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EBV感染により老化が引き起こされるスイッチ

2016-01-25 06:06:20 | 
Disrupting cell's supply chain freezes cancer virus

Drug shows promise for controlling Epstein-Barr virus

January 19, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160119153504.htm


(緑の蛍光染色は、リンパ芽球状の細胞表面上のグルコーストランスポーターGLUT1を示す
リンパ芽球状細胞はエプスタイン-バー・ウイルス感染によって引き起こされるリンパ腫形成に進行する
このウイルスはその感染経路を持続させるためにグルコースへの需要を増大させ、細胞を乗っ取ることによりGLUT1を表出させる

Credit: Amy Hafez, Duke University)

エプスタイン-バー・ウイルス/Epstein-Barr Virus(EBV)が免疫系のB細胞に入り込むとウイルスはB細胞をだまして急速に細胞自身のコピーを作らせ、増殖したB細胞はそれぞれウイルスを運ぶことになる
急速に増える細胞は、増殖のための材料building partsを大量に必要とする
その需要を満たすためにB細胞は自分自身の中身を食いつぶしchew up、アミノ酸や脂質、ヌクレオチドをバラバラにして解放するfree up

しかし、もし材料materialsの供給が低下するとrun low、
B細胞は『老化senescence』という休止状態になって細胞分裂は止まり、
ウイルスの進行を停止させることがデューク大学の研究チームによって明らかになった


EBVがヒトにがんを引き起こすウイルスであることが初めて示された時から、その存在は研究者を長い間悩ませ続けた
EBVは世界中の成人の90%に感染しているが、ウイルスが引き起こすリンパ腫や他のがんによって死ぬのはほんのわずかに過ぎない

デューク大学医学部で分子遺伝学と微生物学の准教授associate professorであり、
デューク大学ウイルス学センターの副所長deputy directorでもある筆頭著者のMicah Luftigは、
答えの大部分は人体の免疫系にあると言う

健康な免疫系はあらかたEBウイルスの進行を止めるとLuftigは言う
事実、EBVと関連する癌の多くはほとんどがウイルスを排除する能力が低下した免疫不全の患者で発見される
しかし、今回新しく発見された『老化のトリガー/senescence trigger』はもう一つの別の答えであるかもしれないとLuftigは言う


個々の細胞がどのような成熟状態にあるのかを調べることが可能となる新しい技術を使い、
研究チームは細胞ごとにfrom one cell to the nextウイルス遺伝子の活性の変化を調査した

その結果、EBVは細胞の燃料源fuel sourceを切り替えることが可能であり、
細胞が材料を供給しようと細胞自身の内部を食いつぶした時でさえ、細胞分裂を続けられることが判明した


そこで、研究チームはラパマイシンという薬剤を使いB細胞が「自分は飢えている」と感じさせようとした
この戦略はうまくいき、EBVに感染した細胞の老化のオンとオフを切り替えることに成功した


この研究の次の段階では、ヒトの免疫系を持つマウスを開発するノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者が参加するだろう
EBVに感染したマウスで研究者は様々な薬剤をテストし、老化の応答を引き起こして制御可能かどうかを調べるつもりだとLuftigは言う


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1517141113
Metabolic Stress is a Barrier to Epstein-Barr Virus-mediated B-cell Immortalization.
代謝ストレスは、エプスタイン-バー・ウイルスを介するB細胞不死化への障壁である


Significance
エプスタイン-バー・ウイルス/Epstein-Barr Virus(EBV)はヒトに腫瘍を引き起こすことが判明した初めてのウイルスである
ほぼすべての成人がEBVに感染しているが、癌に進行することはほとんどない
その理由を我々はやっと理解し始めたに過ぎない

EBV感染は非常に急速な細胞分裂を一定期間誘発するが、それにはヌクレオチド、アミノ酸、脂質のような代謝産物の供給の増大が必要である
この増大する代謝的な需要を満たすことができないEBV感染細胞は強制的に増殖が止められ、『老化senescence』という永久的な増殖の停止状態に入ることを我々は発見した


Abstract
EBVは発癌性のヘルペスウイルスであり、B細胞リンパ腫や上皮悪性腫瘍の発症の原因として関連付けられている

感染後早くにEBVは一時的に急速な増殖を誘発するが、DNA損傷応答damage responseの活性化ならびにG1/S期増殖停止により増殖は抑制される
この増殖停止により感染細胞のほとんどは長期の成長が阻止される

我々はこの早期の突発的に増殖した後の感染細胞を単離して特徴付けをする方法を開発し、
B細胞の不死化immortalizationを弱める経路をより理解するために遺伝子発現と代謝的プロファイリングを統合した

分析の結果、増殖が停止した細胞はミトコンドリア呼吸レベルが低下し、
TCA回路/クエン酸回路ならびに酸化的リン酸化/oxidative phosphorylationに関与する遺伝子の発現が低下することが判明した
事実、感染早期の細胞における増殖停止は、TCA回路を補うことにより回復した

停止細胞はp53経路の遺伝子標的の発現が増加しているのが特徴であり、この発現増加にはセストリンが含まれていた
セストリンの増加はAMPK活性化につながり、mTORシグナル伝達が低下し、結果として細胞の生存に重要なオートファジーが上昇した

[老化したEBV感染細胞]
 ミトコンドリア呼吸↓,TCA回路↓,酸化的リン酸化↓
 p53↑→セストリン↑→AMPK↑─┤mTORシグナル伝達↓─┤オートファジー↑↑

オートファジーは、代謝的なストレスの間の感染早期の過剰増殖を維持するためにも重要である


最後に、感染早期から長期成長への代謝的な変化を評価したところ、
それにはグルコース取り込みならびに細胞表面のGLUT1レベルの増大が伴い、
この増大が解糖系と酸化的リン酸化の上昇、基礎オートファジーbasal autophagyの抑制につながることが明らかになった

[老化しないEBV感染細胞]
 GLUT1↑→グルコース取り込み↑→解糖系↑,ミトコンドリア酸化的リン酸化↑,(AMPK↓,mTORシグナル伝達↑),オートファジー↓

我々の研究は
癌遺伝子によって誘発される老化が
代謝的ストレスmetabolic stressならびに遺伝毒性ストレスgenotoxic stressの組み合わせによって引き起こされ、
この老化はEBVを介する形質転換transformationに対する内因性の障壁として作用することを実証する


<コメント>
「ミトコンドリアを活発にすれば癌が治る」

『すべての癌』が治るのか?




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/25975f05fc419689d413391e2d74ee6d
強制的に癌細胞にミトコンドリアを使わせるためには、ミトコンドリアピルビン酸担体/Mitochondrial Pyruvate Carrier(MPC)が機能しているかどうかを調べる必要がある
研究者が癌細胞の細胞質にピルビン酸を増加させた結果、正常なMPCの活性は回復した。このことは担体の異常ではなく『燃料の不足』がプロセスに影響することを示す



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/48c84908b3281faadd5097f99215b450
開発中の抗癌剤のFY26はミトコンドリアを強制的に癌細胞に使わせ、その作用はシスプラチンの49倍強力である



関連論文
http://dx.doi.org/10.1091/mbc.E15-05-0318
分裂酵母においてS期初めの複製ストレスは明らかな小核の形成ならびに染色体再編成につながる

http://dx.doi.org/10.1038/nature16139
複製ストレスが有糸分裂でのDNA修復合成を活性化する

http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2011.03.044
ヌクレオチド不足は初期ステージの癌増殖においてゲノム不安定性を促進する
Rb-E2F活性化は複製ストレスにつながり、DNAの傷害と形質転換を引き起こす

 

肝細胞癌の種はミトコンドリアを再プログラムする

2016-01-22 06:06:32 | 
Scientists root out 'bad seeds' of liver cancer

Researchers have discovered the Achilles heel of hepatocellular carcinoma, the third-deadliest cancer

January 6, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160106215531.htm


(化学療法はほとんどの癌細胞を殺すが、幹細胞が生き残り…、化学療法に抵抗する新たな腫瘍の種をまく)

南カリフォルニア大学の研究者は、肝臓癌の『悪い種/bad seeds』を発見した
研究者はそれらを再プログラムすることにより、癌が治療に反応し続けるようにできるかもしれないと考えている


増殖によって肝臓の腫瘍を生じる癌幹細胞は、化学療法に抵抗性である
南カリフォルニア大学ケック医学部の分子微生物学と免疫学の准教授/associate professorで首席著者のKeigo Machidaによると、
そのような幹細胞を妨害するための鍵はNANOGという幹細胞マーカーを標的にすることであるという

NANOGは早期ステージの癌では欠乏scarceしているが、ステージIIIの肝臓癌では豊富aboundである
NANOGは細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアの代謝を配線し直すことにより癌の転移を促進する

「我々は癌治療におけるアキレス腱を同定した」
Machidaは言う

「癌には『悪い種』が存在し、化学療法で治療してもそれらの悪い種が生き残って再発させる
我々が再発の問題と転移を根絶するために癌の悪い種を標的にしたいというのは、そのような理由である」

彼らの研究は1月12日号のCell Metabolism誌で発表される予定である


抵抗性を排除する
Eliminating resistance

研究では患者に由来する幹細胞と何百もの肝腫瘍モデルマウスを用いた
研究者はこれが幹細胞マーカーであるNANOGによる発癌性の経路を同定した初めての科学的な論文であり、ソラフェニブへの抵抗性を排除するための標的としてNANOGを据えるものだと考えている
ソラフェニブは肝臓癌の患者に最も一般的に利用される化学療法である

※ソラフェニブ/sorafenib: 複数のキナーゼを阻害する抗悪性腫瘍剤。C-Raf、B-Raf、FLT-3、c-KIT、VEGF受容体、PDGF受容体などのチロシンキナーゼ活性を阻害する

肝臓癌は増加しつつあり、国立癌研究所によると2015年には推定で24550人が亡くなったという
肝臓癌と診断された人で5年以上生き残るのはわずか17.2%である


癌治療の新たな標的
A new cancer treatment target

USCのエピゲノムセンターでバイオインフォマティクスの第一人者であり論文の共著者のVasu Punjによると、NANOGがどのようにして幹細胞を再プログラムするのかを知るために彼らは肝臓のタンパク質、mRNA、細胞の代謝を調べたという

「癌のミトコンドリア代謝を標的とする治療は、個別化された新たな治療戦略の開発に向けた有望な領域として徐々に認識されてきている」
Punjは言う

「もしミトコンドリアの酸化的リン酸化 - 脂肪酸酸化への細胞の応答を低下させると、NANOGは癌の進行を促進できないだろう
これにより研究者は全く新しい治療戦略を開発することが可能になる」


NANOGは何をしているのか
What NANOG does

NANOGは『ミトコンドリアの代謝経路』を形成する遺伝子の発現を制御する
ミトコンドリアの代謝経路は、腫瘍へと変化turn intoする幹細胞にとってのエネルギー源である
NANOGは細胞を再プログラムして、燃料としてグルコースの代わりに脂肪酸を使うように命令する

「もしこの代替経路alternative pathwayを止めれば、肝臓癌は再び化学療法に感受性になるだろう」
Machidaは言う

「将来、我々は肝臓癌の患者に、NANOGを標的とする治療を血流に注入する注射ができるようになるだろう
血流が循環するところならどこにでも、新しい『指示instructions』を癌の悪い種に送り届けることができる」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2015.12.004
NANOG Metabolically Reprograms Tumor-Initiating Stem-like Cells through Tumorigenic Changes in Oxidative Phosphorylation and Fatty Acid Metabolism.
NANOGは酸化的リン酸化ならびに脂肪酸代謝の発癌性の変化を通じて腫瘍始原-幹細胞様細胞を代謝的に再プログラムする


