How a metabolic pathway promotes breast cancer metastasis
April 6, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160406165425.htm

(Rab11bはメバロン酸経路の活性によりArf6(緑色)を細胞膜へ送る
細胞膜で活性化されたArf6は、癌細胞の浸潤と薬剤抵抗性を促進する
Credit: Hashimoto et al., 2016)
特定の乳癌で上方調節される代謝経路は、Arf6というシグナル伝達タンパク質を活性化することにより癌の進行を促進することがJournal of Cell Biology誌に報告された
オンライン版で先行発表された橋本あり/Ari Hashimotoたちによる今回の研究は、腫瘍でArf6シグナル伝達タンパク質の発現が高い乳癌患者にとってスタチンのような薬が有効な治療である可能性を示唆する
メバロン酸経路/mevalonate pathway (MVP) は、コレステロールから長鎖脂質基/long-chain lipid groupsまで広範囲な生物学的分子の材料を作り出す代謝経路である(長鎖脂質基はタンパク質を細胞膜に固定するために必要)
腫瘍抑制因子p53の変異はMVPを上方調節する可能性があり、すべてではないものの乳癌細胞系統のいくつかで浸潤性invasivenessを促進する
日本の札幌にある北海道大学・医学研究院の佐邊壽孝/Hisataka Sabeを中心とするチームは、MVPが浸潤性を促進するのはArf6シグナル伝達経路の活性化によるものであり、この経路は癌細胞が運動できる状態motile stateへと移行するのを促進することで癌細胞の浸潤と転移を高めるのだろうと推測した
それを受けて橋本ありたちが研究を進め、MVPがArf6の細胞膜へのリクルートを促進し、そこでArf6はチロシンキナーゼによって活性化されうることを明らかにした
この経路/MVPは脂質基lipid groupを作り出し、Rab11bというタンパク質を細胞膜に固定する
それによりRab11bはArf6が活性化される箇所である細胞膜へと送り届けることができるようになる
Rab11bを阻害すると乳癌細胞のMDA-MB-231という系統の浸潤性を低下させた
研究者たちはMDA-MB-231がArf6シグナル伝達タンパク質を大量に発現することを明らかにした
このArf6経路は乳癌細胞の薬剤抵抗性も加速する可能性がある
Rab11bの阻害、またはArf6経路の要素の一つEPB41L5の阻害は、細胞毒性のある2つの化合物へのMDA-MB-231の感受性を増大させることを橋本たちは発見した
スタチンはMVPの鍵となる酵素の一つ、HMG-CoA還元酵素/reductaseを阻害する
スタチンは元々コレステロールレベルを低下させるために開発されたが、潜在的な抗癌剤としても調査されてきた
しかしこれまでの臨床試験の結果は相反する混乱mixedしたものだった
橋本たちのデータは将来Arf6シグナル伝達タンパク質の発現が高い腫瘍の乳癌患者に焦点を合わせた研究努力をすることになるかもしれないという可能性を示唆する
そのような腫瘍は、Rab11bの活性を低下させる薬剤に影響されやすい可能性がある
事実、彼らはシンバスタチンがMDA-MB-231細胞の薬剤感受性を高め、この細胞がマウスに注入された際の転移能力を阻害することを明らかにした
「MVPの阻害は、特に他の薬剤と組み合わせた場合にArf6経路を過剰発現する癌細胞を殺すのに有効であるかもしれない」と佐邊は言う
この治療アプローチの開発は極めて重要でありうる
なぜなら、MVP経路の要素とArf6シグナル伝達タンパク質の発現が両方とも高い腫瘍の患者は長期生存率が低いことが示されたからだ
http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201510002
P53- and mevalonate pathway–driven malignancies require Arf6 for metastasis and drug resistance.
p53とメバロン酸経路をドライバとする悪性腫瘍は、転移と薬剤抵抗性にArf6を必要とする
薬剤抵抗性、転移、間葉系転写プログラム/mesenchymal transcriptional programは、乳癌悪性腫瘍の中心的な特徴である
しばしば腫瘍で過剰発現するGTPアーゼArf6は、上皮間葉転換/epithelial–mesenchymal transition(EMT)ならびに浸潤性の促進にとって極めて重要である
メバロン酸代謝経路/metabolic mevalonate pathway (MVP) は腫瘍の浸潤性と関連し、タンパク質をプレニル化prenylateすることが知られている
※prenylation: プレニル化。プレニル基やポリプレニル基を共有結合で付け加えること
ここに我々はMVPがArf6依存的な間葉系プログラムに必要であることを示す
MVP酵素の一つであるゲラニルゲラニル転移酵素II型/geranylgeranyl transferase II (GGT-II) と、その基質substrateであるRab11bは、Arf6の細胞膜への輸送に極めて重要である
Arf6は細胞膜で受容体チロシンキナーゼ/receptor tyrosine kinase(RTK)によって活性化される
それと一致して、MVPを介して腫瘍発生tumorigenesisをサポートすることで知られるp53突然変異は、GGT-IIならびにRab11bを介してArf6活性化を促進する
MVPとGGT-IIの阻害は癌細胞の浸潤と転移を阻止し、化学療法薬に対する抵抗性を低下させたが、しかしそれはArf6ならびに間葉系プログラムを過剰発現する細胞においてのみだった
Arf6ならびに間葉系タンパク質の過剰発現、そしてMVP活性の促進は、患者の生存率の低さと相関した
これらの結果は、MVPをドライバとする悪性腫瘍の分子的な基盤への洞察をもたらす
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
正常なLRRK2キナーゼはリン酸化により特定のRabタンパク質(Rab3/8/10/12)を不活化することで細胞内輸送を調節する
