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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

Myc「私を食べないで」「私を見つけないで」

2016-03-14 06:06:17 | 
Protein increases signals that protect cancer cells, study finds

March 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160310143811.htm

スタンフォード大学医学部の研究者は癌関連遺伝子Mycの発現と、腫瘍を免疫系から保護する細胞表面の分子との間のつながりを明らかにした
Mycは『二つの分子』の発現を直接制御することで免疫系から腫瘍を守るのだという

この発見は、腫瘍がうまく成長するために必要な二つの重要なステップを関連付ける初めてのものである
一つは制御不能な細胞の増殖であり、Mycが変異するか調節不能になると細胞分裂を促進するタンパク質レベルの増加を引き起こす
そしてもう一つは、その増殖を止めるために作られる免疫分子の裏をかくoutwitための能力である

ドイツ・バイエルンのヴュルツブルク大学との協力のもと実施された今回の研究は、Scienceのオンライン版で3月10日に発表される予定である
首席著者は腫瘍学と病理学の教授であるDean Felsher, MD, PhDであり、筆頭著者はpostdoctoral scholarのStephanie Casey, PhDである

Felsherは言う
「Mycのような癌遺伝子がどのようにして癌を引き起こすのか、そしてそれら癌細胞はどのようにして免疫系をうまく回避するのか?
我々の発見はそれらの間の密接な因果関係について述べる」


「私を食べないで」と「私を見つけないで」
'Don't eat me' and 'don't find me'

二つの分子の一つはCD47というタンパク質である
これは以前スタンフォードのIrving Weissman, MDのラボの研究者によって『私を食べないで』というシグナルとして働くことが明らかにされている
このシグナルは癌を貪り食う免疫細胞であるマクロファージを寄せ付けないward off
Weissmanはがんの臨床研究を担うVirginia and D.K. Ludwig Professor教授職であり、スタンフォード幹細胞生物学・再生医学研究所のディレクターでもある

※D.K. Ludwig: Daniel K. Ludwigが1971年にルートヴィヒがん研究所を設立した(1971年はニクソン大統領が『癌との戦い』を宣言した年)
※2006年に6つのルートヴィヒセンターがアメリカに設立された(ジョンズ・ホプキンズ大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、メモリアルスローンケタリングがんセンター、スタンフォード大学、シカゴ大学)

ヒトの癌はほぼ全てが細胞表面にCD47を強く発現しており、CD47タンパク質を標的とする抗体が現在様々なヒトの癌に対して第一相の臨床試験中である

もう一方の分子はPD-L1で、これは『私を見つけないで』というシグナルを送り免疫系を抑制することが知られている
PD-L1は癌や自己免疫疾患で過剰発現しているが、通常の妊娠中にも見られる分子である
PD-L1に結合する抗体が膀胱癌と非小細胞癌の治療用としてアメリカFDAによって承認されているが、他の多くの癌の治療でも有効なことが示されている


癌でMycはいつも容疑者
In cancer, Myc a usual suspect

Felsherのラボの研究者はMycタンパク質を10年以上研究している
Mycはいわゆる癌遺伝子によってコードされている
正常な癌遺伝子は細胞の重要な機能を実行しているが、変異したり不適切な過剰発現することにより強力な癌のプロモーターとなる
Myc癌遺伝子はヒトのあらゆる癌の半分以上で変異するか調節を失う

Felsherのラボは特に癌遺伝子依存oncogene addictionという現象を研究している
この依存状態にある腫瘍細胞は特定の癌遺伝子の発現に完全に依存していて、
動物実験ではMyc遺伝子の発現を阻害することにより腫瘍が完全に退縮complete regressionする

2010年にFelsherたちはこの動物実験での退縮regressionが完全な免疫系が存在する時のみ起きることを示したが、その理由は不明だった

「それ以来、私は心の奥でMycと免疫系との間に関係があるに違いないと考えてきた」
Felsherは言う


Mycの発現をオフにする
Turning off Myc expression

CaseyとFelsherはMycの発現と癌細胞表面のCD47・PD-L1タンパク質との間に関係があるのかを調べるため、マウスとヒトの腫瘍細胞でMycの発現を能動的にオフにすると何が起きるのかを調査した

実験はマウスとヒトの急性リンパ芽球性白血病(ALL)、マウスとヒトの肝細胞癌、ヒトの皮膚癌、ヒトの非小細胞肺癌で行われ、
実験の結果、Mycの発現の減少はCD47とPD-L1タンパク質レベルを同様に低下させた
対照的に、細胞表面に見られる他の免疫調節性分子のレベルは影響を受けなかった

研究者は公的に利用可能な何百人もの腫瘍患者サンプルの遺伝子発現データから
肝臓、腎臓、結腸直腸の腫瘍においてMyc発現レベルがCD47・PD-L1遺伝子の発現レベルと強く相関することを明らかにした

次にCD47・PD-L1遺伝子を調節するDNA領域を直接調べた結果、マウス白血病細胞、ヒトの骨癌細胞系統において高レベルのMycタンパク質がCD47・PD-L1のプロモーター領域に直接結合することが明らかになった
彼らはこのMycの結合がCD47遺伝子の発現を増大させることもヒトの血球細胞系統において確認した


相乗作用による治療の可能性
Possible treatment synergy

最後に、CaseyとFelsherは遺伝子工学によりマウス白血病細胞でMyc発現状態にかかわらずCD47またはPD-L1遺伝子を常に発現するようにした
この細胞はマクロファージやT細胞のような免疫細胞による発見を回避することが通常の細胞よりもうまく、
これらの細胞から生じた腫瘍はMyc発現が不活化されても退縮regressしなかった


「CD47とPD-L1が癌細胞の表面に存在すると、癌遺伝子を停止させてもマウスは適切な免疫応答を開始せず、腫瘍は退縮しないということを我々は突き止めつつある」
Felsherは言う

今回の研究は、MycとCD47かPD-L1の発現を標的とする治療の組み合わせが腫瘍の増殖を遅くするか止め、加えて免疫系に向けて『赤旗を降る』ことによりおそらく相乗効果を発揮するだろうということを示唆するとFelsherは言う

「癌の免疫分野において途方もない興奮が高まりつつある」
There is a growing sense of tremendous excitement in the field of cancer immunotherapy

「多くの場合はうまくいくが、なぜ癌の中に免疫療法が有効なものとそうでないものがあるのかは明らかになっていない
我々の研究は癌遺伝子の発現と免疫の調節との間の直接のつながりに光を当てるものであり、
これは患者を救うために利用できる可能性がある」

この研究はスタンフォード医学部がプレシジョン・ヘルスprecision healthに焦点を当てる一例である
その目標は疾患の先手を打って予防し、病苦を正確に診断して治療することである


http://dx.doi.org/10.1126/science.aac9935
MYC regulates the antitumor immune response through CD47 and PD-L1.



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2d47e9452ca9fbe9fd92159fba5b70bc
CD47に対する抗体で「私を食べないで」シグナルを無効化し、マクロファージが癌細胞を破壊できるようにする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ba31225fb3f8b2ca8d9732645ddc4c3d
p53はmiR-34aを活性化させ、miR-34aはPD-L1の発現を直接阻害する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/86d8ce693a9d47602829e71dc811c01c
p53突然変異はMLL1を介してゲノムのメチル化を変化させ、癌の増殖を促進する
 

肥満は癌幹細胞を増大させる

2016-03-12 06:06:18 | 
Breast cancer has a higher incidence in obese women because fat facilitates cancer stem cells expansion

March 10, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160310080818.htm


(未成熟な脂肪細胞の顕微鏡画像
Credit: Image courtesy of University of Granada)

グラナダ大学(UGR)が参加する国際研究チームは、なぜ乳癌は肥満の人々に多く、そしてより悪性化するのかについての新たなデータを明らかにした
その理由は、腫瘍の周囲の脂肪が、癌幹細胞(CSC)の増殖と浸潤を促進するためだった
癌幹細胞は腫瘍の発症と成長の原因となる細胞である


癌幹細胞が腫瘍の内部で占める割合は非常に小さいが、その主な特徴は転移を生じることであり、元の腫瘍から遠く離れた場所に移動する
従来の化学療法や放射線療法ではCSCを排除できず、そのため最初は反応があっても多くの癌患者は再発に苦しむというのが一般的である
今回の新たな研究はマイアミ大学(フロリダ)を中心とするもので、そこへグラナダ大学の大学病院センターと研究チーム『先進療法Advanced therapies: 分化と再生と癌differentiation, regeneration and cancer』が参加した


メカニズムは未だ明らかではない
Mechanisms yet to be clarified

肥満が蔓延した結果としての癌の罹患率と脂肪率は非常に深刻な問題である
事実、癌と関連する死亡の20%までが肥満のせいであるかもしれないと現在推定されている

肥満の女性は閉経後に乳癌を患う危険性が高く、年齢とは関係なく悪性の進行を示すが、肥満が癌の発症と進行に寄与するメカニズムは未だ明らかではない
肥満と関連する脂肪は局所的な炎症を引き起こし、脂肪細胞が成熟するのを妨げる

Cancer Research誌で発表された今回の研究はマウスで実施されたものであり、脂肪細胞と乳癌細胞を同時に培養させてその影響を評価した
評価する項目は、腫瘍の悪性度aggressivity、局所浸潤能、腫瘍が転移する潜在性などである

実験結果、乳癌の最初のステージの間に
腫瘍の近くでの腫瘍細胞と未成熟な脂肪細胞との間の相互作用は炎症性タンパクであるサイトカインの分泌を増大させた

「このサイトカインは、非常に転移しやすいCSCをさらに増殖させる」
グラナダ大学の教授Juan Antonio Marchal Corralesは言う


前臨床的な論理的根拠
Preclinical rationale

加えて、研究者はこのプロセスが起きるメカニズムについて記述している
それはSRCキナーゼタンパク質の活性化と関連があり、そこからSox2転写因子の活性化が誘導され、マイクロRNAのmiR-302bの発現が上昇する
Sox2は幹細胞の性質を維持するために必要な転写因子である

「腫瘍細胞と未成熟な脂肪細胞との長期の共培養はCSCの割合を増加させ、サイトカインでも同じことが起きた
CSCは新しく腫瘍を形成する能力を持つ細胞である
マウスの実験では、CSCの増加だけでなく、血液中を循環する腫瘍細胞の存在を増やし、その転移能を増大させた
SRCキナーゼを阻害する薬剤はサイトカインの産生とCSCをどちらも減少させた」

これらの研究結果は肥満の人の乳癌での死亡率増大の根本に存在する新たな洞察を明らかにするとともに、まったく新しい乳癌治療にSRCキナーゼ阻害剤の効能を試験する前臨床的な論理的根拠をもたらす


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-0927
Interactions between Adipocytes and Breast Cancer Cells Stimulate Cytokine Production and Drive Src/Sox2/miR-302b-Mediated Malignant Progression.
脂肪細胞と乳癌細胞との間の相互作用はサイトカイン産生を刺激し、Src/Sox2/miR-302bを介する悪性進行を促進する

Abstract
機構的な分析から、
未成熟な脂肪細胞またはサイトカインと共に培養した癌細胞はSrcキナーゼを活性化させ、そうしてSox2とc-Myc、Nanogの上方調節を促進することが実証された

加えて、Sox2依存的なmiR-302bの誘導がcMYCとSOX2発現をさらに刺激し、サイトカインによって誘導される癌幹細胞様の性質をさらに高めた


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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8b2f4115e30e99b7b6e8eecb632fb94e
肥満→胎盤成長因子→VEGFR-1→炎症↑免疫抑制性TAM浸潤↑→癌進行↑体重増加↑→肥満↑↑



