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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

スタチンが癌の転移と薬剤抵抗性に有効な理由

2016-04-18 06:06:53 | 
How a metabolic pathway promotes breast cancer metastasis

April 6, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160406165425.htm


(Rab11bはメバロン酸経路の活性によりArf6(緑色)を細胞膜へ送る
細胞膜で活性化されたArf6は、癌細胞の浸潤と薬剤抵抗性を促進する

Credit: Hashimoto et al., 2016)

特定の乳癌で上方調節される代謝経路は、Arf6というシグナル伝達タンパク質を活性化することにより癌の進行を促進することがJournal of Cell Biology誌に報告された
オンライン版で先行発表された橋本あり/Ari Hashimotoたちによる今回の研究は、腫瘍でArf6シグナル伝達タンパク質の発現が高い乳癌患者にとってスタチンのような薬が有効な治療である可能性を示唆する


メバロン酸経路/mevalonate pathway (MVP) は、コレステロールから長鎖脂質基/long-chain lipid groupsまで広範囲な生物学的分子の材料を作り出す代謝経路である(長鎖脂質基はタンパク質を細胞膜に固定するために必要)
腫瘍抑制因子p53の変異はMVPを上方調節する可能性があり、すべてではないものの乳癌細胞系統のいくつかで浸潤性invasivenessを促進する

日本の札幌にある北海道大学・医学研究院の佐邊壽孝/Hisataka Sabeを中心とするチームは、MVPが浸潤性を促進するのはArf6シグナル伝達経路の活性化によるものであり、この経路は癌細胞が運動できる状態motile stateへと移行するのを促進することで癌細胞の浸潤と転移を高めるのだろうと推測した

それを受けて橋本ありたちが研究を進め、MVPがArf6の細胞膜へのリクルートを促進し、そこでArf6はチロシンキナーゼによって活性化されうることを明らかにした
この経路/MVPは脂質基lipid groupを作り出し、Rab11bというタンパク質を細胞膜に固定する
それによりRab11bはArf6が活性化される箇所である細胞膜へと送り届けることができるようになる

Rab11bを阻害すると乳癌細胞のMDA-MB-231という系統の浸潤性を低下させた
研究者たちはMDA-MB-231がArf6シグナル伝達タンパク質を大量に発現することを明らかにした

このArf6経路は乳癌細胞の薬剤抵抗性も加速する可能性がある
Rab11bの阻害、またはArf6経路の要素の一つEPB41L5の阻害は、細胞毒性のある2つの化合物へのMDA-MB-231の感受性を増大させることを橋本たちは発見した

スタチンはMVPの鍵となる酵素の一つ、HMG-CoA還元酵素/reductaseを阻害する
スタチンは元々コレステロールレベルを低下させるために開発されたが、潜在的な抗癌剤としても調査されてきた
しかしこれまでの臨床試験の結果は相反する混乱mixedしたものだった

橋本たちのデータは将来Arf6シグナル伝達タンパク質の発現が高い腫瘍の乳癌患者に焦点を合わせた研究努力をすることになるかもしれないという可能性を示唆する
そのような腫瘍は、Rab11bの活性を低下させる薬剤に影響されやすい可能性がある

事実、彼らはシンバスタチンがMDA-MB-231細胞の薬剤感受性を高め、この細胞がマウスに注入された際の転移能力を阻害することを明らかにした

「MVPの阻害は、特に他の薬剤と組み合わせた場合にArf6経路を過剰発現する癌細胞を殺すのに有効であるかもしれない」と佐邊は言う
この治療アプローチの開発は極めて重要でありうる
なぜなら、MVP経路の要素とArf6シグナル伝達タンパク質の発現が両方とも高い腫瘍の患者は長期生存率が低いことが示されたからだ


http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201510002
P53- and mevalonate pathway–driven malignancies require Arf6 for metastasis and drug resistance.
p53とメバロン酸経路をドライバとする悪性腫瘍は、転移と薬剤抵抗性にArf6を必要とする

薬剤抵抗性、転移、間葉系転写プログラム/mesenchymal transcriptional programは、乳癌悪性腫瘍の中心的な特徴である

しばしば腫瘍で過剰発現するGTPアーゼArf6は、上皮間葉転換/epithelial–mesenchymal transition(EMT)ならびに浸潤性の促進にとって極めて重要である

メバロン酸代謝経路/metabolic mevalonate pathway (MVP) は腫瘍の浸潤性と関連し、タンパク質をプレニル化prenylateすることが知られている

※prenylation: プレニル化。プレニル基やポリプレニル基を共有結合で付け加えること


ここに我々はMVPがArf6依存的な間葉系プログラムに必要であることを示す

MVP酵素の一つであるゲラニルゲラニル転移酵素II型/geranylgeranyl transferase II (GGT-II) と、その基質substrateであるRab11bは、Arf6の細胞膜への輸送に極めて重要である
Arf6は細胞膜で受容体チロシンキナーゼ/receptor tyrosine kinase(RTK)によって活性化される

それと一致して、MVPを介して腫瘍発生tumorigenesisをサポートすることで知られるp53突然変異は、GGT-IIならびにRab11bを介してArf6活性化を促進する

MVPとGGT-IIの阻害は癌細胞の浸潤と転移を阻止し、化学療法薬に対する抵抗性を低下させたが、しかしそれはArf6ならびに間葉系プログラムを過剰発現する細胞においてのみだった

Arf6ならびに間葉系タンパク質の過剰発現、そしてMVP活性の促進は、患者の生存率の低さと相関した

これらの結果は、MVPをドライバとする悪性腫瘍の分子的な基盤への洞察をもたらす



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/735d3e7de5b11b1efa84ce4c20e84d37
正常なLRRK2キナーゼはリン酸化により特定のRabタンパク質(Rab3/8/10/12)を不活化することで細胞内輸送を調節する
 

コレステロール合成の阻害剤が前立腺癌に有効

2016-04-17 06:06:23 | 
Potential cholesterol-lowering drug molecule has prostate cancer fighting capabilities

April 14, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160414170034.htm


前立腺癌の標準的な治療には癌細胞上の受容体を標的とする化学療法が含まれる
しかしながら、化学療法の間に薬剤抵抗性の癌細胞が現れることがあり、その抗がん剤としての有効性を限定する

ミズーリ大学の研究者は、元々コレステロールを抑えるために開発された化合物が前立腺癌の進行を止めるだけでなく、癌細胞を殺せることを証明した

「コレステロールは動物の細胞膜の構成要素として働く分子である
腫瘍の細胞が増殖するとき、普通より多くのコレステロールが合成される」
生医科学の教授であるSalman Hyderは言う

「癌の患者はしばしば毒性の高い化学療法を受けるが、我々の研究では癌細胞のコレステロールに着目した
コレステロールの合成を減らすことで癌細胞は死ぬ可能性があり、
有害な化学療法の必要性を減らせるかもしれない」

前立腺癌の主な治療は癌細胞上のアンドロゲン受容体を標的とした化学療法薬の全身への投与などがある
通常のアンドロゲン受容体はテストステロンのようなホルモンに結合する

抗ホルモン療法、つまり化学的な去勢も前立腺癌への治療で使われる

「腫瘍の細胞がこれらの治療に反応するのは最初だけでほとんどは最終的に抵抗性を生じ、そこから前立腺癌細胞は増殖して転移するようになる」
Hyderは言う

「コレステロールも抗ホルモン療法への抵抗性の一因になりうる
なぜなら、コレステロールは腫瘍の細胞内でホルモンに変換されるからである
したがって、このようなコレステロール合成経路は前立腺癌の治療にとって魅力的な標的である」

Roche Pharmaceuticalsの開発した高コレステロール治療用の化合物であるRO 48-8071をヒトの前立腺癌の細胞に投与したところ、細胞増殖の抑制に有効であることが明らかになった
その後の研究でRO 48-8071が癌細胞を殺すことも明らかにされた

