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小細胞肺癌の循環腫瘍細胞を培養することに成功

2015-11-28 06:06:53 | 
Circulating small cell lung cancer cells successfully cultivated for the very first time

November 19, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151119103547.htm

小細胞肺癌/SCLCのほとんどは、腫瘍が既に転移を形成した後で診断される
なぜSCLCがこれほど急速に転移するのかはこれまで不明だったが、その理由は患者から十分な量の腫瘍の素材materialが得られないことにあった
今回の研究でウィーン医科大学外科部のGerhard Hamilton率いる研究チームは組織培養を無制限に増殖させることに成功した
研究成果はOncoImmunology誌に掲載される


オーストリアでは毎年約4000人が肺癌で死亡し、そのほぼ90%が喫煙歴数十年のヘビースモーカーである
この悪性腫瘍は特に女性で増加しつつあり、今では乳癌を抜いて女性の癌での死因1位になった

肺癌の15%は小細胞肺癌/SCLCである
ほとんどの症例で診断時に既に転移が形成されており、相応してcorrespondingly予後は悪い
治療は細胞毒性による化学療法と放射線療法で、転移したステージでは手術は効果がないため実施されない

初めのうちはSCLC患者のほとんどが治療の組み合わせにとてもよく反応するが、ほぼ1年以内に腫瘍は再発し、それらは治療抵抗性であるために生存率は劇的に減少する
なぜこの癌はこれほどまでに悪性なのかを調べることはこれまで不可能だったが、その理由は集められて得られる生検がほんのわずかで、生体分子的分析で利用できるほどの十分な細胞素材が存在しなかったためである
研究の開始時点でわかっていたのはSCLC患者の血中には非常に多数の循環腫瘍細胞/CTCが存在するということだけだった


Gerhard Hamiltonを中心とする研究グループは、分子腫瘍学グループのRobert Zeillinger、オットー・ワーグナー病院のMaximilian Hochmairらと協力して
進行SCLC患者の循環腫瘍細胞を永続的に培養するための手法を確立しようと努力してきた
彼らはその手法を使い、永久に増殖できる4つの細胞系統の開発に成功した

これにより彼らは腫瘍細胞がどのようにして免疫系を操作するのかを説明できるようになった
単球はマクロファージに分化させられ、化学的メッセンジャー物質がその極性polarityを変化させる
このマクロファージは腫瘍細胞と戦う代わりに炎症性の微小環境を作り出し、癌細胞の転移をさらに刺激する
さらに、主なリスク集団には肺癌の発症前に慢性閉塞性肺疾患/COPDが既に存在したという兆候もあり、これも循環腫瘍細胞の形成を促進していた

このまったく新しい発見は一流誌のOncoImmunology誌に発表された
この研究はSCLC腫瘍の転移の説明に役立ちgo a long way towards explaining、おそらく他の悪性腫瘍にも関連性があるだろう

Hamiltonたちの次の目標は、再発したSCLCがなぜ化学療法に抵抗するのかについての理由を明らかにすることである


http://dx.doi.org/10.1080/2162402X.2015.1093277
Small cell lung cancer: recruitment of macrophages by circulating tumor cells.

ABSTRACT
腫瘍関連マクロファージ/TAMは腫瘍の進行ならびに抗腫瘍免疫の抑制、そして播種性転移disseminationにおいて重要な役割を演じる

血液中の単球は腫瘍領域に浸潤し、腫瘍の局所的な微小環境によってプライミングされて腫瘍増殖と浸潤を促進する

腫瘍とマクロファージは多くのサイトカインやファクターによって相互作用することが知られているが、
想定される循環腫瘍細胞/CTCの寄与はこれまで知られていない

CTCの特徴は移動の増加ならびに細胞外マトリックス/ECMを分解して血流に入り二次的な病巣を形成する能力だが、この転移形成が癌患者の大半の主な死因である

我々は進行SCLC患者の血液サンプルからBHGc7とBHGc10という2つの永続的CTC細胞系統を確立し、それによりCTCと免疫細胞の相互作用を調べることが可能になった


末梢血単核球/peripheral blood mononuclear cells (PBMNCs)とCTCとの共培養、またはCTCならし培地conditioned medium/CTC-CMを添加した結果、
単球からマクロファージへの分化 ならびに TAMのマーカーを発現するCD14+ CD163weak CD68+マクロファージを生じた

さらに、CTCによってプライミングされたマクロファージの上清を約100種のサイトカインに関してスクリーニングし、
局所転移性の細胞系統であるSCLC26Aによって誘発されたそれと比較した


SCLC26A-CM(conditioned medium/ならし培地)によってリクルートされたマクロファージは、以下のような発現を示した
オステオポンチン/osteopontin (OPN)、
ケモカインのMCP-1、IL-8、
キチナーゼ様タンパク質のchitinase3-like 1 (CHI3L1)、
血小板因子4 (Pf4)、IL-1ra、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9 (MMP-9)

対照的にBHGc7-CMは、
補体因子D (CFD)/アディプシンadipsin、ビタミンD結合タンパク質 (VDBP) の著しい過剰発現を誘導し、
オステオポンチン、リポカリン2 (LCN2)、CHI3L1、uPAR、MIP-1、GDF-15/MIC-1の分泌を増加させた

再発SCLC非依存的に由来するBHGc10は、ENA-78/CXCL5の発現を加えたほぼ同一のパターンを示した

非腫瘍HEK293細胞系統のCMはマクロファージを誘導せず、一方で末梢血単核球/PBMNCsと組み換えCHI3L1はポジティブな結果を生じた

したがって、SCLC患者CTCの特異的な寄与は
CFD/adipsinに影響し(おそらく免疫/悪液質に関与する)、
他にもVD-BP(マクロファージ活性化因子のGc-MAFを生じる)、GDF-15/MIC-1(腫瘍細胞の悪性表現型を促進する)、ENA-78/CXCL5(血管形成性の好中球を引き寄せる)に影響を与える


結論
循環腫瘍細胞/CTCは特に腫瘍関連マクロファージ/TAMを操る能力があり、
侵襲性invasiveness、血管形成angiogenesis、免疫抑制、そしておそらく脂質異化作用lipid catabolismを増大させる
 


<コメント>
GcMAFを免疫療法と称して使うところもあるようですが。



関連サイト
http://aasj.jp/news/navigator/navi-news/1821
マサチューセッツ総合病院とハーバード大学が転移性乳癌細胞のCTCを培養することに成功