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/bfd19fa7951ad286a8a1a4165424c086
グアニリンの受容体は増殖を制御する腫瘍抑制因子として働くが、肥満の結腸癌患者ではグアニリン遺伝子発現が低下している
 

癌細胞のセリンの合成を止める

2016-03-11 06:06:44 | 
Team finds new approach to curbing cancer cell growth

March 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160307114023.htm

スクリップス研究所/The Scripps Research Institute (TSRI)の科学者たちは、
新しいアプローチを用いてある種の乳癌、肺癌、メラノーマの治療に使える可能性がある薬剤の新たな候補を明らかにした

今回の研究で焦点を当てたのは20あるアミノ酸の一つ、セリンである
癌の多くは急速で持続的かつ制御不能な増殖を維持するためにセリンを合成する必要がある

この経路に干渉する薬剤候補を見つけるために研究チームは様々なソースから得られた化合物の大規模なライブラリーをスクリーニングし、
ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ/3-phosphoglycerate dehydrogenasePHGDH)を阻害する分子を探索した
PHGDHはセリン生合成において最初の関与段階committed step(方向が決定される段階)を担当する

「癌の代謝を標的とする阻害剤を発見することに加えて、
我々は今やセリン代謝についての興味深い質問に答えるのを助けるツールも持っている」
Luke L. Lairsonは言う
彼はTSRIの化学助教授であり、カリフォルニア生物医学研究所(CALIBR)では細胞生物学の主任研究員principal investigatorでもある
Lairsonは最近PNASで発表された論文の首席著者senior authorである


セリンへの依存
Addicted to Serine

セリンは、ヌクレオチド、タンパク質、脂質を生合成するためにあらゆる細胞において必要とされる
細胞は主に二つの経路からセリンを獲得し、一つは細胞外環境からの取り込み、もう一つは解糖系の中間生成物の3-ホスホグリセリン酸/3-phosphoglycerateをPHGDHによって変換して得る

セリン生合成
3-ホスホグリセリン酸/3-phosphoglycerate

ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ/3-phosphoglycerate dehydrogenase(PHGDH)

3-ホスホノオキシピルビン酸/3-Phosphonooxypyruvate(3-ホスホヒドロキシピルビン酸/3-phosphohydroxypyruvate)

ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ

O-ホスホセリン/O-phosphoserin

ホスホセリンホスファターゼ

セリン

「癌細胞は好気的解糖というプロセスを使って増殖に必要な代謝産物を生成することが1950年台遅くから知られている」
Lairsonは言う

このプロセスはセリンの過剰産生へとつながりうる
最近、癌の中にはPHGDHの発現を増加させる突然変異を獲得するものがいることが実証され、そのような『セリンに依存serine-addicted』する癌細胞でPHGDHの発現を低下させると増殖は阻害された
ワイルコーネル大学医学部(Nature Geneticsで発表)とホワイトヘッド研究所(Natureで発表)の研究から、PHGDHを過剰発現するタイプの癌にとってPHGDHが潜在的な薬剤標的であることが示唆された

LairsonたちはPHGDHを阻害する小分子が癌の代謝に干渉する薬剤候補であり、効果的な癌の治療法の開発への道を指し示すという仮説を立てた
重要な事にこの薬剤は通常の細胞には無害であり、その理由はそれらは通常の増殖をサポートするために十分なセリンを取り込むことができるからである


123と数えるくらい簡単、ではない
As Easy as 1-2-800,000

Lairsonはワイルコーネル、ミシガン大学、ハーバードメディカルスクール、CALIBRと協力して、PHGDHの阻害剤を検出するために80万もの小分子ライブラリーからハイスループットのin vitro酵素分析スクリーニングを実施した
研究グループは408の候補を見つけ出し、このリストからさらに細胞タイプ特異的な増殖阻害活性を元にリストを絞り、他のデヒドロゲナーゼも広く標的にするような阻害剤は消去していった
7つの候補を同定することに成功し、チームはこれらの分子が複雑な細胞環境でPHGDHを阻害できるかを決定すべく質量分析を利用して薬剤候補の存在下で細胞内に新しく合成されたセリンを計測した
分析結果7つの中の一つのCBR-5884が特にセリン合成を30%阻害し、この分子が特にPHGDHを標的とすることが示唆された

研究グループは確認のためにPHGDHを過剰発現する乳癌とメラノーマの細胞系統に対してCBR-5884を投与し、実際に増殖を阻害できることを示した
予想された通り、CBR-5884はPHGDHを過剰発現しない癌細胞を阻害しなかったが、それはこの癌細胞がセリンを取り込むことができるからである
セリンを欠乏させた培地で培養すると、CBR-5884はそれらの癌細胞の増殖も抑制した

研究グループはこの薬剤候補が効果的な治療法となる前に多くの最適化のための研究が必要になるだろうと予想している
この目標のため研究者たちは薬剤候補の効能と代謝的安定性を改善するために医薬化学的なアプローチで取り組むtake a medicinal chemistry approach予定である


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1521548113
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1602228113
Identification of a small molecule inhibitor of 3-phosphoglycerate dehydrogenase to target serine biosynthesis in cancers.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d16ba27c8f39c536b11eafaa6804ec93
膠芽腫の一部はアミノ酸のグリシンを分解する酵素に依存する
 

癌細胞が増殖するためのエネルギー

2016-03-10 06:06:45 | 
How cancer cells fuel their growth

March 7, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160307144528.htm

癌細胞は増殖がコントロールできず、腫瘍細胞の大集団hordeを作り出すことが知られている
この急速に増殖する細胞が消費するエネルギーのほとんどはグルコースである

科学者は新しい細胞を構成する質量massのほとんどがグルコースに由来すると考えてきた
それは癌細胞も例外ではない

しかしながら、マサチューセッツ工科大学(MIT)の生物学者は、新しい細胞を形作る材料の最も大きな割合を占めるのはアミノ酸であることを明らかにした
アミノ酸は増殖する細胞があまり『消費』しない栄養素であるため、このことは彼らにとっても意外に思われた

この発見は癌細胞の代謝を調べる際に新しい見方を提供し、増殖して分裂する癌細胞の能力を遮断するための薬剤をもたらすだろう

「もし癌の代謝をうまく標的にしたいのなら、
どのようにして様々な経路が実際に質量を作り出すために使われているのかについてを理解する必要がある」
MITのコッホ統合がん研究所の一員であるMatthew Vander Heiden助教授は言う

Vander Heidenが首席著者senior authorである今回の研究はDevelopmental Cell誌で3月7日に発表される
筆頭著者はMITの大学院生graduate studentのAaron Hosiosである


徹底的に調べる
Burning up

科学者は1920年台から癌細胞が通常の細胞とは異なるやり方、いわゆる『ワールブルク効果』によってエネルギーを作るということを知っていた
通常ヒトの細胞はエネルギー源としてグルコースを使い、酸素を必要とする一連の複雑な化学反応を通してグルコースを分解する
しかしドイツの生化学者ワールブルクは腫瘍細胞が『発酵fermentation』という酸素を使わずエネルギーを作る量も少ない非効率的な代謝戦略に切り替えることを発見した

最近になり、科学者は癌細胞がこの『代わりの経路』を使って増殖のための材料も作るのだろうと仮説を立てた
しかしながら、この仮説に対して、グルコースのほとんどが乳酸に変換されて細胞にとって役に立たないという反論があった
さらに、新しく増殖する癌細胞が一体何を元に構成されるのかについての正確な研究がほとんどまったく存在しなかった
そして、急速に増殖する哺乳類細胞のどんな種類であれ、そのような研究はなかった
there has been very little research on exactly what goes into the composition of new cancer cells or any kind of rapidly dividing mammalian cells.

「哺乳類は様々な食物を食べるため、『どの食物が細胞質量のどの部分に使われるのか』というのは答えが出ない問いに思われた」
Vander Heidenは言う


腫瘍も含めて細胞が必要な材料をどこから得るのか明らかにするため、科学者たちは複数の癌細胞と通常の細胞を培養し、炭素と窒素の同位体で標識付けした様々な栄養素を与えた
これにより彼らは元になった分子が最終的にどうなったかを追跡することが可能になった
また、彼らは細胞を分裂する前と後で重さを量ることで、利用可能だった栄養素それぞれが細胞質量に寄与した割合を計算できるようにした

実験の結果、細胞は非常に高い速度でグルコースとグルタミンを消費したにもかかわらず、それらは新しく増殖した細胞の質量にあまり寄与していないことが明らかになった
グルコースは細胞内の炭素の10%から15%であり、グルタミンは10%だった
代わりに最も細胞質量に寄与していたのはタンパク質を構成するアミノ酸であり、
グルタミンを除いたアミノ酸は新しい細胞で見られる炭素原子の大部分に貢献し、総質量の20%から40%を占めていた

最初は驚いたものの、この研究結果は理にかなっているとVander Heidenは言う
なぜなら細胞はほとんどがタンパク質からできているからだ

「自分自身を構成するものを作るために、より単純でより直接的な経路を利用することはいくらかの節約になる
もしレンガ造りの家を建てるなら、泥からレンガを作るよりも周りにレンガがあればそれを使ったほうが簡単だ」


疑問に再び焦点を合わせる
Refocusing the question

謎が残ったままである
なぜ増殖するヒトの細胞はそんなにも多くのグルコースを消費するのか?
これらの細胞によって燃焼されるグルコースのほとんどが乳酸として排出されることが明らかになり、これは以前の研究と一致している

「ここから我々が至った結論は、
グルコースの高い消費速度の重要性は必ずしも細胞質量を形作るための炭素の操作ではなく、
それによって提供される他の産物に関してのもの、たとえばエネルギーである」
Hosiosは言う


Vander Heidenのラボは現在、ワールブルク効果がどのようにして細胞の増殖reproduceを助ける可能性があるのかについてのより統合的な理解を追求している
「これは疑問に再び焦点を合わせる
それは必ずしも
細胞がグルコースを細胞質量に組み入れるのを どのようにしてワールブルク効果が助けるのかについてではなく、
むしろ
細胞がアミノ酸を使ってより多くの細胞を作るのを なぜグルコースから乳酸への変換が助けるのかについてである」


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2016.02.012
Amino Acids Rather than Glucose Account for the Majority of Cell Mass in Proliferating Mammalian Cells.
増殖する哺乳類細胞において細胞質量の大部分を占めるのはグルコースよりもむしろアミノ酸である


Highlights
・哺乳類の細胞質量の大部分の源はグルコースとグルタミンではない
・増殖する細胞にとって豊富な炭素と窒素を提供するのはグルタミン以外のアミノ酸である
・増殖しない哺乳類細胞は、細胞質量の代謝回転turnoverの程度は変わりやすくvariable可変性を示す
・栄養素の運命は限定されておりdetermined、グルタミンは主にタンパク質になる


Summary
細胞は増殖proliferateするために質量を二倍duplicateにしなければならない

グルコースとグルタミンは増殖する哺乳類の細胞が消費する栄養素の大部分を占めるが、
これらや他の栄養素が細胞質量にどの程度寄与しているのかは知られていない

我々は様々な栄養素に由来する細胞質量の割合を定量化することにより
細胞内の炭素の大部分は他のアミノ酸に由来することを明らかにした
グルタミン以外のアミノ酸はグルコースとグルタミンよりも消費速度がかなり遅い

グルコースの炭素は様々な運命をたどるが、グルタミンはそのほとんどがタンパク質に貢献する
これはTCA回路の中間生成物intermediateを補充するグルタミンの能力(アナプレロティック反応anaplerosis)が
主にアミノ酸の生合成のために使われることを示唆する

