ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅        遠い道・・・・・4

2013-11-01 | 4章 遠い道・逃亡

 暗い部屋だ。夜が明けたかどうかも分からない。ライターを点けて時計を見ると7時だ。明け方には少し眠ったようだが身体は重い。のんびりとは出来ない。路地裏のインド人のチャイ屋で朝食をとった。甘いチャイとバタートーストは美味しかった。いつものジュース屋に寄りカウンター前の椅子に座って通りを見ていた。朝まだ早い時間だというのに通りには大勢の人、人の流れだ。どうしたというのか年末だからなのか、この大勢のインド人達にはそれぞれの目的があるに違いないのだが。新年と言ってもインドでは特別な行事はない。1月2日にぼくは裁判所へ出頭するのだから官公庁は通常どうりだ、外国企業は休みだろうが。
 ホテルに戻ると前回ぼくが泊まっていた部屋のドアが開いている、中を覗くとラジューが掃除をしていた。シーツ交換はしなくて良いからゴミだけ片付けてくれと頼んで、直ぐに部屋を替わった。明るい部屋は気分が晴れる。3階の窓から通りを見下ろすと相変わらず忙しそうなインド人達が歩いている。向かいの商店屋上にある出入り口のドアが開いた。出てきたのは何と驚異のガニ股男ナイジェリア人のアシュラムではないか、ぼくと同じ日に釈放された奴だ。何をしているのかあんなところで一瞬、声を掛けようかと思ったがやめた。ぼくには時間がないしホテルも知られたくなかった。早くマリーのアパートへ行き打ち合わせをしなければならない。
 冬のオート力車は寒い。運転席と客席の出入り口の両横は素通しだ、ドアなどない。力車が走り出すと両横から情け容赦なく冷たい風が吹き込む。マリーのアパートに着いた時には身体が冷えて震えがきた。見ると懐かしい、この建物に2ヶ月近く住んでいた。アパートの裏へ回り下からマリーと呼ぶと2階の窓が開いた。ちょっと吃驚したような顔をした彼女が下にいるぼくを見た。
「ハーィ、トミーじゃない、どうしたの?ちょっと待って今、開けるわ」
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