静岡県下田市。伊豆半島の南東部に位置するこの地に「和歌の浦」という地名がある。
嘉永7年(1854年)に函館とともに日本で最初の開港場となった下田港に程近い入り江。
伊豆急下田駅から南へ約2キロ、ペリー上陸碑や下田海中公園がある下田の景勝地で、三島由紀夫の小説にも登場する風光明媚な土地だ。
近くに市街地、高台にはリゾートホテルがあり、入り江を囲むように整備された「和歌の浦遊歩道」を多くの市民や観光客らが散策している。
【写真】「和歌の浦遊歩道」と、「黒船」を模した遊覧船(下田市)
遊歩道は全長約2.5キロメートル。相模灘に面し太平洋のどこまでも青い海が広がり、日本版ミシュラングリーンガイドで「寄り道する価値がある場所」として二つ星に認定されるほどだ。
和歌の浦遊歩道は、高い崖と海の境の僅かな部分が整備されており、リアス式の地形は和歌山市の和歌浦(わかのうら)とよく似ている。
なぜ「和歌の浦」という名が付いているのか、地元の方々に尋ねてみると「和歌に詠まれるほど綺麗な土地」、「来航した外国人が初めて見る日本らしい風景」だからではないかと教えてくれた。
下田市の観光交流客数は年間約300万人前後と、和歌浦が最も栄えていた頃に近い数だ。
それでも最盛期に比べ客数が半減しているという。
平成に入ってからの和歌浦しか知らない筆者だが、伝え聞くかつての賑やかな和歌浦の情景と重なるものを感じた。
和歌浦にも魅力が沢山。「元祖・和歌浦」の底力を発揮したい。
(次田尚弘/静岡)