これらの研究結果は、栄養素の消費速度は質量の蓄積と間接的に関連があることを実証し、
グルコースとグルタミンの消費の早さは、生合成のための炭素を提供する以外に、急速な細胞増殖をサポートする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/41d21c8ebda202f1c0bc582fec4aa5d6
細胞の増殖にはアスパラギン酸の合成とミトコンドリアの呼吸が必要



T細胞白血病はクエン酸回路に依存する

2016-03-01 06:06:28 | 
Researchers pinpoint potential enzyme for T-cell leukemia treatment

February 22, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160222111053.htm

ボストン大学の研究者は、白血病のT細胞がTCA回路という特有の回路を使うことを初めて示した
クエン酸回路とも呼ばれるこの回路は白血病細胞の増殖と生存をサポートする

Leukemia誌に発表された今回の研究結果はHui Feng博士らによるものであり、
これはTCA回路に存在する酵素の一つに含まれるDLSTを標的にすることでこの種の腫瘍細胞を効果的に殺すことができる治療法の開発につながる可能性がある

DLST: ジヒドロリポアミド S-スクシニルトランスフェラーゼ/Dihydrolipoamide S-Succinyltransferase (E2 Component Of 2-Oxo-Glutarate Complex)。TCA回路の酵素の一つであるα-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体(KGDHC)のE2コンポーネント


T細胞白血病の治療は改善されているにもかかわらず、子供では20%が、成人では50%が致命的である
加えて現在の治療プロトコルprotocol(治療の実行計画)は非常に毒性が強い

ボストン大学メディカルセンター/Boston University Medical Center(BUSM)の研究者は実験モデルを用いて遺伝子スクリーニングを実施し、腫瘍の発症を特に抑制する突然変異を明らかにしようとした
このスクリーニングからT細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の発症に寄与する重要な要因としてTCA回路のDLSTが同定され、
ヒトのT細胞白血病を使ったさらなる分析からDLST酵素の活性の阻害により効果的にヒトT細胞白血病を殺すことができると実証された

「これまで研究者たちは、癌細胞が増殖をサポートするためにクエン酸回路を使わないという間違った推測をしてきた
我々の新たな発見は、これらの癌細胞が生存のためクエン酸回路に依存するという確かな証拠をもたらす」
責任著者corresponding authorのHui Feng, MD, PhDは言う

「さらに我々はT細胞性白血病の発症におけるDLSTの重要性を実証し、治療のために標的となりうる酵素を明らかにした」

彼らはDLST阻害による治療の有益性がT細胞性白血病以外の癌にも広がるかもしれないと考えている


http://dx.doi.org/10.1038/leu.2016.26
The TCA cycle transferase DLST is important for MYC-mediated leukemogenesis.

Abstract
MYCを介する腫瘍発生の根底にあるメカニズムは明らかになっていない

今回我々はMycによるT-ALLのゼブラフィッシュモデルを利用して疾患発症に寄与する新たな遺伝子を同定すべく研究を実施し、
トリカルボン酸回路/tricarboxylic acid (TCA) の酵素であるDlstのヘテロheterozygousな不活化が
ゼブラフィッシュでの腫瘍発症を著しく遅らせ、しかし魚の発達には検出できるような影響が見られないことを明らかにした

DLSTはα-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体/α-ketoglutarate dehydrogenase complex (KGDHC) のE2トランスフェラーゼであり、
KGDHCはTCA回路内でα-ケトグルタル酸をスクシニル-CoAに変換する


RNA干渉によりヒトT-ALL細胞系統でDLSTをノックダウンすると細胞の生存能力が低下し、アポトーシスを誘発した

polar metabolomics profilingによりヒトT-ALL細胞におけるDLSTノックダウンによりTCA回路が妨害されることを明らかにした
これはα-ケトグルタル酸の蓄積とスクシニル-CoAの現象によって実証された

TCA回路の下流の中間生成物intermediateであるコハク酸succinateをヒトT-ALL細胞に加えることは、DLST不活化によって起きる細胞の生存能力低下を回復するのに十分だった


合わせて考えると、我々の研究はMYCを介する白血病発生におけるDLSTの重要な役割を明らかにし、Tリンパ芽球がTCA回路に対して代謝的に依存することを実証する
これはしたがって標的治療への潜在的な重要性implicationsをもたらす
 

異数性はどのようにして腫瘍につながるか

2016-02-26 06:06:30 | 
Scientists shed light on how cells with an incorrect number of chromosomes lead to tumor development

February 9, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160209090714.htm


(この画像ではハエの羽組織の前駆体細胞が、その発現する様々なタンパク質によって色付けされている
このハエモデルは、染色体不安定性chromosome instability、異数性aneuploidy、腫瘍発生tumorigenesisという三者の関係性を調べるために実験で用いられた

Credit: Lara Barrio, IRB Barcelona)

異数性細胞/aneuploid cells、つまり染色体の数が異常な細胞はヒトのほとんどの腫瘍で見つかる
バルセロナ生物医学研究所/Institute for Research in Biomedicine(IRB)Barcelonaはショウジョウバエで研究を行い、
生き残った異数性細胞がどのようにして腫瘍の発達を促進するのかを明らかにした

約4万3千のヒトの腫瘍を分析した最近の研究により、充実性腫瘍solid tumourの68%が異数性であり、染色体数の異常が明らかになった
科学者は近年、この異数性は腫瘍発達の一因なのか、それとも癌細胞のゲノム不安定性に付随する影響collateral effectなのかを明らかにしようと試みてきた(異数性は腫瘍発達の原因なのか、結果なのか)

※collateral effect: 記事中では"co-lateral effect"


Developmental Cell誌で発表された今回の研究はICREA(スペイン・カタロニア)の研究者であるMarco Milán率いる研究グループによってIRBバルセロナで行われたものだ
この研究結果はゲノムの不安定性と異数性、そして癌との間の関係についての詳細をもたらし、
異数性細胞によって引き金を引かれる分子・細胞メカニズムがどのようにして腫瘍を生じるのかを説明する

彼らはショウジョウバエの『羽原基wing primordium』をモデルとして使い、異数性と腫瘍発生についての研究を実施した
この組織は単層構造の上皮epithelium organised into a single layerであり、20個の細胞から2~3日で3万個にまで成長する
これらの特徴を考慮すると、ゲノム不安定性を生じ、増殖する組織で異数性細胞を引き出す分子・細胞メカニズムを細かく調べるためには、この羽原基という組織は理想的なシステムである


異数性細胞: 第一歩は自殺
Aneuploid cells: first step, suicide

研究チームは、異数性細胞がまず最初にプログラムされた細胞の自殺であるアポトーシスを活性化することを観察した
同時に、この差し迫ったimminent細胞の喪失を相殺しようとして異数性細胞は隣の細胞に『分裂して増殖しろ』と指示するシグナルを送っていた
これは正常な組織(この場合はハエの羽)の発達を確実にして保証ensureさせようとするものだった

次に異数性細胞はさらなる異数性aneuploidyを阻止するために一連のDNA修復シグナルを活性化し、抗腫瘍的な保護経路も活性化した

「我々は分子・細胞プロセスのカスケードを、そして修復保護と補償のメカニズムを描写してきた
このメカニズムは異数性細胞の中で生じ、そして細胞の外に対しても引き起こされ、
それらは同時に、または結果として起きる」
そう説明するのはpostdoctoral researcherで筆頭著者のMarta Clementeである


しかし、もし異数性細胞が何とかして生き残ってしまったら、何が起きるのか?

研究者が細胞死を妨害したところ、異数性細胞に由来する増殖シグナルが観察された
それは元々は健康な組織を維持するために働くシグナルだが、今や腫瘍の発達を促進していた


この研究は、癌の発症におけるゲノム安定性のダーウィン進化論的な見方perspectiveを広げるものであり、「それは腫瘍発生におけるゲノム安定性が果たす役割についてのおそらく不完全な見方である」とMilánはいう
ここでいう進化論的な見方というのは、腫瘍促進遺伝子がランダムに増大するとともに腫瘍抑制遺伝子がランダムに失われ、そうした増減が最終的に腫瘍細胞を促進するという考え方を元にしたものである

「どういうわけかsomehowこのゲノム不安定性に由来する異数性は代謝的ストレスも引き起こし、
それは次に、腫瘍の増殖と発達を促進する一連のシグナルの発現につながる」


異数性がほとんどの癌に共通することから、Marco Milánは異数性細胞の排他的exclusivelyな除去に向けた治療を探すことが癌に取り組むための優れた戦略をもたらすかもしれないと考察considerする

「今回の基礎生物学研究は、異数性細胞によって引き起こされる分子的なつながりについての新たな情報をもたらす
これは癌と戦うための治療を研究する際に最も重要なステップである」


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2016.01.008
Gene Dosage Imbalance Contributes to Chromosomal Instability-Induced Tumorigenesis.
遺伝子量の不均衡は染色体不安定性によって誘発される腫瘍発生の一因である


Highlights
・染色体全体の遺伝子不均衡gene imbalancesは、異数性によって誘発される細胞死に寄与する
・染色体全体の遺伝子の量的不均衡gene dosage imbalancesは、腫瘍発生的反応を誘導する
・DDR経路は、染色体不安定性/chromosomal instability (CIN) による異数性と腫瘍発生のレベルを低下させる
・遺伝子の量的不均衡はROSを誘導し、これはCINによる腫瘍発生に寄与する

※DDR経路: DNA damage response pathway/DNA損傷応答経路


Summary
染色体不安定性/chromosomal instability (CIN) は、癌の突然変異のしやすさの源であると考えられる
しかしながら、この不安定性の結果としてしばしば異数性を生じ、これは細胞の適応度fitnessを損なう

今回我々は
ショウジョウバエの量的補償メカニズム/dosage compensation mechanism (DCM) を使い、
染色体全体の遺伝子の量的不均衡gene dosage imbalanceが、
染色体不安定性による異数性の有害な影響とその腫瘍形成を促進pro-tumorigenicする作用の一因であることを実証した


我々は
CINによって誘発されるX染色体数の変化が引き起こす有害な影響を、DCMが再セットresetすることで釣り合わせるcounterbalanceという証拠を提供する

重要なことに、
異数性細胞はROS産生、JNK依存的な細胞死、そしてアポトーシス阻害による腫瘍発生という点で細胞に影響を与えるが、
DCMへの干渉はそれらを真似るのに十分であるsuffice

我々は
JNK活性化におけるROSの役割ならびに
CINの有害な影響を緩衝する様々な細胞と組織全体のメカニズムを明らかにする
それにはDNA損傷修復、p38経路の活性化、そして補償的な増殖を促進するサイトカイン産生が含まれる

我々のデータは
CINによって誘発される細胞死と腫瘍発生を相殺counteractする強固な補償メカニズムの存在を明らかにする



関連サイト
http://tenure5.vbl.okayama-u.ac.jp/~hisaom/HMwiki/index.php
遺伝子コピー数が変動するとパートナー遺伝子との量的不均衡(遺伝子量不均衡)により細胞機能に悪影響を及ぼすような遺伝子の事を「量的均衡遺伝子」(Dosage Balance Gene)と呼ぶ。


<コメント>
補償的な増殖を促進するサイトカインが具体的に何なのかはAbstractには書かれていないが、
Referenceを見る限りではIL-1αとIL-6が増殖を促進するようだ(肝細胞癌では)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18691550
Hepatocyte necrosis induced by oxidative stress and IL-1 alpha release mediate carcinogen-induced compensatory proliferation and liver tumorigenesis.
酸化ストレスとIL-1α分泌によって誘発される肝細胞の壊死は、発癌物質による補償的な増殖と肝臓の腫瘍発生を仲介する


