ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

ガンガ河畔・夕方のババ・・・12

2005-03-07 | 第3話 出店のババ
 出店のババの今日の売り上げはたったの2ルピーだ。ババはぼやくぼやく。若いインド人のグループが覗きにきたのでミニパイプを2個1ルピーで売ってやった。このミニパイプはインドのニコチンが強い煙草はとても吸えないだろうと思ってぼくが日本から持ってきたものだ。せっかくインド人に売ってやったのにババはちっとも嬉しそうな顔をしない。あんまり可哀相だったので売り上げに協力してやろうとケースの中を見ているとぼくの誕生石であるムーンストーンの指輪があった。値段を聞くとババはパイサ・ナイ(お金はいらない)と元気がない。かなり落ち込んでいる。貰った指輪を左手の薬指にはめていると左手にするなとババから怒られた。左手はお尻を洗う不浄の手だ。ババ達は右手に指輪をはめている。
 ババのぼやきも良く分かる。この炎天下、露店を開いて1日の売り上げがたった2ルピーにしかない。夕方6時過ぎまで店をやって得たお金2ルピーと言えばチャイ1杯分の金額だ。それでもババは店を片づける頃には深刻そう顔をしていない。明日は明日で何とかなるさ、くよくよしてもしょうがない。そんな気持ちの切り替えの早さ、それが出来るからこそ、この過酷なインドで生きていける。しかし、あのガンガの水をよく平気で飲めるよ、冷たくて美味しいのかもしれないがボウフラが湧いている。洗濯もすればトイレの後その場所で手も洗う。水道も電気もない野宿生活ではガンガの水はババ達にとって聖なる水に違いない。ガンガに吹く風は涼しい。厳しい顔をしたババも無事に過ごせた1日を夕陽と神に感謝する。毎日がキャンプのような生活だ。いい年をこいた親爺3人がチラムを吸いながら夕食の用意をしている。いつ食事が出来上がるのか分からないが、何も急ぐことはない。ガンガのようにゆったりと時間は流れていく。
コメント (3)
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