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141222111651.htm
CHI3L1はメラノーマを肺に転移しやすくする
セマフォリン7aはインテグリンβ1またはプレキシンC1と相互作用することによってCHI3L1を調節する
インテグリンβ1はCHI3L1を促進し、プレキシンC1はCHI3L1を抑制する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f772188fee77e2fb3f738a8b070b6382
Aiolosという転写因子はアノイキスを抑制して肺癌細胞の転移を促進する
 

癌細胞はインスリン抵抗性を回避する

2015-11-21 06:02:17 | 
Cancer cells poised for growth when opportunity knocks

November 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151117093209.htm


(ヒトに癌を引き起こす遺伝子をハエで活性化させると、高糖食を与えたハエの腫瘍は通常食よりも大きく育った)

※poise: ~を平衡状態にする。~の用意をさせる(for~)※再帰的または受身


インペリアル・カレッジ・ロンドンのMRC臨床科学センターで代謝・細胞増殖研究グループを率いる平林 享(Susumu Hirabayashi)と、マウント・サイナイ・アイカーン医科大学/Icahn School of Medicine at Mount SinaiのRoss Caganたちは、
血中のブドウ糖レベルが上昇した時、それに対して癌細胞が応答して急速に増殖するメカニズムを同定した
eLife誌で発表された今回の研究は、なぜ肥満のように慢性的に高血糖になる人がある種の癌を発症するリスクが上昇するのかを説明する


我々が食べたものは消化されてグルコースのような小さい分子になり、血液によって全身の細胞に届けられて成長のための燃料として使われる
グルコースが効率よく吸収されるためにはインスリンが必要であり、インスリンは細胞表面の受容体に結合してチャネルを開き、グルコースを細胞に吸収させる

肥満の人々はしばしば持続的に血液中のグルコースとインスリンが多く、多過ぎるそれらはやがて『暗騒音background noise』となり無視tune outされるようになる(インスリン抵抗性)
インスリンが作用しなくなるとチャネルが開かなくなり、グルコースは細胞に吸収されずに血液中に蓄積する

しかし全ての細胞がインスリンとグルコースを無視tune outするわけではない
事実、平林たちは以前ショウジョウバエの腫瘍細胞は積極的に注意を払うtune inことを示している


2年前に発表された研究で彼らはショウジョウバエのRasとSrcという遺伝子を活性化させた(※)

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23911328

RasとSrcはヒトの様々な癌で活性化している遺伝子である
ハエは代謝と細胞増殖を制御する遺伝子の多くをヒトと共有しているため、この研究は我々ヒトにも関係あるrelevant可能性はある

科学者はRasとSrcをハエの発達中の目の組織で活性化させ、それらの細胞を蛍光ライトの下で緑に発光するよう目印をつけた
通常のエサを与えたハエの腫瘍は小さくて良性だったが(画像左)、高糖食を与えると大きく悪性の腫瘍を生じた(画像右)

平林は高糖食を与えたハエの通常の細胞がインスリン抵抗性になる一方で、腫瘍細胞はそうならないことを発見した
腫瘍は余分なインスリン受容体を作るための『代謝のスイッチ』を入れて、インスリンに対して感受性を増大させていた
インスリンが通常より多く受容体に結合してより多くのグルコースのチャネルが開いた腫瘍細胞は、ハエのインスリン抵抗性の体内で他に行き場がないグルコースの『下水溝/sink』のようになった

しかし、2年前の研究では腫瘍細胞がどのようにして『代謝のスイッチ』を入れるのかは不明だった


平林とCaganは同じハエを詳細に研究し、腫瘍はSalt-inducible kinase (SIK)というタンパク質によってグルコースが手に入るかどうかavailabilityを間接的に検出することを示した
SIKはグルコースレベルが高いと『Hippoシグナル伝達経路』というルートに沿ってシグナルを送る

Hippo経路は細胞増殖の制御に関与することが知られている
Hippo経路がオンの時は増殖は制御されているが、オフになると細胞は増殖を続けcarry on、最後にはultimately腫瘍の発症につながるのかもしれない

平林とCaganはSIKが糖のセンサーのように働き、グルコースレベルに応じてHippoシグナル伝達経路をオフにすることを発見した
これは腫瘍細胞が増殖し続けることを可能にする


「RasとSrcをともに活性化した腫瘍は、SIKを使って細胞外に利用可能なグルコースが多く存在することを感知し、それを利用するよう細胞に伝えるtell」
平林は言う
これらの腫瘍はHippoシグナル伝達経路の変化に対して特に感受性が高く、その変化に急速に応答する用意をしているpoised to

「RasとSrcの変異した腫瘍はSIKを使って効率的にグルコース利用可能性に応答し、肥満のように栄養が豊富な状態で腫瘍が確実に増殖できるようにするensure
ただし、他の遺伝子変異による腫瘍がグルコースに対して同様に応答するかは不明である」

「我々の研究結果が示唆するのは、SIKを標的にする薬剤を開発できればインスリン抵抗性の環境で癌細胞が生き残るのを止めて、肥満と癌の関連を断ち切ることができるかもしれないということである」

科学者たちはSIK阻害剤を開発する前に、ヒトでも同様のメカニズムが生じるのかを確認しなければならないだろう


http://dx.doi.org/10.7554/eLife.08501
Salt-inducible kinases mediate nutrient-sensing to link dietary sugar and tumorigenesis inDrosophila.
eLife 2015


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23911328
Transformed Drosophila cells evade diet-mediated insulin resistance through wingless signaling
Cell 2013




関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/7584
高糖質食の摂取による糖代謝の異常が腫瘍の悪性化に及ぼす影響
平林 享・Ross L. Cagan

>最近,ヒトの線維芽細胞を用いた解析により,Wntシグナルが転写因子Tcfを介してインスリン受容体の発現を亢進することが報告され,古典的Wntシグナル伝達経路とインスリンシグナル伝達経路とのクロストークはヒトにおいても保存されていることが示された7).