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2707922/figure/F7/

 p38α,IKKβ↓─┤ROS↑─┤MKP↓─┤JNK↑→細胞死↑→IL-1α↑→IL-1R/MyD88↑→[クッパー細胞]IL-6↑→補償的増殖↑→肝癌↑

 

卵巣癌の樹状細胞は炎症性で免疫抑制性になる

2016-02-25 06:06:46 | 
How a master regulator in ovarian cancer can go from helpful to harmful

The molecule Satb1 can drive immunosuppressive activity by driving the production of tumor-promoting cytokines

February 11, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160211140436.htm

我々の免疫系に関して言うと、樹状細胞はT細胞にとっての一種の灯台lighthouseである
この特殊化した免疫細胞は癌細胞を粉々に分解して抗原antigenという小さな破片に変え、抗原を得た樹状細胞は白血球にシグナルを伝えられるようになる
シグナルを受けた白血球は、一致する癌細胞の抗原を認識して適切に応答する能力を得る

卵巣癌における樹状細胞の振る舞いは異なる
樹状細胞が活性化シグナルを受け取ると、その抗原を効果的にT細胞に提示する
しかしながら、もしそのような活性化シグナルを受け取らないと、樹状細胞は自動的に抗腫瘍免疫応答を抑制する
この振る舞いの格差は、なぜ卵巣癌進行に対する自発的な免疫圧力が最終的に失敗し、腫瘍の進行を加速する結果になるのかを説明する

ウィスター研究所の科学者は、ゲノムのマスター編成因子organizerがこれら卵巣癌関連樹状細胞/ovarian-associated dendritic cellのふるまいに影響する方法が、どのような役割を果たすのかを明らかにした
このことは以前知られていなかった 癌が免疫系を操作できる方法を明らかにする
研究結果はCell Reportsで発表された


special AT-rich binding protein 1(Satb1: Wikipedia, Genecards)という遺伝子は、ゲノム編成ならびに表現型と分化の制御を助ける
ウィスターの腫瘍微小環境転移プログラムのプログラムリーダーである教授Jose Conejo-Garcia, M.D., Ph.D.のラボは、以前の2012年の研究で
卵巣癌関連樹状細胞においてSatb1遺伝子が『miR-155という免疫系を刺激するマイクロRNA』の直接の標的であることを明らかにした
反対に、miR-155が免疫系を刺激しないと、これら樹状細胞はIL-6とガレクチン-1のような炎症性の腫瘍促進サイトカインを産生する

 miR-155─┤Satb1

筆頭著者のConejo-Garciaは言う
「以前の研究から、miR-155を加えることによるSatb1の下方調節は
腫瘍を持つホストにおける適切な免疫応答と密接に関連することがわかっていた
今回の研究では、樹状細胞が潜在的な免疫刺激性細胞タイプから免疫抑制性の細胞へと形質転換transformする時
この遺伝子がどのようにして振る舞うのかについて我々は知りたいと考えた」

研究結果では、樹状細胞におけるSatb1発現が逆説的に適切な免疫応答に必要であることが示された
しかしながら、Satb1は発現すべき期間が非常に短く、樹状細胞が成熟した後にはSatb1は消えねばならない
もしSatb1がグズグズhang aroundして発現したままでいると、それは免疫抑制性immunosuppressiveを促進し、炎症性pro-inflammatoryの振る舞いを加速する
これは腫瘍関連樹状細胞でSatb1をサイレンシングして確認された

Satb1遺伝子のサイレンシングは炎症と免疫抑制のレベル低下につながり、T細胞活性化と免疫応答は加速された
事実、Satb1がサイレンシングされると、
これら免疫応答レベルにおいて 転写の22パーセントが2倍からそれ以上の変化を経験した
このことは樹状細胞の複雑な転写プログラムにおけるSatb1という単一の分子の重要性を強調する

正確な時間的パターンで発現するSatb1の生理学的機能の中で、研究者はSatb1の振る舞いをNotch1にも関連付けた
Notch1は腫瘍細胞の生存と増殖に関連する遺伝子である
Notch1は樹状細胞が成熟してSabtb1がほとんど消えようとする時の一時的な状態の間に、Satb1依存的なやり方で活性化する


炎症性の樹状細胞において、Notch1発現はMHCクラスII分子のレベル上昇と同時に起きる
MHC-IIはCD4+ヘルパーT細胞の活性化に必要な分子である
Conejo-GarciaたちはSatb1がNotch1の発現を刺激し、一方でNotch1はMHC-IIの発現を促進することを発見した
MHC-IIの発現は樹状細胞に様々なT細胞集団を活性化する能力を与えるequip

 Satb1→Notch1→MHC-II→CD4+T

しかしながら、もし樹状細胞が正常な免疫応答を作り出すことができるようになった後もSatb1が過剰発現したままだと、
それは多数の炎症性かつ免疫抑制的な因子の産生を促進して、
樹状細胞を悪性進行と免疫抑制における共犯者accompliceへと形質転換transformさせる

「我々の研究は、
腫瘍の特に卵巣癌が骨髄細胞をどのようにして免疫刺激性immunostimulatoryから免疫抑制性immunosuppressiveの細胞タイプへと徐々に形質転換させるのかについての新たな機構的洞察を提供する
それは以前の我々の研究で卵巣癌の進化を理解するために非常に重要criticalであることが示されている」
Conejo-Garciaは言う

「Satb1の発現を調整することは、
我々の研究のようにナノ複合体nanocomplexを使ったin vivoでの調整、
またはin vitroでの樹状細胞ベースのワクチンにおける調整、
そのどちらでもより強い抗腫瘍免疫応答を刺激し、
腫瘍によって誘導される免疫抑制性シグナルに対して抗原提示細胞(APC)をより抵抗性にするのである」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.01.056
http://www.cell.com/cell-reports/abstract/S2211-1247(16)30034-1
Satb1 Overexpression Drives Tumor-Promoting Activities in Cancer-Associated Dendritic Cells


Highlights
・成熟した炎症性の樹状細胞(DC)は充実性卵巣癌に浸潤する
・Satb1は古典的CD4+樹状細胞の分化differentiationを調節する
・Satb1はNotchシグナル伝達経路を調節し、Notchシグナルは炎症性DCでMHCクラスIIのスイッチを入れる
・Satb1の発現が緩和されないunremitと、免疫抑制的なDCを促進する


Summary
Satb1は、ゲノムワイドな転写プログラムを支配する
Satb1は、古典的樹状細胞(DC)の正常な分化に必要である
さらに、Satb1は炎症性DCの分化を支配するが、それはMHCクラスIIの発現をNotch1シグナル伝達を通じて調節することによる

機構的に見ると、Satb1はNotch1プロモーターに結合してNotch発現を活性化し、H2-Ab1プロモーターのRBPJ占有occupancyを促進してMHCクラスII転写を活性化する

しかしながら、
卵巣腫瘍に浸潤する不活化したZbtb46+の炎症性DCにおいて
腫瘍によって刺激されるSatb1の絶え間ない発現unremitting expressionは
結果として免疫抑制性の表現型になり、
その特徴は腫瘍促進性サイトカインであるガレクチン-1/Galectin-1とIL-6の分泌の増加である

in vivoでの腫瘍関連DCにおけるSatb1サイレンシングは腫瘍形成性の活性を無効化して、保護的な免疫を加速する


したがって、Satb1発現のダイナミックな変動は炎症性DCの生成ならびにその比較的安定な免疫刺激性の活性を支配するが、
分化したDCにおけるSatb1の絶え間ないcontinuous過剰発現は、DCを免疫寛容性かつ炎症性の細胞へと変換し
悪性進行の一因となる
 

卵巣癌は小胞体ストレス応答で樹状細胞を抑制する

2016-02-25 06:06:23 | 
Researchers discover how ovarian cancer halts body's natural defense against tumor

Novel therapy could restore powerful immune response to deadly cancer

June 11, 2015

https://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150611174207.htm

卵巣癌は樹状細胞のXBP1をオンにすることにより、腫瘍に対する効果的な応答を開始mountする能力を失わせる
XBP1をオフにすると樹状細胞の機能は回復し、卵巣腫瘍への免疫応答を引き起こす


我々は2014年にXBP1がトリプルネガティブ乳癌の発症と進行development and progressionに関与することを報告した
今回はXBP1が抗腫瘍免疫をも抑制することを報告する

XBP1は腫瘍細胞の生存を促進する
XBP1は小胞体ストレス応答/unfolded protein response(UPR)というストレス応答経路の一部であり、
栄養や酸素が不足してもUPR経路により腫瘍は増殖して生存することができるようになる


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.05.025
ER Stress Sensor XBP1 Controls Anti-tumor Immunity by Disrupting Dendritic Cell Homeostasis.
ERストレスセンサーのXBP1は、樹状細胞の恒常性を乱すことにより、抗腫瘍免疫を制御する


脂質過酸化の副産物/lipid peroxidation byproductsは、XBP1を活性化する

[腫瘍関連樹状細胞/tumor-associated DCs]
 卵巣癌→[微小環境]ROS→4-HNE付加化合物adduct→ERストレス→Xbp1s→[核内]XBP1→[細胞質]脂肪蓄積─┤抗腫瘍T細胞

※4-HNE: 4-ヒドロキシノネナール



関連記事 
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160216180248.htm
ERストレスによるUPR応答でATF4が誘導されるが、ONC201という臨床試験中の抗癌剤によってもATF4が誘導され、結果としてp53に非依存的に細胞死や細胞周期停止を引き起こす



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150203190023.htm
悪性の卵巣癌に対して微小環境に特定の細菌を投与することで、免疫抑制から免疫を刺激する方へ振る舞いを変化させる

http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.4161/onci.28926
Attenuated Listeria monocytogenes reprograms M2-polarized tumor-associated macrophages in ovarian cancer leading to iNOS-mediated tumor cell lysis

弱毒化した/ΔactA/ΔinlB株のリステリア・モノサイトゲネスは、M2に偏った腫瘍関連マクロファージ(TAM)を再プログラムして、卵巣癌をiNOSにより破壊する

 補助刺激分子CD80とCD86↑
 炎症性サイトカインの転写↑
 抑制性のエフェクター分子の転写を下方調節

この反応にT細胞とNK細胞の活性は関与しない
 

肥満が癌の進行と転移を促進するメカニズム

2016-02-19 06:06:49 | 
Study finds mechanism by which obesity promotes pancreatic and breast cancer

Suppression of metastasis-promoting microenvironment by blocking signaling pathway may be particularly effective in obese patients

February 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160212130523.htm

マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究者は、肥満が癌の進行を促進するという性質の背後にあるまったく新しいメカニズムを発見したのかもしれない
Clinical Cancer Research誌のオンライン版で発表された報告によると、彼らは肥満と過剰な胎盤成長因子/placental growth factor(PlGF)との間の関連を発見した
腫瘍の内部にいる免疫細胞はPlGFの受容体であるVEGFR-1を発現し、PlGFが結合することにより腫瘍の進行は促進されるという
腫瘍の細胞と動物モデル、患者からの腫瘍サンプルによる今回の研究結果は、PlGF/VEGFR-1という経路を標的にすることが特に肥満の患者に有効であることを示す

「我々は肥満が『腫瘍を促進する免疫細胞』の浸潤を増大させて膵臓癌の増殖と転移を促進することを発見した」
MGHの放射線腫瘍学部でスティール腫瘍生物学研究室の一員であるDai Fukumura, MD, PhDは言う