Highlights
・幹細胞マーカーのNANOGは、TLR4-E2F1経路によって活性化される
・NANOG ChIP-seqにより、酸化的リン酸化/OXPHOSと脂肪酸酸化/FAOに関与する標的遺伝子を同定する
・Nanogは、腫瘍始原-幹細胞様細胞/tumor-initiating stem-like cell(TIC)における酸化的リン酸化ならびにミトコンドリアの活性酸素種/ROSを抑制する
・酸化的リン酸化の回復と脂肪酸酸化の阻害は、TICの薬剤への感受性を回復させる

ChIP-seq: クロマチン免疫沈降法/chromatin immunoprecipitation(ChIP)と次世代シーケンシング(next generation sequencing)を組み合わせた分析


Summary
NANOGを含む幹細胞マーカーは様々な癌に関与するが、NANOGがどのようにして機能的に癌へ寄与するのかは不明である

今回我々は、NANOGがTLR4シグナル伝達によりE2F1のリン酸化を経て誘導されることを示す
Nanogの下方調節は、アルコール・西洋食ならびにC型肝炎ウイルスによってマウスに誘発される肝細胞癌/hepatocellular carcinoma (HCC) の進行を抑制する

NANOG ChIP-seq分析により、NANOGがミトコンドリアの代謝経路に関与する遺伝子の発現を調節することを明らかにする
この代謝経路は、腫瘍始原-幹細胞様細胞/tumor-initiating stem-like cell(TIC)を維持するために必要である

NANOGはミトコンドリアの酸化的リン酸化/oxidative phosphorylation (OXPHOS) の遺伝子を抑制し、活性酸素種/ROSの産生も抑制する
加えて脂肪酸酸化/fatty acid oxidation (FAO) を活性化して、TICの自己再生self-renewalと薬剤抵抗性を支える

 肥満,アルコール(LPS),ウイルス→TLR4→pE2F1→NANOG─(酸化的リン酸化↓,ROS↓,pAMPK,脂肪酸酸化↑)→TIC自己再生,薬剤抵抗性

酸化的リン酸化の活性を回復してFAOを阻害することにより、HCCへの標準治療の化学療法薬であるソラフェニブに対するTICの感受性は回復する

この研究はNANOGを介してTICが生成され、腫瘍発生tumorigenesisと化学療法への抵抗性が生じるメカニズムへの洞察を提供する
それはミトコンドリア代謝の再プログラムを通して起きる


<コメント>
脂肪酸の酸化は増やすが、酸化的リン酸化/ROSは抑制する



関連サイト
http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2012.07.029
β細胞量の喪失はβ細胞の細胞死ではなく脱分化によることが系統追跡実験で実証された
脱分化したβ細胞は前駆体様の細胞に逆戻りし、その細胞はニューロジェニン3, Oct4, Nanog, L-Mycを発現していた

 

肥満と結腸癌リスクの関連が明らかにされる

2016-01-21 06:09:46 | 
Link between obesity, increased risk of colorectal cancer revealed

January 15, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160115084806.htm

これまで肥満は結腸癌リスクの増大と関連付けられてきたが、その関係の意味はよくわかっていない
トマスジェファーソン大学を中心とする研究チームはその生物学的な関連を明らかにした上で、
既に承認されている薬剤が癌の発症を防ぐことを研究の過程で突き止めた

Cancer Research誌で発表された研究では、マウスに高カロリーの食事を与えると腸で重要なホルモンの発現が低下し、腫瘍を抑制する経路の活性が失われることが明らかになった
そのホルモンを遺伝子操作により元に戻すと腫瘍抑制経路も再び活性化して、マウスが過剰にカロリーを取り続けた時でさえ癌の発症は防がれた

トマスジェファーソン大学シドニーキンメル医学部/Sidney Kimmel Medical Collegeで薬理学部と実験治療学の教授Chairであり論文の首席著者であるScott Waldman, M.D. Ph.D.によると、
これらの発見はリナクロチド/linaclotide (Linzess)という薬を肥満の患者の結腸直腸癌を予防する治療アプローチとして利用可能にするという
リナクロチドはこの高カロリー食で失われるホルモンと構造的に関連があるからである

※リナクロチド/linaclotide: C型グアニル酸シクラーゼ/guanylate cyclase type-C(GC-C)のアゴニスト

※グアニル酸シクラーゼ: GTPからcGMPとピロリン酸を生成する。細胞外のシグナルや細胞内の一酸化窒素によって活性化される

2012年、アメリカFDAはリナクロチドを便秘を伴う過敏腸症候群/irritable bowel syndrome(IBS)ならびに慢性特発性の(慢性的かつ原因不明の)便秘の治療薬として承認している

「我々の研究は肥満の人々の結腸直腸癌がホルモンの置き換え療法により阻止できることを示唆する
それはホルモン喪失と関連する他の疾患、例えば糖尿病がインスリンで治療可能であるのと同様である」
Waldman博士は言う


「今回の発見は意外なものだった
我々も含めて世界中の研究者は『肥満と結腸直腸癌の発症とのもつれた関連』を解きほぐそうとしてきた/trying to disentangle」

「カロリーは肥満と結腸直腸癌という病態の中心に位置しているが、
では具体的にカロリーが何をしているのかという疑問は癌の研究において最も複雑かつ刺激的な問いだった」

「我々は今や肥満の人々の(おそらくそうでない人々でも)結腸直腸癌の源についての大きな手がかりを得た」
サミュエルMVハミルトン教授職/Samuel MV Hamilton ProfessorでもあるWaldman博士は言う

肥満の人々の結腸直腸癌リスクは、痩せている人々と比較して約50%高い
これまでの科学者たちの考えでは、問題は脂肪組織の量とそれに関連する未知の代謝プロセスが根底にあり、過剰なカロリーが細胞にエネルギーを供給して増殖を刺激するthat fuel cell energy and growthことだとされていた
しかし今回の研究でそれは事実ではないことが明らかになったとWaldman博士は言う

Waldman博士は既に複数施設での臨床試験に参加involvedし、健康なボランティアでリナクロチドの用量と副作用をテストしている
この試験には国立癌研究所、メイヨークリニック、フォックスチェイスがんセンターの研究者が参加participateしている

ハーバードとデュークメディカルスクールの研究者もチームに参加した今回の研究では、遺伝子工学で操作したマウスを使い、様々な食餌を与えて実験を実施した
研究の結果、マウスの肥満はグアニリン/guanylinという腸上皮で作られるホルモンの喪失と関連することが明らかにされた
グアニリンは、受容体のグアニリルシクラーゼC/guanylyl cyclase C (GUCY2C)=グアニル酸シクラーゼ結合C型受容体を活性化して、腸上皮の再生の根底にあるプロセスを調節する

※グアニリン: 15のアミノ酸(SHTCEICAFAACAGC)からなるペプチドホルモン

「腸の上皮は非常に動的で、絶え間なく置き換えられている
GUCY2Cはこの上皮再生に必要とされる重要なプロセスの振り付け/演出構成choreographyに寄与する」


グアニリン遺伝子の不活化はヒトの結腸癌でも動物モデルでも一般的であり、病的morbidlyに肥満の患者は痩せている人と比較してグアニリン遺伝子発現が80%の低下を示すという

研究では喪失の結果として何が起きるのかも明らかになった
グアニリンの受容体は増殖を制御する腫瘍抑制因子として働いており、グアニリンが失われるとその受容体も沈黙した

「これは癌の発症で極めて早くに起きる」
Waldman博士は言う
「受容体が沈黙すると、腸の上皮は機能しなくなり、癌が発症できる状態にする」

彼らはグアニリン遺伝子が阻害されないようにした導入遺伝子transgeneを持つマウスを作成して研究結果をチェックした

「カロリー過剰な状況でさえ、食餌の源が何であれ、腫瘍は発症しなかった」


実験では、肥満のマウスは痩せたマウスと比較してホルモン(グアニリン)とその受容体(グアニル酸シクラーゼ結合C型受容体)を沈黙silenceさせる可能性が高いことが実証された

「結腸直腸癌が発症しようとする時、この沈黙メカニズム/silencing mechanismを通して生じるのだろうと我々は考えている
そしてこれは肥満の人ではより頻繁に起きるだろう」

そのようにWaldmanは言うが、たとえそうでもeven so、ホルモン産生を停止させる正確な分子メカニズムはいまだ不明である

「我々の研究結果の利点は、肥満のマウスではグアニリンホルモンが失われる一方で、その受容体はスイッチを入れられるのをそこでただ待っているということである
加えて、もしホルモンの喪失を阻止できれば腫瘍の発症も防げることを研究は実証する
これらの結果が示唆するのは、リナクロチドのような薬剤がグアニリンのように働いて腫瘍抑制受容体のGUCY2Cを活性化し、
肥満患者の癌を予防するということである」


また、研究者は過剰なカロリー消費の影響がカロリー制限によって無効化reversedされ、それは肥満マウスでさえ同様であることを示した

「ライフスタイルを修正しようという挑戦がされてきたが、やはりnotwithstanding、
カロリー制限がグアニリン発現を復元reconstituteできることを我々の観察は示唆する
これは肥満の人の結腸癌を防ぐための効果的な戦略になるかもしれない」


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-1467-T
Obesity-Induced Colorectal Cancer Is Driven by Caloric Silencing of the Guanylin-GUCY2C Paracrine Signaling Axis.
肥満により誘発される結腸直腸癌は、グアニリン-GUCY2Cパラクラインシグナル伝達軸のカロリー的なサイレンシングによって駆動される

Abstract
機構的な調査により、肥満は腸上皮細胞において可逆的にカロリー依存的なERストレスならびに小胞体ストレス応答/Unfolded Protein Response(UPR)を誘導して
グアニリン発現をサイレンシングすることが明らかになった

 高カロリー食─(ERストレス/UPR)─┤グアニリン/リナクロチド→グアニル酸シクラーゼ─┤腫瘍



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/10/141010083733.htm
研究者が結腸癌のそれぞれの腫瘍細胞に含まれるグアニリンのmRNAの数を計測したところ、その85%以上で100倍から1000倍低下していた
この結果を確認すべく組織サンプルのスライスでグアニリンを着色したところ、癌のサンプルからはグアニリンはまったく検出されなかった

グアニリンの受容体はGUCY2C(発音は/pronounced "goosy toosy")で、GUCY2Cシグナルは腸管の上皮のターンオーバー(3日で入れ替わる)に重要
結腸癌の多くはグアニリンの消失に応じて受容体のGUCY2Cを過剰発現している
50歳を過ぎると、正常な人でもグアニリンの産生は減少する
 

癌にとって重要な遺伝子変化のネットワークを分析する

2016-01-18 06:06:36 | 
Breast cancer study suggests new potential drug targets and combinations

January 14, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160114162542.htm

これまで判明してきた乳癌細胞の機能を大規模に分析することにより、
既存の薬剤の新たな利用法や、薬剤発見の新しい標的、新しい薬剤の組み合わせが数多く示唆された

著者たちは他のタイプの癌における新たな薬剤候補を明らかにしたり、癌細胞が治療に抵抗するメカニズムを特定するために
1月14日にCellのオンライン版で発表された今回の研究結果に世界中のラボが飛びつくseize onだろうと言う

ニューヨーク大学のランゴンメディカルセンター/NYU Langone Medical Centerとローラ・アイザック・パールマターがんセンター/Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center、カナダ・トロントのプリンセスマーガレットがんセンターの研究者を中心とする研究チームは、
以前の研究よりも多くのタイプの乳癌の遺伝子の分析、新たな統計学的手法、分子シグネチャーならびに抗癌剤の効果のデータベースとの比較、を組み合わせることにより結論に達した