この情報を基にHyderたちはヒトの前立腺癌の細胞を持たせたマウスで研究結果をテストした
RO 48-8071を注入したところ、実際に腫瘍の増殖の抑制に有効であることが明らかになった

これらの研究結果が示唆しているのは、コレステロール低下薬は
一般的な化学療法薬と組み合わせることで前立腺癌に対する新たな治療アプローチになりうることだとHyderは言う


http://?
Cholesterol biosynthesis inhibitor RO 48-8071 suppresses growth of hormone-dependent and castration-resistant prostate cancer cells.
コレステロール生合成の阻害剤RO 48-8071はホルモン依存性・去勢抵抗性の前立腺癌細胞の増殖を抑制する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6089be975c0cf32996447e33323a6ece
癌はLDLのコレステロールをエサにして増殖する



関連サイト
http://pdbj.org/eprots/index_ja.cgi?PDB%3A1W6J
コレステロールの生合成経路でオキシドスクアレンからラノステロールを生成する反応においてステロイド骨格の形成がされる。この反応はオキシドスクアレンシクラーゼ(OSC、別名ラノステロール合成酵素)という酵素によって触媒されている。ゆえに、OSCを阻害することで血中のコレステロール濃度を下げることができる可能性がある。
ここに示すタンパク質の結晶構造は、OSCとその阻害剤であるRo 48-8071の複合体である。



関連サイト
http://www.nature.com/articles/srep09054/figures/1
酢酸→HMGCoA─[HMGCoAレダクターゼ(スタチンで阻害)]→メバロン酸→プレニル中間体→スクアレン─[スクアレンモノオキシゲナーゼ(テルビナフィンで阻害)]→2,3-エポキシスクアレン─[オキシドスクアレンシクラーゼ(Ro 48-8071で阻害)]→ラノステロール─[C-14脱メチル化酵素(イトラコナゾールで阻害)]→コレステロール

 

癌の転移を促進する糖尿病薬

2016-04-16 06:06:50 | 
Antioxidants in antidiabetic drugs may fuel cancer spread, mouse study shows

April 13, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160413151101.htm

以前の別の研究で癌の転移を促進する抗酸化剤の潜在能力が明らかにされたexposeが、
今回は糖尿病の特定の薬に含まれる抗酸化剤に関してである


マウスの癌モデルによる研究で、糖尿病薬のいくつかは既存の腫瘍、例えば結腸癌や肝臓癌が転移するのを促進することが明らかになった
もしヒトでも裏付けborne outがされれば、今回の研究結果はこの種の薬を癌のある糖尿病患者へ投与することに警告することになるだろう

動物を使った抗酸化剤の研究から
、その癌の増殖や転移を加速する潜在性についてのエビデンスが積み重なりつつあり注目を集めている
抗酸化剤とは活性酸素種から細胞を保護する化合物であり、酸化ストレスによって促進される疾患である糖尿病の治療で一般に使われている

糖尿病は様々な癌のリスクを上げると疑われており、糖尿病で癌にも罹患している患者の数は増えつつある
しかしながら、糖尿病の薬が癌にどのような影響を及ぼすのかはほとんど理解されていない


Hui Wangたちは一般に使われている糖尿病薬で抗酸化剤的な性質を持つ二つについて、結腸癌と肝臓癌のマウスモデルに与える影響を研究した

※DPP-4阻害薬(サクサグリプチンsaxagliptin, シタグリプチンsitagliptin)と、糖尿病性神経障害の治療薬(α-リポ酸lipoic acid)

研究の結果、それらの薬は癌の発症リスクは上げなかったものの、既存の腫瘍が転移するのを加速した
薬剤中の抗酸化剤は癌を酸化ストレスから保護するようであり、癌細胞が移動して浸潤する能力を加速したboost

細胞を使った実験から
それらの薬はNRF2というシグナル伝達経路を活性化することが明らかになった
この経路は転移を促進するタンパク質の発現の引き金を引く
事実、NRF2を削除するか阻害すると癌細胞の移動は著しく低下した
肝腫瘍の患者サンプルを分析したところ、NRF2の発現は腫瘍の転移と相関することが判明した

これらの結果から研究者は、抗酸化剤を含む薬剤の糖尿病の癌患者への安全性を評価するさらなる研究の必要性を呼びかけている
彼らの研究結果はマウスでのものであり、臨床的に応用する前にヒトで確認する必要があるだろう


http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aad6095
NRF2 activation by antioxidant antidiabetic agents accelerates tumor metastasis.
酸化を抑制する抗糖尿病薬によるNRF2の活性化は腫瘍の転移を加速する





関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/7375811853bf97f841338ba990da2cb5
抗酸化剤は癌の転移を促進するかもしれない



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/40e93d7550ffd29a7cf3d92a5aa7bcd2
抗酸化剤は悪性メラノーマの転移を加速する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/6fd0441cc2df81d550a8c112e278dab8
年老いたメラノーマ患者の治療にはN-アセチルシステインという抗酸化物質が有効かもしれない



関連サイト
https://www.sciencedaily.com/releases/2011/06/110605191506.htm
老化したメラノーマはPARP-1とNF-κBを発現してCCL2を分泌し、化学療法に抵抗しやすくなる

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21646373
Figure 8
DNAダメージ(PARP-1,ATM)→NF-κB→CCL2→浸潤↑,老化↓
 

癌はLDLをエサにする

2016-04-15 06:06:51 | 
Controlling 'bad cholesterol' production could prevent growth of tumors, study finds

Cancerous cells expand by controlling the body's lipid metabolism

April 8, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160408132457.htm

いくつかの研究で、肥満と癌とのつながりが確認recognizeされてきた
アルバータ大学・医科歯科学部の小児学教授であるRichard Lehnerは、腫瘍細胞がどのようにしてVLDLやLDLを取り込んでscavenge成長するのか、そして悪性細胞の成長を抑制するためにどのようなメカニズムが使えるのかを理解すべく研究を進めた
LDLは一般に『悪玉コレステロール』として知られている

Cell Reports誌で発表された今回の革新的な研究はLehnerのグループが2年以上かけてグラーツ医科大学(オーストリア)のGerald Hoeflerと協力して実施したものだ
今回の実験で集められたデータは、フィードフォワード・ループの存在を示唆している
つまり腫瘍は脂質を『構築材料building blocks』として使って成長するだけでなく、脂質産生を増大させるために宿主の脂質代謝をも調節するようだ

『悪玉コレステロール』は肝臓のLDL受容体に結合する
肝臓はコレステロールを分解し、そして胆汁として生体外へ分泌する
結合しなければ血液中に留まって排出されないままである

「癌細胞が増殖するためには脂質が必要だが、
その脂質を自分自身で作ることも、宿主から得ることもありうる
なぜなら癌細胞の増殖は非常に早いからだ」
Lehnerはそのように説明する

「腫瘍は肝臓に向かって『私が成長するためにはもっとコレステロールが必要だ』という合図を出す
肝臓はプログラムし直され、それらの脂質を分泌するようになる」

この過程の間で鍵となる要素の一つは、我々の誰もが持つタンパク質が通常よりも多くなると
コレステロールを排泄するためのLDL受容体の量が減少するということである
血液中からのコレステロールの除去を低下させるタンパク質に対して腫瘍が影響を与え、
癌がLDLをエサにするfeed offために残しておくようにさせる

この発見からLehnerとHoeflerは
興味深い仮説に至った
それは肝臓のLDL産生を最小化することで腫瘍への定常的な供給を枯渇させ、したがって増殖の可能性を低下させるだろうというものである

実際、彼らの前臨床モデルでの実験は成功したことが証明された
腫瘍の発達は抑制され、VLDL(LDLの前駆体)の産生ならびに肝臓からの受容体によるLDL取り込みに影響するタンパク質が調節されることが確認された

Lehnerたちの次のステップは、
コレステロール産生の低下を促進する既存の薬剤を、癌の患者が受けている治療に加えてテストすることになるだろう

「我々がテスト可能な承認済みの薬剤が既に存在する」
Lehnerは言う

「それらは癌治療のために開発されたものではなく、高コレステロール血症の患者のために作られていた
しかしそれを癌の患者でテストして改善するかを調べることになるのは興味深いことだ」


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.03.020
Tumor-Induced Hyperlipidemia Contributes to Tumor Growth.