「膵臓癌と乳癌モデルの肥満マウスでVEGFR-1シグナル伝達を阻害すると、腫瘍進行を妨げる方向へと免疫環境を入れ替えるが、
同モデルの痩せているマウスではそうではなかった
また、肥満ではPlGFも過剰に存在し、肥満マウスの腫瘍でPlGFを減少させるとVEGFR-1阻害と同様の結果をもたらす」

今回の研究では肥満が膵臓癌と乳癌に与える影響に焦点を当てたが、その理由はこれらの腫瘍であると診断される人々の半分以上が過体重か肥満だからである
肥満が膵臓癌や乳癌などの癌で死亡するリスクを増大させることが多数の大規模な研究により明らかになっているが、肥満が癌の進行を誘発するメカニズムはこれまで不明だった

MGHの研究者は肥満が腫瘍の炎症の増大と関連し、免疫抑制性の腫瘍関連マクロファージ/tumor-associated macrophage(TAM)の浸潤と関連することを初めて発見した
彼らはさらに、VEGFR-1を標的にすることは腫瘍関連マクロファージの活性に影響して免疫抑制性の腫瘍環境を変化させ、腫瘍増殖の加速を妨害しうることを肥満マウスで明らかにした
この結果は、VEGFR-1に結合するPlGFが肥満で過剰発現することを反映したものである

加えて彼らは、PlGF/VEGFR-1の相互作用を標的にすると遺伝学的に肥満になるマウスで体重の増加を防ぐことも明らかにした
しかし糖尿病のような状態は悪化し、この悪化は一般的に使われる糖尿病薬のメトフォルミンを使うことで軽減した
メトフォルミンは有益な抗癌作用も持っている


「膵臓癌と乳癌の患者は大多数が診断時に過体重か肥満であるため、
肥満と癌の予後の悪さとを関連付けるメカニズムの中に存在する潜在的な治療標的を発見することは
このような関連を断ち切り患者の予後を著しく改善するための治療開発に向けた第一歩である」
スティール研究室のディレクターで共首席著者のRakesh K. Jain, PhDは言う

「肥満がこれらの癌に与える影響の根本に新しいメカニズムが存在していたという事実は、
それが腫瘍を誘発する一般的なメカニズムであり他のタイプの癌にも応用できる可能性を示唆する」


スティール研究室に所属している筆頭著者のJoao Incio, MDは、次のように付け加える
「肥満がどのようにして膵臓癌や他の癌に影響を与えるのかを理解することにより、
例えば体重やPlGFレベルの上昇のようなバイオマーカーを発見しやすくなる可能性がある
このバイオマーカーは抗VEGFR-1の治療が最も有効な患者を明らかにできるかもしれない
加えて我々は前臨床研究のデザインに体重を組み入れるべきであり、それは抗VEGFのような新たな標的治療への応答が低いことを従来よりも適切に反映させるためである
炎症を標的とすることにより大部分の癌患者の臨床結果の改善が期待できる」


http://dx.doi.org/10.1158/1078-0432.CCR-15-1839
PlGF/VEGFR-1 signaling promotes macrophage polarization and accelerated tumor progression in obesity.
PlGF/VEGFR-1シグナル伝達はマクロファージの分化を促進し、肥満における腫瘍進行を加速する


Abstract

RESULTS:
肥満は膵臓癌における肥満関連マクロファージ/tumor-associated macrophage(TAM)の浸潤を増大させ、腫瘍の増殖と転移を促進したが、血管密度には影響しなかった
VEGFR-1シグナル伝達を取り除くと肥満による腫瘍進行は妨げられ、腫瘍免疫環境を抗腫瘍性の表現型へと切り替えさせた
同様の結果が乳癌モデルでも観察された
肥満は膵臓癌/乳癌患者や様々なマウスモデルで全身のPlGF増大と関連したが、VEGF-AまたはVEGF-Bとは関連がなかった
肥満マウスで『PlGFの除去ablation』と『VEGFR-1チロシンキナーゼの削除deletion』が腫瘍に与える影響は、どちらも同様の表現型として現れたphenocopy

PlGF/VEGFR-1-チロシンキナーゼの削除deletionは高脂肪食を与えたマウスの体重増加を防いだが、高インスリン血症は悪化した
メトフォルミンの追加はインスリンレベルを正常化しただけでなく抗腫瘍免疫も強めた



関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/1056
マクロファージのM2への分化は、Jmjd3による脱メチル化に依存する場合がある


<コメント>
肥満により、炎症は増大するが、TAMにより免疫は抑制される
体重がさらに増加し、癌も進行する

 肥満→PlGF/VEGFR-1→炎症↑免疫抑制性TAM浸潤↑→癌進行↑体重増加↑→肥満↑↑
 

GABAA受容体は乳癌の転移を促進し、抑制する

2016-02-17 06:06:28 | 
Gene previously observed only in brain is important driver of metastatic breast cancer

February 12, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160212093658.htm

乳癌が進行して他の臓器へ転移すると、患者の生存率は劇的に低下する
このことは腫瘍細胞の転移の原因となる遺伝子を探求する必要性を刺激してきた

今回ウィスター研究所の科学者によって、脳でしか見られないと考えられていた遺伝子の一つが乳癌でも発現し、癌細胞の増殖と転移を促進することが明らかにされた
加えて彼らは、その遺伝子がRNAが編集されるとどのようにして転移を予防するのかについても示した
この研究結果はNature Communications誌でオンラインにて発表された


国立癌研究所によると、乳癌が早いステージで見つかれば治療を受けた患者全てが治療の5年後も生きている
しかしながら、乳癌が転移して他の臓器に拡散すると、5年以上生き残るのは5人中わずか1人である
この著しい生存のギャップは、何が乳癌を転移させるのかについて明らかにする必要性を強める

乳癌が転移する分子レベルでの原因は十分に理解されてはいない
そのため、この転移という振る舞いを刺激する調節性の遺伝子を明らかにすることは、早期検出から最良の治療戦略デザインに至るまで、患者の生存に途方もなく強い影響を与えうる

「転移する乳癌は最終的に患者を殺す」
ウィスター研究所で腫瘍微小環境・転移プログラムの準教授associate professorであり、筆頭著者のQihong Huang, M.D., Ph.D.は言う

「早期の検出が重要であるものの、それは転移してしまった患者の助けにはならない
そのため我々は何がこの転移を引き起こすのかを決定したいと考えている」


研究者はがんゲノムアトラス/The Cancer Genome Atlas (TCGA) を分析し、41の遺伝子が乳癌の生存と逆相関することを明らかにした
Huangたちはこの中から特に一つの遺伝子、GABAA受容体α3/GABAA receptor alpha3 (Gabra3) に焦点を合わせた
この遺伝子は特別に興味深い存在だった
なぜなら、これまでGabra3は脳組織でしか発現しないと考えられていたからである

これが研究する価値があると彼らが決定するに至った理由は、主に3つ存在した
まず一つに、Gabra3は癌組織で強く発現しているが、健康な胸部では発現しない
二つ目は、Gabra3が細胞表面の分子であり、したがって潜在的に薬剤によって標的となりうる
最後に、Gabra3を標的とする薬剤は不眠症insomniaのような他の疾患の治療用として既に利用可能である

彼らは研究でGabra3を発現する細胞が対応するコントロール群よりも移動して浸潤するのが上手いことを示した
Gabra3はin vivoで転移を促進する作用を示し、活性化したGabra3遺伝子を注入された動物モデルは全て肺に転移病巣を形成した
これはAKT経路の活性化によるものであり、乳癌を含む多くのタイプの癌においてAKTは細胞の増殖と生存に必須の経路である

 Gabra3→AKT→転移

しかし場合によってはin some instances、特定のタイプのGabra3は実際には乳癌の転移を抑制可能である
これは遺伝子のRNAと密接に関連する

RNAは遺伝子をコードするDNAと似たような分子であり、
最近の研究から遺伝子がどのようにしてオン/オフされるのかを調節する際にRNAは複雑な役割を持つことが示されている
『RNA編集』として知られる現象では、それが転写された後でさえRNAヌクレオチド配列に小さな変化が形成される

HuangたちはRNA編集を受けたGabra3が浸潤しない乳癌でのみ見られることを発見した
RNAが編集されると、転移に必要なAKT経路の活性化を抑制する
つまりこの特定のタイプのGabra3を持つ乳癌は他の臓器に転移できないことを意味する

これは大いに有望particularly encouragingである
なぜならシグナル伝達タンパク質の一つであるインターフェロンがRNA編集の活性を増大させることが可能であり、
したがってGabra3によるAKT経路の活性化を妨害できるかもしれないからである

「我々はこれが初めて乳癌でRNA編集の重要性を実証したものであると考えている」
Huangは言う

「Gabra3を標的にしながらRNA編集する分子の発現を上方調節することを含めた組み合わせ戦略は、転移する乳癌を管理するために有効な戦略となりうる」


乳癌転移におけるGabra3の役割をさらに研究することに加え、
ウィスターはGabra3を過剰発現する腫瘍において既存のGABA-A受容体アンタゴニストを使う標的治療を改善するための協力開発パートナーを積極的に探している
ウィスターはさらに、次世代の腫瘍学的治療法として血液脳関門を透過しないGABA-A受容体アンタゴニストを協力して開発することにも興味を持っている


OPEN
http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10715
The mRNA-edited form of GABRA3 suppresses GABRA3-mediated Akt activation and breast cancer metastasis.
mRNA編集された形態のGABRA3は、GABRA3を介するAkt活性化ならびに乳癌転移を抑制する

我々はここに通常は脳でしか発現しないGABAA受容体α3 (Gabra3) が乳癌でも発現することを示す
Gabra3の高い発現は乳癌患者の生存と逆相関する
我々はGabra3がAKT経路を活性化して移動・浸潤・転移を促進することを実証する

重要なことに、アデニン/Aからイノシン/IへRNA編集されたGabra3は非浸潤乳癌においてのみ見られ
編集されたGabra3は乳癌細胞の浸潤と転移を抑制した

AからIへ編集されたGabra3は細胞表面の発現が低下し、AKTの活性化も抑制した



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/01/140114202655.htm
乳癌細胞は脳に転移する時にGABA受容体を発現してニューロンを偽装する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160107123912.htm
転移する乳癌細胞は、エピジェネティックな仕組みにより様々な臓器の微小環境に適応する



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150923133502.htm
転移する乳癌細胞は、幹細胞遺伝子のスイッチを入れる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150216125427.htm
メラノーマはADAR1によるRNA編集を抑制して転移する
転移するメラノーマはADAR1がなく、3つのマイクロRNAでRNA編集が起きない



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/12/151216105303.htm
ADAR1過剰発現によるRNA編集の増大は、異常タンパク質を生じて肺腫瘍発生を促進する
 

アミノ酸の欠乏が腎細胞癌を殺す

2016-02-10 06:06:42 | 
Nutrient deprivation kills kidney cancer cells

Cutting off amino acid triggers cell death in cancers

February 3, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160203150121.htm



(腎細胞癌の大部分はVHLという腫瘍抑制遺伝子が失われている
栄養素がすべて存在している時の腎細胞癌は健康なままだが(左)、アミノ酸のシスチンという栄養素が欠乏すると急速に膨張してネクローシスする(右)

Credit: Chien-Kuang Ding, Duke University)

すべての細胞は栄養素を必要とするが、癌細胞は『貪欲power hungry』なことで有名である
結果として、癌細胞は生き残って増殖して転移するために必要な追加燃料を供給すべく、代謝を変化させる必要がある
この貪欲greedyな代謝を科学者は何十年間も治療の標的として利用しようとしてきた