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150406133613.htm
ショウジョウバエの腫瘍はImpL2(ヒトIGFBPsのホモログ)を分泌して、インスリンの働きを阻害してグルコースを使えないようにする



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151109140121.htm
膠芽腫でのEGFR活性化はグルコース取り込みを増やしてSCAPの翻訳後修飾/N-グリコシル化を促進し、SCAPとSREBPはゴルジへ移動、SREBPが活性化して脂質産生に関与する遺伝子を活性化する
 

なぜ膵臓癌にはゲムシタビンが効かないのか

2015-11-18 06:29:18 | 
Study reveals why chemotherapy may be compromised in patients with pancreatic cancer

November 11, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151111143233.htm

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新たな研究は、なぜゲムシタビンgemcitabineのような化学療法薬が多くの膵臓癌患者に効果がないのかを説明する
そしておそらく、ゲムシタビンの腫瘍増殖を止める能力を促進する新しい治療アプローチについても指し示すpoint

MDアンダーソンのマウスでの研究は、細胞の可塑性/適応のプロセスplasticity processである上皮間葉転換/epithelial-to-mesenchymal transition (EMT) の抑制とゲムシタビンとの組み合わせが薬の効果を加速することを示唆する
研究成果は11月11日のNatureオンライン版で発表される

「現在の治療法の有効性availabilityにもかかわらず、膵臓癌の診断は予後の悪さと関連する」
癌生物学の教授で筆頭著者のRaghu Kalluri, M.D., Ph.D.は言う
「新たな治療戦略が至急必要である」

Kalluriの研究チームは胚細胞の可塑性プログラムembryonic cellular plasticity programであるEMTに注目した
EMTは癌細胞によって乗っ取られており、癌細胞が他の臓器に移動するのを助けると考えられている

癌細胞は『広がるspread』疾患であり、分裂して増殖するか、または移動して転移することによって体内に拡散するが、
癌細胞がEMTプログラムを採用して移動を促進させると、一般に癌細胞は分裂を止める
今回の研究結果は、EMTが癌細胞の増殖を止めることにつながり、それにより化学療法への感受性が損なわれることを示す

「ゲムシタビンは主にprimarily分裂して増殖する癌細胞に作用する」
Kalluriは言う
「癌細胞がEMTプログラムを開始するなどして増殖を停止させると、ゲムシタビンのような増殖を止めるための抗癌剤は十分に作用しない」


「EMTプログラムは薬剤の輸送体を抑制することも明らかになった
これも意図せずinadvertently癌細胞を抗癌剤から保護する」

「膵臓癌患者の生存率の減少とEMTプログラムの増大とが相関する理由は、EMTにより患者の化学療法に応答する能力が損なわれるためである
それにより全体的な予後が悪化し、転移する率が高くなる」

※concentrative: 集中的な、専念する

EMTプログラムを阻害すると、腫瘍のゲムシタビンに対する応答は高まった

「まとめると、我々の研究は化学療法の効力、そしておそらく標的治療の効力を高めるためにEMTプログラムを標的にするという方法の潜在性を評価する機会をもたらす」


http://dx.doi.org/10.1038/nature16064
Epithelial-to-mesenchymal transition is dispensable for metastasis but induces chemoresistance in pancreatic cancer.
EMTは膵臓癌の転移に必須ではないが、化学療法への抵抗性は誘導する


EMTの原因とされる2つの鍵となる転写因子TwistとSnailを欠損させたPDACマウスモデルを作成したところ、
そのようなEMTの抑制によって、PDACでの浸潤の出現、全身への転移は変化しなかった

EMTの抑制は癌細胞の増殖の増大につながり、腫瘍のヌクレオシドトランスポーターの発現が促進される
これはゲムシタビン治療への感受性の増大につながり、マウスの全生存率が上昇する
 

コネキシン46は脳腫瘍を促進する

2015-11-15 06:57:01 | 
In lab tests, new therapy slows spread of deadly brain tumor cells

July 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150727130818.htm

コネキシン46/connexin 46は、ギャップ結合の一部

膠芽腫glioblastomaの癌幹細胞でギャップ結合gap junctionを止めると、腫瘍形成能力が減少した

[膠芽腫の癌幹細胞]
 ギャップ結合↑→腫瘍形成能力↑


ギャップ結合阻害剤の1-octanolと化学療法のテモゾロミドtemozolomideを組み合わせると、マウスで腫瘍の増殖は遅くなった
ギャップ結合を阻害されたマウスは100日たっても全て生きていたが、ギャップ結合が阻害されなかったマウスは2ヶ月で全て死んだ

 ギャップ結合↓→腫瘍形成能力↓


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.04.021
Differential Connexin Function Enhances Self-Renewal in Glioblastoma.


膠芽腫の癌幹細胞CSCsはコネキシン46/Cx46を発現するが、それ以外の膠芽腫はコネキシン43/Cx43を主に発現する
CSCsが分化する間にCx46は減少してCx43が増大する
Cx46を標的とすることでCSCの維持を抑制した

Cx46とCx43の違いは、CSCの細胞間コミュニケーション上昇ならびに休止状態の膜電位低下によって反映される


我々の研究は、ギャップ結合の発癌を促進する役割を明らかにする
そしてギャップ結合はコネキシンの発現に依存する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/77e047acb925e06ff43d4e941ab1ded2
コネキシン50は癌を抑制する
 

コネキシン50は癌を抑制する

2015-11-15 06:52:27 | 
Protein's work in eye lens suggests a way to tame cancer

November 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151112155953.htm

コネキシンというタンパク質はどのようにして癌を抑制するのか?
How does a protein called connexin put the clamps on cancer?

※put the clamps on…
〈人〉を締めつける; 《俗》 …を強奪する.

