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作戦は小説よりも繊細なり…映画「オペレーション・ミンスミート」

2022-02-27 | movie/劇場公開作品

◆2月22日(火)◆

2月18日に公開された映画オペレーション・ミンスミートを見に行きました。
オミクロン株の影響で感染が拡大する中、引き続き劇場に行くのは出来るだけ控えていますが、
ファーザーに続き、待ちに待った敬愛するマーク・ゲイティスの出演作なので、劇場で見ないわけにはいきません。

 

英国での公開日は2021年1月7日から4月22日に延期されていたので、
状況によっては日本も延期になるかと覚悟していましたが、無事予定通りに公開されました。

『オペレーション・ミンスミート』本編映像解禁!作戦の全容は… 2.18公開

 

第二次世界大戦中の1943年。
イギリス連合国軍のシチリア上陸作戦を成功させるため、
諜報部員のユーエン・モンタギュー(コリン・ファース)と
MI5のチャールズ・チャムリー大尉(マシュー・マクファーデン)は
イアン・フレミング少佐(ジョニー・フリン)が提案した

「偽の作戦に関する文書を持たせた死体を海に放流し、ナチス・ドイツを欺く」作戦を支持する。
海軍情報部のゴドフリー提督(ジェイソン・アイザックス)に
「最も失敗しそうな作戦」と揶揄されながらも、

ユーエンの弁護士時代からの知り合いで有能な秘書官へスター(ペネロープ・ウィルトン)や
チャールズの誘いで参加することになった海軍省のジーン(ケリー・マクドナルド)らの協力を得ながら、
2人は作戦成功のため、入手した男性の遺体に「海兵隊員のウィリアム・マーティン少佐」と名付け、
詳細な個人情報や人となりを構築していく…


原作である『ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』は未読なのですが、
映画に登場するイアン・フレミング少佐(言わずもがな007シリーズの作者)や、
Mことジョン・ヘンリー・ゴドフリー提督は実際にはこの作戦に関わってないようなので、
脚色されているところも多いのだとなんとなくわかります。
この2人は英国の諜報部というイメージをわかりやすくするために登場させてるのかもしれませんね。

映画ではジーンに片思いするチャールズと、
彼女に急接近するユーエンの三角関係も描かれていて、
鑑賞された方の「恋愛要素いらない」という感想も見かけていたのですが、
原作ではどうだったのかなー。多分映画だけの演出なんだろうな。
(現実ではビル・マーティン少佐の恋人の写真を提供した女性はMI5の職員だったようです。)

嫉妬したチャールズがジーンを動揺させようと、
ダンスしながらユーエンの家族のことを吹き込む場面は「馬鹿だねぇ」と頭を抱えちゃったなー。
結果的には良かったのかもしれないけど。

それにしても、軍服着せて文書持たせてポイっと海に投げるのかー、
くらいの軽いイメージで見はじめましたが、
ユーエンたちが作り上げていくビル・マーティン少佐の人物像が、
まるで映画や小説の主人公の肉付けをしていく過程のようで、大変興味深かったです。
開封されたか確認するために、手紙の中にまつげを落としておくとか、
さらには死体がどこに漂着してドイツの諜報部員の誰に情報が渡り、
上官の誰に知らされるのか、特定の個人まで想定して計画が立てられていく様子に、
なんて緻密な作戦なんだ…と気が遠くなります。

事実は小説よりも奇なり、なんて言いますが、
現実の欺瞞作戦は物語よりも繊細ではるかに想像力を要するのが意外。
チャールズが自分の周りに本を執筆している軍人だらけで「作家に囲まれてる!」と文句を言っていて
劇場でもちょっと笑いが起こってましたが、
実はスパイは小説家以上に想像力とストーリーテリングの力を要する職業なんだなと納得しました。

この映画を見た当時は、ロシアがウクライナに進軍する前でしたが、
状況を注視しながら、現代の諜報活動でもあそこまでの繊細さが求められるかな…
むしろもっと派手なネット上の活動が求められたりするのかな…などと考えたりしていました。