※power-hungry: 力に飢えている、権力欲が強い

デューク大学の研究者は腎細胞癌/renal cell carcinomaの有望な標的を発見した
この研究はCancer Research誌のオンライン版で2月1日に発表されたもので、
それによると腎細胞癌はその大部分が代謝の配線を変化させ、シスチンという外側の栄養素に依存した状態のままだという
腎細胞癌のマウスモデルで細胞からアミノ酸のシスチンを奪って欠乏させると、ネクローシスという細胞死を引き起こした

※シスチン: システインが酸化されて2分子結合したもの

「これらの腫瘍を非常に悪性にするのと同じ仕組みが、栄養素の欠乏に対して脆弱にするということを我々は発見した」
デューク大学医学部で分子生物学・微生物学の准教授associate professorであり、研究の首席著者senior study authorのJen-Tsan Ashley Chi, Ph.D.は言う

「それはまるで、相手が得意な分野で逆にやっつけてやるbeating it at its own gameかのようである」

彼は今回の研究が腎細胞癌の治療に向けた新しい有望なアプローチを示すものだという
腎細胞癌は歴史的に非常に治癒が難しいとされてきた癌であり、年間10万人以上がこの癌で死ぬ


腎細胞癌の症例の内、約4分の3はVHLという腫瘍抑制遺伝子が失われているのが特徴である
Chiと彼のラボでpost-doctoral fellowである筆頭著者のXiaohu Tangは、
このたった一つの遺伝子の変化がどのようにして癌細胞の代謝や栄養素の必要性に影響しうるのかを調べようと決めた

※VHL: フォン・ヒッペル-リンダウ(VHL)病の原因遺伝子。VHL病の35~45%は淡明細胞型clear cellの腎癌で死亡する

Tangは癌細胞で栄養素の欠乏テストを実施し、培養器から15のアミノ酸を一つ一つ取り除いた
ほとんどの場合で癌細胞は変化を非常にうまく切り抜けweather、増殖を遅らせるか正常のままだった
しかし、シスチンを取り除くと癌細胞は膨れ上がって表面に浮き上がり、ネクローシスという細胞死の確かな兆候を示した

研究者は次に数多くの遺伝子分析を実施し、それらをつなぎ合わせてpiece together、シスチンに依存する原因となる遺伝子ネットワークの全容を明らかにした

通常、VHL遺伝子はTNF-αという遺伝子を抑制するように働く
VHLが失われると、高レベルのTNF-αがより悪性な形態の癌を生み出し、より急速に増殖して、危険なフリーラジカルを大量に噴出する

シスチンは抗酸化剤を高レベルに維持し、酸素のフリーラジカルを無効化する
そのため、シスチンを取り除くと癌細胞は自分自身のフリーラジカルの手によって必然的に死ぬ

研究者はこのアプローチが組織培養細胞とマウスで成功することを示した
Tangたちはデュークがん研究所のDavid Hsu博士と協力して腎細胞癌の腫瘍をマウスに移植し、そのマウスにスルファサラジンsulfasalazineを投与した
スルファサラジンはシスチンの取り込みを阻害する薬剤であり、その投与はネクローシスを誘発して腫瘍の増殖を著しく遅らせた

この癌を完全に打ち負かすためにはさらに強力な薬剤が必要だろうとChiは言う
しかし彼は、アポトーシスapoptosisではなくネクローシスnecrosisによって癌を標的にして破壊することが治療として非常に有望だと考えている

「ほとんどの化学療法はアポトーシスによって癌細胞を殺すが、
アポトーシスを回避する癌細胞は化学療法への抵抗性と腫瘍進行の根本的原因である」
Chiは言う

「シスチンの欠乏による治療はアポトーシスとは異なるメカニズムを通じて癌細胞を殺すことにより、そのような抵抗性に対処する」


http://dx.doi.org/10.1158/0008-5472.CAN-15-2328
Cystine deprivation triggers programmed necrosis in VHL-deficient renal cell carcinomas.
シスチン欠乏はVHL欠損腎細胞癌にプログラムネクローシス細胞死を引き起こす

腫瘍形成性/発癌性の形質転換oncogenic transformationは、腫瘍の代謝を再プログラムして癌細胞を細胞外栄養素へ依存させる可能性がある
ゆえに、そのような栄養素を欠乏させることは治療機会を表すが、どの栄養素に癌細胞が依存するのかを予測するのは困難である

今回我々は栄養遺伝子学的/nutrigenetic
https://en.wikipedia.org/wiki/Nutrigenetics
なスクリーニングを実施し、15種類のアミノ酸それぞれを欠乏させた上で
VHLを持つまたはVHLを持たない明細胞腎臓癌/clear-cell renal cancer cell(ccRCC)で、
同遺伝子系isogenicのペアとなる表現型を決定した


実験の結果、シスチンの欠乏がVHLを欠損する細胞系統ならびに初代ccRCC腫瘍細胞においてプログラム細胞死のネクローシスを急速に引き起こしたが、
VHLを回復させた対照の細胞ではネクローシスは起きなかった

シスチン取り込みの阻害はccRCCの異種移植の増殖を有意に遅らせた

重要な事に、シスチン欠乏はVHLの状態に関わらず同様の代謝的な変化を引き起こした
これはVHL欠損細胞とVLH回復細胞の間で観察された異なる運命を説明するためには、代謝的な応答だけでは十分ではないということを示唆する

代わりに、我々はVHL喪失と関連してTNFαレベルが上昇し、
それによりVHL欠損細胞はアポトーシスを阻止するために完全なRIPK1に依存することを発見した

しかしながら、既に存在するTNFα発現上昇により、
VHL欠損細胞は『シスチン欠乏によって引き起こされるネクローシス』に感受性になる

我々はさらに、
Src - p38 (MAPK14) - Noxa (PMAIP1) というシグナル伝達と
TNFα - RIP1/3 (RIPK1/RIPK3) - MLKL というネクローシス経路が
お互いに増幅reciprocal amplificationして、シスチン欠乏によるネクローシスを促進することを発見した


まとめると、我々の研究結果はVHL欠損RCC細胞におけるシスチン欠乏が魅力的な治療の機会をもたらすことを明らかにする
これは薬剤抵抗性の腫瘍細胞に特有のアポトーシス回避メカニズムを迂回する



関連サイト
http://wholefoodcatalog.com/nutrient/cystine/foods/high/
シスチンを多く含む食品
ラッカセイ(乾)510 mg、カシューナッツ(フライ、味付け) 490 mg、アーモンド(乾)300 mg、クルミ(いり)280 mg、納豆(糸引き納豆)290 mg、



参考サイト
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13125598773
糖質制限中で、間食にはナッツかチーズと教わり、ナッツを食べはじめました。
現在、1日にアーモンドを25粒食べていますが、クルミ、カシューナッツも好きです。
 

少数の癌細胞が腫瘍全体の増殖と転移に影響する

2016-02-09 06:34:27 | 
Only a minority of cancer cells affect the growth, metastasis of tumors

February 2, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160202121829.htm

膵臓の神経内分泌腫瘍pancreatic neuroendocrine tumourの増殖と転移の一因は、その内のごく少数の癌細胞だけであることが新たな研究で示された
この発見はPNAS誌で発表され、ランド大学の研究グループとカロリンスカ研究所との協力によってなされた
今回の研究結果は癌細胞の様々な機能の理解につながるものであり、生物学的に根本的な重要性を持つ


突然変異や他の遺伝子の変化が『増殖の制御システム』を停止させてしまった時に、癌は生じる

腫瘍内の癌細胞はすべて増殖して転移する潜在的な可能性を等しく持つとこれまで考えられてきたが、
最近の研究で腫瘍は複数のタイプの癌細胞から構成され、異なる遺伝子の変化を持つことが示されている

「一つの腫瘍内には非常に多くのタイプの癌細胞が存在するという事実は、
転移できるのがその中のわずかな癌細胞だけである理由を説明する
加えて、なぜ強力な治療を受けているにもかかわらず腫瘍が再発する場合があるのかという理由についてもである」
ランド大学臨床検査医学部Laboratory MedicineのKristian Pietras教授は説明する

神経内分泌腫瘍/neuroendocrine tumours(NET)はホルモンを産生する腫瘍の一般名generic nameである
ランド大学の研究により、膵臓の神経内分泌腫瘍ではそのほんのわずかな割合の癌細胞が腫瘍全体の増殖に寄与するということが示された

「このような癌細胞は腫瘍の全細胞の1パーセント足らずに過ぎないが、腫瘍が増殖して転移する能力を本質的に制御する」
筆頭著者のEliane Cortezは言う

NET腫瘍の血管からはPDGFDというタンパク質が分泌され、ほんのわずかな割合の癌細胞の表面に位置するPDGFRβ受容体を通じてシグナルを送る
すると、このわずかな癌細胞が成長因子を分泌して腫瘍全体が増殖することになる

マウスを使った実験でPDGFDを使えないようにすると、腫瘍の全体的な増殖が劇的に抑制された
直接的な影響を与えたのは腫瘍細胞のほんのわずかな割合にすぎないにもかかわらずである
PDGFDからPDGFRβを通じて伝えられるシグナルは他の組織や腫瘍では記述があるが、この種の癌では初めてである

「非常に興味深いことに、早くから起きる転移は表面にPDGFRβを持つ癌細胞だけで占められるということも我々は発見した
このことは癌細胞の転移の準備と促進に関してwhen it comes to、この種の細胞が重要な機能を持つことを示唆する」
Eliane Cortezは言う

この発見は生物学的に根本的な重要性を持つ
なぜなら、腫瘍がどのようにして異なる機能を持つ様々な細胞によって構成されているかの理解につながるからである

腫瘍の悪性度を理解するためには、その構造を正確に知ることが重要である
癌細胞のわずかな集団が腫瘍全体の増殖に重大な影響を持つ可能性がある

Kristian Pietrasは言う
「我々はこのような増殖をコントロールする癌細胞の出現をヒトでも調べてきた
しかし次のステップは、より全体的に、そして大規模な研究により癌細胞を調べ、それらがどのようにして治療に反応するのかを調査することである」


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1509384113
Functional malignant cell heterogeneity in pancreatic neuroendocrine tumors revealed by targeting of PDGF-DD.