Highlights
・リポタンパク質コレステロールは腫瘍の成長を支える
・腫瘍はVLDL/LDLレベルを増大させる
・Ces3/TGHを欠損させると、腫瘍による高脂質血症tumor-induced hyperlipidemiaが抑制されるが、それはPCSK9の阻害を介する
・腫瘍の成長はCes3/Tgh−/− マウスでは抑制される

Summary
BCR-Abl-形質転換された前駆体B細胞による腫瘍は、VLDL生産を刺激しつつVLDL/LDL代謝回転turnoverを鈍らせることにより、高脂質血症を誘導する

腫瘍による高脂質血症に腫瘍の進行が依存するかどうかを評価するために我々はVLDL産生を欠くノックアウト・モデルを利用した
このマウスはカルボキシルエステラーゼ3/carboxylesterase3(Ces3)、トリアシルグリセロールヒドロラーゼ/triacylglycerol hydrolase(TGH)を欠く

機構的に見ると、Ces3/Tgh−/−マウスにおける腫瘍成長の低下は、
腫瘍によって誘導されるPCSK9を介する 肝臓LDLR分解 ならびに LDL代謝回転の低下、それらの無効化による

 腫瘍→HNF1α→PCSK9↑─┤LDLR↓─┤LDL↑



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/03/150316102028.htm
PCSK9を阻害するEvolocumabはLDLを低下させる
この薬剤は心血管疾患を低下させたが、今回の試験では心血管疾患自体が少なかった



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/11/151110083034.htm
LDLを低下させるワクチン
PCSK9を標的とするモノクローナル抗体のAlirocumabとEvolocumabが最近FDAによって承認されたが、モノクローナル抗体は一般に非常に高価である
PCSK9を標的とする今回のワクチンは、抗体よりも効果的でしかも安価だ



関連サイト
http://diabetologistnote.blog119.fc2.com/blog-entry-349.html
セリンプロテアーゼであるPCSK9は、肝臓から血液中に分泌され、LDL受容体のEpidermal growth factor (EGF)-like repeat にbindする。細胞内にinternalization された後、 PCSK9とLDL受容体の結合は強くなり、LDL受容体が細胞外へリサイクルされるのを抑制する。2)
PCSK9のloss-of-function mutation は、低コレステロール血症となる。 gain-of-function mutation では、高コレステロール血症 となる。
REGN722は、PCSKに特異的なモノクローナル抗体で、LDL受容体のdegradation を抑制する1)。スタチンはLDL受容体遺伝子発現を増強するが、PCSK9の産生も促進する。1)



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?

 

癌細胞がマトリックスから離れて生き残る方法(補足)

2016-04-09 06:06:23 | 
Antioxidant and oncogene rescue of metabolic defects caused by loss of matrix attachment.
抗酸化物質と癌遺伝子はマトリックス付着の喪失によって引き起こされる代謝的な障害を救済する

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19693011
Nature. 2009
Joan Brugge et al.

Abstract
正常な上皮細胞は生存するためにマトリックスへの付着attachmentを必要とするが、腫瘍細胞は細胞外マトリックス(ECM)というニッチの外側で生き残ることが可能である
その能力は『足場への非依存性anchorage independence』の獲得に依存する

アポトーシスは、適切なECM付着を欠く細胞を消去するための最も迅速なメカニズムである
しかし最近の報告では、マトリックスを欠乏させた細胞においてアポトーシスが阻害されると、非アポトーシス的な細胞死プロセスが生存を妨げることが示唆されている


今回我々はECMから分離した乳腺上皮細胞mammary epithelial cellがグルコース輸送の喪失によりATP欠乏を引き起こすことを実証する

※グルタチオンの合成にはATPが必要、還元にはNADPHが必要

ERBB2(HER2)の過剰発現は、EGFRの安定化ならびにPI3K活性化を通じてグルコース取り込みを回復することによりATP欠乏から救う
そしてこの救出は、グルコースによって刺激される『抗酸化物質を生成するペントースリン酸経路(PPP)』を通じた流れに依存する


特に注目に値するのはnotably、このATP欠乏はグルコース取り込みによる救出がなくても、抗酸化物質の投与によって救出されうるということである

この救出は脂肪酸酸化の刺激に依存することが判明した
脂肪酸の酸化は、分離detachmentによって誘発される活性酸素種(ROS)によって阻害される


これらの発見の意義significanceは、乳腺腺房mammary aciniの管腔スペースにおけるマトリックス欠乏細胞でROSが増加するというエビデンス、そして抗酸化物質がマトリックス欠乏細胞の生存を助長し、足場に依存しないコロニー形成を促進するという発見によって支持された

これらの結果は、代謝活性の調節におけるマトリックス付着の重要性、そしてマトリックス環境の変化において細胞が生存するための思いがけないメカニズム(ATP生成からの抗酸化物質の回復によるメカニズム)を示す
 

癌細胞がマトリックスから離れて生き残る方法

2016-04-08 06:06:05 | 
Scientists find novel metabolic twist that drives cancer survival

April 6, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160406165419.htm


(Lei Jiang博士 (左) と Ralph DeBerardinis博士)


テキサス大学(UT)サウスウエスタンの小児医療センター研究所/Children's Medical Center Research Institute(CRI)の科学者たちは、通常の細胞にとっては致命的な状態を癌細胞が生き残るのを助ける新たな代謝経路を明らかにした

「もし腫瘍だけに存在する特異的な代謝経路を標的にできれば、癌を治療する効果的な方法につながる可能性があると長い間考えられてきた」
首席著者senior authorのRalph DeBerardinis博士は言う
彼はCRIと小児学部の準教授Associate Professorであり、CRIの遺伝代謝疾患プログラムのディレクターで、UTサウスウエスタンでは小児遺伝学・代謝学部のチーフでもある

「この研究では二つのまったく異なる代謝プロセスに関係があることを明らかにした
それらは癌の進行に関するストレスに癌細胞が適応するために特に必要である」


Nature誌のオンライン版で発表された今回の研究で、癌細胞は二つのよく知られた代謝経路の『代替版/alternate version』を使うことが明らかにされた
その二つの経路はペントースリン酸経路/pentose phosphate pathway(PPP)とクレブス回路/Krebs cycleで、それらは有害な酸化ストレスを生じる活性酸素種(ROS)から癌細胞を保護する

この研究はDeBerardinis博士のラボによる以前の研究、つまりクレブス回路が特定の状況では逆向きに進行して癌細胞を育てるnourishという論文を基にしている


ほとんどの正常な細胞と腫瘍細胞は、マトリックスという栄養が豊富な組織に付着attachすることで成長するとDeBerardinis博士は言う
「それらの細胞は成長を促進するシグナルを受け取るために、そして代謝を調節するためにマトリックスとの付着attachmentに依存し、細胞の成長と増殖、生存を支える」

マトリックスから分離detachmentすると突然ROSが増加し、それは通常の細胞にとっては致命的であるという
しかし、どうやら癌細胞はそれを回避する方法workaroundを持っているようである

マトリックスから分離した健康な細胞が破壊されるという性質は、ハーバード・メディカルスクールの生物学者であるJoan Brugge博士が2009年にNature誌に報告した画期的な研究によるものだ
興味深いことに、その同じ研究で癌を引き起こす潜在能力を持つ遺伝子である癌遺伝子oncogeneを正常な細胞に挿入すると、細胞は癌細胞のようにふるまうようになり、そして分離detachmentを生き残ることが発見された

本文にはこう書かれている
「形質転換していない胸部上皮細胞ではマトリックスからの分離はペントースリン酸経路(PPP)の活性低下につながりROSを促進するが、癌遺伝子の導入はPPPを維持し、マトリックスから分離している間の生存能力を保つ(2