テキサス大学サンアントニオ健康科学センターの生化学教授で首席著者のJean X. Jiang, Ph.D.によると、コネキシン50/connexin 50はSkp2という『細胞増殖を促進する分子』を細胞質に束縛するという
コネキシン50がSkp2を留めることにより、Skp2は核に移動して細胞増殖を促進することができなくなる

大多数の細胞はコネキシンを多く持つが、原発巣の腫瘍には非常に少ない/primary tumors have very low amounts.
「それはコネキシンの存在が原発腫瘍の成長を抑制するためである」
Jiang博士は言う


Jiang博士たちはコネキシンが豊富な目のレンズをモデルシステムとして研究し、細胞中での機能を理解しようとした
「コネキシンを増幅する方法があれば、癌のような細胞増殖を抑制することも可能だろう」

今回の研究はコネキシン分子を基盤にした癌の治療がいつか開発されるかもしれないことを示唆する
この研究はDevelopmental Cell誌のオンライン版で発表された


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2015.10.014
http://www.cell.com/developmental-cell/abstract/S1534-5807(15)00661-9
Connexin Controls Cell-Cycle Exit and Cell Differentiation by Directly Promoting Cytosolic Localization and Degradation of E3 Ligase Skp2.
コネキシンは、ユビキチンE3リガーゼSkp2の細胞質への局在ならびに分解を直接促進することにより、細胞周期の脱出ならびに細胞の分化を制御する


[癌]
 コネキシン50↓─┤Skp2↑→細胞周期↑ 



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c7761c7cec5d2c3b965b07ea6cdf5ea7
コネキシン46は脳腫瘍を促進する
 

出産や避妊手術は4種類の卵巣癌リスクをそれぞれ低下させる

2015-11-14 06:26:51 | 
Different types of ovarian cancer have different causes

November 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151102222517.htm

4種類の卵巣癌のリスクについて
(漿液性serous、粘液性mucinous、類内膜endometrioid、明細胞clear cell tumours)

卵巣癌全体のリスクは子供1人の出産で20%リスク低下、さらに1人産むごとに8%低下
類内膜と明細胞は子供1人の出産で40%リスク低下


卵管結紮tubal ligation/ファローピウス管を切るか留めるcut or clip their fallopian tubes手術は、卵巣癌全体で20%リスク低下
高グレード漿液性腫瘍(最も一般的なタイプの卵巣癌)は20%リスク低下、類内膜と明細胞のリスクはほぼ半減



関連サイト
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2848.html
日本人女性の卵巣癌リスクは出産数増加にともない低下する傾向



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151111092651.htm
過去の経口避妊剤の利用は卵巣癌患者の予後の良さと関連



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140801091210.htm
何らかの経口避妊薬の利用は乳癌リスクを増すかもしれない



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150804203256.htm
経口避妊薬は過去10年で20万件の子宮内膜癌を予防した



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151030111114.htm
生殖に関する要因(月経の開始年齢が遅い、出産、母乳育児、経口避妊薬)は女性の死亡リスクと関連する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2f144b21e9c28f3f0f91e61a1ad6d76b/
プロゲステロンは乳癌の生存を助けるかもしれない



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151028095109.htm
母乳育児はホルモン受容体陰性の悪性乳癌リスクの低下と関連する
 

口腔癌は好中球と相互作用して転移する

2015-11-13 06:27:10 | 
Neutrophil and cancer cell 'crosstalk' underlies oral cancer metastasis

August 6, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150806121813.htm

好中球はTNF-αを分泌し、口腔癌はIL-8を分泌して、さらにIL-8は好中球を活性化する
このフィードバックループは強い免疫応答の形成を効果的に確立する

この免疫応答ループは最終的に「浸潤突起invadopodia」という浸潤構造を増大させ、癌はそれを使って浸潤して転移する

 好中球─(TNF-α)→口腔癌─(IL-8)→好中球⇒浸潤,転移


http://dx.doi.org/10.1158/2326-6066.CIR-15-0017
Neutrophils Increase Oral Squamous Cell Carcinoma Invasion Through An Invadopodia-Dependent Pathway.

口腔扁平上皮癌oral squamous cell carcinoma (OSCC)


関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151029102512.htm
癌細胞のEGFR高発現は、好中球のリクルートからVEGF分泌を介して血管形成を促し、転移を促進する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2010/10/101007145501.htm
メラノーマはIL-8を分泌して好中球を呼び寄せ、肺に留まって転移する
 

癌細胞は秘密のトンネルで密輸入する

2015-11-12 06:38:48 | 
Cancer cells use secret tunnels to communicate, smuggle cancer signals their neighbors

November 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151102152740.htm

FASEBの2015年11月号で発表された新たな発見で、
癌細胞はこれまで知られていなかったルート/channelを使って細胞同士でお互いにコミュニケーションをすることが示された
それは癌細胞同士だけでなく、癌ではない近くの細胞ともである

※channel: 水路、径路、ルート、麻薬の入手ルート、細胞同士のチャネル

この発見は癌がどのようにして転移したり健康な細胞から物質を補充するのかについて光を当てるだけでなく、
この物理的なルートが癌の治療薬などを送り届けるために利用可能exploitableかもしれないことを示唆する


「我々が開発したツール、特にこのマウスモデルが、
腫瘍によって性質を変えられたmodified健康な細胞を単離したり、
腫瘍と臓器のコミュニケーションを阻害する新たな抗癌剤を探すために使われることを私は期待している」

ノルウェーのベルゲン大学生体医学部/Department of BiomedicineのAnne Burtey, Ph.D.は言う
「また、今回の我々の知識が『スーパー・スプレッディング/super-spreading』な薬剤設計への道を開くことができればいいと考えている
その薬は腫瘍内部で『拡散diffuse』する能力を高めたもので、腫瘍の進行に関与する健康な細胞にさえ届くことが可能だ」


Burteyたちは、赤や青の蛍光による『色素dyes』で塗り分けcolor-code、『名札tags』をつけることにより細胞間の分子の交換を調べた
彼らは青い細胞を赤い細胞とともに培養し、タンパク質のような細胞内の成分materialを交換するかどうかをモニターした

実験の結果、細胞内でタンパク質や小器官の輸送に関与するタンパク質の機能(Rab8)が変化することが観察された
この発見は、このタンパク質が癌において細胞間コミュニケーションを調節する重要な要素であることを示唆する

ライブセルイメージング/live cell imagingにより生きたまま細胞を画像化することで、この輸送は細胞同士の接触に依存的であることが確かめられた

重要なことに、このプロセスはin vivoでも起きることが実験で示された
蛍光でタグ付けされた「緑色の健康な細胞」と「赤色のヒトの癌細胞」を持つマウスを使った実験で、
「赤の物質」がマウスの乳腺脂肪体/mammary fat padの「緑の健康な細胞」へと移動することが観察された


