあ、
そこまでバカやってくれると逆にかっこよくも見えてくるってもんです。


楽観的なのにピンチになると
「神様ぁ、僕が何をしたというんですぅ?」と嘆く、
そのコメディ的切り返しがすごいうまくて、
さすが!とも思えます。
ファが観てる側に語りかけてくるのも個人的にツボ。
(『フェリスはある朝突然に』と同じ。こういうの弱いんです。)


また、『男たちの挽歌』で、兄貴分だったマークを乞食同然に扱うボスを演じた
レイ・チーホン
が、親友の同僚役でファの重婚生活を支えるために、
身を粉にして奔走するのもまた痛快です。
いいように利用された挙げ句入院させられて、ファの写真をペンで刺しながら
「死ね! 死ね!」と言ってるのに、なぜかまた助けようとするところが泣ける!


チーホンよ、どうしてそこまでしてファを助ける!
これもまた潤發映画によくある友情の深さなのか??
(「お前とは前世で何かあったな」というようなファッツァイの発言があるので、
 おそらく、『挽歌』の頃の復讐をここでしているんでしょうね…)

あとは、ラジオをつけたファが、
「主演男優賞は、チョウ・ユンファです!」というアナウンスを聞いて
「またあいつかよー!」と言ってみたり、
『上海灘』の最終回を観ようというチーホンの婚約者に
「最後はユンファがババババって撃たれちゃうんだよ!」
と説明したりするご本人からのサービス付きです。


豪華女優二人(ジョイ・ウォン、サリー・イップ)が共演っていうのも贅沢。
ファと歌うシーンはすごくエレガントでかわいい!

クライマックスからオチまで、香港映画ならではのムチャクチャ加減ですが、
一度受け入れたらくせになりそうですよ。


とりあえず、観る気になった方は、
まず『男たちの挽歌』のマークの屈辱を観てから『大丈夫日記』を観ましょうね。
『男たちの挽歌』レビューはこちら

ここからマストバイ『大丈夫日記』!『男たちの挽歌』!



さて、ほかにも周潤發出演作を観ました。
まず『ストーリー・ローズ~恋を追いかけて~』
マギー・チャン演じる、ボーイフレンドにはこと欠かない美人学生ローズが、
大好きな自分のお兄さんのような男性に出会うまでを描いています。


兄と妹の再会



彼女が大好きな保護者代わりの兄貴は、もちろん潤發なんですが、
ローズの恋人ガミンと二役を演じています。

問題は、ローズは一体だれが一番好きなのか、
はっきり分からないんです。

初めて深く好きになった人とダメになったときに、
忘れるためにパリに留学すると言いだすけど、
そこまで入れ込んでたのか分からなかったし、
兄貴も兄貴で、ただ妹が心配なのかシスコン入ってるのかいまいち分かりにくい。

それで最後までひたすら雰囲気が暗くて、つらかった。
映画としてどういうスタンスで描きたいのか分かりにくいです。

あえて、ミーハー路線で観るならば、ガミンの笑顔満載なところ。
潤發の笑顔フェチは萌え~です。おそらく。
あとベッドシーンがたまりません(笑)。
次の日にローズとガミンが初体験の話をしてるとき、
「あなたはいつ?」とローズが聞くと
「うーん…昨日の夜」とおどけてみせるガミン。


ひゃー。


ところでまるっきりネタバレですが、
潤發の死に方の美しさがこの映画でまた拝めます。
なんであんなにも切なく死ねるんだろうか。
意識を失っていくまでのあの演技、悲しいよー。
余計暗ぁーくなってしまいました。


あと一本は『アゲイン/明日への誓い』
これは『男たちの挽歌』の前日談なんですが、
監督がジョン・ウーからツイ・ハークに替わったせいか、
まったく別物映画になってます。