「この研究は、乳癌細胞における遺伝子の変化がどのようにして増殖と生存に重要な経路に干渉するのかについてのこれまでの最大の研究を代表する
その経路は既存の薬または新しい薬の組み合わせで標的にできる可能性がある」
筆頭著者のBenjamin Neel, MD, PhD.は言う

「癌細胞の遺伝子変化の入り組んだ関係websを、癌細胞が依存する複雑な機能へと関連付けることが以前の方法では不可能だった
我々の新しい統計学的アプローチはそれを改善することを示す」

以前のアルゴリズムとは異なり、新しい統計学モデルは
特定の乳癌サブタイプにとって必須であることが既知の遺伝子を複数同定することが可能である(例えばHER2、エストロゲン受容体/ER, HER3など)

検出と治療の改善は乳癌の5年生存率を85%以上に引き上げたが、罹患者の半数は未だに疾患で亡くなる
現在の治療法は単一の疾患メカニズムに対処しようとするものであり、そのどんな治療法に直面しても癌細胞の分子的変化の複雑なネットワークがほとんどを生存させ続けることを可能にする
これまで治療が限定的な成功しか収めてこなかったのは、そのようなネットワークについての理解不足を反映している


新たに発見されたパターンがこれからの治療の改善を刺激する
Newfound Patterns to Drive Future Treatment

長年の間、世界中のラボが乳癌に寄与する多くの遺伝子の変化を同定するために大規模なゲノム研究を実施してきた
そのような研究は癌の様々なタイプとサブタイプにおいて遺伝子の変化が見られるという情報をもたらしてきたものの、
それらの変化のどれが癌細胞の増殖や生存にとって重要なのか、その変化がどのようにして治療に利用されるのかを決定することにはあまり成功してきていない

ゲノム研究を補うために近年多くのラボがスモールヘアピンRNAの『ドロップアウト・スクリーニング/dropout screens』を利用している
これは癌細胞の遺伝子を一つ一つそれぞれ妨げることにより、どの遺伝子が最も生存に重要かを調べるというものである
しかしながら、最も最近の研究でも、乳癌全体を通して見られる様々な変化のランドスケープlandscapeを捉えるために十分な細胞系統を調べていない

今回の研究では77の乳癌細胞系統でのshRNAスクリーニングを実施した
これは乳癌の多くのサブタイプを表すのに十分大きなサンプルである

研究チームは新たにデザインした統計学的技術であるsi/shRNA Mixed-Effect Model (siMEM) を適用して、
細胞系統の遺伝子ノックダウンの研究結果をスコア付けし、癌の増殖にとって最も重要な候補遺伝子を同定した
また、彼らはその結果を
薬剤が有効である時とそうでない時に癌細胞で見られる、癌遺伝学、タンパク質相互作用、遺伝子の変化の大規模なデータベース情報と比較した

このように方法を組み合わせることで
癌細胞の性質に影響するよう密接に結びついたデータにおける新たなシグナルがもたらされ、偽陽性をうまく排除screen outした

この研究でこれまで知られていなかった乳癌細胞の生存に重要な役割を演じる多くの候補遺伝子が明らかにされ、
さらに、90の抗癌剤に対して感受性または抵抗性のどちらかである細胞にとって必要な遺伝子クラスターが見つかった

トリプルネガティブ乳癌で同定された新しくかつ潜在的な『創薬可能druggable』な標的の中では、
シグナル伝達タンパク質(EFNB3、EPHA4)、
細胞増殖経路を調節するタンパク質(MAP2K4、MAPK13)、
炎症を促進するタンパク質(IL-32)が、過去の研究によって脳腫瘍と関連付けられている

今回のデータでは、乳癌サブタイプを治療するための新しい潜在的な薬剤の数十通りの組み合わせについてのさらなる研究が示唆された
その中には、RAF/MEK阻害剤・CDK4阻害剤・EGFR阻害剤・BET阻害剤とエピルビシンepirubicin・ビノレルビンvinorelbineとの組み合わせや、
PLK1阻害剤とAKT阻害剤の組み合わせが含まれる

※エピルビシン: アントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質。DNA・RNAポリメラーゼ反応を阻害
※ビノレルビン: ビンカアルカロイド系抗悪性腫瘍薬。有糸分裂微小管タンパク質のチューブリンの重合を選択的に阻害

新たな方法によりあらゆる乳癌サブタイプごとにさらなる研究すべき経路が示唆されたものの、この分野を導いて研究の可能性を示すために著者はさらなる研究対象として一つを選び出し、
さらなる実験によりBRD4がほとんどの管腔乳癌/HER2+乳癌細胞にとって、さらにトリプルネガティブ乳癌のサブセットの生存にとっても必須の遺伝子であることを確認した

BRD4はBETファミリー(bromodomain and extra terminal domain)のメンバーであり、細胞増殖にとって重要な多くの遺伝子の調節を助ける
BET阻害剤という種類の薬剤の標的であり現在白血病の臨床試験中である
研究結果はBET阻害剤が乳癌のいくつかのタイプで有用である可能性を示唆し、
その阻害剤への抵抗性はPI3Kの遺伝子変異によって影響され、
この抵抗性はBET阻害剤とエベロリムスを組み合わせることによって無効化される可能性も示唆された

Neelは言う
「世界中の研究者の究極の目的は
治療法を開発すべき分子標的ならびにどんな治療であれ応答する可能性が高い患者グループを明らかにできるほど十分にそれぞれの癌細胞の配線図wiring diagramを最終的に理解することである」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.11.062
Functional Genomic Landscape of Human Breast Cancer Drivers, Vulnerabilities, and Resistance.
ヒト乳癌のドライバ・脆弱性・抵抗性の、機能的なゲノムのランドスケープ

Highlights
・ゲノムワイドなスモールヘアピンRNA/shRNAのプールされたライブラリを使うことにより、77の乳癌細胞系統をスクリーニングした
・アルゴリズム (siMEM) を開発して、状況依存的な遺伝子context-dependent genesの同定を改善した
・スクリーニングの結果をゲノムデータと統合することにより、潜在的な『ドライバ』を明らかにする
・BRD4は管腔乳癌に必須である一方、PIK3CA変異体はBET阻害剤への抵抗性をもたらす

Summary
大規模なゲノム研究により、乳癌における多数の体細胞異常(コピー数変化/copy number alteration(CNA)や点突然変異point mutationなど)が同定されてきた
しかし今なお、原因となる変異causal variantsと、遺伝子の変化の結果として生じて現れる脆弱性emergent vulnerabilitiesの同定は、大きな問題である

我々は77の乳癌細胞系統に対して
スモールヘアピンRNAにより全ゲノムの『ドロップアウト・スクリーニング/dropout screens』を実施した

階層的hierarchicalな線形回帰linear regressionアルゴリズムを使用してスクリーニング結果をスコア付けし、随伴する詳細な遺伝子・プロテオーム情報にそれらを統合して、
乳癌において候補となる『ドライバ』などの脆弱性を同定し、癌細胞の機能的なゲノムの性質を全体的に明らかにする

遺伝子の必要性を薬剤感受性データと比較することにより、
潜在的な抵抗性メカニズム、既存の抗癌剤の効果、組み合わせ療法の機会が示唆される


最後に我々はBRD4が管腔乳癌における潜在的な標的であり
PIK3CA変異がBET阻害剤への抵抗性の決定因子であるとして同定することにより、
この大規模なデータセットの有用性を実証する
 

IDHの変異がゲノムの折りたたみを失敗させる

2016-01-15 06:06:06 | 
Genome misfolding unearthed as new path to cancer

Isocitrate dehydrogenase mutations disrupt how the genome folds, bringing together disparate genes, regulatory controls to spur cancer growth

December 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151223221528.htm

ブロード研究所とマサチューセッツ総合病院の研究者は、その画期的な研究で癌の根底にある全くcompletely新しい生物学的メカニズムを明らかにする
研究チームはイソクエン酸脱水素酵素/isocitrate dehydrogenase (IDH) の遺伝子に変異を持つ脳腫瘍を研究し、ゲノムがどのようにして自分自身を折りたたむのかに関する指示instructionsにいくつかの異変unusual changesを発見した

それらの変化はインスレーターinsulatorというゲノムの重要な部分を標的にする
インスレーターは、ある領域の遺伝子がその隣の領域にあるプロモーター(遺伝子のコントロールスイッチ)や遺伝子と相互作用しないよう物理的に妨害するDNA配列である

※insulator: 絶縁/隔離、インスレーター
※insulate: 絶縁/隔離する

IDHが変異した腫瘍でインスレーターに異常が起きるrun amokと、強力な成長因子の遺伝子が『常にオンになっている遺伝子スイッチ』の制御に影響されるようになり、癌を促進する強力なコンビネーションを形成する

Nature誌のオンライン先行出版号advance online issueで12月23日に発表されるこの研究結果は、癌の大部分に共通するプロセスを明らかにするもので、他のタイプの癌も促進するようである

「これは癌を引き起こすメカニズムとして全くtotally新しいものであり、
我々はこれが脳腫瘍だけでなく他のタイプの癌にも当てはまるhold trueと考えている」
ブロード研究所の一員であり、マサチューセッツ総合病院では病理学の教授でもある首席著者のBradley Bernsteinは言う

「癌を引き起こす遺伝子cancer-causing genesがそのDNA配列の変化によって異常に活性化されうることは、既に十分に立証されている
しかし今回の場合、我々はゲノムがどのようにして折りたたまれるのかが変化することにより癌を引き起こす遺伝子のスイッチが入ることを発見した」


ヒトのゲノムを端から端まで伸ばすと約6フィート半になる
ゲノムは別々の異なる染色体chromosomesから構成されるが、ゲノムのそれぞれは三次元で一緒になって複雑に入り組んでintricately折り重なっているfold
そうした折りたたみによって長大なゲノムは顕微鏡でしか見えないような細胞の領域confineの中にコンパクトに収まっているfit compactlyと現在では考えられている

これらのゲノムの折りたたみfoldsは、単にゲノムを詰め込むためのパッケージングではないmore than mere packaging
折りたたみは『結んだ靴ひもtied shoelace』のような一連の物理的なループから構成され、
遠くはなれた遺伝子と遺伝子制御スイッチを非常に近い場所へと集める
合計およそ1万個のこのようなループを形成することにより、ゲノムはこの形態を利用して機能を調節する

「ゲノムの機能的なユニットfunctional unitは染色体ではなく、遺伝子でさえない
むしろこれらの『ループ・ドメイン/loop domain』であることがだんだん明らかになってきている
ループ・ドメインは物理的に分かれているため、隣り合ったループ・ドメインから絶縁insulatedされている」
Bernsteinは言う

しかし、Bernsteinの研究グループはこの高次構造を形成するゲノムの詰め込みhigher-order packing of the genomeの研究を開始せず、
代わりに脳腫瘍の一種である神経膠腫gliomaを、より悪性のタイプである膠芽腫glioblastomaも含めて、より深く分子的に理解しようと追求を始めた
過去二十年間これら不治の悪性腫瘍の治療での進歩は比較的小さいものだったが、Bernsteinたちはこの腫瘍の生物学的な性質に明らかにするため、The Cancer Genome Atlas (TCGA) などの最近のがんゲノムプロジェクトから得られた膨大な量のデータをしらみつぶしに調べたcomb
分析の結果、彼らはIDHが変異した腫瘍に異常な傾向を検出した
成長因子の一つであるPDGFRA遺伝子のスイッチがオンになると、遠く離れたFIP1L1という遺伝子もオンだった
そしてPDGFRAがオフになるとFIP1L1もオフだった