April 6, 2016
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160406165425.htm

(Rab11bはメバロン酸経路の活性によりArf6(緑色)を細胞膜へ送る
細胞膜で活性化されたArf6は、癌細胞の浸潤と薬剤抵抗性を促進する
Credit: Hashimoto et al., 2016)
特定の乳癌で上方調節される代謝経路は、Arf6というシグナル伝達タンパク質を活性化することにより癌の進行を促進することがJournal of Cell Biology誌に報告された
オンライン版で先行発表された橋本あり/Ari Hashimotoたちによる今回の研究は、腫瘍でArf6シグナル伝達タンパク質の発現が高い乳癌患者にとってスタチンのような薬が有効な治療である可能性を示唆する
メバロン酸経路/mevalonate pathway (MVP) は、コレステロールから長鎖脂質基/long-chain lipid groupsまで広範囲な生物学的分子の材料を作り出す代謝経路である(長鎖脂質基はタンパク質を細胞膜に固定するために必要)
腫瘍抑制因子p53の変異はMVPを上方調節する可能性があり、すべてではないものの乳癌細胞系統のいくつかで浸潤性invasivenessを促進する
日本の札幌にある北海道大学・医学研究院の佐邊壽孝/Hisataka Sabeを中心とするチームは、MVPが浸潤性を促進するのはArf6シグナル伝達経路の活性化によるものであり、この経路は癌細胞が運動できる状態motile stateへと移行するのを促進することで癌細胞の浸潤と転移を高めるのだろうと推測した
それを受けて橋本ありたちが研究を進め、MVPがArf6の細胞膜へのリクルートを促進し、そこでArf6はチロシンキナーゼによって活性化されうることを明らかにした
この経路/MVPは脂質基lipid groupを作り出し、Rab11bというタンパク質を細胞膜に固定する
それによりRab11bはArf6が活性化される箇所である細胞膜へと送り届けることができるようになる
Rab11bを阻害すると乳癌細胞のMDA-MB-231という系統の浸潤性を低下させた
研究者たちはMDA-MB-231がArf6シグナル伝達タンパク質を大量に発現することを明らかにした
このArf6経路は乳癌細胞の薬剤抵抗性も加速する可能性がある
Rab11bの阻害、またはArf6経路の要素の一つEPB41L5の阻害は、細胞毒性のある2つの化合物へのMDA-MB-231の感受性を増大させることを橋本たちは発見した
スタチンはMVPの鍵となる酵素の一つ、HMG-CoA還元酵素/reductaseを阻害する
スタチンは元々コレステロールレベルを低下させるために開発されたが、潜在的な抗癌剤としても調査されてきた
しかしこれまでの臨床試験の結果は相反する混乱mixedしたものだった
橋本たちのデータは将来Arf6シグナル伝達タンパク質の発現が高い腫瘍の乳癌患者に焦点を合わせた研究努力をすることになるかもしれないという可能性を示唆する
そのような腫瘍は、Rab11bの活性を低下させる薬剤に影響されやすい可能性がある
事実、彼らはシンバスタチンがMDA-MB-231細胞の薬剤感受性を高め、この細胞がマウスに注入された際の転移能力を阻害することを明らかにした
「MVPの阻害は、特に他の薬剤と組み合わせた場合にArf6経路を過剰発現する癌細胞を殺すのに有効であるかもしれない」と佐邊は言う
この治療アプローチの開発は極めて重要でありうる
なぜなら、MVP経路の要素とArf6シグナル伝達タンパク質の発現が両方とも高い腫瘍の患者は長期生存率が低いことが示されたからだ
http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201510002
P53- and mevalonate pathway–driven malignancies require Arf6 for metastasis and drug resistance.
p53とメバロン酸経路をドライバとする悪性腫瘍は、転移と薬剤抵抗性にArf6を必要とする
薬剤抵抗性、転移、間葉系転写プログラム/mesenchymal transcriptional programは、乳癌悪性腫瘍の中心的な特徴である
しばしば腫瘍で過剰発現するGTPアーゼArf6は、上皮間葉転換/epithelial–mesenchymal transition(EMT)ならびに浸潤性の促進にとって極めて重要である
メバロン酸代謝経路/metabolic mevalonate pathway (MVP) は腫瘍の浸潤性と関連し、タンパク質をプレニル化prenylateすることが知られている
※prenylation: プレニル化。プレニル基やポリプレニル基を共有結合で付け加えること
ここに我々はMVPがArf6依存的な間葉系プログラムに必要であることを示す
MVP酵素の一つであるゲラニルゲラニル転移酵素II型/geranylgeranyl transferase II (GGT-II) と、その基質substrateであるRab11bは、Arf6の細胞膜への輸送に極めて重要である
Arf6は細胞膜で受容体チロシンキナーゼ/receptor tyrosine kinase(RTK)によって活性化される
それと一致して、MVPを介して腫瘍発生tumorigenesisをサポートすることで知られるp53突然変異は、GGT-IIならびにRab11bを介してArf6活性化を促進する
MVPとGGT-IIの阻害は癌細胞の浸潤と転移を阻止し、化学療法薬に対する抵抗性を低下させたが、しかしそれはArf6ならびに間葉系プログラムを過剰発現する細胞においてのみだった
Arf6ならびに間葉系タンパク質の過剰発現、そしてMVP活性の促進は、患者の生存率の低さと相関した
これらの結果は、MVPをドライバとする悪性腫瘍の分子的な基盤への洞察をもたらす
関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
正常なLRRK2キナーゼはリン酸化により特定のRabタンパク質(Rab3/8/10/12)を不活化することで細胞内輸送を調節する