マークがベトナムにいる、いとこと叔父を
女ボスの協力を得て香港に渡らせるんですが、
なんでホー兄貴の前日談じゃないんだろう。
続編である意味がない内容です。

あ、時任三郎が思いっきり吹き替えで出演していて、
なんで出てるんだろうかと思ってしまいました。
香港の日系の方でいいような。

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【今週の亜州影帝】完璧映画『狼/男たちの挽歌 最終章』

2005-11-13 | movie/【今週のウチシネマ】

亜州影帝ことチョウ・ユンファ周潤發にすっかり心奪われてから
毎週チマチマ出演作を観ているので、
すっかり【今週のウチシネマ】というか、【今週の亜州影帝】と化していますが、
ちゃんと他の映画も見てるんですよ、私。
でも観てもなんとなくうわの空。

この調子じゃ、好きな映画に出会えても、うっかり気付かないまま通り過ぎそう。
だけど、とっておきの映画はたいてい、
誰かに夢中になってるときにふいに出会ったりするものだ。

たとえば『博士の異常な愛情』にしても、そこにはキューブリック監督の、とか、
ピーター・セラーズの出演作で、という見えない前提がある。

彼らが関わっていることで出会った作品であると同時に、
はっきりと映画として純粋に気に入っていると言える。
だから、潤發が好きな今の私だって
最高の映画に出会えるチャンスがあるはずなんだ。


そう思っているときに観たのが
『狼/男たちの挽歌 最終章』THE KILLERだった。

killer2killer1



「男たちの挽歌」と入ってはいても、続編ではなく、
ジョン・ウー監督、ツイ・ハーク製作、チョウ・ユンファ主演の
三つ巴がまた揃っていることからついているだけで、
ストーリーもまったく異なります。

私の求めていた映画だ!
観始めてすぐに思った。
純粋に体がこの映画を喜んでいるのがわかる。
泣かされもせず、大げさな感動もしない、
でもどこかのパズルのピースがぴったりはまる。
私はこの映画を探してた!



組織のボスを襲撃する際に、誤ってある歌手の視力を失わせてしまった
殺し屋のジェフリー(チョウ・ユンファ)。
責任を感じ、彼女の角膜移植手術の資金を稼ぐため、
これを最後と、元・殺し屋の親友シドニーから暗殺の仕事を引き受けた。
ターゲットは中南米麻薬裏組織の大物・トニー・ウェン。

一方、VIPとしてドラゴンレースに招かれているトニーの警備に当たる
リー(ダニー・リー)という刑事がいる。

銃の不法取引のおとり捜査の最中に、通りかかった警官を目の前で殺され、
リーは犯人を追い、バスの中で男を射殺した。
彼にとっては追い続けていたヤマに決着をつけると同時に、
打たれた警官の復讐を果たす当然の行為であったが、
結果しか見ない上司は、民間人の中で銃を発砲したことを問題視し、リーを非難する。
納得できないまま渡された次の仕事で、彼は殺人犯のジェフリーを追うことになる。


ジェニーの部屋で再会する二人



殺し屋と刑事。
この相反する人間たちは、本来憎み合うべき相手なのに、どうしてか似ている。
いつかまた離れていくだろうふたりの、ひとときの友情。
なんて刹那的で、これ以上ないくらい美しいんだろう!

そして彼らは友人ともまた深い信頼関係を持っている。
ジェフリーに、体を張って仁義を通そうとするシドニー(チョウ・コン)、
リーを理解し、忠実に従うチェン刑事(ケネス・ツァン)、
たとえ一度憎みあうことがあっても、友情は変わることがない、
この二組の絆もまた熱く、魅力的。


この作品のすごいところは、実はもともとラブストーリーだったってこと。
元々は、殺し屋と歌手の恋愛がメインで撮影される予定だった。
ところが、ジェニー役のサリー・イップが歌手としての活動に専念するため、
なかなか撮影に入れなかった。
そのため、恋愛映画にするには女の出番が少なくなってしまうことに。

普通、そこから男同士の友情ものに移していくと、
どこかしら歪みが生まれるものですが、この映画ではまったく感じない。
もともとこういう映画だったとしか思えない完成度です。
私は見る前に、その事情をよく考えて観賞したので、余計に感心しちゃいました。

