危機の間に肝臓の維持を補助するバックアップシステムが発見される
Backup system that helps sustain liver during crisis discovered
モンタナ州立大学とスウェーデンの科学者は、他のシステムが失われるか障害を生じたときに肝臓の機能維持を補助する『抗酸化システム』を発見した。
電力が不足している時に始動する発電機や主役が病気の時にステージに上がる代役のように、新しく発見されたシステムは危機的状況の間に増大する。それはアミノ酸のメチオニンによって燃料を供給され、ハーブティーやサプリメントからは得られない。メチオニンはヒトの体内で作ることができず、タンパク質を食べることによってのみ得ることができる。
「これは重要な発見である」、MSUの微生物学と免疫学部の教授であり、研究の共著者でもあるEd Schmidtは言う。
「それは我々に、ヒトと全ての生物について語る。これはあなたの細胞が生存に必要とするバランスを維持するための、もう一つの方法である。」
Schmidtはカロリンスカ研究所の共同研究者らと共に、彼らの発見をNature Communicationsで3月20日に発表した。カロリンスカ研究所はヨーロッパで最大の、そして最も卓越した医学大学の1つである。
いくつかのビタミンとサプリメントは抗酸化物質の働きをするとSchmidtは言う。酸化は加齢や癌、炎症性疾患の原因となりうるが、抗酸化物質は細胞をそのような損傷から保護するのに役立つ。しかしながら、ビタミンとサプリメントは、肝細胞にもともと存在する2つのシステム、チオレドキシンとグルタチオンを置き換えることはできない。
詳しく調査するため、Schmidtの研究室は2つのシステムの重要な構成要素を肝臓に持たないマウスを開発した。そのマウスは弱々しく、ほとんど死ぬ寸前だったとSchmidtは言う。しかし彼らは生き残った。
研究者はその謎を追い求め、第3の抗酸化システムを発見した。この発見はヒトの健康問題に広範囲の影響があるという。その力の驚くべき源はメチオニンである。
「メチオニンは含硫アミノ酸であり、細胞がタンパク質を作るために食事で取る必要がある。さらに、メチオニンは以前は知られていなかった強力な抗酸化物質である。これまで調べられてきた他のいかなる抗酸化物質とも異なり、他の2つの抗酸化システムが存在しないか障害を生じたときでも、メチオニンは肝臓を維持することが可能である」、Schmidtは言った。
「それはよく知られていたが、影に隠れていた」、Schmidtは続ける。
「強力で普遍的な2つのシステムを取り除いても肝臓は生き残ることを発見したことで初めて、我々はこの第3のシステムの役割を認識した。」
メチオニンは、卵、肉、魚、ブラジルナッツ、ゴマの種、そして穀物に多い。
「標準的なバランスのよい食事には、メチオニンが多く含まれる」、Schmidtは言う。
「これが問題になるのは、食事からタンパク質が欠乏していたり、おそらく何らかの毒にさらされた時などの極端なケースだけである。」
学術誌参照:
1.食事に含まれるメチオニンは、マウスの肝臓において細胞質の酸化還元ホメオスタシスを維持することが可能である。
Nature Communications、2015;
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150320133114.htm
<コメント>
メチオニンは、肝臓の抗酸化システムのバックアップとして働くという記事です。
Abstractを見ると、チオレドキシン(thioredoxin)とグルタチオン(glutathione)の経路は、グルコースからペントースリン酸経路を経て得られるNADPHに依存的に肝細胞の抗酸化経路を維持しています。
それらの経路の内、チオレドキシンレダクターゼとグルタチオンレダクターゼを欠損したマウスはNADPHに依存しない3番めの経路により生き残りますが、シスタチオニンγ-リアーゼ(cystathionine γ-lyase)を阻害すると肝細胞は急速にネクローシスしたそうです。
![](http://www.nature.com/ncomms/2015/150320/ncomms7479/carousel/ncomms7479-f5.jpg)
「メチオニンによって促進される含硫置換基移動が、NADPHに依存しない経路を経由してグルタチオンの合成に必須の前駆体であるシステインを合成酵素に供給する。食事によるメチオニンは細胞のジスルフィド還元力ならびにすべての含硫アミノ酸を供給する」とあります。
メチオニンとコリンを欠乏させることでNASHを引き起こすモデルマウスとも関係がありそうです。