Abstract
血小板由来成長因子受容体ベータ/platelet-derived growth factor receptor beta (PDGFRβ) による異常なシグナル伝達が生じている癌細胞が存在し、現在、複数のアンタゴニストが臨床的に使われている(チロシンキナーゼ阻害剤。イマチニブimatinib、スニチニブsunitinib、ソラフェニブsorafenibなど)

PDGFRβのリガンドである血小板由来成長因子-DD (PDGF-DD) の発見は、これまで知られていなかった腫瘍の成長に関与するシグナル伝達経路を標的とする可能性への道を開いたが、
腫瘍の増殖と浸潤におけるPDGF-DDの正確な機能はとらえどころがないelusiveままである

今回我々は新たにPdgfdノックアウトマウスを作成し、膵神経内分泌腫瘍/pancreatic neuroendocrine tumors(PanNET)においてPDGF-DDシグナル伝達によって調整される機能的に重要な悪性細胞の不均一性を明らかにした
我々の分析はPDGF-DDによるシグナルの不在により腫瘍増殖が遅らされることを実証する

驚いたことに、PDGF-DDを取り除いても膵神経内分泌腫瘍ストロマの血管に影響しなかった
代わりにPDGF-DDは、PDGFRβを発現する細胞も含まれる不均一heterogeneousな悪性細胞クローン間にパラクリンな細胞分裂促進シグナル伝達を誘導することにより、全腫瘍細胞の増殖を刺激した

PDGFRβ発現を特徴とする腫瘍細胞内のサブクローン集団の存在は、ヒトの膵神経内分泌腫瘍のコホートでさらに確認された

結論、我々は膵神経内分泌腫瘍でこれまで認識されてこなかった不均一性heterogeneityを実証する
それはPDGF-DD/PDGFRβ経路を通じたシグナル伝達を特徴とする



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/27b0095ed74dd85fbf10b1dabd646605
FAK阻害剤とmTOR阻害剤の組み合わせは膵神経内分泌腫瘍に有望
 

肺癌の燃料源を明らかにする新しいアプローチ

2016-02-08 06:07:37 | 
New approach for identifying processes that fuel tumor growth in lung cancer patients

February 4, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160204150929.htm


(Ralph DeBerardinis博士

Credit: Children's Medical Center Research Institute at UT Southwestern (CRI))

テキサス大学サウスウエスタンの小児医療センター研究所/Children's Medical Center Research Institute(CRI)の科学者たちは、
癌生物学の根底に存在する複雑さを新たに発見し、癌の代謝について1世紀近く認知されてきた概念をひっくり返していく過程の中で、
悪性腫瘍を徹底的in-depthに研究するための新しい方法を開発した

CRIのRalph DeBerardinis博士と彼の研究チームは肺癌患者の腫瘍の特定の領域に焦点を当て、
増殖に必要とされるエネルギーの源を腫瘍の様々な領域が調節するプロセス、ならびに腫瘍の周りを囲む細胞環境がその代謝活動に影響する方法を分析した
Cell誌で発表された今回の研究結果は、癌の進行を予測して治療するために癌の代謝を利用することへの道を開く

「癌生物学者たちが長年追求してきた抵抗しがたいcompelling考えの一つは、
腫瘍細胞への燃料供給を遮断cut offし、本質的に腫瘍を飢えさせて死に追いやるという、
そんな同様の方法で全ての癌を治療することが可能かもしれないというものである」
CRIと小児学の准教授、CRIの遺伝代謝疾患プログラムのディレクターであり、テキサス大学サウスウエスタンの小児遺伝学・代謝学部のチーフでもあるDeBerardinis博士は言う

「しかし研究していく内に、どれほど多くの代謝的な多様性が腫瘍間に存在するのかを発見して我々は驚いた
いくつかのケースでは一つの同じ腫瘍の中でさえ異なる領域に異なる代謝活動が検出された
それにより癌を治療するための『飢餓という弾丸』を開発できそうな見込みはなくなってしまった」

また、今回の研究は癌の代謝についてずっと昔から存在してきた『勘違いmisconception』に対する洞察をもたらす
ほぼ1世紀の間、研究者は『良性の腫瘍が悪性化する時に代謝的なスイッチが切り替わり、それにより酸化的代謝が切られて解糖的代謝のスイッチが入る』という考えにすがってきたrely on
CRIの研究により、エネルギー源を一方からもう一方へと切り替えるスイッチなど全く存在しないことが判明した
そうではなく、良性から悪性化する時にどちらのタイプの代謝も増大するという

今回の研究で、グルコースは充実性腫瘍がエネルギーとして消費する唯一の栄養素ではなく、それが多くの栄養素の一つに過ぎないことが示唆された
この発見は腫瘍の進行を阻止するために標的とされうる代謝経路の数を潜在的に拡大する

加えて、遺伝学的に決定される腫瘍の代謝的な好みは、細胞の環境によってくつがえされうるようであるcan be overridden
多くの血流を受け取る腫瘍は(そして一つの腫瘍内でさえ)、エネルギーとして数多くの様々な栄養素を使うことが明らかになった
血流が少ない腫瘍は(もちろん同じ腫瘍内でさえ)、主な燃料としておそらくmore likelyグルコースを使う

「肺の腫瘍でどのように代謝が働き、腫瘍内のどこに特定の代謝活動が位置するのかを以前よりも詳しく理解have a much better handle onした今、
どの代謝的活動が疾患の進行を刺激し、そして進行を予測するのかを正確に研究することは容易であるはずだ」
DeBerardinis博士は言う
彼はテキサス大学サウスウェスタン・ユージーンマクダーモット人類発育研究センターにも参加し、小児学のJoel B. Steinberg, M.D. Chair職の保持者でもある

血流の違いがどのように腫瘍の代謝に影響するのかを調べるため、CRIの研究チームは新しい画像化技術を用いて患者の腫瘍の様々な部位への血流量を計測した
画像分析の結果を元に外科的に切除した腫瘍からサンプルを採取し、断片ごとに代謝的な流動metabolic fluxの分析を実施して、生じた代謝的な変化を調べた

「この情報は予後的な情報を明らかにするための新たな機会をもたらす
潜在的に肺癌の新しい治療法につながるだろう」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.12.034
Metabolic Heterogeneity in Human Lung Tumors.
ヒト肺腫瘍における代謝的不均一性


Highlights
・ヒトの非小細胞肺癌腫瘍は、隣の良性の肺組織と比較して、相対的にグルコース酸化を促進させる
・in vivoでの非小細胞肺癌腫瘍は多くの種類の栄養素を酸化する
・グルコース代謝は、腫瘍間でも、腫瘍内でも、不均一である

Summary
非小細胞肺癌/non-small cell lung cancer (NSCLC) は遺伝学的に不均一であり、培養で細胞代謝に影響する環境的パラメーターも様々である

今回我々はこれらの要素がin vivoでヒトNSCLC代謝へ与える影響を評価した
9人のNSCLC患者で手術時intraoperativeに13C-グルコースを注入し、肺腫瘍と良性組織との間の代謝を比較した

これらの腫瘍の間で解糖系ならびにグルコース酸化が促進されていたのは共通していたものの、
そのそれぞれで多種多様multipleな栄養素が酸化されているという証拠を我々は観察した
その中には潜在的な炭素源として乳酸が含まれる

さらに、腫瘍間でも腫瘍内でも、代謝的に不均一な領域が明らかになった
驚いたことに、十分に灌流している腫瘍領域では、グルコース以外の栄養素が潜在的に寄与することを我々のデータは示唆した

我々の研究結果は腫瘍代謝のin vivoでの不均一性を実証するだけでなく、
この特徴に対して微小環境が与える強い影響を強調するものである



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/11/111122113006.htm
テキサス大学サウスウエスタンの研究者は、クレブス回路が『反時計回り』に進む腫瘍があることを発見した



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7d0b9b6c3695333da9f2e185acf144c9
2011年Ralph DeBerardinis博士によって『逆方向に走るクレブス回路』が発見され、今回それを引き起こすメカニズムが特定された



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f2c26e0f57a3ab816dc42885092e26cc
非小細胞肺癌はグルコースが不足するとグルタミンを使う



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/96d33271622d6d604d4c92387baa10dc
酸素が不足した肝細胞癌はブドウ糖の代わりに酢酸を使う



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/88c883306ba9a7b3c9ca52a523b074ca
脳腫瘍は酢酸も燃料として使える



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151124082233.htm
脳は乳酸も燃料として使える



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2764.html
癌細胞は、ブドウ糖しかエネルギー源にできません。
スーパー糖質制限食やケトン食で、癌細胞を一定の兵糧攻めにできる可能性がありますね。
2013/11/26(Tue) 12:04 | URL | ドクター江部 | 【編集】


<コメント>
この人、何を考えて生きてるんですかね。

 

KIF1Bβはミトコンドリアの分裂とアポトーシスに重要

2016-02-01 06:06:19 | 
Gene often lost in childhood cancer crucial in cells' life or death decision

January 25, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160125130025.htm

神経芽腫は子どもで3番めに多い腫瘍である
癌で死ぬ子どもの15%が神経芽腫であり、その多さの理由はこの腫瘍の悪性の性質と診断時の転移の頻度が一因である
神経芽腫の細胞ではしばしば1番染色体の領域が失われており、重要な腫瘍抑制遺伝子が存在すると考えられてきた

「我々のデータは1q36に局在するKIF1Bβが神経芽腫で失われる腫瘍抑制遺伝子である可能性を強く示唆する」
カロリンスカ研究所で微生物学・腫瘍細胞生物学の主任研究員principal investigatorであり、ウプサラ大学ルートヴィヒがん研究所(ストックホルム・スウェーデン)のAssistant MemberでもあるSusanne Schlisioは言う



神経芽腫は発達時に一時的に生じて神経系や他の組織の源となる『神経堤細胞neural crest cell』という前駆体細胞から発生し、
特定の変異により神経堤細胞を源とする腫瘍を発症するリスクが高い家族が存在する

研究チームは以前神経芽腫で変異する遺伝子が神経堤細胞の生死の決定に関与することを発見している
その研究によると、プログラム細胞死によって死ぬはずの神経堤細胞は、KIF1B-βが失われると細胞死を回避する
死ななかった細胞はのちに癌細胞に成長する

彼らは今回の研究でKIF1B-βが細胞死を引き起こすメカニズムを明らかにした
それによると、KIF1B-βは細胞の発電所であるミトコンドリアに影響し、それはカルシニューリンcalcineurinという酵素を活性化するという
また、Schlisioたちはミトコンドリアの断片化による細胞死を誘発するために必要とされる重要なシグナルがKIF1B-βの喪失で損なわれることを示した

 KIF1B-β→カルシニューリン活性化→ミトコンドリア断片化→プログラム細胞死

さらに、研究者は患者から生検で得られた神経芽腫の腫瘍を分析することによりKIF1B-βの喪失が予後の悪さならびに生存の低下と関連することを実証し、
加えてカルシウムに依存性のカルシニューリンによるシグナル伝達がどのように実行されるのかを説明できる全般的なメカニズムも明らかにした

これは重大な発見である
なぜなら、カルシニューリンによるシグナル伝達の制御の喪失が神経変性疾患や心臓病、癌といった多くの疾患に関与するようだからである

「我々はKIF1B-βが神経堤細胞ならびに神経堤細胞を源とする腫瘍の生死に関与すると結論する」
Susanne Schlisioは言う
「将来神経芽腫の新たな治療の開発を試みる際に、KIF1B-βが細胞死を誘導するメカニズムの知識が重要であることが示されるだろう」


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2015.12.029
The 1p36 tumor suppressor KIF 1Bβ is required for Calcineurin activation controlling mitochondrial fission and apoptosis.
カルシニューリン活性化はミトコンドリア分裂とアポトーシスを制御し、その活性化には1p36の腫瘍抑制因子KIF1Bβが必要である


Highlights
・1p36に局在する腫瘍抑制遺伝子のKIF1Bβは、カルシニューリンの活性を全般的に調節する
・KIF1Bβによるカルシニューリン活性化は、DRP1を介するミトコンドリア分裂を引き起こす
・KIF1Bβの喪失はミトコンドリアの伸長を引き起こし、発達過程のアポトーシスdevelopmental apoptosisを失敗させる
・NGF競合中のニューロンのアポトーシスの回避は腫瘍発症につながる

※神経成長因子/nerve growth factor(NGF): ニューロンはお互いにNGFを競合し、NGFが不足した余分なニューロンはアポトーシスする


Summary
KIF1Bβは1p36の腫瘍抑制因子の候補であり、発達中の交感神経系におけるアポトーシスを調節する

我々はKIF1Bβがカルシウムイオン(Ca2+)に依存的なホスファターゼであるカルシニューリンを活性化することを発見した
KIF1Bβはカルシニューリンとカルモジュリンの複合体を安定させることにより酵素の自己抑制を解除し、カルシニューリンが基質を認識できるようにする
カルシニューリンは細胞のCa2+への応答を仲介する重要なメディエーターであり、その調節不全は癌や心臓病、神経変性疾患や免疫疾患に関与する

