ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

第5話  両替ババ・・・2  ババと乞食と兄ちゃん

2015-10-22 | 第5話 両替ババ


(photo by M Sakai) 


 インドの乞食は気楽そうにみえるが乞食なりに苦労があるようだ。それはどこにでも勝手に坐って商売をして良いわけではない。バクシシとして実入りの多い場所がある、そこを中心にしてそれぞれの乞食が坐る場所と間隔が決められている。稼ぎが多い場所に10人の乞食が集まってしまえば稼ぎが分散する。それ以上に、その場所を持っている乞食の権利は守られない。そうならないのは乞食の協同意識があるからだろう。新参の乞食が来て乞食と乞食の間が広いから坐ろうとしても追い出される。その距離は乞食達が生きていく為に必要なバクシシを得られる間合いなのだ。新参の乞食には列の最後尾が与えられる。その場所で我慢して順位が上がるのを待つか流れの乞食を続けるか、乞食の世界も厳しい。
リシケシのガンガは緑にも青にも見える。緑はヒマラヤの山を写しているのか。
 両替ババに強力なライバルが現れた。別館下の露天はババと出店のババの2人だけだった。お互いの取り扱い商品が異なっているので問題はなかった。それに異業種であれば露店は増えた方が集客という観点からみても望ましい。今度、新しく露店を始めたのは20代の兄ちゃんだ。ババの右側つまり下流へ10mぐらい先の場所に開店した。兄ちゃんが売っているのは1種類だけで魚の餌だ。これにはぼくも驚かされた。がそれ以上にババは苦難のどん底に突き落とされた。魚の餌はババの主力商品だからだ。1ルピー両替しても10パイサの利益しかない、10人両替してもやっと1ルピーだ。ババは餌袋を持って「これが1日に10個でも売れたらな~」と何度呟いたことだろうか。ババのその主力商品と競合する露店が鼻の先に出されたのではたまったものではない。兄ちゃんの店に数人の客が立ち寄るとババはもう自分の商売など目に入らない。じっと兄ちゃんの方を見て、両替と言う客の声も聞えない。これはやばい事になりそうでぼくは心配になってきた。兄ちゃんの店で買ったビニールの餌袋をぶらぶら提げてババの目の前を通る。それをじっと睨みつけていたババは我慢の限界か頭に血が上ってがばっと立ち上がった。
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