DeBerardinis博士は言う
「CRIのディレクターであるSean Morrison博士のラボは2015年、Nature誌に別の研究を報告した
それによると、原発腫瘍から分離detachして体内の別の箇所に転移することが可能なメラノーマ細胞は、ROSのレベルを危険なほど高くならないように保つ能力を持つという」

この二つの研究結果が同じパズルのピースであるという前提premiseを元に研究をしていたDeBerardinis博士は、パズルの絵の決定的に重要crucialな部分が失われているように思われたと言う

何十年もの間、NADPHの主な供給源はPPPという経路であることが知られていた
NADPHはROSを捕捉scavengeするための還元当量reducing equivalent(電子のこと)を供給する
しかしながら、PPPはNADPHを細胞質で生成するが、ROSが発生するのは主にミトコンドリアである

「ROSを火事だとすれば、NADPHは水のようなものである
この水を癌細胞は炎にかけるdouseために使う」
DeBerardinis博士は言う

しかし、PPPから作られるNADPHがどのようにしてROSによるストレスに対処するのを助けるのか?
細胞内の完全に異なる場所で作られているのに?


Natureで発表された今回の研究で、癌細胞は『便乗piggybacking』システムを使うことでPPPにより作られる還元当量をミトコンドリアへと運ぶことが実証された

この展開movementには細胞質における通常とは違う反応を伴い、NAPDHから還元当量をクエン酸という分子へ移行transferする
これは『クレブス回路の逆反応reversed reaction』と同様であると博士は言う
(通常のクレブス回路/クエン酸回路ではイソクエン酸はNADPHと二酸化炭素を生じてα-ケトグルタル酸になるが、ここではその逆反応が起きる)

変換されたクエン酸はミトコンドリアに入ることでもう一つの経路を刺激し、結果として解放される還元当量からNADPHが生成されて酸化型グルタチオンを還元できるようになる
そこはまさにROSが作られる場所であり、癌細胞はマトリックスに付着することなく生き残って成長することが可能になる


「PPPとクレブス回路、そのどちらも代謝的な利益を癌細胞にもたらすことを我々は知っていた
しかし、それらが通常とは異なるやり方でつながっているとは思いもよらなかった」

印象的なことに、通常の細胞はこのメカニズムを使ってNADPHを輸送することはできず、高レベルのROSの結果として死んでしまった」

DeBerardinis博士はこの研究結果が培養細胞モデルを基にしたものであり、この経路の生体living organismsにおける役割をテストするためにさらなる研究が必要になるだろうと強調した

「我々はこの経路が転移に必要かどうかをテストすることに特にわくわくしている
なぜなら癌細胞は転移するために血液中を循環する際、マトリックスから分離した状態matrix-detached stateで生き残る必要があるからだ」


http://dx.doi.org/10.1038/nature17393
Reductive carboxylation supports redox homeostasis during anchorage-independent growth.
還元的カルボキシル化は足場に依存しない成長中の酸化還元恒常性を支える

細胞は細胞外マトリックス/extracellular matrix(ECM)への付着を通じて成長と生存の刺激を受け取る(1

悪性細胞のほとんどに見られる性質(2である『足場に依存しない成長/anchorage-independent growth』をするためには、癌細胞はECMによって誘発されるシグナルへの依存に打ち勝つ必要がある

ECMからの分離detachmentは活性酸素種(ROS)の産生促進と関連し、その理由はグルコース代謝が変化するためである(2


今回我々は、酸化還元の恒常性ならびに足場非依存性anchorage independenceへ順応する間の成長を支えるための、非古典的な経路を明らかにした

単層培養monolayer cultureからの分離detachmentと
足場に依存しない腫瘍スフィロイドspheroidsの成長growthは、
グルコースとグルタミン両方の代謝の変化を伴うことを我々は観察した

特に、スフィロイドではグルコースとグルタミン両方の酸化が抑制される一方で、
グルタミンからクエン酸への還元的形成reductive formationが促進された

還元的なグルタミン代謝は、細胞質のイソクエン酸脱水素酵素/isocitrate dehydrogenase-1(IDH1)に強く依存する
なぜならIDH1ヌル・ホモ接合体またはIDH1阻害剤を投与した細胞ではその代謝活動が抑制されるためである

※IDH: イソクエン酸 + NAD+ ←→ α-ケトグルタル酸 + CO2 + NADH2

低酸素は還元的代謝を誘導することが知られているが、この代謝活動は低酸素が存在しなくても生じた

そうではなくむしろ、IDH1はスフィロイドにおけるミトコンドリアのROSを軽減mitigateし、IDH1の抑制はスフィロイド成長を低下させた
これはミトコンドリアROSを必須とするメカニズムによるものだった

同位体isotopeによる追跡から、スフィロイドでは細胞質で還元的に産生されたイソクエン酸/クエン酸がミトコンドリアに入り、IDH2による酸化を含む酸化的代謝oxidative metabolismに参加することが明らかになった

これによりミトコンドリア内でNADPHが生成されて細胞がミトコンドリアROSを軽減できるようになり、スフィロイドの成長は最大化する

単層での成長monolayer growthにはIDH1とIDH2のどちらも必要ではなかったが、
スフィロイドではどちらか一つを欠損させるとミトコンドリアでのROSが増大してスフィロイドの大きさが抑制された
ミトコンドリアのクエン酸輸送タンパク質/citrate transporter protein(CTP)を削除しても同様の結果になった


合わせて考えると、このデータは足場への非依存性anchorage independenceへの適応にはクエン酸代謝における根本的な変化が必要であることを示す
これはIDH1依存的な還元的カルボキシル化(CO2を付加して-COOH基をつくること)によって開始され、
その結果としてミトコンドリアROSが抑制される


<コメント>
『逆向きクレブス回路』ではミトコンドリア内でIDH2によりα-ケトグルタル酸からイソクエン酸へと進むが、
今回の研究では細胞質でもIDH1により同じことが生じ、それを博士が似ていると言っているようだ

全体の流れとしては、マトリックスから分離した『足場非依存性/anchorage independence』の状態では、次のようになるという


 [ミトコンドリア] グルタミンからα-KGを生成→細胞質へ輸送

 [細胞質] グルコースからPPPを経て生成したNADPHを使って、IDH1がα-KGをイソクエン酸に還元→イソクエン酸/クエン酸をミトコンドリアに輸送

 [ミトコンドリア] IDH2がイソクエン酸をα-KGに酸化してNADPHを生成→酸化型グルタチオンを還元→ROS↓


気になったのが、クエン酸はcitrate transporter protein(CTP)によってミトコンドリアに輸送されるのかということ

本文を見ると、「SLC25A1によってコードされるCTPはミトコンドリアから細胞質へクエン酸を輸送することにより脂質生成に関与するが、細胞質からミトコンドリアへのクエン酸輸送も報告されている(14」とある



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小細胞肺癌が化学療法に抵抗する方法

2016-04-07 06:06:06 | 
Small cell lung cancer: Newly discovered clues to cause of chemoresistance

April 4, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/04/160404090713.htm

一般に小細胞肺癌は進行するまで発見されず、既に転移が形成されている
化学療法は初めこそ有効だが一年以内に癌は再発し、今度は化学療法に応答しなくなる
今回ウィーン医科大学外科部のGerhard Hamiltonを中心とする研究グループは、この化学療法への抵抗性がなぜ起きるのかを明らかにすることに何とか成功した
彼らの研究結果はCell Adhesion and Migration誌とTrends in Cancer誌で発表された


