ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅          アシアナ(医療監房)・・・・・17

2013-02-09 | 2章 デリー中央第4刑務所アシアナ


 アシアナの規則を破った者は厳しい仕置きを受ける。2人のインド人が許可を得てゲート外に出た。戻ってきたときは必ず別室でボディーチェックを受ける。ドラッグの所持、使用は懲戒用の監房があるし刑期の加算につながる。今回の2人はビリという煙草を持ち込もうとして見つかった。マッチ棒1本、マッチの擦り板、タバコ屑でも持ち込もうとして見つかると刑務官から激しい暴行を受ける。
 バケツの水に赤茶けた泥を入れドロドロに溶かしそれを腰巻きだけの全身に頭から掛けられた。隙間なく汚泥が塗られる、その姿で夕方まで外に立たされていた。当然、昼食もティーも抜きだ。全身に塗られた汚泥が乾いていくと本当の泥人形になってしまった。ぼくはあまりの滑稽さについ笑ってしまった。ふたりはマダムを見つけては後を追い真剣に許しを乞うたが夕方施錠まで許しは出なかった。
 原因はなんだったのか分からない、1人だけ全員の前に立たされていた。マダムから指名を受けた者は彼の正面に立ち力一杯平手で彼の頬を打った。次々と打つ人間をマダムは指名した。彼の唇に血が滲んでいた。一度だけマダムはぼくを指名した。
「ぼくには出来ません」
「命令です。やりなさい」マダムの厳しさを見た。
 前庭に広く筵を敷いた。ヨガを治療の一環としてマダムは取り入れた。それに参加した者には黒砂糖の塊が与えられる、みんな甘い物には飢えていた。ぼくはアシュラムでヨガを学んでいた、初歩的なハタヨガのポーズで難しくはない、毎回参加しそれを少しずつためてベッドの下に隠していた。食事の残りを病棟に持ち込む事は禁止されていたが禁断による不眠が続いていたぼくは夜中空腹に悩まされていた。夕食のチャパティーを一枚残しポケットに隠して持ち込んだ。冷えて硬くぼそぼそになったチャパティーにこっそり黒砂糖を挟んで食べた。
 
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