※PDGFRA: Platelet-Derived Growth Factor Receptor, Alpha Polypeptide(血小板由来成長因子アルファポリペプチド)
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=PDGFRA

※FIP1L1: Factor Interacting With PAPOLA And CPSF1(PAPOLA・CPSF1相互作用因子)
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=FIP1L1
>この遺伝子はCPSF(cleavage and polyadenylation specificity factor)複合体のサブユニットをコードする。CPSFはmRNA前駆体の3'末端をポリアデニル化(ポリA化)する
>この遺伝子は酵母のFip1(factor interacting with PAP)のホモログであり、pre-mRNAのUリッチな配列に結合して、ポリAポリメラーゼ(poly(A) polymerase/PAP)の活性を刺激する

「これは本当に興味深かった
なぜならこのような遺伝子の発現シグネチャーsignatureは他の状況contextsでは見られなかったからだ
つまり、IDHが変異していない神経膠腫では見られなかった」
Bernsteinは言う

このシグネチャーsignatureを目立たせたのは、問題の二つの遺伝子が異なるゲノムのループに存在するということであり、それらのループはインスレーターによって分かれている
結んだ靴ひもtied shoelaceのループが中心の結び目に集まるのとちょうど同じように、ゲノムの二つのインスレーターが互いに結合してループを形成する
これらのインスレーターは、CTCF結合箇所/CTCF binding siteのようなゲノムの特定の領域に結合する複数のタンパク質の作用を通じて交わるjoin together

※CTCF: CCCTC-binding factorの略。このタンパク質はインスレーターinsulatorに結合する

Bernsteinと研究チームは、この奇妙な現象が
他の多くのCTCF結合箇所と遺伝子ペアを含めてゲノム全体に見られることを発見して驚いた
このことは、IDHが変異した腫瘍では全体的にゲノムの絶縁insulationが妨害されていることを示唆する
しかし、これがどのようにして生じ、そしてIDHはどんな役割を演じているのか?


IDH遺伝子の変異は、大規模な腫瘍ゲノムシーケンシングから生まれた初期のサクセス・ストーリーの一つを示す
歴史的にIDH遺伝子は平凡run-of-the-millな『ハウスキーピング遺伝子/housekeeping gene』であると考えられており、癌のドライバではないように思われた
これは癌ゲノムのシステマティックな探求を通じて発見したいと科学者が望んだ、まさに予想もしなかった類の発見だった

数年があっという間に経ったがfast forward a few years、IDHが変異した腫瘍への生物学的な理解はほとんど進まないままである
IDH遺伝子が変異すると有害な代謝産物を生じる酵素が作られ、それが様々なタンパク質に干渉する
その代謝産物のどれが癌に関係があるのかは正確には不明だが、わかっているのはIDHが変異した腫瘍のDNAが修飾され、メチル基という化学的なタグtagの数が異常に多いということである
この過剰なメチル化の重要性はまだ明らかになっていない

「IDHが変異した神経膠腫で我々が観察したゲノム全体の絶縁insulationの欠陥を基盤にして、我々はこれらのIDHパズルのピースを一箇所に組み立てるput togetherためのやり方を探した」

Bernsteinたちはゲノムスケールでのアプローチを組み合わせることで
IDHが変異した神経膠腫の過剰なメチル化がCTCF結合箇所に局在し、インスレーターの機能を妨害することを明らかにした

彼らの以前の結果を合わせて考えると、
通常はループドメインを分離するように閉じ込められて滅多に相互作用しないPDGFRAとFIP1L1が
IDHが変異した腫瘍では密接に関係するようになることを今回の研究は示す
それは靴ひもをほどいて新しい形/相対的配置configurationへ結び直すのに似ている
この異常な関係は、間に存在interveningするCTCF結合箇所が過剰にメチル化した結果として生じる

「白血病や結腸癌、膀胱癌など他の様々な腫瘍がIDH遺伝子の変異を持つ
この研究結果が神経膠腫を越えてどれぐらい一般的に適用されるかを調べるのは非常に興味深いことだ」

IDH変異の神経膠腫や他の癌のさらなる研究を通じてこれらの初期の研究結果を広げる必要があるものの、それらは潜在的な治療アプローチに向けたいくつかの興味深い洞察を提供する
この治療アプローチとしては現在臨床で開発中のIDH阻害剤や、関連するDNAメチル化を減少させたりその下流の癌遺伝子を標的にする薬剤が考えられる

「基礎科学はしばしばトランスレーショナル科学や臨床科学とは別々の容器に入れられる」
Bernsteinは言う

「しかし今回の研究は、非常に基礎的で機構的な科学でありつつ、臨床的な状況でなされた例だ
これは我々にヒトの疾患の基礎について注目すべき何かを教えているのである」


http://dx.doi.org/10.1038/nature16490
Insulator dysfunction and oncogene activation in IDH mutant gliomas.
IDH変異神経膠腫におけるインスレーター機能不全と癌遺伝子活性化

機能獲得型gain-of-functionのIDH変異は、神経膠腫の臨床的分類ならびに予後の分類の大部分を定義するイベントを開始する (1, 2.
突然変異体のIDHタンパク質は2-ヒドロキシグルタル酸/2-hydroxyglutarate(2-HG)という新たな癌代謝物onco-metaboliteを作り出し、
TETファミリーの5′-メチルシトシンヒドロキシラーゼを含む鉄依存性ヒドロキシラーゼhydroxylaseに干渉する (3, 4, 5, 6, 7.
TETはDNAメチル化の除去において鍵となる段階を触媒する酵素である (8, 9.

したがって、IDH変異神経膠腫は、CpGアイランドメチル化表現型/CpG island methylator phenotype (G-CIMP) を示すが (10, 11、
この変化したエピジェネティック状態の機能的な重要性は不明のままである


我々はヒトIDH突然変異体神経膠腫がコヒーシンcohesinならびにCCCTC-binding factor (CTCF) の結合箇所で過剰メチル化を示し、
メチル化に影響されやすいこのインスレーターinsulatorタンパク質の結合を損なうことをここに示す

CTCF結合の減少は、トポロジカルなドメインと異常な遺伝子活性化との間の絶縁insulationの喪失と関連する

我々は特に
ドメイン境界boundaryでのCTCFの喪失により
構成的エンハンサーが
神経膠腫の癌遺伝子として著名prominentな受容体型チロシンキナーゼ遺伝子のPDGFRAと異常な相互作用が可能になることを実証する

※constitutive: 構成的な。常に活性がある

IDH突然変異体の神経膠腫スフィアgliomasphereに脱メチル化剤で処理すると、部分的にインスレーター機能が回復し、PDGFRAが下方調節される
反対に、IDH野生型の神経膠腫スフィアにおいて、CRISPRを介するCTCFモチーフの妨害はPDGFRAを上方調節し、増殖を増大させる

我々の研究は
IDH変異が染色体のトポロジーを妨害し、癌遺伝子の発現を誘導する異常な調節相互作用を許すことにより
神経膠腫の発癌gliomagenesis/glioma tumorigenesisを促進することを示唆する


http://www.nature.com/nature/journal/v529/n7584/fig_tab/nature16490_F4.html
Figure 4: Boundary methylation and CTCF occupancy affect PDGFRA expression and proliferation.
境界メチル化とCTCF占有が、PDGFRA発現と増殖に影響する

※meCpG は、メチル化したCpGを表す

a, PDGFRA遺伝子座locusにおけるクロマチンループと境界を表す図解schematic

(左)IDH野生型の細胞では、完全な境界boundaryが癌遺伝子を絶縁/隔離するinsulate
CTCFモチーフを取り除くことによる境界の破綻は、癌遺伝子を活性化させるだろうshould

(右)IDH突然変異体の細胞では、過剰なメチル化がCTCFを妨害し、境界を損なって、エンハンサーが癌遺伝子を活性化できるようにする
脱メチル化はCTCFを介する絶縁/隔離insulationを回復するだろうshoul



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b9a5d42e4bba4e00fb26777d33a8b188
ジャンクDNAと思われていたゲノムの多型はDNAの環状化によりゲノムの遠い箇所と相互作用して結腸癌などのリスクにつながる
SNPのrs6983267は下流のMYCと相互作用し、さらにMYCと50万塩基以上離れているCCAT1を上流の調節因子として同定した



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http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214130033.htm
変異したIDH1の活性を阻害すると2-HGは減少したが、細胞の増殖は止まらなかった
分析すると、IDH1阻害によりNAD+が増加していた
NAD+を枯渇させると癌細胞は死んだ

変異したIDH1はNAD+レベルを維持する酵素の発現を低下させ、それによりNAD+を枯渇させることに脆弱になる
変異したIDH1を抑制するとNAD+レベルを維持する酵素の発現は上昇し、NAD+レベルは上昇する

http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2015.11.006
Extreme Vulnerability of IDH1 Mutant Cancers to NAD Depletion.

 

進行性の前立腺癌でYAP1-CXCL5-MDSCを標的にする

2015-12-27 06:06:55 | 
Immune suppressor cells identified for advanced prostate cancer

Study reveals MDSCs as likely target for therapy development

December 21, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151221133834.htm

免疫を抑制する細胞であるMDSC (骨髄由来免疫抑制細胞/myeloid-derived suppressor cells) は進行性前立腺癌の治療の開発で重要である可能性がテキサス大学アンダーソンがんセンターの研究で示された


過去の多くの研究でMDSCと腫瘍との間の直接のつながりが実証されてきたが、
腫瘍の進行、特に前立腺癌におけるMDSCの役割の理解は大部分が推論的なままである

WangとDePinhoの研究チームは前立腺癌患者の腫瘍サンプルと新しいマウスモデルとを用いて、
MDSCが枯渇すると腫瘍進行は抑制されることを示した

彼らはさらに、細胞のシグナル伝達経路であるHippo-Yap1がケモカインのCxcl5を調節することを明らかにした
Cxcl5は癌と関連するケモカインであることが同定され、これがCxcr2を発現するMDSCを呼び寄せてリクルートする

研究チームはCxcr2を小分子により阻害することで腫瘍進行を遅らせることが可能であることを示し、
腫瘍でYap1の発現をサイレンシングすることでMDSCの浸潤を減少させて腫瘍の増大を阻止できることを実証した

「薬理学的にMDSCを取り除くかCxcl5-Cxcr2シグナル伝達経路を阻害すると、in vivoで強い抗腫瘍応答が引き起こされて生存期間が延長する」
DePinhoは言う
「MDSCのリクルートか浸潤のどちらかを標的にすることは、進行性の前立腺癌の治療において有効validな治療の機会となりうるかもしれない」

WangはMDSCの不活化と免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法(抗CTLA4, PD1, PD-L1)とを組み合わせたさらなる研究が必要だと考えている



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腫瘍のFAKはCCL5を転写させ、TregをリクルートしてCD8+Tを回避する



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周皮細胞の減少により腫瘍のIL-6の発現が上昇し、MDSCがリクルートされてCD8+Tを回避する



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http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150429132753.htm
化学療法は小さい前立腺腫瘍にはよく効くが、大きい前立腺癌は免疫応答を抑制し、化学療法にもかかわらず癌は増殖する
進行した前立腺癌に化学療法もチェックポイント阻害剤による免疫療法も効かない理由の一部は、免疫を抑制するB細胞による

http://dx.doi.org/10.1038/nature14395
Immunosuppressive plasma cells impede T-cell-dependent immunogenic chemotherapy
免疫抑制プラズマ細胞は、T細胞に依存的な免疫性の化学療法を阻害する