肺癌はオーストリアで最も一般的な癌の一つである
毎年4000人が肺癌で死亡し、その大半が長期のヘビースモーカーである

組織学的には肺癌の約85パーセントが非小細胞肺癌/Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC) であり、NSCLCは標的治療ならびに免疫療法にとてもよく反応を示す
残りの15パーセントは小細胞肺癌/Small Cell Lung Cancer (SCLC) で、SCLCは神経内分泌細胞から構成され、非常に急速に転移する
SCLCへの治療は細胞に有害な化学療法と放射線療法である
プラチナ系とエトポシドを組み合わせた化学療法に対して最初はとても良い反応を示すが、一年以内に抵抗するようになって再発する
さらなる治療としてトポテカンやアントラサイクリンが使われるものの応答率は低く、この段階になると患者は数ヶ月しか生きられないと予測される

この種の癌の特異性peculiarityは大量の癌細胞が血管へと移動することであり、血液に乗って循環し、体内のどこか別の箇所に転移する
一年前、Gerhard Hamilton率いる研究グループはRobert Zeillinger(婦人科学・産科学部の分子腫瘍学グループ)、Maximilian Hochmair (オットー-ワーグナー病院)と協力して、このような循環する腫瘍細胞(CTC)を永続的に培養することに何とか成功した
そこから明らかになったのは、個々の循環腫瘍細胞は化学療法薬に感受性ではあるものの、全てのケースで巨大な集合体(がんクラスター/cancer cluster)を自発的に形成し、それは酸素が乏しい中心部を持つということだった
がんクラスターは化学療法に抵抗性だが、その理由はまず薬剤が十分に浸透しないためであり、加えて酸素不足のため細胞の多くが休止状態dormantになるためだ
この酸素の欠乏は放射線療法も有効ではないことを意味する
なぜなら、酸素がなければ癌細胞を破壊するために必要な酸素ラジカルも存在できないからだ

研究者たちは今回の研究で、化学療法・放射線療法への抵抗性は循環腫瘍細胞(CTC)によるクラスターの形成が原因であるということを革新的な証拠を提供する
治療に関して言うとas far as treatment is concerned、一回目の化学療法first cycleは腫瘍容量と循環癌細胞の大部分を破壊するが、循環癌細胞がクラスターを形成し、結果としてその後の再発につながることを今回の研究は意味する

したがって、これらのがんクラスターの形成を阻止するか破壊するための、全く新しい治療アプローチが開発されなければならない
小細胞肺癌は悪性転移癌モデルを踏襲followするものであり、ゆえに今回の研究結果は他の悪性疾患に十分等しく当てはまりうるだろう


http://dx.doi.org/10.1080/19336918.2016.1155019
Small cell lung cancer: circulating tumor cells of extended stage patients express a mesenchymal-epithelial transition phenotype.
小細胞肺癌: 長期間の/進行したステージの患者の循環腫瘍細胞は、間葉上皮転換の表現型を示す


ABSTRACT
小細胞肺癌(SCLC)は、悪性の増殖、早くからの転移、進行した段階での予後の悪さが顕著である

SCLCでは循環腫瘍細胞(CTC)が異常に多く、そこから我々は永続的なCTC培養の確立に初めて成功した

CTCは癌幹細胞(CSC)と上皮間葉転換(EMT)の性質を持つと推測されているが、腫瘍が遠い場所at distal sitesで血管外に遊出extravasationすることは上皮的な性質(E)が特徴である

我々はSCLCの二つのCTC細胞系統(BHGc7とBHGc10)、そして原発腫瘍と転移に由来するSCLC細胞系統を、多能性幹細胞マーカーと成長因子の発現に関して分析した
E-カドヘリンとβ-カテニンの発現はフローサイトメトリーflow cytometryで決定した


分析の結果、幹細胞と関連するマーカー(SOX17、α-フェトプロテインfetoprotein、OCT-3/4、KDR、Otx2、GATA-4、Nanog、HCG、TP63、Goosecoid)は、二つのCTC系統では発現していなかった

※fetoprotein: フェトプロテイン、胎児タンパク質。正常胎児の血清中に多く含まれるタンパク質

対照的に、HNF-3β/FOXA2、SOX2、PDX-1/IPF1、E-カドヘリンに関しては発現が高かった

E-カドヘリンの発現は、二つのCTC細胞系統と、そしてCTC以外では胸膜pleuralの浸出液effusionに由来する細胞系統(SCLC26A)と、骨転移に由来する細胞系統(NCI-H526)に限定された

したがって、進行extendedしたSCLC患者から確立されたこれらのCTCは、上皮表現型epithelial phenotypeを抑制するような幹細胞マーカーを欠く

代わりにそれらは、間葉上皮転換(MET)と一致するE-カドヘリンを高レベルに発現し、巨大な腫瘍スフィアtumorosphereを形成する
このようなスフィア形成はおそらく第一線first-lineの化学療法による選択圧selection pressureに応じて生じたものである

HNF-3β/FOXA2ならびにPDX-1/IPF1の発現は、インスリン/IGF-1受容体、IGF結合タンパク質(IGFBP)への成長因子依存growth factor dependenceと関連があるようだ



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ea0de8563d5148bd004a897b9905082e
ウィーン医科大学外科部の研究チームが小細胞肺癌の循環腫瘍細胞を培養することに成功
 

二つの必須アミノ酸が膠芽腫の進行に重要

2016-04-04 06:06:23 | 
Brain cancer: Two essential amino acids might hold key to better outcomes

March 31, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160331134306.htm

二つの必須アミノ酸の代謝的な変化は最も一般的で致命的なタイプの脳腫瘍の発症を促進することが、オハイオ州立大学総合がんセンター、アーサーG.ジェームズがん病院、リチャードJ.ソロベ研究所(OSUCCC-James)の新たな研究により明らかになった
この研究結果は悪性腫瘍を治療して進行を抑え、その病巣の広がりをより正確に指摘するための新しい方法を示唆する

膠芽腫/glioblastoma(GBM)の細胞では鍵となる重要な酵素が失われるためにメチオニンとトリプトファンという二つの必須アミノ酸が異常な代謝をされることを、この研究は示す
メチオニンの代謝の変化は癌遺伝子の活性化につながり、トリプトファンの代謝の変化は膠芽腫の癌細胞を免疫細胞から発見されないように隠す
それらの変化は共に腫瘍の進行と癌細胞の生存を促進する

「我々の研究結果は、食事からのメチオニンとトリプトファンの摂取を制限することが腫瘍の進行を遅くし、治療の結果改善を助ける可能性を示唆する」
筆頭著者でOSUCCC-James研究者、放射線腫瘍学Radiation Oncologyの特任助教research assistant professorであるKamalakannan Palanichamy, PhDは言う
この研究はClinical Cancer Research誌で発表される

「これらの異常な調節を受けるアミノ酸の代謝産物がどのようにして癌遺伝子タンパク質を活性化するのかについて我々はもっとよく理解する必要があるものの、我々の興味深い発見は膠芽腫のこれまでにない新しい治療標的を示唆する」
主任研究員principal investigatorであり、OSUCCC放射線腫瘍学の教授でもあるArnab Chakravarti, MDは言う

「例えば、二つの代謝経路における失われた酵素を回復することは、発癌性oncogenicのキナーゼを不活化し、免疫応答を活性化することによって、腫瘍の進行を遅らせて悪性度を低下させる」

Chakravartiはさらに次のことに言及する
膠芽腫glioblastomaの細胞は通常の神経膠腫gliomaの細胞よりも早くメチオニンを取り込むため、陽電子放射断層撮影/positron emission tomography(PET)でメチオニンをトレーサーtracerとして使う『MET-PET』が膠芽腫をより厳密に検出して画像化するのを助け、手術での正確な除去や放射線療法の計画に役立つ可能性がある(現在MET-PETは実験的な画像化技術として開発中である)

膠芽腫は年間1万人以上が新たに診断され、平均生存期間は12ヶ月から15ヶ月という短さであるため、より効果的な治療法が緊急に必要である


アミノ酸はタンパク質の材料である
トリプトファンとメチオニンは必須アミノ酸であり、体内で作れないために食事で摂取する必要がある
必須アミノ酸の欠乏は深刻な病気や死につながりうる
トリプトファンとメチオニンが豊富な食品としてはチーズ、ラム肉、牛肉、豚肉、鶏肉、七面鳥turkey、魚、卵、ナッツ、大豆などがある