FASEB誌の編集長Editor-in-Chief、Gerald Weissmann, M.D.は言う
メキシコの麻薬王/mexican drug lordsと同じようなことを癌細胞は細胞レベルでやっているようだ
それを知った今、我々はそのようなトンネルを封鎖するか、薬剤を届けるために使うことが可能である」


http://dx.doi.org/10.1096/fj.14-268615
Intercellular transfer of transferrin receptor by a contact-, Rab8-dependent mechanism involving tunneling nanotubes.
トランスフェリン受容体の細胞間の移動はナノサイズのチューブ状トンネル/細胞膜ナノチューブ (TNT) を含むメカニズムによるもので、そのメカニズムは接触依存的かつRab-8依存的である


関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151105092002.htm
星状細胞腫は長い腕を伸ばしてネットワークを形成し、相互作用して治療に抵抗する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/09/120904121436.htm
卵巣癌細胞はTGF-βにより周囲の組織を乗っ取り腫瘍増殖を促進する

http://dx.doi.org/10.1172/JCI62229

 

トリプルネガティブ乳癌幹細胞の新たな手がかり

2015-11-11 06:40:33 | 
New breast cancer stem cell clues may help develop therapeutics

November 5, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151105143541.htm

ボストン大学医学部の研究者は、基底細胞様乳癌/basal-like breast cancer/BLBCに関与する重要な調節経路を新たに発見した(BLBCは『トリプルネガティブ』とも言われる)
この経路は効果的な治療を開発するための標的として働く可能性がある
この研究結果はMolecular Cancer Research誌で発表される


特定の分子を標的とする抗癌剤はいくつかの乳癌で治療の選択肢となるが、BLBCは一般的にそうした抗癌剤に反応しない
加えてBLBCは特に悪性で急速に転移する傾向があり、臨床的な予後は全体的に悪い

このサブタイプの悪性の性質は、この腫瘍にしばしば癌幹細胞/CSCの量が多いためであるかもしれない
CSCは腫瘍の再発と進行、転移と薬剤抵抗性を促進すると考えられている


Sam Thiagalingam, PhDの指導下にあるボストン大学医学部/Boston University School of Medicine (BUSM) の研究者たちは、
BLBCによって分泌されるペリオスチン/periostin (POSTN)というタンパク質が異なるシグナル伝達経路を活性化することにより癌幹細胞を育てて支えることを発見した

ペリオスチンは多くのBLBC細胞の表面に存在する特定のインテグリン受容体を通じて作用する
研究者がペリオスチンかインテグリン受容体のどちらかを妨害するとCSCは劇的に減少し、癌細胞が腫瘍を形成する能力は損なわれた
また、ペリオスチンレベルが高いBLBCは、重要なサイトカインの増大と関連があった

「これらの研究結果は、BLBC細胞が『癌幹細胞を支えるための局所的な微小環境』を確立する能力を生まれながらに持つことを示唆する」
BUSMで遺伝学・ゲノム学・内科学・病理学・臨床検査医学Laboratory Medicineの准教授/associate professorであるThiagalingamは説明する


Thiagalingamは、ペリオスチンレベルの高いBLBC患者が臨床的な予後の悪さと関連することに言及する
「このことは、BLBCにおいてペリオスチンが臨床的に関連性がありrelevant、バイオマーカーや治療の標的として利用できることを意味する」

しかしながら、BLBCや他のいくつかの癌でこの戦略を使える可能性は存在するものの、現時点ではat this timeまだ評価すべきことが残っているという
「結局、癌幹細胞を殺すことはBLBCと戦うことに向けた実用的なアプローチを表す
ペリオスチンシグナル伝達の阻害はそれを達成achieveするための一つの方法になるかもしれない」
Thiagalingamはそのように付け加えた


http://dx.doi.org/10.1158/1541-7786.MCR-15-0079
Tumor Cell-Derived Periostin Regulates Cytokines That Maintain Breast Cancer Stem Cells.

乳癌幹細胞の維持にはペリオスチン-インテグリンβ3というシグナル伝達軸が必要である

腫瘍細胞に由来するペリオスチン(細胞外マトリックスの構成要素でもある)と、それに相応して合致するcognate受容体のインテグリンαvβ3は
BLBC細胞系統のサブセットで発現が高く、癌幹細胞が豊富な集団でも高いことを我々は発見した

ペリオスチンはERKシグナル伝達経路を活性化する
そして、ペリオスチンはNF-κBを介するIL-6とIL-8の転写を調節し、下流のSTAT3の活性化を制御する

CSCによって産生されるペリオスチンは、インテグリン受容体の活性化ならびに重要なサイトカインの産生を通じて、幹細胞状態を強めるreinforce



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150512124142.htm
EMTにおけるインテグリンβ3サブユニットの発現は癌が原発巣から転移するために必要
 

癌細胞はグルコースを強奪して免疫細胞を去勢する

2015-11-06 06:08:08 | 
Cancer cells hijack glucose, alter immune cells

Study reveals potential metabolic pathway for cancer treatment

November 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151102125723.htm

※alter: 変える、改ざんする、去勢する


癌細胞と免疫細胞がグルコースを取り合うと、勝つのは癌細胞である
その結果として免疫のT細胞は『不健康』になり、癌を殺す武器を失う

「もしT細胞の代謝経路を操作する方法があれば、そのT細胞はもっと健康になるかもしれない」
ミシガン大学メディカルスクールの教授で首席著者のWeiping Zou, M.D., Ph.D.は言う
Nature Immunologyで発表された今回の研究は、癌に対抗する代謝経路についての可能性を示唆する

Zouは言う
「腫瘍にグルコースを与えると腫瘍はそれを使うことは誰もが知っている
(腫瘍がグルコースを使い過ぎると)T細胞はグルコースを制限されることになるが、T細胞はそれに抵抗できるだろうか?
(できないとすれば)抵抗できるように変えられるだろうか?
我々は今回の研究で、それを調べるためにモデルとして使えるメカニズムを明らかにする」


研究者は
幹細胞のような性質を持つT細胞がより長く生きることと関連し/tied to longer survival、
ヒトの癌で腫瘍を殺す能力を持つことと結び付くのを発見した

研究者は
癌の環境的な代謝経路を変化させることで、T細胞の機能を拡大できると提案する
そうした機能拡張によりT細胞は癌を殺せるようになるだろう


彼らの発見は、卵巣癌患者の生存を予測するツールとして、
またはチェックポイント阻害や免疫ワクチンのような免疫療法の有効性を予測するマーカーとしても使える可能性も持つが、
それにはさらなる臨床的な試験が必要である


http://dx.doi.org/10.1038/ni.3313
Cancer mediates effector T cell dysfunction by targeting microRNAs and EZH2 via glycolysis restriction.
癌は解糖系の制限を通じてマイクロRNAならびにEZH2を標的とすることでエフェクターT細胞の機能不全を仲介する