 

ところで、私のお目当てのマーク・ゲイティスは、ユーエンの弟アイヴァーを演じています。
劇中では共産主義者としてゴドフリー提督に目をつけられているため、
ユーエンの立場を危うくする身内として、本人がいないところでもしばしば言及されている存在。
予告編では全然出てこなかったので心配でしたが、思ったより登場していてホッとしました。

実際のところ、アイヴァーは当時英国と同盟国だったソ連のスパイで、
う「インテリゲンチャ」のコードネームで英国の情報を流していたと見られています。
弟は弁護士としての活動をしていない兄が英国のスパイであることを知っていたようですが、
ユーエンの方は劇中のように共産党員ではあったが卓球と芸術を愛する変わり者だという認識だった様子。

さらにアイヴァーは国際卓球連盟会長として40年以上卓球の国際普及のために活動しています。
卓球というと強豪国として中国が有名ですが、
中華人民共和国が誕生して間もない1950年代には毛沢東と直接コンタクトをとって、
中国が世界的に活躍出来るスポーツとして紹介したのがこのアイヴァーだったのです!

劇中に登場する第20委員会のジョン・セシル・マスターマン委員長(アレックス・ジェニングス)は、
この彼の国際卓球普及への情熱が常軌を逸しているという点で行動を怪しんでいたそう。

さらに、アイヴァーは映画評論家でもあり、
(クレジットされていませんが)「下宿人」「暗殺者の家」「サボタージュ」「知りすぎていた男」「間諜最後の日」といった
初期ヒッチコック映画の製作補としても知られています。

本編の冒頭で、ユーエンが息子にジョン・バカンの小説「三十九階段」"The 39 Steps"を読んで聞かせ、
アイヴァーが人目を気にしながら外出する?姿が映し出されますが、
これを映画化したヒッチコックの「三十九夜」の製作にもアイヴァーは関わっているのです。

この他、映画テレビ技術者協会、世界平和協議会、動物保存協会と様々な肩書きを持った人物で、
アイヴァーひとりだけを取り上げても面白すぎて1本映画が作れそう!!
考えてみると、役者で製作者で脚本家でコメディアンでLGBT活動家でもあるマークにはぴったりの役かも。
キャスティングの妙だな。


そうだ最後に。第二次大戦中の暗号解読という点でエニグマ解読に挑むアラン・チューリングを描いた
「イミテーション・ゲーム」を思い出したりもしていたのですが、
ペネロープ・ウィルトンが暗号解読班として女性2人を連れてきたのが記憶に残りました
「イミテーション・ゲーム」の中でチューリングが仕掛けたテストを
「まさか女が解けるわけがない」と思ってたのを考えると、
あそこに連れてこられた彼女たちはそんな時代の社会環境で職を得てる相当優秀な人材なんだろうなー。
彼女たちの経歴も面白そうですよね。

 

参考:

The Incredible Story of Ivor Montagu: The Godfather of Chinese Table Tennis - Populous

Ivor Montagu - Wikipedia

Ivor Montagu - IMDb

ピンポン外交の陰にいたスパイ(柏書房株式会社)←読んでみたい

 

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古き良きロマコメの王道を行く! 映画「恋人を取り戻すには」

2022-02-16 | movie/【今週のウチシネマ】

2月14日に、Amazonプライムビデオで配信開始された映画恋人を取り戻すには(I Want You Back)」
(元はこいびとをとりもどすにはというタイトルだったのですが配信後に変更したらしい。)
映画「パシフィック・リム」や「レゴ・ムービー」などで知られる
チャーリー・デイが出演するロマコメということで以前から配信を楽しみにしていました。

