ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅           アシアナ(医療監房)・・・・・1

2012-12-05 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ
     アシアナ・ホスピタル
 アシアナ・ホスピタルはデリー中央第4刑務所内にある。麻薬で逮捕されたスタッフ中毒の受刑者を治療、更生させる医療監房である。アシアナは第1~第4刑務所内で最も小さな収監区・ワードであろう。ワードゲートを入ると狭い前庭があり2~3歩階段を上がると10畳程の玄関フロアーになっていた。左側は薬局、事務室等があり右側はドクター室、その奥の廊下を進むと監督官マダムの執務室がある。玄関フロアーから5mぐらいの渡り廊下の先に病棟出入り口の鉄格子があった。裁判所への出頭、ムナカッタ(面会)以外ワードゲートから外へ出る事は許されない。例外は3度の食事とティーを厨房へ取りに行く模範囚だけである。治療が終ったとドクターが認めてもマダムの政治的判断によって退所許可が出ない事もある。マダムによる他ワードへの移転手続きが終了する迄ここを出る事は出来ない。ぼくは激しい中毒症状と自殺の恐れがあるとして緊急に移送、入所させられた。24日夜、逮捕され27日アシアナに入所するまでオールド・デリー裁判所で私服のポリからコップ一杯の水を飲ませてもらった以外何も食べていなかった。体力は消耗し限界に達していた。
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ジャンキーの旅      薬物後遺症と心の傷・・・54

2012-12-02 | 3章 デリー中央精神病院・入院記録


   12月28日(木)(入院して25日)

 抜けたな、たぶん抜け切ったと思う、ドラッグの深い闇から。26日の夕方からドラッグをプッシュアウトする新しい薬に替え、27日は非常に大切な注射を打った。今日の朝もシスターはぼくの顔を見ては何度も
「大丈夫、気分は悪くない?」
とぼくに聞いた。27日は朝から少し頭痛がするし背中も痛んでいた。それが時間の経過に従って痛みは酷くなり我慢ができなくなった。夜の投薬後に追加の痛み止めを貰って飲んだが頭はぼぅとして眠れない辛い一夜だった。3~4時間は眠ったのだろうか、目が覚めると外はまだ暗かったが痛みは消えていた。朝のティーと朝食が終り、時間が過ぎていくと身体の動きが良くなっているのに気づいた。頭もすっきりしている。ドクターは今回の治療に自信を持っていたように思えたが、ぼくは
「あぁ、そうですか」
と言っただけで内心は信用していなかった。
この病院で後、一晩だけトラブルを起こさなければ退院が出来る、そんな事しか頭になかった。
 ぼくは前庭へ出て歩いてみた。身体が軽い。前に出した足にぼくの力や筋肉の働きを感じる。足を前に出し惰性的に身体を移動させていたのとは違う、前足が後ろに残っている身体を引きつける筋肉の力があり、後ろ足は地面を蹴る、これが歩くということか。昼前にぼくの体内から何かがすぅと抜け出していくのを感じた。本当だろうか、ぼくはまだ信用できない。ぼくの体内の表層部のドラッグをプッシュアウトする事ができたとしても脳の深部に巣食っているスタッフの赤い蓮華は生き残っているのではないだろうか。一部の不安が残っているにしても26日と27日の治療は素晴らしい効果を生み出したのは事実だ。
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