ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅              ブラック・アウト・・・19

2012-10-01 | 2章 ブラック・アウト
4日前にぼくを脅した裁判官だったがキャンセルについて彼は何も言わなかった。次回、12月4日の出頭日を指示されただけで無事に終った。しかしスタッフを続ける限り今回と同じ問題を起こす危険性は残る。
 パテラハウスでピーターに会った。
「俺も12月にはリリースされる。お金の手配がついた」
「そうか、それは良かった」
第4刑務所内にある薬物中毒者更生施設で初めて彼に会ってから1年が過ぎていた。お金さえあれば保釈という条件がつくにしろ刑務所から出る事が出来る。肝炎で死んだクリスはどうなった、アミーゴは何をしているのか、ジャクソンやフランシスの刑はいつ終るのか、もうすぐ寒い冬がやってくる。去年、クリスマス・カードを書いていたアミーゴは後何回クリスマスを刑務所で過ごせば出てこられるのか。
ぼくと前後してリリースされた者は、
アシュラム、チャチャ、ムサカ、ショッカン、ランジャン、チャーリー、パラ、ムスタハンとアルファー等がいる。釈放されると彼らはすぐドラッグ・ビジネスに精を出している。逞しいアフリカンだ。
12月1日、ぼくは大使館へ日本から送金されたお金を引取りに行った。いい加減な言い訳でその場を取り繕うとしたぼくに
「何度、嘘を吐いたら気が済むんだ」
「そんな嘘がいつまでも通ると思っているのか」
Bさんは机から立ち上がり大きな声でぼくを叱責した。怒りの目はぼくを捕らえている。
執務室にはAさんもCさんもいる。事の成り行きを見守っているだろう。ぼくは決断を迫られている。考える時間が欲しい。黙って下を向いた。
「この状態を続けて、これから先はどうなる。またお姉さんに心配をかけるのか」
もう逃げるのに疲れた。どの様な形であれ今の生活にけじめをつけなければならない。ぼくはすべてを認めた。立ち上がり深く頭を下げ
「申し訳ありませんでした」
もう良い。何かが終り、何かが始まるのかもしれない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ジャンキーの旅      ... | トップ | ジャンキーの旅      ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

2章 ブラック・アウト」カテゴリの最新記事