CXCL13で前立腺腫瘍にリクルートされたB細胞/プラズマ細胞はリンフォトキシンを産生して、癌幹細胞のIKKα-BMI1モジュールを活性化し、T細胞に依存的な免疫性の化学療法を阻害して去勢抵抗性前立腺癌の進行を促進する



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同じ癌細胞を浸潤的にもそうではないようにもできるが、それはこのHippo経路が活性化しているかどうかに依存的である
浸潤する癌細胞は浸潤しないがん細胞と遺伝子的には同じであり、違いはHippo経路が活性化しているかどうかである

http://dx.doi.org/10.1038/onc.2015.44
Cell growth density modulates cancer cell vascular invasion via Hippo pathway activity and CXCR2 signaling.
細胞増殖密度はHippo経路の活性ならびにCXCR2シグナル伝達を通じて癌細胞の血管浸潤を調整する

血管浸潤表現型は、YAP依存的なケモカインIL-6, IL-8, CXCL1, CXCL2, CXCL3の上方調節と関連があった
 

癌で見られる染色体の破壊を分子レベルで説明する

2015-12-26 06:00:00 | 
Experiments explain the events behind molecular 'bomb' seen in cancer cells

December 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151217130350.htm

科学者たちが癌細胞のゲノムのシーケンシングを始めて以来、彼らは興味深いパターンに気付いてきた
様々な種類の癌細胞の中には染色体の一部が粉砕されpulverized、それが正しく元通りにならず変異が多く生じているように見える細胞が存在した
この現象は長く科学者たちを悩ませてきたが、ロックフェラー大学の新たな研究はこの癌の前駆体として働く奇妙な分子の『爆発explosion』についての説明を示唆する

「悪い変異が一つ、二つ、三つと続けて生じていくことで増殖が制御できなくなり、そこから癌が始まるという『古い』考えがある」
Titia de Lange教授は言う

「爆弾bombが染色体の一部を爆破して多くの変異が同時に生じるというのは、癌がどのようにして始まるのかに関するまったく新しい観点である
我々の最新の研究結果はこの爆弾の背後にある分子レベルの詳細を明らかにする」

12月17日にCell誌で発表される彼らの研究は、クロモスリプシス/chromothripsisという現象にまで至る細胞内でのイベントを説明する
しかしながら、これらのクロモスリプシスの起源についての洞察は、癌につながりうる別の分子イベントであるテロメア・クライシス/telomere crisisへの研究が元になっている

テロメアクライシスは、テロメアという染色体の末端にある保護キャップが細胞分裂の結果として短くなる時に起きる
テロメアのDNAが少ないと離れた染色体をお互いに接触しないよう防ぐことが難しくなる
もしそのような異常を持つ細胞が生き延びて分裂を続けると、それらは癌を生じる可能性がある

研究者はテロメアが融合しないように防ぐタンパク質を阻害し、
さらに細胞が癌化しないよう保護する分子経路のいくつかを使用不可にすることによりヒトの細胞でテロメアクライシスを再現し、
筆頭著者のJohn Maciejowskiがその後に続くイベントを撮影して記録した


これまで研究者たちは、いったん二つの染色体がテロメアの部分で融合して一つになっても細胞が分裂する間に結局は二つに分かれるだろうと考えてきた
しかし今回の研究で、そのようなことはまったく起きておらず、染色体が融合した細胞はそのまま分裂を続けるのが明らかになった
いったん分裂が完了して二つの娘細胞がお互いに離れようとすると、
両者が共有する染色体の一部が引き伸ばされて『染色体橋/クロマチンブリッジ/chromatin bridge』が形成される

「これを例えるなら真ん中で締め付けて絞ったpinched in the middle風船で、
そうしてできた二つの球がお互いに離れていこうとしているようなものだ」
Langeは言う
「または綱引きのようなもので、この場合は綱の両側のチームが娘細胞を表す
ロープはどんどん引き伸ばされる」

そうして形成された染色体橋の長さは、0.2ミリにもなるという
これは細胞レベルとしては聞いたことがないサイズである

結局、この『橋』はウイルスDNAのような異常DNAを標的とする酵素の一つによって分解される
ここで研究者が驚いたのは、この橋を壊す酵素TREX1が通常存在する場所は染色体を含む核ではなく、核外の細胞質だということである
二つの接触した細胞がお互いに離れようと進むにつれて橋のDNAは引き伸ばされ、その張力によって核を覆う核膜に小さな裂け目tearsが生じる
そこからTREX1が核内に入り、染色体橋を破壊するのである

いったんTREX1が染色体橋を分解すると、二つの娘細胞はお互いにはじかれたように離れる/spring away from each other
それぞれの細胞はブリッジのDNA断片のいくらかを持ち、細胞はそれを元に戻そうとする
細胞の何割かはこのイベントの傷により死ぬが、他は生き残って分裂し、損傷を受けたDNAを広める
このDNAはごちゃまぜに組み替えられているか、または癌を抑制する遺伝子のいくつかが失われている
言い換えれば、この一連のイベントがクロモスリプシスを引き起こす

「この研究結果ができれば癌を引き起こしうる早期の分子イベントの理解につながればいいと思う
それがいつの日か癌を早くに診断する新たな方法の開発に至るかもしれない」
de Langeは言う


de LangeとMaciejowskiは今回のプロジェクトでケンブリッジ(イギリス)のウェルカム・トラスト・サンガー研究所と(無論ロックフェラー研究所とも)協力して研究を実施した


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.11.054
Chromothripsis and Kataegis Induced by Telomere Crisis.
テロメアクライシスによって誘発されるクロモスリプシスとカティージス


Highlights
・テロメアクライシスの間に形成される『二動原体性の/2つの動原体を持つdicentric染色体』は、有糸分裂mitosisでは壊れない
・二動原体性の細胞は染色体橋を形成し、これが核膜を断裂ruptureさせる
・TREX1という 3′ヌクレアーゼは染色体橋に一本鎖DNA/ssDNAを生成し、その分解を促進する
・テロメアクライシス後の細胞はしばしばクロモスリプシスとカティージスを示す


Summary
テロメアクライシスは腫瘍形成の間に発生し、それはテロメアの予備の枯渇が頻繁にテロメア融合につながる時に起きる
その結果としての二動原体性の染色体/dicentric chromosomesがゲノム不安定性を促進することが提案されてきた

※centromere: セントロメア,動原体

今回我々はテロメアクライシスにおける二動原体性のヒト染色体の運命について検証した
二動原体性の染色体は有糸分裂の間一定不変invariablyに存続し、
娘細胞をつなぐ50から200マイクロメートル/μmの染色体橋が形成された

有糸分裂後期anaphaseの後の3時間から20時間時点でそれは分解するが、
その前の間期interphaseに染色体橋は核膜の断裂ruptureを誘発し、
細胞質の3プライムヌクレアーゼ/3′nucleaseであるTREX1を蓄積させて、
複製タンパク質A/replication protein A (RPA)でコートされた一本鎖DNAを形成する

CRISPRによるノックアウトでTREX1は一本鎖DNAの生成ならびに染色体橋の分解に寄与することが示された

テロメアクライシス後のクローンはクロモスリプシスとカティージスを示し、これはおそらくpresumably、断片化された染色体橋DNAの修復とAPOBEC編集の結果として起きると思われる

我々はヒトの癌におけるクロモスリプシスがテロメアクライシスにおいて形成される二動原体性の染色体のTREX1を介する断片化から生じる可能性を提案する


<コメント>
以前の訳でKataegisを適当にカティージスと読みましたが、いまだに正確な読み方がよくわかりません



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2557d6b78c3d3f44d0182feeb688dfd9
切断により誘発される複製/break-induced replication (BIR)が一本鎖DNAの大量の蓄積とその後の突然変異クラスターの形成につながる



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http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151210095101.htm
ER+乳癌のタモキシフェンへの抵抗性はAPOBEC3Bによって促進される可能性があり、原発腫瘍でAPOBEC3Bレベルが高い患者は低い患者よりもタモキシフェン治療での無増悪生存期間中央値が短い (7.5ヶ月 対 13.3ヶ月)
APOBEC3Bは遺伝子の変異を引き起こす酵素であり、変異の促進が抵抗性を促進することが示唆される



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/4f370829bd235639aadb3a084208976c
APOBEC遺伝子ファミリーが癌の発症に関与する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1b6d2086f9750f89df2334806e745196/?st=1
V(D)JリコンビナーゼによるDNA編集が的を外れてリンパ腫につながる


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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1524a2901f5928ca17d0ccf185865a87
B細胞が急速に増殖するにつれてAIDの発現も増大し、的外れの損傷を引き起こす
 

CAFは癌細胞が転移するための高速道路を作る

2015-12-23 06:48:50 | 
Smoothing the way for cancer cells to metastasize

How metastasizing tumors use non-cancerous fibroblasts to make a migration highway through surrounding extracellular matrix

December 15, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214090017.htm

細胞外マトリックス(ECM)は全ての線維芽細胞から分泌されるフィブロネクチン/fibronectin(Fn)から主に構成される
通常組織の線維芽細胞(NAF)はそれを密集した網目状dense meshにするが、
癌関連線維芽細胞(CAF)は平行な束parallel bundlesにする


バンダービルト大学Donna WebbラボのBegum Erdoganたちが前立腺腫瘍や頭頸部腫瘍から得られた癌細胞をこれらのECM上で培養plateすると、
CAFのマトリックス上の癌細胞は一方向にうまく動いた

このようにCAFはマトリックスを『道』へと再編成するが、
その理由はCAFがフィブロネクチンの線維をNAFよりもしっかりつかむget a better gripためであることが明らかになった

研究者が牽引力顕微鏡/traction force microscopyを使って両者の違いを計測した結果、
CAFはNAFよりも強くミオシンIIというモータータンパク質からの力を上手く伝えることが可能であり、
それはインテグリンというフィブロネクチン線維へのコネクターconnectorを通じてのものだった

CAFはフィブロネクチンに結合するインテグリンが高レベルであり、さらにRacというGTPアーゼのスイッチがオンになっていた
ミオシンII活性を薬剤により阻害するとCAFの強い牽引力は奪われdeprived of、細胞外マトリックスは『正常な無秩序normal disorder』に戻った
これらの結果は癌の転移に関する長い間の謎を解決し、マトリックスが癌細胞を停止させるための薬剤の標的となりうることを示す
these results point to the matrix as a possible target for drugs to stop cancer in its tracks.