ジム・トレーナーのノアに突然振られたエマ(ジェニー・スレイト)、
そして女優の夢を追いかけたいという理由で長年の恋人アンに振られたピーター(チャーリー・デイ)。
同じビルに勤める2人は偶然知り合い、振られたもの同士で意気投合。
相手は自分といるべきなのに分かっていない、と信じる2人は、
新しい相手と付き合い始めたお互いの元カレ&元カノを別れさせるため、
エマはアンの学校にボランティアとして忍び込み、相手を誘惑。
ピーターはジムに入会し、ノアと仲良くなってエマとよりを戻すようそそのかす計画を立てる…

 

作中で引用されている「クルーエル・インテンションズ」は実は見たことないんですが、
元カレを別れさせようと奮闘させる「ベスト・フレンズ・ウェディング」を思い起こしたりするロマンティック・コメディです。

正直、それほど期待はしていなかったのですが、
私にとっては「マン・アップ!」以来のお気に入りロマコメの一つに仲間入りしました!

わかりやすくてありがちなコメディと思わせておいて、最後まで紆余曲折あるのが見所。
何より、最後のオチが古典恋愛映画のように伏線がキマってて嬉しくなりました。
主人公たちの出会い方と結末。ここ大事。
ベタなようだけど、クラシックな定石をキッチリ押さえてるから、そこまで退屈にならないんですよね。
会話の多さも好きなポイントの一つ。

 

エマとピーターが出会った時点で、2人でくっついちゃえば簡単なのに、なんて思っちゃいますが、
ハンサムなノアと付き合ってたエマ曰く、ピーターは1、2年かけて愛を育んていくタイプの男性なので眼中にないらしく、
ピーターがノアの相手を誘惑するアイディアも却下されます。

(ピーター「みんな僕と友達になりたがるんだ。大学時代も女の子たちが『あなたはいい友達ね』って」
 エマ「あー、かわいそ」ってやり取りに笑う。言い方!笑)

でも、ピーターは子供と遊ぶのが得意で高齢者思いの好男子だし、
生徒の相談に乗ってあげられるエマはユーモアがあり気さくな大人で、
失恋仲間(劇中では「悲しみの姉妹」なんて表現されてるのがまた良い)というだけでなく、
お互いの良さを見つけて相手の本質を褒め会える間柄になっていくのです。

最近「ルパン三世」Part.6の中の某エピソードを見てから
関係を構築する登場人物の稚拙な描写に対してずっとムカッ腹立ってたので、(引きずりすぎ・笑)
このそれぞれの関係性が深くなる過程を見てかなり満足しましたし、
腹の立つ対象には「少しはこういう王道ロマコメでも勉強してこいや!!」と思ったりしました(笑)。

 

エマが学校演劇に無理やり出席する羽目になった男子生徒に明かす大人の秘密にも共感します。

「大人はみんなしっかりしてるふりをしてるの
 ヘマをやらかさないようにって思いながら
 で、本当に失敗すると本当に惨めな気持ちになる」

大人になって恋愛映画見ると、彼らが経験する辛い&恥ずかしい出来事も割と経験済みで、
自分のことのように痛みを感じるから、
このセリフで冒頭の非常階段で泣いてるエマとピーターを思い出すし、
過去に非常階段で泣いてた自分のことも思い出す(笑)。
ホント、大人って辛いよね…。

終盤でエマとピーターがもう会うこともない、となった時も、自分のことのように辛く感じたなー。
感情移入できるということは楽しめているという証拠ですね。

まぁ、本編は90分くらいでもいい長さだとは思いましたが、
久しぶりに楽しいロマコメを見て、心からスッキリしました。

 

ちなみに、チャーリー・デイの吹替を高木渉さんが担当しているのも嬉しい。
声のトーンが似てるのに、意外と「モンスター上司」以来?の吹替なのかも。
もしチャリデイが日本語喋ったら高木さんそのものだと思うんだよなー。

あと「パシフィック・リム:アップライジング」で共演してたチャリデイとスコット・イーストウッドが
一緒にランニングしてるのを見るのも、異世界感があって面白いです。
ネイトと一緒に走る羽目になるニュート(笑)。

I Want You Back - Official Trailer | Prime Video

 

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