おそらくカットされたシーン



そして演出の確かさ。
ジョン・ウー監督は前にも書きましたが、本当にストーリー展開に無駄がない。
これはつまり物語の主流しか作らないということで、
粗捜しを始めたらボロボロ突っ込みどころは出てきますが、
それは「映画だからね」と見逃せる範囲内。
粗を捜すくらいなら、素晴らしい演出を目に焼き付ける方がどんなにためになることか。

はじめからサービス精神旺盛な銃撃戦、
ジェフリーとトニーの魂をダブらせる手法、
それに『リプレイスメント・キラー』で多様された、
「手前に人が通ると消える殺し屋」ね。
(『リプレイス…』はこれをお手本にしているんだね。それにしても雲泥の差が…)

ジェフリーのライフルを構えるタイミングから、
逃げた後狙われてることに気付くときの間合い(これがまたかっこいいんだ)まで、
すべてがベストと言える出来。
映画教科書あるならこれを一本まるごと掲載してもらいたいね。



もちろん潤發様もかっこよくて鼻血出ます。つつーっと。
どの作品よりも男前です。

女子供(カタギ)への優しさと、
殺し屋としての技術の高さを感じさせる演技にしびれます。
そしてジョン・ウーがインタビューでも語っていた、
裏切られた人間の表情は必見。
笑いとも悲しみともつかない複雑な感情が「再現」されています。アッパレ。

そんなわけで、この映画は私のベスト映画の仲間入り。
潤發映画でどれを観るべきか聞かれたら、これを薦めます。
で、気に入ったら『大丈夫日記』を薦めます(笑)!
『大丈夫日記』レビューはこちら

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『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』ジャパン・プレミア

2005-11-12 | movie/試写会・映画祭など
11日、またしても仕事を早く切り上げ、今度は有楽町へ。
11月26日公開の『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』ジャパン・プレミアを見にいく。
指定席の引き換えは16時からで、私が国際フォーラムに着いたのは17時。
席は二階の前の方でした。
友達の仕事が終わるまでの間、スープストックで休憩してました。

試写の開始前に「豪華抽選会」があって、
グッズセットや出演者に会える権などが当たるんですが、
その中で「ワーナーブラザース試写室で上映会を開ける権」があって、
ハリポタを好きな人たちと観られるということで、
抽選会の目玉の一つらしいんだけど、
ドラムロールが鳴り響き、番号が発表されると、
会場の観客が立ち上がっているはずの当選者を乗り出して捜し回る。
司会者が当選者にコメントを求めると、聞き覚えのある声が。

「あのー、西村知美なんですけど、いいんでしょうかぁ?」

友達と大爆笑。
すごいよ、西村知美!
仕込みなしで当選するあんたのその強運はなんなんだ!
彼女は謹んで権利を辞退してました。かっこいい、知美!


ところで映画ですが、
詳しい考察は熱心なポッタリアンの方に任せるとして、
私はヴォルデモートの復活に非常にワクワクさせられました。
シリーズの中で一番不安や悲しみを感じさせる展開の作品です。
あわせて登場人物の心の変化、
思春期独特の素直になれない衝突や劣等感がとっても楽しい!
青春映画としても楽しめます。
もう一回見てもいいなー☆

上映後はグッズの販売が終わっていたんですが、
「買っておけばよかったね」と激しく後悔。

映画の後は友達と久々に朝まで梅酒を飲み、
始発までドンキでマッサージ機を試してました。
あとロデオマシーンね。

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KARA COMPLEX『調教師』

2005-11-11 | stage
choukyoushi

10日は、ろくに仕事をせずに渋谷へ。
シアターコクーンで上演されている、『調教師』を観にいく。
唐十郎作、内藤裕敬演出のプロデュース公演。

唐さんの芝居は好きだ。
そうは言っても何冊か戯曲を読んだりしただけだし、
テント公演も一回しか観た経験がないのです。
それでも好きだといいきれるのは、かたちはなんであれ、
唐さんの作品に触れたあと、

これだ、これが演劇なんだよ
と目が醒めるから。

そして、こうしちゃあいられないと思う。
異様な劇空間に焦がれて、火傷のあとをつけたい、体に刻みたいと思ってしまいます。
要するに、見せ付けられたエネルギーに圧倒されて、
自分まで力が湧いてくるような感覚になるのです。