ASCB 2015 in San Diego
 

癌の過半数を駆動するプロセスを明らかにする

2015-12-22 06:54:38 | 
Scientists uncover process that could drive the majority of cancers

December 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214150002.htm

p53遺伝子は遺伝子変異を防ぐという役割で知られ、『ゲノムの守護者』と呼ばれてきた
そして癌の半分以上がp53の変異または機能喪失から生じると考えられている
バージニアコモンウェルス大学/Virginia Commonwealth University (VCU) マッシーがんセンターの科学者、
Richard Moran, Ph.D.による研究はその理由を説明する


まず、Molecular Cancer Therapeutics誌で発表されたMoranの研究結果は、
p53遺伝子の変異または機能喪失がどのようにしてmTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)を活性化させるのかについて記述する
mTORC1は細胞の増殖に必要なエネルギー資源の調節を助けるタンパク質複合体である
mTORC1複合体は多くのタンパク質から構成され、細胞はリソソーム膜を足場として使ってこれらのタンパク質を一箇所に集める

通常の場合、p53遺伝子は必要に応じて
TSC2(tuberous sclerosis complex 2)というタンパク質がリソソームで適切なレベルに維持されるのを助ける
p53が適切に機能しないとリソソーム膜のTSC2レベルは低下し、RHEBというタンパク質がそれに取って代わるtakes its place

このRHEBの蓄積がmTORC1を活性化し、細胞増殖の制御の異常につながる

 p53→TSC2─┤RHEB→mTORC1
 p53↓→TSC2↓─┤RHEB↑→mTORC1↑

「p53が失われると癌の過剰な増殖につながるシグナル伝達プロセスを我々は初めて発見した
これらのタンパク質の相互作用は一連のイベントを通じて癌の発症につながる」
Moran, Paul M. Corman, M.D.は言う

彼はVCUマッシーがんセンターでがん研究のchair、基礎研究のassociate director、
発達治療学/Developmental Therapeuticsリサーチプログラムのco-leaderであり、
さらにVCU医学部では薬理学と毒物学の教授でもある


関連する研究でMoranのチームはペメトレキセド/pemetrexedに焦点を当てた
これは彼が共同で開発した薬であり、現在肺癌の大半で第一線の治療として使われている

Biological Chemistry誌に発表した研究で
MoranたちはペメトレキセドがmTORC1を妨害することにより作用することを実証する
ペメトレキセドはmTORC1を制御する要素の一つであるraptorというタンパク質を阻害し、
それがp53の変異や機能喪失が存在するかどうかに関係なく作用することを研究者は発見した
さらに、mTORC1の重要な調節因子であるTSC2がもはや機能していない場合でさえ作用することも明らかにした

「我々の発見は、ペメトレキセドがこれまで想像されていたよりはるかに臨床的な利用価値があることを示唆する」
Moranは言う

「この研究はp53が適切に機能していない他の癌に対するペメトレキセドの利用についての基礎を築くものであり、
これはもちろんp53だけでなく、TSC2の機能喪失によって起きる症候群である結節性硬化症にも利用できる
結節性硬化症は多くの臓器に良性だが破滅的に増殖する進行性の腫瘍を引き起こす」

※結節性硬化症: tuberous sclerosis
※TSC2: tuberous sclerosis complex 2


http://dx.doi.org/10.1158/1541-7786.MCR-15-0159
p53 Deletion or Hot-spot Mutations Enhance mTORC1 Activity by Altering Lysosomal Dynamics of TSC2 and Rheb
p53の消去またはホットスポット変異は、リソソームにおけるTSC2とRhebの動態を改変することによりmTORC1の活性を促進する

Abstract
p53の喪失または変異は、TSC2ならびにSestrin2の発現を低下させた

p53ヌル細胞へのTSC2のトランスフェクションはTSC2を元に戻しreplace、リソソームのRhebを減少させて野生型p53の細胞を再現した
対照的に、p53ヌル細胞にSestrin2のトランスフェクションはリソソームのmTORを減少させたが、Sestrin2レベルが低いとリソソームのmTORは変化しなかった


http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M115.665133
AMPK control of mTORC1 is p53- and TSC2-independent in pemetrexed-treated carcinoma cells.
ペメトレキセドを投与した癌細胞において、AMPKはp53とTSC2には依存せずmTORC1を制御する

Abstract
AMPKはエネルギー状態のセンサーとして重要だが、
『アミノイミダゾールカルボキサミド リボヌクレオシド/aminoimidazolecarboxamide ribonucleoside (AICAR)』

から直接産生されるAMPアナログの『アミノイミダゾールカルボキサミド ヌクレオシド 一リン酸/aminoimidazolecarboxamide nucleoside monophosphate (ZMP)』

によっても活性化され、
また、抗葉酸のペメトレキセドによるプリン合成の阻害によってもAMPKは活性化する


しかし、この共通するメカニズムにもかかわらず、ペメトレキセドまたはAICARによって活性化されるAMPKシグナル伝達の下流は異なる

AICARにより活性化されたAMPKはmTORC1を阻害するが、
これは直接はmTORC1サブユニットのRaptorをリン酸化することによるものであり、
間接的にはmTORC1を調節するTSC2のリン酸化によりmTORC1を阻害する

対照的に、ペメトレキセドにより活性化したAMPKもmTORC1を阻害したが、
その機序はRaptorのリン酸化だけだった


この相違dichotomyの理由はp53の機能による
p53の標的遺伝子(TSC2を含む)の転写は、AICARによって活性化されるが、ペメトレキセドでは活性化されない
AICARもペメトレキセドもp53を安定化させるが、AICARだけがChk2リン酸化を活性化させ、p53依存的な転写を刺激する

しかしながら、AMPKによるRaptorリン酸化はp53から独立しており、そしてそれはmTORC1を阻害するのに十分である
(ペメトレキセド投与でRaptorリン酸化しか生じなくてもmTORC1は阻害される)


結論
ペメトレキセドのmTORC1への効果はTSC2ならびにp53からは独立している
AICARに応じたp53の転写の活性化はChk2の活性化によるものだが、これはペメトレキセドによっては誘発されない



関連記事
http://ta4000.exblog.jp/17636283
核から細胞質に排出されたFoxO1はTSC2に結合する。それによりTSC1/TSC2複合体は解離して、結果としてRhebが介するmTORC1-S6K1経路は活性化する。

http://ta4000.exblog.jp/17719117
AMPKは直接TSC2とRaptorをリン酸化することによりmTORC1を阻害する。

http://ta4000.exblog.jp/17602564/
Rhebの活性は、結節性硬化症タンパク質のTSC1(ハマルチン)とTSC2(チュベリン)により厳密に調節されている。TSC1とTSC2は機能的なヘテロダイマー複合体を形成し、TSC1はTSC2を安定させる。TSC2複合体にはGTPアーゼ活性化タンパク質 (GAP) が存在し、GTPをGDPに加水分解する。TSC1とTSC2の複合体はこの機能によりRhebを不活化させる。
TSC1かTSC2遺伝子のどちらが機能喪失型の変異を起こしても、過誤腫症候群である結節性硬化症を引き起こす。
 

検出が難しい癌遺伝子の変異を明らかにする

2015-12-17 06:10:07 | 
Study uncovers hard-to-detect cancer mutations

Findings could help identify patients who would benefit from existing drugs

December 14, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151214130353.htm

ワシントン大学医学部の新たな研究によると、
現在のゲノム分析へのアプローチは患者の腫瘍に存在するある種の『複合的な突然変異/complex mutation』を検出するのに一貫してsystematically失敗することが示された
さらに、この複合的な変異のかなりの割合がよく知られた癌遺伝子で見つかるという
その遺伝子は既存の抗癌剤で標的にできる可能性があり、おそらくそれにより利益を得る患者の数を拡大するだろう
この研究結果はNature Medicineの12月14日号に掲載される

「標的になりうる変異を発見できないというのはショッキングであるdevastating」
ワシントン大学マクダネル・ゲノム研究所/McDonnell Genome Instituteのアシスタントディレクターであり、
医学部の准教授associate professorでもある首席著者senior authorのLi Ding, PhDは言う

「我々はこれまでの癌ゲノム研究で一貫してconsistently見逃されてきたある種の遺伝子エラーを発見するためのソフトウェア・ツールを開発し、そのようなイベントを重要な癌遺伝子で非常に数多く発見した
この種のイベントを発見する能力は癌の研究と臨床的な実践のどちらにも重要である」


ゲノムの変異の生じ方は様々だが、最も単純なものはおそらくDNAコードの『文字』の一つが変化することだろう
より複雑な変異には文字がいくつか消えたり挿入されるものがある

今回の新たな研究では8,000人の癌患者の変異に焦点を当て、文字が挿入されると同時に削除されるという変異も調べた
「挿入と欠失がゲノムの同じ箇所に同時に起きていることから、我々はこの種の変異を『挿入欠失indel』と呼ぶ」
Dingは言う

「このようなイベントを捉えるのは非常に難しいが、
それは既存のアプローチがどちらか一方を見つけるようにデザインされているからである
両方のタイプを同時に同じ箇所で検出できるようにはなっていない」

研究者は複合的な挿入欠失を見つけるために特殊化したコンピューターソフトウェアを開発し、
意図的に複合的な変異を導入することでそのゲノム配列決定の正確さを確認した

次に研究者は既に配列決定された癌のゲノムを調べ、
癌と関連する遺伝子内に285の複合的な挿入欠失が存在するのを発見した

これらの複合的な挿入欠失イベントの約81パーセントがこれまでのアプローチによる最初の分析で見過ごされており、
他の18パーセントは別の種類の変異と誤認されていた


Dingはこれら複合的な挿入欠失を見つけるための特別なツールを開発する重要性を強調する
なぜなら、今回の研究データから
それらが既存のツールではほとんど全く検出されず、
加えてランダムとは考えられないほどそれらが重要な癌遺伝子に集中するように見えることが示唆されるからである

この情報は、挿入欠失が見つかった遺伝子にその変異の影響を打ち消すようにデザインされた薬剤が既に存在する時に価値を持つ
研究者は特に肺癌に関連するEGFRに複合的な挿入欠失変異を同定したが、
もしそのような挿入欠失がEGFRに見つかった場合、
エルロチニブのようなEGFR阻害剤が腫瘍のタイプとは関係なく有益な可能性があることをDingたちは示唆する

また、研究者は複合的な挿入欠失を、メラノーマに関与すると思われる遺伝子のKITにも発見した
この分析は、KITに複合的な挿入欠失を持つ患者にイマチニブソラフェニブのようなKITを標的にする薬剤が有効だろうということを示唆する

研究者が開発したソフトウェアはPindel-Cという名称で、 2009年に筆頭著者のKai Ye, PhD准教授によって公表されたPindelを元に構築されたものである
どちらも現在オンラインで自由にダウンロード可能である
http://www.ebi.ac.uk/~kye/pindel/
http://gmt.genome.wustl.edu/packages/pindel/


http://dx.doi.org/10.1038/nm.4002
Systematic discovery of complex insertions and deletions in human cancers.
ヒトの癌における複合挿入欠失の体系的な発見

Abstract
複合的な挿入欠失(インデル/indel)は、
DNAが削除されると同時に様々なサイズのDNA断片が同じゲノムの場所に挿入されることにより形成される

今回我々は8000人を越える癌患者のサンプルのコード配列における体細胞の複合インデルの体系的な分析を発表する
使用したソフトウェアはPindel-Cである

分析した患者の約3.5%において285の複合的なインデルが癌関連遺伝子に存在するのを我々発見した (PIK3R1, TP53, ARID1A, GATA3, KMT2D)
以前の2199人のサンプルの報告では、これらはほぼ全ての例で見落とされていたoverlooked (81.1%) か、アノテーション/注釈が間違っていたmisannotated (17.6%)

フレーム内の複合インデルはPIK3R1とEGFRに多く、フレームシフトはVHL, GATA3, TP53, ARID1A, PTEN, ATRXに広く見られた

さらに、複合インデルは強い組織特異性tissue specificityを示す
(例えばVHLは腎細胞癌サンプル、GATA3は乳癌サンプル)

最後に、これまで見過ごされてきた薬剤開発の対象となりうる変異の発見は、構造的分析により支持される

今回の研究は複合インデルの発見改善ならびに医学研究における解釈の重要性を示す
 

乳癌の脳転移に関連するCTCサブ集団を特定

2015-12-12 06:29:16 | 
Researchers isolate cells implicated with breast cancer-derived brain tumors

December 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203081224.htm

脳に転移した乳癌患者では、
・epithelial cell adhesion molecule (EpCAM) が陰性、
・ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体/urokinase plasminogen activator receptor (uPAR)
または
インテグリンβ1/beta-1 integrin (β1int) のどちらかが陽性
のCTCが見られた