Abstract
好気的解糖aerobic glycolysisはT細胞機能を調節する
しかしながら、原発癌primary cancerはT細胞の解糖的代謝を変化させて癌患者の腫瘍免疫に影響するか?
するとすれば、それはどのようにして生じるのか?
それらは疑問のままである

今回我々は卵巣癌が強制的にT細胞のグルコース利用を制限しimposed glucose restriction on T cells、
マイクロRNAのmiR-101とmiR-26aの発現を高く維持することを通じてT細胞の機能を抑制することを発見した
miR-101とmiR-26aは、メチル基転移酵素methyltransferaseのEZH2の発現を抑制するconstrain

 miR-101,miR-26a↑─┤EZH2↓


EZH2はヒストンH3リジン27のトリメチル化を介して
Notch抑制因子repressorsのNumbとFbxw7を阻害することによりNotch経路を活性化する

 EZH2↑─(H3K27トリメチル化↑)─┤Numb,Fbxw7↓─┤Notch↑


Notch経路の活性化の結果consequently、T細胞の多機能polyfunctionalなサイトカイン発現を刺激し、Bcl-2シグナル伝達を介して生存を促進する
さらに、スモールヘアピンRNA/shRNAによるT細胞でのヒトEZH2のノックダウンは抗腫瘍免疫の低下を誘発したelicit
EZH2陽性CD8陽性のT細胞は、患者の生存改善と関連があった

総じて、これらのデータは代謝的な標的ならびに癌の免疫回避のメカニズムを明らかにする






http://dx.doi.org/10.1038/ni.3313
Reference

35)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21926977
A human memory T cell subset with stem cell–like properties.

>Immunological memory is thought to depend on a stem cell-like, self-renewing population of lymphocytes capable of differentiating into effector cells in response to antigen re-exposure.
(免疫記憶は幹細胞様で自己再生するリンパ球の集団に依存すると考えられている
この集団は抗原への再曝露に応じてエフェクター細胞へと分化する能力を持つ)

>Here we describe a long-lived human memory T cell population that has an enhanced capacity for self-renewal and a multipotent ability to derive central memory, effector memory and effector T cells.
(今回我々はヒトの長寿なメモリーT細胞集団について述べる
この集団は自己再生能力が促進されており、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、エフェクターT細胞を引き出すderive多能性multipotent abilityを持つ)

38)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22754771
Th17 cells have stem cell-like features and promote long-term tumor immunity.
Th17細胞は幹細胞様の特性を持ち、腫瘍免疫を長期に促進する@ミシガン大学


40)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22177921
Th17 cells are long lived and retain a stem cell-like molecular signature.
Th17細胞は長寿で、幹細胞様の分子シグネチャーを保つ






http://dx.doi.org/10.1038/ni.3313
Figures index


Figure 4
Tumor impairs T cell polyfunctionality and survival via glucose restriction.
腫瘍はグルコース制限を介してT細胞の多機能性と生存を損なう

(b)
OCR (oxygen consumption rate): 酸素消費速度
ECAR (extra cellular acidification rate): 細胞外酸性化速度

(f)
annexin V: アポトーシスの指標


Figure 5
Tumor controls T cell EZH2 by miR-101 and miR-26a via glucose restriction.
腫瘍はグルコース制限を介してmiR-101とmiR-26aによりT細胞のEZH2を制御する



Supplementary Figure 2
Effects of DZNep on pro-apoptotic and anti-apoptotic gene expression.

DZNep (3-Deazaneplanocin A): EZH2のヒストンメチル化酵素活性の阻害剤


Supplementary Figure 4
Effects of tumor and glucose on T cell function and tumor inhibitory B7 expression.

※B7: https://en.wikipedia.org/wiki/PD-L1
B7-1/CD80  →CD28,CTLA-4
B7-2/CD86
B7-H1/PD-L1 →PD-1
B7-H2/L-ICOS →ICOS
B7-H3
B7-H4



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2013/09/130905133752.htm
Some immune cells appear to aid cancer cell growth
免疫細胞の中には癌細胞の増殖を手伝うものがいる@ミシガン大学メディカルスクール

http://dx.doi.org/10.1016/j.immuni.2013.08.025
Myeloid-Derived Suppressor Cells Enhance Stemness of Cancer Cells by Inducing MicroRNA101 and Suppressing the Corepressor CtBP2.
MDSCは、マイクロRNA101の誘導ならびに補助抑制因子CtBP2の抑制によって癌細胞の幹細胞性を促進する




癌細胞のエサはブドウ糖!と主張するヒト↓たちは、T細胞のエサもブドウ糖だと知ったらどんな言いわけをするんでしょうか
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
 

肺癌を飢えさせる新しい方法

2015-10-26 06:06:19 | 
A new way to starve lung cancer?

Metabolic alterations in lung cancer may open new avenues for treating the disease

October 20, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151020121129.htm

科学者は肺癌の増殖を止める新しい方法を同定した
それは癌細胞が代わりの栄養源alternative sources of nutritionを使う能力を阻害することによる
この発見は、癌細胞が増殖を促進するために使う代謝プログラムを同定することによりなされた
10月15日にMolecular Cell誌で発表された今回の研究結果は、肺癌治療への新たな道を指し示すものになるだろう


癌細胞は何を『食べる』のか
What cancer cells 'eat'

癌細胞の代謝は通常の細胞とは非常に異なり、その急速な増殖により栄養の必要性は増大する
この必要性の増大はグルコースを主な栄養源として使うことにより満たされmet、癌細胞は通常の10倍から100倍の早さでグルコースを使う
しかしながら、グルコースが不足すると、癌細胞はその増殖と生存を維持するために代わりの栄養源を使うようスイッチを切り替えなければならない

カナダのマギル大学/McGill University、セントルイスのワシントン大学、ロシア・サンクトペテルブルグのITMO大学、イギリスのブリストル大学からなる研究グループは、グルコースが利用できなくなった時の癌細胞の応答を研究した
彼らが肺癌の最も一般的なタイプ(85-90%)の非小細胞肺癌/NSCLCを研究対象として選んで実験した結果、
グルコースが欠乏すると代わりにグルタミンへと『食事の好みpreferences』を変化させる癌細胞がいることを発見した