この作品が、はじめは小説として完成されたのちに
『透明人間』『水中花』という戯曲になって上演され、
今回再び『調教師』というタイトルで上演されていることなど、
私は何も知らないところから観始めて、
前半は
「やっぱりテントが醍醐味の唐演劇をコクーンでやっても合わないんじゃないか?」
と感じていました。

舞台上ではいきなり人間が焼鳥屋の二階でもみ合ってる、
なのに「臭さ」を感じない。清潔過ぎる。

保健所員の田口(萩原聖人)と上田という男が
なにやらモモ(黒木メイサ)という女について話し合っている場面から、
狂水症の犬が人を噛んだという知らせが届き、
その「時次郎」という犬の飼い主である調教師の合田、
革ジャンを着た男・辻(椎名結平)、犬に噛まれたマサヤという学生、
統合失調症の女調教師・白川(木野花)と、次々に人物が舞台に引き出され、
そのつながりが整理できないまま、モモの身代わりの女(峯村リエ)が現われて前半終了。

ところが後半に入ると、とたんに過去と人々がつながりを持ちはじめ、
嘘の現実が急に真実に見えてくる。
辻という男とモモ―それは焼鳥屋にいるモモなのか、かつて辻のそばにいた犬のモモなのかわからなくなってくる―
の間に起きた、誰が見たのかもわからないような曖昧な夢のような記憶が、
繰り返し口から吐き出されると、だれもが虚構の中に現実を見始める。

雨がふり、樋を伝って下手に水が流れ込んでくる、
そして水の中に、皆呑み込まれる。
唐さんお得意の水だけど、今回は青々とした水だ。

辻が、自分の命を水中花に例えるけれど、
唐さんによると、これは千夜一夜物語をモチーフにしている。
作品の中にいくつもの背景があり、合わせ鏡のように果てしない深さを感じる。

今回見て椎名結平がこの作品の中に馴染んでいるのが面白かった。
革ジャンが煙草を吸うところはどうやってるんだろうか。
黒木メイサちゃん、綺麗な足じゃった。
押された時の倒れ方がよかった!
萩原聖人って以外とたくさん芝居出ているんですよね。違和感なかった。

演出で気になるのは、大人数になったときの、その他大勢の
「え!」「ああ」という反応の仕方。
どうもあれには慣れません。
それ以外は大人数場面はよく出来ています。

今、原作って手に入るのかな。
これから改めて唐さんの勉強をしたいと思います。
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【今週のウチシネマ】英雄本色2、と見せかけてボビー・ダーリンについて

2005-11-03 | movie/【今週のウチシネマ】

最近思うんだけども、
『シティーハンター』の実写が發仔主演だったらどんなによかっただろうかと…
私だってジャッキーさんは好きですし、
テレ東の深夜に映画やってたら見ますよ、そりゃ。

だけど、初期の渋いハードボイルドなシティーハンターを
軽いタッチで再現してぴったりくるのは彼だけのような気がするのです。
「ママに遺言状の書き方を教わっときな」とか、言って欲しかったわけです。

なんて言いだしたのは、先週に引き続き『男たちの挽歌2』を観たからでありますが。

『男たちの挽歌』の正統な続編。
服役中のホー(ティ・ロン)に弟のキッドや、
タクシー会社のキンさんもちゃんとでてきます。

そして死んだはずの潤發の役もちゃんとあるわけだ!

一作目に比べると話の質は落ちますが、
アクションシーンでいうとこっちの方が断然上です。
はじめっから見なくていいから、とりあえず最後の銃撃戦だけ観て欲しい。



手下に組織を乗っ取られた上に娘を殺され、
さらには渡米して身を寄せた友人の神父まで殺され、
絶望から精神に異常をきたしてしまった元マフィアのボス・ルンが病から立ち直り、
警察から組織を壊滅させるために協力を要請され出所したかつての子分であるホー、
そしてルンを病から救った恩人であり、
前作で40発の銃弾を受けて散ったマークの双子の弟(!)ケンとともに、
組織のアジトに乗り込んでいく場面。

