ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅        遠い道・・・・・15

2014-02-05 | 4章 遠い道・逃亡

 夜、フレッドからスタッフ5gを受取るとぼくは二ナとランジャンの部屋に寄った。ぼくが二ナと会ったのは2年以上前だ。その時にはランジャンはすでに逮捕され女1人、二ナは誰かと組まなければ生きていけなかったのだろう。ランジャンが釈放され彼女は元に戻った。フレッドは淋しそうだがしょうがない、隣同士というのはちょっとまずい気もするが。第4刑務所に面会に来た二ナはアフリカンを信用しないで、スリランカ人グループに入れとぼくにアドバイスをした。それはランジャンがいたからだろう。だが彼はグループを離れて単独行動をしていた。時には彼からスタッフを買う事もあったがそれ以上の繋がりはなかった。
彼は背が高い、ベッドの上に立って手を伸ばし扇風機の羽根から小さな紙包みを取る、開くと注射器だった。
「打つか」
「あぁそうだなぁ ちよっとアメリカンにしてくれ」
打ち過ぎるなと言っただろう、だから入院することになったのだ、と奴は笑っている。
「ゾンビ・ムスタファンは元気か?」
「おぅ、お前に会いたいと言ってたぞ」
「ムスタファンはゾンビなの?」
「気をつけろ二ナ、奴は恐いゾンビなんだぞ」
3人で腹を抱えて笑った。ぼくはいつ笑ったのだろうか?随分と長い間、笑ったことがないような気がした。
 昨日、部屋に閉じ込められ禁断に苦しんだ二ナはその反動からか、オーバードースでべろべろになって自分の意識の中に入ろうとしていた。深い闇は胎内だ、胎児のように身を丸め羊水に揺れる。ぼくは彼女を病院に入院させ治療を受けさせようと真剣に考えたことがある。しかし彼女が一時的に回復することができたとしてもスタッフを断ち依存症の苦しみに耐え続けることはここデリーでは不可能だ。二ナからスタッフを取り上げたら彼女は狂い苦しみ死んでいく。だったら今の生活を続けて苦しまずに死んだ方が彼女にとって幸せだ。二ナの命はもうそんなに長くはない。
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