だから、ここに来た!

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無意識な女の性『女のみづうみ』

2010-02-13 | movie/【今週のウチシネマ】

CS放送で「太陽にほえろ!」や「木曽街道いそぎ旅」を見ながら、
「山さん、かっこえぇぇぇ…」
「銀次、渋ぅぅぅうい!」
とひとり、ひたすら呟いている毎日です。

そんなわけで、今日も露口茂様、出演作です。
吉田喜重監督の「女のみづうみ」



川端康成の「みづうみ」を元にしているようですが、
監督の奥様でもある岡田茉莉子演じる
裕福な日常の中にいる主婦、宮子が本作の主人公。

家のリフォーム担当のデザイナー北野(早川保)と不倫関係にある宮子は、
密会中に自分のヌード写真を撮影させますが、
帰宅途中の暗い夜道で見知らぬ男にネガを奪われてしまいます。

それからというもの、宮子の元には
その男から、写真を返してほしければ会えという、
脅迫の電話がかかってくるように。


男の要求で北陸に向かった宮子、
それを追って駅で合流する北野。

北野が追ってきたことを知った宮子は不服そう。
ネガを取り返し、北野との関係も清算する気まんまんだったわけですから。
自分が強迫男に体を投げ打つ覚悟はとうに出来ているわけです。


北野は写真屋で、現像の注文をする例の男を発見。
露口さん扮するその男、銀平に、
ネガを返さなければ、強盗容疑で警察に突き出すと食いつきますが…

「言ってもいいのかな。
 みんなバレるよ、君とあの女とのこと。
 それでもよかったら警察もいいね。」


銀平は目が泳いでるわりに、口調は冷静。

「君もいい気なもんだね。人の奥さんとのんびりこんなところまで遊びにきて」
「君のせいだ」
「けっこう楽しんでいるようだな」
「君は薄汚い野郎だ。最低の男だ」
「それはあんたに言われなくたって自分が一番よく分かってる」




「惚れた女を脅迫してでも手に入れたいストーカーですけど、なにか?」
てなくらいの勢いの銀平…。


宮子と北野は、ついて回る銀平の無言の圧力を感じつつも
ちゃっかり2人の時間を楽しみますが、そこに北野の婚約者が登場。

婚約者までやって来てうんざりぎみな宮子は、写真屋に出向き、
好色なそこの主人が焼き増したヌード写真を買い取った後、
浜辺で銀平と出くわします。


「あれ、返していただけます?」
「あれを返してしまっては、
 せっかくあなたと結ばれた線がぷっつり切れてしまう」
「私、覚悟はしてきましたわ」
「覚悟? どういう意味ですか」
「そんなことまで私に言わせるおつもりですの」
「ハハハハ…」
「からかってらっしゃるのね。私帰ります」
「(女の手を掴み)…冷たい手だ、あなたの手は」





銀平は彼女に、予備校の建物で
ホテルから出てくる2人の姿を見ていたことを明かします。


映画の中では特に触れられませんが、
原作の設定に基づいているとすると、
銀平は女生徒との恋愛が元で教師を辞めているはず…

欲望に身を任せて後がなくなった銀平と、
彼のために平穏な生活の危機を迎えた宮子。
どちらもある意味崖っぷち。




「僕は、あの写真のあなたを愛していたらしい
 現実にはいない写真の女を」



岬に向かった銀平は、ついて来た宮子にそう語り、
彼女は、銀平が宮子からの愛情を欲していることに気づくのです…。



何不自由のない人妻をめぐる男たち、
の物語ではなく、
不倫→写真→脅迫と続く、後ろめたい行為と事実、
さらに、北陸の地での脅迫者との対面でさらなる深みにはまっていく、
女の性を描いていると言えます。

理性ではなく、肉体で解決を図る宮子。
女の私から見ても、確信たっぷりにことに及んでいるにも関わらず、
ついつい流されてしまったような言動をしているように思える。
時代の違いでしょうか…
欲望に直面しながらそれを最後まで認めていない
そんな女性だと受け止めました。



“松竹ヌーヴェルバーグ”と呼ばれた映像は、
写真映画ともいうべき美しさですが、
凡長さもいなめません。
最近だと写真的な「ゼラチンシルバーLOVE」なんかがあったけれど、
ストーリーだけなら1時間でまとめられる内容。

後半に出てくる、映画の撮影場面は、
性の対象としてみられる偶像の女性の暗喩なのでしょう。

宮子の裸を撮影した北野、
その写真に魅了された銀平、
それぞれが、彼女を「生活する女」として見ていないということなのかも。



それにしても、銀平が教師と聞いて、
「絶対生徒にいかがわしいことしてるに違いない…!」

と思ったら、やっぱり元は恋愛がらみで退職しているとは。
キモい!粘着野郎!
なのに素敵だと思ってしまう自分がこわい。うひゃひゃ。

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抱擁のかけら

2010-02-13 | movie/劇場公開作品
久しぶりに遠出しました。

…新宿まで。


新宿ピカデリーで、
ペドロ・アルモドバル監督×ペネロペ・クルス主演の新作、
「抱擁のかけら」を観賞。
地元では残念ながら上映していないので。




 本当の名前を封印し、常にペンネームを名乗っている
 盲目の脚本家、ハリー・ケーン。
 彼の生活はエージェントのジュディットと
 彼女の息子のディエゴが支えている。

 そこにライ・Xと名乗る青年が現れ、
 共同で脚本を執筆し、映画を作りたいと提案。
 彼の正体を知ったハリーとジュディットが
 彼を遠ざけようとしていることに気付いたディエゴは
 母の留守中、ハリーに質問する。
 ライ・Xの正体と、ハリーの過去について。



「アルモドバルらしくない“普通”の作品」
なんて評判は耳に入っていたので期待はしないでいったので、
予想以上に楽しめました。


なにしろペネロペだけで見る価値のある映画だわね。
ここ数年のペネロペの美しさはこれ、なんだろう。
オードリー・ヘップバーンのような清純な姿あり、
ラテン系美女らしい情熱的な濡れ場あり。
女の私でもよだれが出そうな…。

ブチギレ女役の「それでも恋するバルセロナ」でも
老教授を首ったけにさせる女学生役の「エレジー」でも
肝っ玉母ちゃん風の「ボルベール」でも美しかったが、
これは極めつけだね。


ペネロペが演じるのは
ルイス・オマール演じるハリーの恋人レナで、
彼女は、もともとは映画監督だったハリーの作品の主演女優であり、
大物実業家の愛人でもある。

見ているものは、おそらく、
レナをめぐり2人の男が対立したのだろうと想像する。

ハリーが盲目になり、本名を捨てた理由、
彼の引き出しにしまってある写真に隠された逃亡の日々…
誰も知らなかった秘密が、少しずつ少しずつ紐解かれる。

隠されていること自体は目新しい内容ではないけれど、
秘密を抱えるせつなさとあきらめと、
明かすことで迎える決着を描くことがこの話の軸なのだと思う。

母が過去を隠していることを知ったディエゴは
自分の起こした事故を隠すことで、
なにか同じ罪を抱えようとしているように思えたし。

そういえば、「ボルベール」も“秘密”が印象的だった。


抱擁のかけらっていう、邦題もなかなかだな。
いやー、よかったな。やっぱり、見に行って。
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