しかし、この細胞集団から脳転移を再現することはできなかった
「これはおそらく、乳癌進行を適切に真似るぐらい十分多くCTCを作るのが難しいからだろう」


http://dx.doi.org/10.1038/srep17533
The isolation and characterization of CTC subsets related to breast cancer dormancy.
乳癌の休止状態と関連するCTCサブセットを単離して特徴付けをする

Abstract
CTCの表現型を明らかにすることは、その転移能metastatic competenceと関連する不均一性heterogeneityを分析するために有望である

CTCの生存率は非常に変わりやすくvariable、これが
浸潤と転移または休止状態のどちらかの原因となるまだ未探求の性質についての、多くの疑問につながる

我々は乳癌が脳に転移したと診断された患者とそうでない患者の末梢血からCTCサブセットを単離した

CTCサブセットは、EpCAM陰性だが、CD44+/CD24−という幹細胞の徴候が陽性のものが選ばれ、
それに加えて、uPARとintβ1を組み合わせた発現を選んだ
これらは乳癌の『休止dormancy』メカニズムに直接関与するバイオマーカーである

CTCを三次元培養して腫瘍塊tumorsphereを生成させて分析した結果、
uPAR/intβ1を組み合わせた発現に特有のdistinctive、三次元培養されたCTC腫瘍塊の増殖性で浸潤性の性質を同定した

このuPAR/intβ1サブセットの分子メカニズムは、脳転移を生じる可能性が高いハイリスク乳癌患者を前向きに同定する能力を促進する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ea0de8563d5148bd004a897b9905082e
小細胞肺癌の循環腫瘍細胞を培養することに成功



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203081222.htm
乳癌や前立腺癌がいったん骨に転移するとそこで『不活性dormantな状態』になり、数ヶ月から数年間たってから『活性化』して増殖を始め、転移巣を形成する
今回の研究では急速な分裂をしなくなると蛍光を発するようにした多発性骨髄腫をマウスの脛骨tibiaに注入し、それらのうち少数が休止状態に入るのを二光子顕微鏡で観察した
この骨髄腫細胞は、骨芽細胞により休止し、破骨細胞によって再活性化することがわかった



関連サイト
http://pdbj.org/eprots/index_ja.cgi?PDB%3A2FD6
セリンプロテアーゼの一種であるウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子(uPA)は細胞表面にあるウロキナーゼ受容体(uPAR)に高い親和性を示し、腫瘍の増殖や転移や炎症に関与する一連の信号伝達を誘発する。このuPAとuPARが関与する信号伝達機構は腫瘍の生育や転移に重要な役割を果たすと考えられており、可溶性ウロキナーゼ受容体(suPAR)の腫瘍細胞中濃度は、がん患者の予後状態を反映する指標として知られている。
またuPARの発現を抑制することによって、腫瘍細胞の浸潤や転移が抑えられ、浸潤の逆戻りが起こり、腫瘍の休眠期が延長されるという知見から、uPARの拮抗剤はがんの進行を食い止める薬剤になりうるのではないかと注目されている。 このような背景もあいまって、ウロキナーゼ受容体の立体構造の決定が待ち望まれていた。
 

遺伝子空白領域の立体的な相互作用

2015-12-11 06:12:22 | 
Folding your genes: New discovery sheds light on disease risk

November 30, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151130084522.htm

イギリスのマンチェスター大学とバブラハム研究所/Babraham Instituteの新しい研究により、
遺伝子間の空白gapがどのように相互作用して関節炎や1型糖尿病のような疾患リスクに影響するのかが明らかになった

Nature Communicationsで発表された研究で科学者は
DNAの折りたたみfoldsの中にある『空白の領域gap regions』が、
実はこれまで疾患に重要であるとは考えられてこなかった遺伝子と物理的に相互作用することを示す
この空白の領域は、遺伝子のスイッチを入れて発現を制御することに重大な影響を持つ
現在これらの遺伝子の多くが関節炎や乾癬、1型糖尿病のような疾患の発症リスクを増大すると考えられている

マンチェスター大学の主任研究者lead researcher、Stephen Eyre博士は言う

「かつて、研究者は空白の領域gap regionに『最も近い遺伝子』を探すというアプローチにより、特定の疾患を引き起こす遺伝子を探して特定してきた」

「事実はそれよりもはるかに複雑である
遺伝子間の空白は影響があるだけではなく、今回我々の研究が示したように空白は必ずしも『最も近い遺伝子』に影響を及ぼすとは限らない
それらははるかに遠い距離を越えて作用する可能性があり、遠く離れた遺伝子のオンとオフを切り替える」

このプロセスは、2メートルあるDNAを核内に詰めこむための折りたたみfoldingによって引き起こされる
折りたたみにより空白領域は『重要な遺伝子』と近くなり、したがって遺伝子の活性レベルを制御する

折りたたまれたDNAのある部分では、
様々な疾患へのリスクを上げるいくつもの空白領域が、同一の遺伝子と『出会う』

この発見は次のような可能性も生じる
「遺伝子の中には複数の疾患リスクを上げるものがあり、
それは空白領域によってどのように調節されるか、そしてDNA構造のどの場所から調節されるかに依存する」

この知識は、疾患の理解と治療の可能性への洞察につながりうる

研究の次の段階は、この複雑な相互作用をさらに深く、そして異なるタイプの細胞でも調査し、
遺伝子と空白領域がどのように相互作用して疾患リスクを上げるのかについてのより完全な全体像を明らかにすることである


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10069
Capture Hi-C reveals novel candidate genes and complex long-range interactions with related autoimmune risk loci.
キャプチャHi-Cにより新たな候補遺伝子ならびに関連する自己免疫リスク遺伝子座との長距離相互作用を明らかにする

Abstract
ゲノムワイド関連解析/GWASはこれまで複合性疾患と関連する遺伝子バリアントgenetic variantsの同定に素晴らしい成功を収めてきたが、
関連シグナルassociation signalsの大部分は遺伝子と遺伝子の間にありintergenic、そのシグナルの多くがエンハンサー領域に存在するというエビデンスが蓄積しつつある


我々はキャプチャHi-Cを使い、「4つの自己免疫疾患に関するバリアント」と、「バリアントの機能的標的」との間の相互作用をB細胞とT細胞系統において初めて調査した

今回我々は非常に多くのループ形成による相互作用を報告し、B細胞とT細胞の両方に共通する相互作用はほんの少数に過ぎないというエビデンスを提供する
これは相互作用が非常に細胞タイプ特異的cell-type specificであることを示唆する

疾患と関連するいくつかのSNPは最も近い遺伝子とは相互作用せず、
より説得力のあるcompelling遺伝子(例えばFOXO1やAZI2)と相互作用し、それはしばしば数百万塩基も離れて存在する

そして最後に、
様々な自己免疫疾患と関連する領域はお互いに相互作用し、そして同一遺伝子のプロモーターとも相互作用する
これは自己免疫疾患の遺伝子標的が共通して存在する可能性を示唆する(例えばPTPRC, DEXI, ZFP36L1)


Results
例として、関節リウマチと関連するSNPがある領域はEOMES遺伝子の近くに位置するが、このSNPはAZI2のプロモーターと強く物理的に接触することを示唆する強いエビデンスが発見された
AZI2はNF-κBの活性化に関与する遺伝子であり、どちらの細胞系統でも64万塩基離れている (Fig. 4a)

さらに、関節リウマチ/RAと若年性特発性関節炎/JIAに関与するバリアントがCOG6遺伝子のイントロン領域に存在するが(COG6はゴルジ装置の要素をコードする遺伝子)、これはFOXO1遺伝子のプロモーターと相互作用することを示す
このバリアントはどちらの細胞タイプでも100万塩基離れている (Fig. 4b).

FOXO1遺伝子は関節リウマチにおいて『線維芽細胞様の滑膜細胞/fibroblast-like synoviocyte (FLS)』の生存に重要であることが最近発見された(18
関節リウマチのFLSでは、変形性関節炎osteoarthritisのFLSと比較して過剰にメチル化されており(19、これは遺伝子候補に関して我々の研究結果を強く支持する機能的エビデンスを提供する

※18: "JNK-dependent downregulation of FoxO1 is required to promote the survival of fibroblast-like synoviocytes in rheumatoid arthritis."
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24812285
RESULTS:
末梢血でのFoxO1のmRNAレベルはRA患者で減少し、滑膜組織でのFoxO1発現は疾患活動性disease activityと逆相関していた
RAのFLSをIL-1βまたはTNFで刺激すると、FoxO1は急速に下方調節された
この効果はAkt/protein kinase B (PKB) には依存せず、JNKを介するFoxO1のmRNA分解が加速されたことによる
RAのFLSにおけるFoxO1のアデノウイルスによる構成的活性化/ADAによる過剰発現はアポトーシスを誘導し、これは細胞周期と生存を調節する遺伝子(BIM, p27(Kip1), Bcl-XL)の発現の変化と関連した

CONCLUSIONS:
我々の発見はJNKに依存的なmRNA安定性の調整を同定する
これはサイトカインによるFoxO1調節の根底にあるAkt/PKB非依存の重要なメカニズムであり、FoxO1の発現の減少がRAにおけるFLSの生存を促進することを示唆する


※19: "DNA methylome signature in rheumatoid arthritis."
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22736089


※線維芽細胞様滑膜細胞 (fibroblast-like synoviocyte: FLS): 滑膜組織の表層に存在し、関節リウマチにおいて強い増殖能を示す。サイトカインの産生、タンパク質分解酵素の産生により滑膜炎、パンヌスpannus形成、骨軟骨破壊に関与する


英語版WikipediaでのFLSの説明: 正常組織において、滑膜(関節包と関節腔articular cavityの間に位置する薄い層)を構成する、関節の内層である
滑膜synovial membraneは、外層outer layerである『内膜下subintima』と、内層inner layerである『内膜intima』という2つの要素から構成される
この内層inner layerは主に2種類の細胞から構成され、特殊化したマクロファージである『マクロファージ様滑膜細胞/macrophage-like synovial cells』と『線維芽細胞様滑膜細胞/fibroblast-like synoviocytes』からなる
これらは関節内部の恒常性の維持に重要であり、滑液synovial fluidの主な要素であるヒアルロン酸hyaluronic acidや他の糖タンパク質の代表的な供給源である
線維芽細胞様滑膜細胞は間葉系の源の細胞であり、線維芽細胞と共通する多くの特徴(複数のタイプのコラーゲンや、ビメンチンタンパク質、細胞骨格フィラメントの一部などの発現)を示すが、
線維芽細胞とは違い独特のタンパク質を分泌し、中でも特にルブリシンlubricinは関節の潤滑lubricationのために重要である

滑膜の過剰形成(細胞数の増加)は、関節リウマチという自己免疫疾患の典型的な特徴である
関節リウマチでは慢性的な炎症が生じ、軟骨と関節が破壊されて変形するが、
増殖とアポトーシスのプロセスの変化により滑膜内の細胞数は増加し、特に線維芽細胞様滑膜細胞が増加する
線維芽細胞様滑膜細胞は他の免疫細胞と共に炎症性の環境を滑膜に作り出し、損傷した箇所により多くの免疫細胞を引き寄せ、関節の破壊の一因となる [1][2][3]
滑膜内の線維芽細胞様滑膜細胞は関節リウマチで表現型の変化を示し、『接触阻止contact inhibition』の性質を失い、『粘着性の表面に依存性の増殖the growth dependency on adhesive surfaces』も失い、そのどちらも線維芽細胞様滑膜細胞の数の増加の原因となる(これらは例えば癌細胞の増殖の特徴でもある)
線維芽細胞様滑膜細胞は炎症性タンパク質の特にIL-6とIL-8や、プロスタノイド/prostanoids、マトリックスメタロプロテイナーゼ/matrix metalloproteinases (MMPs)を作る
これらは他の細胞に直接影響し、炎症の促進にも関与する
これらのプロセスは血小板に由来する微小胞microvesiclesによっても影響され、これもIL-1の分泌を通じて線維芽細胞様滑膜細胞の活性化の一因となる [4]