PalanichamyとChakravartiたちが今回の研究を実施する際に使用した細胞は、患者の腫瘍に由来する初代primary膠芽腫の細胞系統が13種類、商業的に利用可能な膠芽腫の細胞系統が4種類、そして正常なヒトのアストロサイトastrocyteである
代謝の分析は液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせて行った

鍵となる技術的な発見には次のようなものがある
・膠芽腫細胞は通常のヒトアストロサイトよりも、5倍から100倍多くメチオニンを蓄積させる
・メチオニンを欠乏させた膠芽腫細胞は、40から60パーセント増殖が遅くなった
・異常abnormalなメチオニン代謝は異常aberrantなメチル化と遺伝子サイレンシングにつながる
・トリプトファン経路におけるキヌレニン異化酵素の補強reinforceすると、免疫細胞は膠芽腫細胞を認識して破壊できるようになる可能性がある


http://dx.doi.org/10.1158/1078-0432.CCR-15-2308
Methionine and Kynurenine Activate Oncogenic Kinases in Glioblastoma, and Methionine Deprivation Compromises Proliferation.
メチオニンとキヌレニンは膠芽腫における発癌性キナーゼを活性化し、メチオニンの欠乏は増殖を損なう

Abstract

目的:
我々は膠芽腫/glioblastoma(GBM)のより効果的で新しい治療法を開発するための潜在的に標的可能なバイオマーカーを明らかにすることを目指してaim、GBMの分子的なシグネチャーsignatureをもっと理解する目的goalで、メタボロミクスを基にしたアプローチを利用した


実験デザイン:
初代primaryGBM細胞ならびに確立したGBM細胞系統、GBM組織、正常なヒトアストロサイトからの代謝産物を発見して確認するために、液体クロマトグラフィーと質量分析(LC-MS/Q-TOFならびにLC-MS/QQQ)とを組み合わせて使用した

※液体クロマトグラフィー-質量分析/liquid chromatography-mass spectrometry(LC-MS)
※四重極-飛行時間型/quadrupole-time of flight(Q-TOF)
※トリプル四重極/triple quadrupole(QqQ)

※QqQ: それぞれ、Q1、q2、Q3を表す。衝突質collision cellのq2を、四重極質量分析計のQ1とQ3で挟んだ形態。『開発当初、衝突室内のイオンガイドとして四重極が用いられたことからトリプル四重極質量分析計と呼ばれている


結果:
GBMと正常なヒトアストロサイト/normal human astrocytes(NHAs)を比較した結果、
トリプトファン、メチオニン、キヌレニンkynurenine、5-メチルチオアデノシンを『異なって調節される代謝産物/differentially regulated metabolites(DRMs)』として同定した

NHAsとは異なり、GBM細胞は食事によるメチオニンに依存し、それは増殖・コロニー形成・生存、そして調節を外れたメチローム/deregulated methylome(SAM:SAH比)を維持するためである

※S-アデノシル-L-メチオニン/S-adenosyl-L-methionine(SAM): メチル基の供与体として重要。活性化メチオニン。アデノシン + ホモシステイン + メチル基

※S-アデノシルホモシステイン/S-adenosylhomocysteine(SAH): SAMがメチル基を供与した結果生成される、アデノシンとホモシステインの化合物。SAMによるメチル化を強力に阻害する。


メチルチオアデノシンホスホリラーゼ/methylthioadenosine phosphorylase (MTAP) を欠くGBM細胞において、MTAPを遺伝子導入transgeneして発現させてもメチオニンへの依存は変化しなかったが、
in vivoでは腫瘍増殖を抑制した

キヌレニン代謝酵素の『キヌレニンモノオキシゲナーゼ/kynurenine monooxygenase』と『キヌレニナーゼ/kynureninase』のどちらか、または両方を欠損させるとキヌレニンの蓄積を促進し、これはGBM細胞の免疫回避を引き起こす

我々は同定されたDRMsをシリコン上で分析しin silico analysis、GBMにおける腫瘍発生tumorigenesisを促進する 重要な発癌性キナーゼの活性化を位置づけたmap

in vitroでGBM細胞にDRMsを外から加えた結果、癌遺伝子が活性化し、それと同時にセリン/スレオニンのホスファターゼであるPP2Aが下方調節されることを我々は実証し、今回の研究結果を確認した

結論:
我々はメチオニンとキヌレニン経路に関与する4つの代謝産物シグネチャーをGBMの促進と維持に関連付けた
まとめると、我々のデータはこれらの代謝産物とそれらそれぞれの代謝経路がGBMの潜在的な治療標的として働くことを示唆する



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/e65705a1ccfe6b399f3302b25b0febed
ホリデーターキーを分解する経路はトリプルネガティブ乳癌の転移に燃料を供給する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1076b7b9301555690fbf94b0c40a7e30
科学者たちはメチオニンの欠乏が多くの種類の癌の増殖を阻害することを長い間知っていた



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

癌細胞は本当にグルコースで増殖するのか?

2016-04-02 06:06:51 | 
Living off the fat of the land

Do cancer cells synthesize parts for new cells or scavenge them from the environment?

March 31, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160331082845.htm


(代謝は複雑だが、ワシントン大学セントルイス校Pattiラボの大学院生Cong-Hui Yaoは癌細胞の代謝に関する驚くべき発見を説明する

Credit: Patti Lab)

※live off: ~を食べて生きる、~に頼って生活する
※live off the land: その土地のものを食べてやっていく
※live off the fat of the land: ぜいたくな暮らしをする(創世記45:18)
The fat of the land


癌細胞はその制御不能の増殖をする能力によって定義され、一つの細胞が二つ、三つ、たくさんと急速に増えていく

「これは興味深いプロセスだ」
ワシントン大学セントルイス校、化学部で準教授associate professorのGary Patti, PhDは言う

「ほんの数日ごとにあなたのコピーを作り出すことを想像してみるといい
ただ単に一つのものを維持するのと比べてどれだけ大変だろうか?
過去20年間、人々は細胞がどうやってそうするのかについて本当に興味深く思ってきた」


80年以上もの間ずっと支配的だった考え方は癌細胞が血液中のグルコースを『がぶ飲み/soaking up』してその爆発的な増殖を促進するというものだった
癌細胞はグルコースからエネルギーと炭素原子を得て細胞の成分を複製して量産crank outするとされていた
それほど多くのグルコースを要求take upする理由の一つは脂質lipid/脂肪fatを作るためであり、脂質は細胞膜を組み立てるために使われる

1970年代から80年代にかけて、科学者たちは放射能で目印をつけたグルコースを使った研究により腫瘍細胞中の事実上全ての脂質は細胞が外側の環境から取り込んだグルコースから作られることを示した
この発見は、表面的seeminglyには、『グルコース仮説glucose hypothesis』を裏付けるcorroborateものとされた

この仮説は『道理にかなっている』
しかし、他の多くの『道理にかなっている』ことと同様、それは正しくないのかもしれない

Pattiのラボは別の研究を遂行する内に、増殖する線維芽細胞がその脂質のほとんどをグルコースから作るのは標準的な細胞培地culture mediumで育てられた場合のみであることを発見した
この培地は栄養は豊富だが、脂質には乏しい

研究者が培地に脂質を加えて典型的な血液中の濃度まで上昇させたところ、細胞は脂質を合成するよりもむしろ、培地から脂質を取り込むことを好むようになった
そしてこの状態で急速に増殖する細胞は、分裂していない細胞よりもグルコースを取り込まなかった

この効果は線維芽細胞の培養中に発見されたものだ
線維芽細胞は別の線維芽細胞に触れるまで分裂してから増殖を止めるため、増殖する細胞と静止した細胞の代謝を比較することが可能である
この『脂質効果lipid effect』に興味をかき立てられた彼らがそれを二つの癌細胞系統、あの有名なHeLa細胞と肺癌の細胞系統H460で調査したところ、それらは脂質の濃度に対して強くはなかったものの同様に反応したのである

Cell Chemical Biology誌のオンライン版で2016年3月31日に発表された今回のびっくりさせるstartlingような結果は、グルコース仮説に基づいた癌の研究と治療に対して異議を唱えるものである

「組織レベルsystems levelでグルコースの代謝について考察することが可能になったのは、ほんのつい最近のことである」
Pattiはメタボロミクスという新たな分野について言及してそのように述べる

「これまで、あらゆる可能性としての代謝経路を通じてグルコースを追跡する技術はまったく存在しなかった」


グルコースの取り込み画像技術は正確なのか?
Are glucose-uptake images accurate?

