ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

第3話 出店のババ・・・5  神秘的な卑猥さ

2015-11-18 | 第3話 出店のババ

 毎日、暇があるとババの店へ通い続けている。戦後といっても今の若い人には分からないかもしれないが、日本でもやっとテレビが一般家庭に普及し始める頃まで地方の村や町に怪しい露店が出ていた。何やらいわく因縁浅からぬ品物を並べて口上を述べ客を集めていた。ババの商売にはそんなところがある。二足三文の品物から「これは売らない、値段の付けようがない」という珍しい、興味ある品物も置いてある。その中ですごい物を見つけた。菩提樹の実で縦の線が1本しかないとても珍しいものだ。菩提樹の実は前後縦に少し出っ張った2本の線がある。2本の線が普通だが稀に突然変異したのか3~5本の線を持った実がある。この実は仏教でもヒンズー教でも大切な数珠に使われる。実には大小があり極小さい粒で作られた数珠は高価であった。
普通の粒はまとめて売っているが、3~5本の線を持った粒は別の入れ物に入れられていた。それなりの値段が付けられ特に高値がつくのは5本の線を持った粒だった。今ババが
持っているのは極めて稀な1本線である。ぼくは良く数珠屋に行っては珍しい粒を見せて
もらっていたが1本線を見るのは初めてだ。
インド人は金になると思えば粒に手を加えて線の数を細工することくらいお手の物で、この1本線が自然のものなのかどうかは何とも言えない。しかし、もしこれが細工だとしても芸術的価値は下がらないだろう。
 粒は親指の先ぐらいの大きさで縦の割れ目を除いて全面に丸く小さな突起物がある。粒の上から真下へ1本の割れ目があり、その割れ目に寄り添うように官能的なふくらみがある。何ともいえない卑猥さをただよわせ、割れ目のふくらみが今にもぬめぬめとふるえそうである。ついぼくの下半身の逸物が勃起しそうであった。割れ目をじっと見詰めるぼくを見てババはニヤリと笑っている。これは幾らだ、と興奮して聞くぼくに、これには値段は付けられない、と澄ました顔でババは答えた。
 法螺貝はビシュヌ神の持ち物の一つでありビシュヌ寺院には必ず奉納されている。ババの法螺貝は古代のものらしい。大きい法螺貝の胴の真中に突起物があるが、それがリンガ(シバ神の象徴、男性性器)の形をしている。胴のうず巻きは下部から右回りの波状に広がり神秘的な模様を描いている。これも値段はない。ババとぼくが真剣な顔をしてやりとりしているのを露店の両替ババが見て、あんたも好きだねという顔をして笑っている。
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