ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ジャンキーの旅              ブラック・アウト・・・10

2012-04-04 | 2章 ブラック・アウト
 東京銀行へ行く事も考えてみた。パスポートのコピーで送金されたお金を受取る事が出来るのか、これは銀行の日本人スタッフに確認してみなければ分からないが、恐らく無理だろう。3月頃、銃を持った刑務官に連行され東京銀行に行ったことがある。行員もぼくの事は憶えているだろう、とてもじゃないが平気な顔で銀行内に入る事は出来ない。大使館口座を使うしか方法はないのか、だが明らかに大使館のBさんはぼくを疑っている。パスポートのコピーが使えるかどうかだけでも明日、裁判所で確かめてみよう。二ナが一緒に行ってくれる、何か良い方法が見つかるかもしれない。
 翌朝、ぼくは裁判所へ行く用意をしてピクニックGHに行った。ドアをノックして部屋の中へ入ると、フレッドはベッドの上で壁に凭れ掛かり茫然としていた。見ると奴のズボンは焼けている。ベッドの真中部分も黒くなりウレタンが焼け縮れていた。
「どうした?」
「夜中、火事になった」
ベッドは濡れ下には水溜まりができバケツが転がっていた。二ナは壁際で身体を抱くようにして毛布に包まって眠っている、ぼくは一人で裁判所へ向かった。
「裁判官、お願いがあります。デリーで生活をしていく為にはお金が必要です。このパスポートのコピーで日本からの送金を東京銀行で受け取れるようにして下さい」
「このコピーで受け取れるでしょう。一度、銀行へ行って確かめなさい。何か書類が必要であれば出します」
二ナが一緒に裁判所へ行ってくれるというので、この件についてはぼくなりに考えを纏めていた。ぼく1人でも出来ないことはない。
恥も外聞も捨てぼくは東京銀行へ行った。 
コメント
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