我々はKIF1Bβがカルシニューリン依存的なDynamin-related protein 1 (DRP1) の脱リン酸化を通じてミトコンドリアの動態dynamicsに影響することを示す
DRP1はミトコンドリアの分裂fissionとアポトーシスを引き起こす

 KIF1Bβ→カルシニューリン活性化→DRP1脱リン酸化→ミトコンドリア分裂↑,アポトーシス↑

さらに、KIF1Bβは既知のあらゆるカルシニューリン基質すべての認識を発動させるactuate
このことはKIF1BβがCa2+シグナル伝達において大部分に共通のgeneralメカニズムに関与することを意味し、
加えてCa2+依存的なシグナル伝達がどのようにしてカルシニューリンによって実行されるかについても示唆する

神経芽腫と褐色細胞腫で以前明らかにされた病原性のKIF1Bβ変異はカルシニューリンの活性化にすべて失敗し、DRP1を脱リン酸化することができない

重要なことに、1p36がヘミ接合的に削除された神経芽腫では、KIF1BβとDRP1がサイレンシングされている
これはカルシニューリン調節不全とミトコンドリア動態がハイリスクかつ予後が悪い神経芽腫の一因であることを示す

※hemizygous: ヘミ接合の。2倍体生物にもかかわらず、存在する遺伝子が1コピーだけの状態

※神経芽腫と褐色細胞腫: どちらもカテコールアミン分泌腫瘍。ノルエピネフリンとエピネフリンの尿中代謝産物であるバニリルマンデル酸の試験によりスクリーニングされる



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141105093500.htm
ミトコンドリアを分裂fissonさせるタンパク質Drp1を阻害すると、ドーパミンを分泌するニューロンの細胞死と機能低下は抑制された

[ドーパミン分泌ニューロン]
 Drp1→ミトコンドリア分裂→細胞死,機能低下

 Drp1↓→ミトコンドリア分裂↓→細胞死↓,機能低下↓

http://dx.doi.org/10.1038/ncomms6244
Drp1 inhibition attenuates neurotoxicity and​dopamine release deficits in vivo



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160112113614.htm
パーキンソン病とPARK14

http://dx.doi.org/10.1038/ncomms10332
Impairment of PARK14-dependent Ca2 signalling is a novel determinant of Parkinson’s disease.

http://www.nature.com/ncomms/2016/160112/ncomms10332/fig_tab/ncomms10332_F7.html
Figure 7: PLA2g6 (PARK14)-dependent Ca2+ signalling as a novel determinant of PD.


 PARK14/PLA2G6変異→ストア作動性カルシウム流入↓→ER内カルシウム欠乏↓→オートファジー↓→DAニューロンの加齢による喪失→パーキンソン病
 

髄芽腫グループ4の源が明らかに

2016-01-31 06:06:14 | 
Researchers mine the epigenome to identify likely origins of childhood brain tumor subtype

January 27, 2016

http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160127141948.htm

セントジュード子ども研究病院/St. Jude Children's Research Hospitalの研究者は、髄芽腫medulloblastomaのサブタイプの一つである『グループ4』が生じる源であるらしい細胞を明らかにした
この発見は脳腫瘍の髄芽腫で最も一般的なサブタイプに対する今より効果的な標的治療開発への障壁を取り除く
セントジュード子ども研究病院を中心とする今回の国際的な研究結果は、Natureオンライン版で先行出版される


髄芽腫は乳児infants、子どもchildren、成人adultsのいずれでも発症するが、小児で最も多く見られる悪性の脳腫瘍である
この疾患に含まれる生物学的・臨床的に異なる4つのサブタイプの中で最も多いのが『グループ4』で、子どもでは髄芽腫の約半分がグループ4である

患者の転帰、特にグループ4のハイリスク患者の転帰を改善するためのあらゆる努力にもかかわらず、これまで正確な動物モデルが存在しないためにその試みはうまくいかなかった

今回の研究から得られたエビデンスからグループ4は発達中の小脳cerebellumの『上菱脳唇(じょうりょうのうしん)/upper rhombic lip』という領域から生まれる神経幹細胞から発生することが示唆された
小脳は調和的な運動を助ける脳の一部で、髄芽腫が発生する場でもある

※菱脳: 発生中の神経管の一部で、後に小脳・橋・延髄に分化する領域


「髄芽腫グループ4の源となる細胞を特定することは正常な小脳発達の理解を助け、そして遺伝学的に忠実な前臨床マウスモデルを開発する見込みchancesを劇的に改善する
そのようなモデルは髄芽腫グループ4を生物学的に詳しく理解し、患者の転帰を改善するための合理的な分子標的治療を評価するために切望desperately neededされている」
セントジュードの発達神経生物学のPaul Northcott, Ph.D.は言う

腫瘍の増殖を加速する異常misstepに関する今回の発見はエピゲノムの研究によるものだ
エピゲノムというのはDNAに結合するタンパク質や化学物質のことで、それらは組織特異的なやり方で遺伝子発現の制御を調整するために協力して働く
DNAはゲノムをコード化し、ゲノムは生命の計画書である
エピゲノムは様々な細胞の種類ごとにゲノム中の指示がどのように実行されるかを決定する

研究者たちはクロマチン免疫沈降法/chromatin immunoprecipitation(ChIP)と次世代シーケンシング(next generation sequencing)を組み合わせたChIP-seqという分析ツールを使い、
エピジェネティックな調節因子の活性に基いて髄芽腫のサブタイプごとの違いを特定して追跡した

この調節因子regulatorsにはマスターレギュレーター転写因子master regulator transcription factorsという転写因子の一種が含まれ、それらはエンハンサーやスーパーエンハンサーというDNA配列に結合する
マスターレギュレーター転写因子とスーパーエンハンサー配列は、細胞のアイデンティティを決定するような重要遺伝子の発現を調節するために働く

そうした分析ツールなどの助けを借りて研究者は28の髄芽腫サンプルから3000を超えるスーパーエンハンサーを同定し、
加えてスーパーエンハンサー活性がサブタイプごとに異なることも明らかにした
スーパーエンハンサーはよく知られる癌遺伝子を活性化しており、その中には髄芽腫と関連するALK、MYC、SMO、OTX2が含まれていた

サブタイプごとのスーパーエンハンサーについての知識から彼らはそれらの活性を調節する転写因子を明らかにした上で、
コンピューターを使ってそれらの情報を応用することにより、髄芽腫サブタイプの多様性とアイデンティティの原因となる転写因子ネットワークを再構築した
それは様々な髄芽腫サブタイプの調節因子に関するランドスケープならびに転写的な産生についての新たな洞察をもたらした

これらのアプローチからLmx1Aが髄芽腫グループ4のマスターレギュレーター転写因子であることが発見され、
ここからグループ4の源が上菱脳唇/upper rhombic lip(uRL)である可能性が明らかにされた
Lmx1Aは上菱脳唇と小脳細胞の正常な発達に関与する

Lmx1Aを持つマウスまたは持たないマウスを使った研究からも、上菱脳唇の細胞がグループ4の源である可能性が支持された

「エピゲノムの研究から我々は新たな経路と分子的な依存性も明らかにした」
Northcottは言う

「この発見は新たな治療への道を開くものであり、
特に、患者の転帰が他よりも良くないサブタイムのグループ3とグループ4の治療につながる」

例えば研究者はTGFβ経路を標的とするエンハンサー活性が上昇することを明らかにしたが、この発見はTGFβ経路がグループ3を促進するというこれまでの証拠を補強するものだ
現在、グループ3の予後は最も悪い
TGFβ経路は細胞増殖と細胞死などの癌でしばしば妨害されている機能を調節するが、その髄芽腫における役割はほとんど理解されていない


今回の分析では4つのサブタイプを代表する28の髄芽腫サンプルが含まれる
これは単一の癌のタイプに関するエピジェネティックな分析としては過去最大のものであり、
重要なことにこれは研究室で培養した細胞系統ではなく、患者の腫瘍組織に由来する大規模なコホートを使った初めてのものである

以前の研究で細胞系統が腫瘍のエピゲノムの研究には限定的にしか役立たないことが示唆されていた
今回の研究ではグループ3髄芽腫の3つの細胞系統も分析され、エピジェネティックな調節因子の作用が細胞系統と腫瘍サンプルで著しく異なることが浮き彫りになったhighlight


http://dx.doi.org/10.1038/nature16546
Active medulloblastoma enhancers reveal subgroup-specific cellular origins.

Abstract
我々は28のプライマリーな髄芽腫の標本に対して
ヒストン3リジン27アセチル基とBRD4のクロマチン免疫沈降とシーケンシングを組み合わせ (ChIP-seq) 、
それをDNAメチル化と転写全体/トランスクリプトームのデータと統合して
アクティブなシス-調節的ランドスケープcis-regulatory landscapeを記述する

異なって調節されるエンハンサー・スーパーエンハンサーの分析から
サブグループ間の不均一性heterogeneityの違いが補強され、
髄芽腫の生物学への新しくかつ臨床的に関連がある洞察が明らかにされた

中心的な調節回路をコンピュータによって再構築することにより、転写因子のマスターセットを明らかにしてそれをChIP-seqで確認validateした
それらマスターセットは各サブグループの相違の原因であり、グループ4の源となる細胞の候補に影響する

大規模な初代腫瘍サンプルprimary tumour samplesにおけるエンハンサー配列についての統合的な分析から、
シス-調節的な構造cis-regulatory architectureならびにこれまで認識されていなかった依存性、そして細胞の源についての洞察が明らかになった


※St. Jude: 聖ユダ(タダイThaddeusのユダ)。セントジュード子ども研究病院はマロン派カトリック教徒だったDanny Thomasが1962年に設立した病院。コメディアンでその日暮らしpaycheck to paycheckだった彼は第一子が生まれる前にデトロイトでミサに参加し、最後の7ドルを献金箱に投じて新しい家族を迎える準備をしたいとSt. Jude Thaddeusに祈り、それが「叶った」ことからその名がついたとされる



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2016/01/160111152825.htm
タンパク質相互作用が悪性脳腫瘍のサブタイプを定義する

Mycはグループ3(髄芽腫の25%を占める)、MycNはSHHという異なるサブタイプにつながる
その違いの原因はMiz1で、Miz1が腫瘍アイデンティティの決定に重要である
Miz1はMycとは結合するが、MycNとは結合しない
Miz1-Myc複合体はDNAに結合して遺伝子発現を変化させ、グループ3の髄芽腫の増殖と転移を促進する

http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2015.12.003
The Interaction of Myc with Miz1 Defines Medulloblastoma Subgroup Identity.


Myc-Miz1は、Miz1/Ebox(nc)に結合して転写を抑制し、ニューロン分化をさせない(脱分化=悪性)

[グループ3]
 Myc↑→Miz1と共にMiz1/Ebox (nc)に結合して転写を抑制→ニューロンに分化しない,幹細胞性↑,ciliogenesis↓,TGF-β経路↑

[SHHサブタイプ]
 MycN↑→Miz1と相互作用せずMiz1/Ebox (nc)に結合しない→ニューロンに分化する



関連サイト
http://plaza.umin.ac.jp/sawamura/pediattumor/medullo/
髄芽腫の分子診断
1.WNT (wingless) 免疫組織染色で DKK1 (WNT)
2.SHH (sonic hedgehog) 免疫組織染色で SFRP1 (SHH)
3.グループ3 免疫組織染色で NPR3
4.グループ4 免疫組織染色で KCNA1

分類したあとの見込みは
1.ウイングレスはとても治りやすい
2.ソニックヘッジホッグとグループ4は中間くらい
3.グループ3は予後がとても悪い