どんだけ撃たれても彼らは死にません。不死身。
でもいいんです。迫力があるから。
撃たれた敵が必要以上に飛び上がって倒れたって、
いいんです、派手だから。

ケンが、(マークの形見の)コートの穴に引っ掛けた手榴弾を投げた時の
あの爆発の迫力といったら!
あそこは映画史に残るスローモーション名場面です、間違いなく。
ホー兄貴が振り回す日本刀もグッドです。

ほかにも、ケンがヤンを守ってアパートの階段を滑りながら
二丁拳銃で応戦する場面も見所だし、
前作よりずっと大人になったキッドが、
潜入する組織の信用を得るためにひとりで偽札を奪い返すシーン、
先に組織のなかに入りこんだホーにキッドが
自分を撃つようにささやくシーンなども見せ場で、
人物のなかではキッドが一番おいしい役になってますが、その分犠牲は大きいと…

それでですね、マークはすでに伝説になっていて、
NYにいるホーの知り合いがマークの絵を描いて部屋に置いているんですが、
その中にシティーハンターの扉絵とまったく同じ構図の絵があって
驚いちゃったわけです。

扉絵は85年頃に描かれているので映画の方が後。
まさか漫画の影響はないでしょうが、なんとなくうれしいのでした。
今後はひとりで、漫画のあの回を実写にしたら…などと考えて楽しみたいと思います。
佐藤由美子登場の回あたりがいいなー、っつっても仕方ないか(笑)。


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さて、お話変わって、今度は太平洋の向こう側の映画について。
今年の中頃は偉大なミュージシャンの伝記映画が多かったですね。

『Ray』のレイ・チャールズ、
『五線譜のラブレター』のコール・ポーター、
そして『ビヨンド・ザ・シー』のボビー・ダーリン。

『五線譜…』はコール・ポーターの人生を舞台で上演すると見立てて
生涯を振りかえるつくりになってましたが、
『ビヨンド…』はボビー自身が彼の伝記映画に出演している設定で
話が進んでいきます。
ボビーを誘うのは、子供時代のボビー自身。

小さいころから心臓を患い、
十五歳まで生きられればいいほうだと言われていた彼の支えになったのは、
ショウガールだった母から教わった音楽。

「あなたはいつか、シナトラ以上のスターになるのよ」

コパカバーナの前に通りかかると母は彼にそう教え込み、
かくして彼の人生の目標は、尊敬し愛する母の望むスターになることと心に誓うのでした。

いまいち盛り上がりに欠けるというか、
人の人生を盛り上がるように描くこと自体難しい気もしますが、
わかりやすいクライマックスがあるわけではなく、映画は淡々と進んでいきます。

一番注目すべきなのはケビン・スペイシーのそっくり加減です!

歌も見事に歌いこなし、ダンスも軽やかに披露しています。
それだけで見る価値があると言えるでしょう。
話がかつらに触れる時はかなりどきどきしちゃいますが。

『ビヨンド』といい『五線譜』といい、
構成に懲りすぎて中身がぼんやりしてくるきらいがあります。

なぜ素直に人生を見せようとしないのでしょうか。
彼らの音楽や生い立ちは、変わったプロットで飾らなければ見せられないものなのかなぁ。
私は彼らの音楽の世界観を表現してくれればそれだけで十分映画たりえると思うのですが。
でも、最後の小さいボビーと一緒に踊るシーンはすごく素敵でしたね。

ウォールデン(彼の本名)は死んでも、ボビー・ダーリンは生き続ける…。
小さいボビーがウォールデンとして命を背負って旅立っていったように思える最後は、
美しく見えました。

確かこの映画が公開して何週かたった頃、
ボビーの奥さんであったサンドラ・ディーが亡くなっているはずです。
まるで、世の中に彼の名前が広まるのを見届けるように去っていくようで、
感慨深いものがありました。
彼女の台詞(実際にいったかどうかは分からないけれど)、
「観客は見た目だけで判断するものよ」という言葉は、
彼にとって本来の自分のあり方を気付かせるものだったと思いますね。
だからこそ、自分がスターを演じることに喜びと苦しみを同時に抱えていたことを
実感したのかもしれませんよね。


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コメント (2)
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