そして癌細胞は代謝を再プログラムするためにPEPCKという酵素を使う

「最近までPEPCKはグルコースを作る肝臓のような臓器でのみ研究されていた」
マギル大学の助教/Research Associateで筆頭著者のEmma Vincentは言う

「癌細胞の中にはPEPCKを発現するものがあり、これは癌細胞にグルタミンをエネルギーや増殖を支える構成成分building blocksへと変換する能力をもたらす
この代謝のスイッチを入れることでPEPCKは癌細胞を単に生き残れるようにするだけでなく、飢餓の状況下でも増殖を続けることができるようにする」

科学者たちは癌細胞のPEPCKを阻害することでマウスの腫瘍の成長を遅くできることを実証し、
さらに肺癌患者の組織でPEPCKレベルが上昇するというエビデンスも発見した


癌細胞の代わりの燃料
Alternative fuels for cancer cells

今回の研究は、癌細胞がグルコースや他の栄養素を求めて他と競合する生体organismにおいて
栄養の利用可能性availabilityが癌の進行に影響を与えることを示唆する

「我々の研究は、癌がストレスの多い状況下で増殖を刺激するための源として代わりの燃料を使えることを示す」
マギル大学のGoodman Cancer Research Centre生理学部で准教授/Associate ProfessorのRussell Jonesは言う

「この注目すべき柔軟性flexibilityは癌をさらに致命的にしているが、新たな治療への希望をもたらすものでもある
癌細胞が環境への適応のために使うメカニズムを理解することは治療への新たな可能性を生む」


http://dx.doi.org/10.1016/j.molcel.2015.08.013
Mitochondrial Phosphoenolpyruvate Carboxykinase Regulates Metabolic Adaptation and Enables Glucose-Independent Tumor Growth.
ミトコンドリアPEPCK/PCK2は、代謝的適応を調節し、グルコースに依存しない腫瘍の増殖を可能にする


Highlights
・腫瘍細胞の代謝の柔軟性はグルコースに依存しない細胞増殖を可能にする
・PCK2はグルコースが少ない状況下でも解糖系の中間生成物intermediatesの産生を助ける
・PCK2の発現はグルコースによって調節され、in vivoでの腫瘍の成長に必要である
・PCK2の発現は非小細胞肺癌/NSCLCで上昇する

※PCK1
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=PCK1

※PCK2
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=PCK2


Summary
癌細胞は栄養素が限られている状況での増殖に代謝を適応させる

今回我々は転写的ネットワーク-代謝的ネットワーク分析を組み合わせ、グルコースに依存しない腫瘍細胞の増殖を支える代謝経路を同定した
グルコースの欠乏は、クエン酸回路ならびに糖新生早期段階の再配線re-wiringを刺激し、グルコースに依存しない細胞増殖を促進した

グルコースの制限はグルタミンからホスホエノールピルビン酸/phosphoenolpyruvate/PEPへの合成を促進し、
それはミトコンドリアPEPカルボキシキナーゼ/PCK2の活性を介するものだった

これらの状況下でグルタミン由来のPEPは
通常はグルコースによって維持されている生合成経路(セリンとプリンの生合成)の燃料として使われた

PCK2の発現は、in vitroのグルコースが制限された状況下での腫瘍細胞の増殖の維持ならびにin vivoでの腫瘍成長の維持に必要だった
PCK2発現の上昇はヒトのいくつかの腫瘍タイプで観察され、NSCLC患者の腫瘍組織でも多かった

我々の研究結果は、PCK2の癌細胞代謝再プログラムにおける役割を定義して明らかにするdefine
この代謝再プログラムはグルコースに依存しない細胞増殖を促進し、代謝ストレスへの抵抗性をヒトの腫瘍にもたらす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/886e4bba2af90bbc4bda6ab12d6caae1
PKCζが欠けている腫瘍は代謝を再プログラムして代わりにグルタミンを用いることが可能である



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

Melecular Cell誌に今回のような論文が載ってもこういう人たちはなぜか認めようとしませんが
宗教か何かなんでしょうか
 



SNORA42は結腸直腸癌の進行を予測する

2015-10-25 06:59:08 | 
Newly identified biomarker may help predict colon cancer progression, personalize therapy

Study finds 'biomarker' in aggressive, migratory, treatment-resistant colorectal cancers that could help determine patient risk and treatment strategies

October 15, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151015211817.htm

ステージ2の結腸直腸癌の大半は手術のみで治癒するが、中には再発して死ぬ者もいる
SNORA42はそのような患者を見分けるバイオマーカーとして使える

このタイプのRNAは他のRNAよりも安定しているため、研究者は
素早く簡単にSNORA42のような分子を検出する非侵襲的な血液検査などが開発されると考えている


研究結果は次のようなものだった
・SNORA42の過剰発現は有意に疾患進行と関連
・過剰発現は癌細胞の素早い増殖、腫瘍形成、移動、浸潤、細胞死プロセスを生き残るといった能力につながる
・SNORA42を抑制するとこれらの影響は無効化されるreversed
・SNORA42の発現上昇は、結腸直腸癌患者の再発ならびに予後の悪さを予測するようだ


SNORAsは「核小体低分子RNA/small nucleolar RNAs」のことで、
現在は細胞運命ならびに様々な癌の発症における役割に関して認識されているだけのマイクロRNAサブセットである


http://dx.doi.org/10.1136/gutjnl-2015-309359
http://gut.bmj.com/content/early/2015/09/29/gutjnl-2015-309359.abstract
Clinical significance of SNORA42 as an oncogene and a prognostic biomarker in colorectal cancer.

small nucleolar RNAs (snoRNAs)

※nucleolar: 核小体。仁
 

腕のほくろを数えてメラノーマリスクを推測する

2015-10-25 06:24:23 | 
More than 11 moles on your arm could indicate higher risk of melanoma

October 19, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151019122234.htm


(もともと存在するほくろから生じるメラノーマはわずか20%から40%だが、ほくろの数は皮膚癌の最も重要なマーカーである)

キングス・カレッジ・ロンドンの研究者は、メラノーマのリスクを調べるために一般医/GPsでも使える新しい方法を調査している
研究者によると、腕のように体の『近い』場所のほくろの数を数えることで、全身のほくろの数を素早く確定できるという