Pattiは言う
「グルコース取り込みの増大が癌細胞の代謝的な特徴であるという考えは我々の思考に深く根付いてembeddedおり、臨床的にどのようにして癌を診断して治療を管理するのかに関しての基礎となっている」

FDG-PETスキャンによる診断では患者は少量のグルコース・アナログを投与される
これは放射性の原子を含んでいるためにスキャンすることで様々な臓器がグルコースを取り込む様子を表す画像を生成することが可能であり、画像上の明るい点が潜在的な癌を示すとされる

しかしPattiらの研究はこれらのスキャン画像の感度sensitivityに問題を提起する

「おそらく癌細胞はグルコースから全てを作るよりもむしろ、血液中の脂肪に頼って生きることが可能である
そして肥満の症例や糖尿病患者のように血液中の脂質濃度が通常よりも高い場合は特に」

これにより癌細胞はレーダーの下をかいくぐり、偽陰性false negativeにつながる可能性はあるだろうか?



抗癌剤はグルコース代謝を標的にすべきか?
Should cancer drugs target glucose metabolism?

グルコース仮説を元に、科学者たちはグルコース代謝または脂質合成のどちらかを阻害するという癌の治療法の開発に打ち込んできたdevote
しかしもしその憶測assumptionが間違っていたら、グルコースの代謝を阻害することは細胞の増殖を遅くするだろうか?
その細胞は周りから脂質を取り込むscavengeことは全くないのだろうか?

この可能性を検証すべく、彼らは細胞系統に2-デオキシ-D-グルコース(2DG)というグルコース分子を与えたdose
2DGはD-グルコースの2位のヒドロキシル基(OH-)が水素原子で置き換えられたもので、グルコースを分解する解糖系という経路の途中で停止する
しかし彼らが培地に脂質も加えたspikeところ、2DGの癌細胞の増殖を遅くする効果は抑制されることが明らかとなった

この発見はグルコースを標的にして癌細胞を殺すという戦略の背後にある推論reasoningに疑問を投げかけるものだとPattiは言う
2DGは現在臨床試験中である


脂質の取り込みを標的にするのはどうか?
What about targeting lipid uptake?

もしPattiラボでの研究がグルコース取り込みを阻害する薬剤に対して望んだようには癌細胞が反応しない可能性を示唆するとすれば、それはまた脂質取り込みの阻害が有効である可能性も示唆する

この考えを検証するために彼らは培地にSSOという薬剤を加えたdose
SSOは細胞膜内の脂質トランスポーターに対して不可逆的に結合して脂質取り込みを阻害する
そしてSSOは実際、三つの細胞系統全てで成長と分裂を遅くした

我々はおそらく脂質取り込みの阻害についてもっと考えるべきだとPattiは言う


培養された細胞は人工物である
Cells in culture are artifacts

「最後の論点として、」Pattiは言う「そしてこれはほとんどの人が受け入れると私は考えるが、細胞培養は高度に人工的な系highly artificial systemsであり、それはしばしば紛らわしく、誤解させるmisleading結果をもたらすということだ
細胞培養による研究結果が動物モデルや患者にトランスレートされるかどうかは本当に不確かであり、多くの信頼を置くのは難しいものだ」

「今回の場合、誰もが使う標準的な細胞培地の脂質濃度が、実際には培養中の細胞がすることを歪めている
たとえ我々全てが同じ細胞培養を同じように使っても、
その結果を臨床に応用できると決めてかかるassumeのは危険である」


http://dx.doi.org/10.1016/j.chembiol.2016.03.007
Exogenous Fatty Acids Are the Preferred Source of Membrane Lipids in Proliferating Fibroblasts



Highlights
・外からのパルミチン酸は、3つの細胞系統において新規合成よりも優先されるpreferred
・増殖する線維芽細胞はβ酸化を減少させ、複雑な脂質の合成を支える
・増殖する線維芽細胞においてグルタミンは脂質の炭素源として寄与しない
・脂肪の取り込みを阻害すると、3つの細胞系統において細胞の増殖は抑制される

Summary
脂肪酸の取り込みを阻害すると、線維芽細胞、Hela、H460という3つの細胞系統の増殖が低下した一方、
培地に外からパルミチン酸を添加するとグルコース取り込みは減少し、それらの細胞は解糖系の阻害に対して感受性が低下した



関連サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/2-%E3%83%87%E3%82%AA%E3%82%AD%E3%82%B7-D-%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9
2-DGは細胞成長を妨げるため、腫瘍治療薬としても使用が提唱されており、実際に臨床試験が行なわれている[5]。
最近の臨床試験は、2-DGは63 mg/kg/dayの用量まで許容されるが、この用量で観察された(略)患者のがんの大半(66%)が進行した事実は、この試薬のさらなる臨床での使用の実現可能性について疑問を投げ掛けている[6]。



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d109981cdca4635fe2245c2022c6b9b0
増殖する細胞で質量の大部分を占めるのはグルコースよりもアミノ酸である




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/17ab1b4e5f2eff6ecb28d44514cb3e35
培養細胞はグルコースから乳酸への変換は増大したが、
肺腫瘍ではグルコース炭素のクエン酸回路への寄与は腫瘍形成に必須である



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2013/12/131220121046.htm
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/02/140227191211.htm
アンドロゲンは代謝のマスター調節因子であるAMPK-PGC-1αシグナル伝達カスケードを制御して前立腺癌細胞の増殖を増大させる
前立腺癌細胞は解糖系というブドウ糖分解プロセスの増大だけでなく、脂肪代謝の上昇によってもアンドロゲンに応答する

これまで多くの研究が癌の解糖系に焦点を合わせてきたが、研究者は『すべての癌がブドウ糖だけに依存するわけではないことが明らかになってきている』という
我々のデータはアンドロゲンがミトコンドリア機能を全体的に増大させることを示す



参考サイト
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3545.html
>実は、がん細胞はブドウ糖しかエネルギー源として使えないことがわかっているのです。

は?
 

酸素が不足すると癌幹細胞が増加する理由

2016-03-31 06:06:44 | 
How cancer stem cells thrive when oxygen is scarce

March 28, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160328100159.htm

ジョンズ・ホプキンズ大学の科学者たちは、今回のヒトの乳癌細胞とマウスを使った研究は低酸素の状態で特定の癌幹細胞がどのようにして育つのかを説明するという
癌幹細胞は化学療法に抵抗し、さらに腫瘍を転移を促進する傾向があり、そのような細胞の増殖は治療成功への主な障害であると考えられている

胚性幹細胞と乳癌幹細胞の両方ともが低酸素状態で増殖が促進され、それはどちらも同じ生化学的なイベントの連鎖を通じてであることが新しい研究から示唆された
これは障害を通り抜けて成功へと向かう道筋を示すだろう

「まだ多くの疑問が残っているが、しかし進行したヒトの乳癌で見られるような酸素の不足した環境が癌幹細胞を育てる最適な条件nurseryとして働くことを今や我々は理解している」
Gregg Semenza, M.D., Ph.D.は言う
彼はジョンズ・ホプキンズ・キンメルがんセンターの一員であり、教授職のC. Michael Armstrong Professor of Medicineでもある