※pannus: パンヌス。慢性的な関節リウマチなどのときに出現する、滑膜の関節内への増殖状態



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b9a5d42e4bba4e00fb26777d33a8b188
ループを形成して遠く離れた相互作用をするDNAをキャプチャHi-C技術により調べる


癌細胞は線維芽細胞に転移と増殖をサポートさせる

2015-12-09 06:14:42 | 
Spreading cancer cells must change their environment to grow

December 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151203135844.htm

フランシス・クリック研究所のCancer Research UKの科学者の新たな研究によると、
転移しようとする癌細胞が新しい場所に到達すると、環境を作り変えて増殖し続けることが可能であるという
さらに、癌細胞が環境を変化させるのが早いほど、その増殖は早くなるだろうということも明らかになった


別の場所に移動した癌細胞は、周囲の組織からの『助け』が必要である
周囲の助けにより必要とする環境を得た癌細胞は定着establishedし、増殖を開始して新たな腫瘍を形成する

研究者は転移しやすい癌細胞がTHSB2を作ることをマウスで示した
THSB2は新しい環境をより快適welcomingにするのを助け、腫瘍が増殖できるようにする

さらなる分析により、THSB2は線維芽細胞を活性化させることが明らかになった
線維芽細胞は通常は体内の組織を作っているが、癌細胞の増殖をサポートすることも可能である


Cancer Research UKの科学者でフランシス・クリック研究所のグループリーダーであるIlaria Malanchi博士は言う
「癌細胞が新しい環境に適応する能力を阻害できれば、他の場所で癌が増殖するのを遅くできるだろう」

「癌細胞がTHSB2タンパク質を多く作るほど環境は素早く変化し、癌細胞の増殖にとって適した状態になる」

「これは刺激的な第一歩である
我々は次に癌細胞がTHSB2を作るのを止める阻害剤を見つけ、転移する能力を低下できるかを調べる必要があるだろう」

Cancer Research UKのchief scientistであるNic Jones教授は言う
「転移は複雑なプロセスである
今回のような研究により、我々は転移が起きるのを止めてより多くの人命を救うための方法の理解に一歩近づくだろう」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.11.025
Mesenchymal Cancer Cell-Stroma Crosstalk Promotes Niche Activation, Epithelial Reversion, and Metastatic Colonization
間葉系の癌細胞とストロマのクロストークは、ニッチの活性化、上皮への再転換、転移増殖を促進する

※colonization/innidiation: 転移増殖
※EMT: 上皮間葉転換


Highlights
・AXLが陽性の間葉系状態の細胞は、線維芽細胞を活性化させる高い能力を持つ
・AXL-EMTに依存的な線維芽細胞の活性化はTHSB2によって促進される
・活性化した線維芽細胞は、癌細胞の上皮状態に向けた可塑性/柔軟性plasticityを促進する
・この間葉上皮転換は、BMP依存的な増殖と関連する


Summary
Subsequently, disseminated metastatic cells revert to an AXL-negative, more epithelial phenotype to proliferate
and decrease the phosphorylation levels of TGF-β-dependent SMAD2-3
in favor of BMP/SMAD1-5 signaling.

in favor of ...
〈事に〉賛成して,…を支持して,〈人に〉味方して:
〈事が〉…に有利に,の利益になるように.


http://dx.doi.org/10.1158/1538-7445.AM2015-4723
Abstract 4723:
Mesenchymal status promotes metastatic colonization via a cancer cell-stroma crosstalk which uncouples EMT and stemness
間葉状態は、癌細胞-ストロマのEMTと幹細胞性の連結を分離させるuncoupleクロストークを通じて、転移増殖を促進する
 


良性腎腫瘍が悪性に進行しないための障壁

2015-12-04 06:05:30 | 
Identification of barrier that prevents progression of benign kidney tumors to malignant disease

November 20, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151120183144.htm

良性腫瘍とされる腎臓のオンコサイトーマにはタイプ1とタイプ2があり、
タイプ1は染色体の喪失がなく、タイプ2は特定の染色体喪失がある

タイプ2は好酸性嫌色素性腎細胞癌/eosinophilic chromophobe renal cell carcinoma (ChRCC) に進行するが、
タイプ1は悪性に進行しない

※オンコサイトoncocyteは唾液腺などに見られる細胞。オンコサイトーマoncocytomaはそれに似た腫瘍細胞で、多数のミトコンドリアを持つ。唾液腺、腎臓などに生じるまれな良性腫瘍だが一部が悪性の経過をたどる


そのようなタイプには関係なく/irrespective of the 'type,'
オンコサイトーマはミトコンドリアゲノムの変異によりエネルギー産生の低下を示す
腫瘍進行を支えるエネルギーの不足が、この腫瘍の良性の性質を説明する

この良性腫瘍では廃棄物の処理や細胞内タンパク質の収集と配分などがミトコンドリア機能低下により低下している
今回の研究結果は、メトホルミンのようなミトコンドリア阻害剤がいくつかの癌の治療薬として使える場合があることを示唆する

このような『障壁』は、タイプ2のサンプルではp53のような変異のために破綻し、良性腫瘍は好酸性ChRCCに進行できるようになる


良性腫瘍は悪性腫瘍と異なり、浸潤せず局部に留まるために除去によって治癒可能である
腫瘍を良性のままに制限することは癌治療へのアプローチを示す可能性があり、
我々の研究はメトホルミンによるミトコンドリアの阻害が様々な癌で抗癌作用を持つことも示唆する


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.10.059
The Genomic Landscape of Renal Oncocytoma Identifies a Metabolic Barrier to Tumorigenesis.


Highlights
・タイプ2の腎臓オンコサイトーマは好酸性ChRCCに進行する可能性がある
・ミトコンドリアの機能不全はゴルジ体の編成と輸送を破綻させる
・オンコサイトーマにおけるミトコンドリアの蓄積は除去の障害による
・ミトコンドリア機能の障害は腫瘍発生の障壁barrierである

Summary
タイプ1はCCND1(サイクリンD1)再編成の二倍体diploidであり、
タイプ2は多くで染色体1とXまたはY and/or 14と21の喪失を伴う異数体である
 

酸素が不足した肝細胞癌はブドウ糖の代わりに酢酸を使う

2015-12-03 06:08:44 | 
Blocking body's endocannabinoids could be effective liver cancer treatment

November 23, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151123103057.htm


(肝臓癌の患者をACSS1の発現に基いて階層化するstratified)

スウェーデン王立工科大学(KTH)による新しい研究で、
肝臓のカンナビノイド受容体は肝臓癌患者の何割かで標的となりうることが明らかにされた
Cell Reportsで発表された今回の研究結果は、患者にどんな治療が最も効きやすいのかを予測する方法も提供する

この研究では、最も一般的なタイプの肝臓癌である『肝細胞癌/Hepatocellular carcinoma (HCC)』が酸素の不足した低酸素の環境でも増殖できるようにする代謝プロセスを明らかにする
その中で研究者は、どの患者がCB1受容体を阻害する薬物に反応するのかを予測するために代謝プロセスをどのようにしてモデル化するのかについての方法を示す

ストックホルムのKTH王立工科大学/Royal Institute of Technologyのシステム生物学者であるAdil Mardinogluは言う
「これは患者が特定の薬物療法に応答するかどうかを予測するプレシジョン・メディシン(精密医療/precision medicine)への可能性を開く」

「我々の研究はなぜいくつかの抗癌剤が全ての患者に効果があるわけではないのかを説明し、
そして癌を治療する前に何をすべきなのかを示す」

「たとえ同じ癌でも(この場合は肝臓癌)治療の前に腫瘍の特徴を明らかにすることが重要である
肝細胞癌/HCCの治療で利用可能であり臨床で最も使われている抗癌剤は、患者の30%しか応答しない
その理由の一部は患者の階層化stratificationが欠けているためである」


癌細胞は増殖するという要求requirementsに合わせるために代謝を調整しなければならない
その要求の一つがアセチル-CoAのコンスタントな供給である
アセチル-CoAは多くの生化学反応において重要な役割を演じる分子であり、癌細胞を構成する材料の主な前駆体の一つである

栄養が豊富で酸素の供給が十分な状態では、アセチル-CoAは主にブドウ糖から作られる
しかしながら、腫瘍の内部はしばしば酸素が限られた状態になり、それは結果としてブドウ糖の利用を制限する

研究チームは、酸素が欠乏したHCC細胞がブドウ糖の代わりにミトコンドリアによって作られる炭素を食べて育つthrive on carbonことを発見した
ミトコンドリアは短鎖脂肪酸の酢酸acetateという分子を分解してアセチル-CoAを作り、脂質を作るための材料を生じる
そして、このHCCの増殖プロセスではミトコンドリアアセチル-CoA合成酵素(ACSS1)が鍵となる重要な酵素であることが判明した


今回の研究ではスウェーデンのヒトタンパク質アトラスプロジェクト/Human Protein Atlasのプロテオミクスデータを利用して作成されたコンピュータモデルを使い、
約360のHCC腫瘍と50の健康な肝臓サンプルの全遺伝子発現をプロファイリングして分析した

KTHで微生物学の教授でありHuman Protein AtlasプログラムのディレクターでもあるMathias Uhlénは、
このオープンソースである研究データベースの目的は「新たな診断法diagnosticsと薬剤の開発を刺激するだけでなく、
正常なヒトの生物学的な基本的洞察を提供するためでもある」と言う
「今回の研究は、肝臓癌のようなヒトの疾患を探求するためにオープンソースな情報を利用した優れた例である」


ヒトの体はマリファナのような物質を体内で作っていて、これをエンドカンナビノイドendocannabinoidと呼ぶ
エンドカンナビノイドはcannabinoid type 1 receptor (CB1) という受容体を活性化させて肝臓の脂肪酸合成を増加させることが知られている
CB1受容体は脳や肺、肝臓、腎臓に見られ、気分、食欲、痛覚pain sensation、記憶など多くの生理的プロセスに関与する

今回の研究ではCB1受容体の発現が通常よりも肝臓癌サンプルで増加することが明らかになった
これはCB1受容体を阻害する薬が肝細胞癌に有効である可能性を示唆する

「そのような薬は望ましくない精神病的な副作用を引き起こすことがわかっているが、
脳に入り込まないCB1アンタゴニスト/拮抗薬はそのような副作用を生じず、しかし末梢のCB1受容体を通じて治療効果は保たれる
そのような薬が現在開発中である」
研究の共著者であり米国立アルコール乱用依存症研究所/National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholism (NIAAA) で科学ディレクターのGeorge Kunosは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.10.045
Stratification of Hepatocellular Carcinoma Patients Based on Acetate Utilization.


Highlights
・HCC腫瘍に関するゲノムスケールでの代謝モデルを再構築
・HCCにおける代謝の変化を明らかにする
・HCC腫瘍間でのACSS1とACSS2の不均一な発現を分析
・低酸素状態下でのネズミとヒトのHCCサンプルにおけるACSS1の誘導

Summary
ACSS1はヒトHCCの低酸素状態下での腫瘍の増殖ならびに悪性度malignancyと関連する



[肝細胞癌]
 CB1↑→脂質合成↑

[肝細胞癌]
 酢酸─(ACSS1↑)→脂質合成↑