もともと存在するほくろから生じるメラノーマはわずか20%から40%だが、ほくろの数は皮膚癌の最も重要なマーカーである
皮膚癌リスクはほくろが1つ増えるごとに2%から4%上昇すると考えられるが、
しかし全身のほくろの合計を数えるのはプライマリ・ケア/primary careの環境では時間がかかる

※primary care: プライマリ・ケア、初期治療。これを行うのは日本ではかかりつけ医、イギリスでは一般医/general practitioner;GP、アメリカでは家庭医family physician;FP/family doctor;FD/home doctorと呼ばれる


体の特定の箇所のほくろを数えることで、代わりにas a proxy全身の数を正確に推定しようと試みた過去の小規模な研究では、腕が最も予測できるという結果が出ている

ウェルカム・トラストの出資による今回の研究では、大規模なサンプルから最も有用な『代わり』の箇所を確定しようとした
さらに、皮膚癌を発症するリスクが最も高い人たちを予測することができる『カットオフ』の数も確認することも目的だった

※カットオフ値/cut-off value: 正常と異常/陽性と陰性の判定をする際に判別点となる値のこと


研究者は1995年から2003年までの3594人の白人女性の双子のデータを調べた(TwinsUK study protocol)
双子は熟練したナースによる肌のテストを受け、テスト内容は肌のタイプ、髪と目の色、そばかすfreckle、そして全身17箇所のほくろの数だった

この結果は次に、以前発表されたUKメラノーマ患者対照研究/case control studyの男性と女性の参加者による広範囲のサンプルで追試されたreplicated

分析の結果、右腕のほくろの数が最も全身の数を予測できることが判明した
右腕にほくろが7つより多い女性は全身のほくろが50より多いリスクが9倍高く、右腕で11より多いと合計が100を越える可能性が高かった
これはメラノーマの発症リスクが高まることを意味する

さらに、右ひじから上の部分が特に予測に役立つこともわかった
男性では足も全身の数と強く関連があり、背中でも同様だった

筆頭著者のSimone Riberoは言う
「今回の研究は以前の結果と一致するものだ
以前との違いは選択バイアスselection biasがない、より大規模な白人集団によるものであり、同様の健康なイギリス人集団の症例対照研究で再現されたということである
それによりこの結果はGPにとって、より有用usefulで適切relevantなものになる」


http://dx.doi.org/10.1111/bjd.14216
Prediction of high naevus count in a healthy UK population to estimate melanoma risk.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6832148feca41a85fb439af1e65884a6/
ほくろの数が50を上回る人はメラノーマを発症するリスクが上昇するが、ほくろが50未満の人もメラノーマに警戒すべき
 


TRIB1の立体構造の理解はAMLの治療につながる

2015-10-24 06:59:59 | 
3D image of cancer protein aids quest for new treatments

October 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151009155306.htm

Trib1はタンパク質の分解に関与する「足場タンパク質」で、多くのタンパク質からなる大きな複合体を形成して特定のタンパク質を分解させる

急性骨髄性白血病acute myeloid leukemia/AMLの中にはTrib1が多く産生されるものがあり、それにより通常は癌を抑制するはずのタンパク質が阻害される
Trib1の構造の理解はAMLの治療につながる可能性があるという

また、Trib1はpseudokinaseと呼ばれる『キナーゼ活性を失ったキナーゼ』である
シンクロトロンから生成される強力なX線ビームにより、Trib1はその祖先となるタンパク質と比較して大きな歪みcontortionsが生じたことが明らかになった
この構造変化がTrib1のキナーゼ活性を失わせ、足場として作用することを可能にしたとウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所のMurphy博士は言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.str.2015.08.017
Molecular Mechanism of CCAAT-Enhancer Binding Protein(CEBP) Recruitment by the TRIB1 Pseudokinase.


COP1ユビキチンリガーゼ
 

多発性骨髄腫はどのようにして生じるか

2015-10-24 06:07:02 | 
Scientists find evidence of how incurable cancer develops

October 16, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151016115440.htm

骨髄腫と診断された患者の全てが、初めに比較的良性の病気である『意味不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS)』を発症する

MGUSは高齢者にかなり一般的な状態であり、そこから骨髄腫に進行するのは約100人につき1人に過ぎない
しかし、どのMGUS患者が骨髄腫に進行するのかを正確に予測する方法は現在のところ存在しない


バーミンガム大学を中心とする研究チームがMGUSの人と骨髄腫患者、健康な人から提供された骨髄と血液サンプルを化学的に分析して比較したところ、
驚いたことに、MGUSの人の骨髄の代謝的な活性は健康な人とは全く異なっていたが、MGUSと骨髄腫との間ではまったくほんのわずかな違いしか存在しなかった
この発見は、無症候性のMGUSで代謝的に大きな変化が生じ、骨髄腫に進行した時には変化が生じないことを示唆する

健康なボランティアと、MGUSまたは骨髄腫との間には200を超える代謝的な違いが見られたが、MGUSと骨髄腫との間の比較では26の違いしか見られなかった
研究者は、この小さな変化が骨髄において鍵となる転換shiftを刺激driveし、それが骨髄腫の成長を支えるために必要なのだろうと考えている


http://dx.doi.org/10.1038/bcj.2015.85
Alterations in bone marrow metabolism are an early and consistent feature during the development of MGUS and multiple myeloma.

>必須アミノ酸のイソロイシンとスレオニンがMGUSと多発性骨髄腫患者の骨髄で有意に減少し、
>ヌクレオチドの分解産物であるヒポキサンチンとキサンチンも同様に減少していた (Figure 1b)

>必須アミノ酸の源は外因性であるため、この変化はMGUSとMMで骨髄を占める細胞による同化anabolismの増大を示唆し、
>それはこのニッチでのプラズマ細胞の増大を念頭に置いてbearing in mind予測される



※monoclonal gammopathy of unknown significance (MGUS): 意味不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症
(無症候で,形質細胞の腫瘍新生がまったく確認できない老年者において,電気泳動により診断される高ガンマグロブリン血症).


※monoclonal gammopathy of undetermined significance (MGUS): 意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症
(3g/100mL以下のパラプロテイン血症(λ軽鎖物質中心の異常なγグロブリン)で,発見時には明確な原因がないもの.)