冬の和歌山に観光客をどう呼び込むか。夏には海水浴をはじめ家族連れの観光客で賑う和歌山だが、冬でも観光客を減らさない仕掛けは無いものか。
今回は紀勢線藤並駅を発着し有田川町内の公共施設や温泉を周遊する「有田川町観光施設巡回バス」を紹介したい。
有田川町は旧吉備町・金屋町・清水町が合併して誕生した人口約2万7千人の町。
蜜柑、山椒、なれずしが名産で、清水・二川・金屋などの温泉、日本の棚田百選の蘭島(あらぎじま)などが観光名所だ。
最近は有田鉄道の廃線跡を活用した鉄道公園や、漫画や電子書籍を楽しめる町地域交流センターが人気を博している。
これらの観光施設を巡回するバスが、土日・祝日を中心に運行されている。
藤並駅東口を出発し清水スポーツパークまで片道約80分の長距離を走る。
運賃は無料で1日2往復。バスの運行日時や停車場所は有田川町のウェブサイトから確認できる。
【写真】藤並駅に停車中の「せせらぎ号」
装飾を付けたレトロ風のマイクロバスは「せせらぎ号」と名付けられ、有田川沿いの経路を辿るにぴったりの名前だ。
乗車するには、藤並駅東口の観光案内所で乗車整理券を受け取る。
スタッフから目的地となる観光施設を尋ねられ、必要に応じてパンフレットや見所を教えてもらえる。
同駅を午前10時に発車する便には十数名の観光客が乗車。温泉、交流センター、鉄道公園など、乗客の目的地は様々。
観光施設を結ぶ巡回バスは全国にたくさんあるが、有田川町の場合は運行距離が長く、観光施設が旧3町に程よい距離で点在することから、数回訪れなければ周遊し切れず、かつシーズンに合った楽しみ方ができる点が魅力的。
例えば、春夏はスポーツパークで運動やバーベキューを楽しみ温泉で汗を流す。秋冬は棚田などの風景鑑賞やハイキング、読書、温泉を楽しむ。
四季にあわせて降車地を選べるという、地域の特性から生まれた、リピーターを期待できる観光まちづくりがここにある。
(次田尚弘/和歌山)