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NODA-MAP第11回公演『贋作・罪と罰』

2005-12-17 | stage


行ってみたら、一番前の席。しかもどまんなか。
いつもなら、あまり舞台が近すぎるのは、全体が見えなくて嬉しくないのですが、
今回は囲み舞台で中央に舞台。
『赤鬼』のときもそうだったけど、囲み舞台は、わりと近くても見やすい。
反対側に対しても演技をしているから、近すぎるとは感じない。
とは言っても、ちょっと足をだせばそこはもう舞台で、目の前を役者が行き交います。

初演の『…罪と罰』は映像で観たのですが、
他の野田作品と比べるとあんまり印象深くなくて、
ただ、音の作り方は工夫してるなーと思っていたのですが、
今回は全く違った演出方法で、
初演と再演の間の野田さんの歩みが垣間見れる作品になっていました。
(↓以下ネタバレになります。)

http://www.nodamap.com/




二重のカーテンや、エアクッション(っていうのだろうか、あのプチプチできるヤツ)、
さまざまな種類のイスを使って演出する方法で、
『キル』や『TABOO』あたりの使い方と似ています。
ダイヤ型の舞台にはそれぞれの端にスロープと階段が付いていて、
役者はそこを上り降りすべり(椅子を使って)します。
あとは発光する棒を4本立てて、戸に見立てたりしていました。


主人公の女塾生・英の松たかこは、見た目英そのもの。
髪を高く結い、赤い袴に身を包んでいる彼女は、
何者にも屈せずに理想を貫いてきた英の誇り高さを感じさせます。

そこに英の親友・才谷役の古田新太の軽さ(いい意味で)。
英の、あまりの信念の強さゆえに殺人を犯し、脆くなっていく自信と
才谷の、倒幕のために節操なく草履を売る行動を対比させて見せて、
実は、志を同じくし、理解し合っていると思われた二人が、
全く違う理想を抱いていることがよく分かります。

何の舞台にどんな脇役で出ても、主役ばりの存在感を見せ付ける古田さん、
松たかこと同じ塾生には見えない…けど、おちゃめだから、まぁいいか。
クライマックスの英と才谷の場面は感動的。
「わたしの彼方」…聞き慣れるとこっぱずかしいですが、
罪の意識と自分の信念の間で揺れ続けた英は、
英の自我を受け止め、思想を受け継いだ才谷の心に響いて開放される。
あ、これってラブストーリーだったのか!

そして、段田安則扮する都と宇梶剛士扮する溜水の存在。
それぞれ幕府側の人間と、倒幕の後ろ盾になっている人物。

都と英の腹の探り合いのような台詞のやりとり。
推理劇を思わせる緊張感が漂ってきます。
段田さんは本当に素敵。
松さんと対峙する立ち姿だけでドキドキします
…なんだか色っぽいのです。

溜水は何故そこまで民衆を煽ろうとするのか、
英の妹・智(美波)と結婚を望むのか。
彼自体が、今の社会の後ろに潜んでいる何かを暗示させる存在のような気がして、恐ろしいです。

ところで、野田さんの演技、
見ていく度にどんどん見慣れて、今では普通に思えます。
慣れるってすごい! 
今回の舞台では父・聞太役の中村まことさんが気になりました。
あと、ナイロン100℃の村岡希美さんが出ていることが違和感があって面白かったです。
ナイロンのノリで見ると全てが冗談のように思えてしまうけど、
NODA-MAPに出ているなんて、なんか不思議だー。
大倉さんや犬山さんだと意外と感じないんですが。

後で戯曲を読み返してみたら、かなりはしょっている所もあるし、
削っているところが多いです。
その分、芯だけが残って、ストレートでダジャレも控えめな(?)
直接的な表現になっているのではないでしょうか。
今回の公演を見て、他の野田さんの作品のなかでも、
かなり分かりやすいものなんじゃないかと思います。

でも、今の世の中、理想がない中で殺人が横行してます。
欲望と憎しみさえあれば起こる罪と罰。
それは誰の目から見ても許されざる罪のはず。
100年後の今の若人はこの作品を見て、何を思うでしょう。
私はちょっと思ったのだけれど、
理想なき犯罪者は、大川の岸辺の緑に抱かれたことがないんじゃないかな。
目に沁みる緑を一緒に見たいと思える心も。
そして理想や志がないことに嘆いているのかもしれない。
英のことを「とうへんぼく」どころか
実はうらやんでしまうのかもしれない。

今回は珍しく、また、見に行きたいと思っております。

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