「それは我々に薬剤の標的をいくつかもたらし、ヒトの癌におけるその脅威を低下させる」

研究の概要はPNASのオンライン版で3月21日に発表される



Semenzaによると科学者たちは低酸素の環境が腫瘍の増殖に影響を及ぼすことを長い間知っていたが、進行した腫瘍ではパラドックスparadoxが存在するという
「悪性の癌には酸素が不足して癌細胞が死に絶えるような領域が含まれるが、このような癌の患者は一般に予後が最も悪い
我々の新たな研究結果は低酸素状態が実際には特定の癌幹細胞の増殖を促進し、それは胚性幹細胞が使うのと同じメカニズムを通じてであることを教える」

全ての幹細胞は未成熟な細胞であり、無限に増殖する能力を持つことで知られている
幹細胞からは特定の細胞タイプへと成熟する前駆細胞が生じ、胚が成長する間に人体の組織を形成し、生涯を通じて生体の組織を補充し続ける
しかし腫瘍で見られる癌幹細胞はそれら胚性幹細胞と同じ特性attributeを使い、歪曲twistさせて癌の生存を促して維持する
Semenzaによると、「化学療法は腫瘍内の癌細胞の99パーセント以上を殺すかもしれないが、癌幹細胞というわずかな集団を殺すことには失敗する。この癌幹細胞は後の再発と転移の原因となる」という

「今回の研究ではこれらの細胞の『アキレスのかかと』を見つけようと努力した
もし癌幹細胞の幹細胞状態を捨てさせることができれば、それらはもはや腫瘍を再び増やし続ける力を持たないだろう」


彼らの研究を助けたのは、我々が呼吸する大気には21パーセントの酸素が含まれるのに対して健康な胸部の組織では約9パーセントであり、乳癌の腫瘍内ではわずか1.4パーセントしか酸素が含まれていないという知識だった
最近の研究で低酸素状態がHIF(hypoxia-inducible factor/低酸素誘導因子)というタンパク質ファミリーのレベルを増大させることが示された
HIFは何百という遺伝子のスイッチを入れ、その中にはNANOGという細胞を幹細胞化させる遺伝子が含まれる

 低酸素→HIF→NANOG mRNA↑→幹細胞化

さらに、胚性幹細胞embryonic stem cellの研究からNANOGタンパク質レベルはメチル化という化学プロセスによって低下しうることが明らかにされた
この場合のメチル化はメッセンジャーRNA(mRNA)というタンパク質の前駆体にメチル基を付加するものである
Semenzaによるとこのメチル化はNANOGのmRNAを破壊してタンパク質が作られないようにするという
それは胚性幹細胞に幹細胞状態を放棄abandonさせ、様々なタイプの細胞へと成熟させる

 メチル化─┤NANOG mRNA


癌幹細胞の再生には胚性幹細胞が使うのと同様の一連のイベントが含まれるかどうか、そしてそのプロセスが酸素レベルによって影響を受けるのかを調べるため、Semenzaたちは二種類の乳癌細胞系統の研究に集中した
この系統は低酸素に応じてALKBH5というタンパク質の生産を上昇させ、ALKBH5はmRNAのメチル基を取り除く

(乳癌は細胞の表面上の3つのホルモン受容体の存在を元にカテゴリー化され治療される
彼らが研究した内の一つはエストロゲンとプロゲステロン受容体を示し、もう一つは3つとも示さないトリプルネガティブである)

彼らはNANOGの分析に集中し、低酸素状態がHIFタンパク質の作用を通じてNANOGのmRNAレベルを増大させることを明らかにした
HIFはALKBH5遺伝子のスイッチを入れ、ALKBH5はメチル化を低下させてNANOGのmRNAが破壊されないようにした

細胞がALKBH5を作れないように妨害するとNANOGレベルは低下し、癌幹細胞の数は減少した
研究者が細胞の遺伝子を操作してALKBH5レベルを増大させると細胞を低酸素に晒さなくてもNANOGのmRNAのメチル化は低下し、乳癌の癌幹細胞の数は増加した

最後に彼らはトリプルネガティブ乳癌の細胞1000個をマウス胸部の脂肪パッドfat padに注入し、マウス版の乳癌を形成させた
手を加えない細胞は注入した7匹のマウス全てに腫瘍を形成したが、
ALKBH5を持たないようにした細胞を使うと14匹中6匹、つまり43パーセントのマウスにしか腫瘍が形成されなかった

「それにより我々はALKBH5が癌幹細胞の存続と腫瘍形成能の維持を助けることを確認した」
Semenzaは言う


Semenzaのチームはこれからもマウスの研究を継続し、転移も低酸素/ALKBH5/NANOGの関係によって影響を受けるのかどうかを研究するつもりだという
彼らはこの関係に他のどんなタンパク質やmRNAが関与するのかを調べ、また、彼らがテストした癌の細胞系統の中には低酸素に応じて同様のALKBH5レベル増大を示さなかったものがあったのはなぜなのかを研究したいという


http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1602883113
Hypoxia induces the breast cancer stem cell phenotype by HIF-dependent and ALKBH5-mediated m6A-demethylation of NANOG mRNA.
低酸素状態はHIF依存的にALKBH5を介してNANOGのmRNAからm6Aを脱メチル化することにより乳癌の幹細胞表現型を誘導する

Significance
NANOGのような多能性ファクターは癌幹細胞の維持と特殊化において重要な役割を演じる
癌幹細胞は原発腫瘍の形成と転移に必須である

今回の研究で我々は乳癌細胞を腫瘍の微小環境の決定的な特徴である低酸素に曝露させると
N6-メチルアデノシン/N6-methyladenosine(m6A)の脱メチル化を誘導してNANOGのmRNAを安定化させ、
それにより乳癌幹細胞(BCSC)表現型が促進されることを報告する

m6Aを脱メチル化するAlkB homolog 5 (ALKBH5) を阻害するか、
低酸素の乳癌細胞でALKBH5遺伝子の転写を活性化するHIF-1α/HIF-2αを阻害することは、
NANOGの発現を低下させてin vivoでBCSCを標的にする効果的な戦略である


Abstract
mRNAのN6-メチルアデノシン (m6A) による修飾は、胚性幹細胞の多分化能pluripotencyの調節に関与する

MDA-MB-231という乳癌細胞におけるALKBH5発現をノックダウンした結果、BCSCの数が減少し、その腫瘍開始能を有意に低下させた



関連記事
https://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cce233b5cfcfa9bc5ab09af62ccdcff6
低酸素ならびにアデノシンが多い微小環境でT細胞はA2Aアデノシン受容体を介して阻害される



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/d16ba27c8f39c536b11eafaa6804ec93
脳腫瘍は低酸素でセリンからグリシンへの変換を促進するSHMT2の発現を上昇させてPKM2を抑制し、TCA回路に入るピルビン酸を減少させて酸素の消費を抑える



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150507145325.htm
乳癌細胞は低酸素に曝露するとtRNAの断片を作り、特定のアミノ酸のtRNA断片(グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、チロシン)が多い癌細胞は転移しにくくなる
さらに、この断片を癌細胞に加えると増殖と進行が減少した

http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.02.053
Endogenous tRNA-Derived Fragments Suppress Breast Cancer Progression via YBX1 Displacement
内因性tRNA由来の断片は、YBX1の置き換えにより乳癌の進行を抑制する
 

メラノーマの9割が発現するlncRNA

2016-03-29 06:06:11 | 
Breakthrough in diagnosis of melanoma skin cancer

March 23, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160323151848.htm

ルーヴェン・カトリック大学/Katholieke Universiteit Leuven(KU Leuven)からfromのフランダース・バイオテクノロジー研究所(VIB)の研究者は、ゲント大学(ベルギー)と協力して
悪性のメラノーマとノンコーディングRNAのSAMMSONとの間の注目すべきつながりを明らかにした

※VIB: Flanders Institute for Biotechnology。Flandersは、フランス語でFlandre、フラマン語(ベルギー北部で話されるオランダ語方言)ではVlaanderen。フランダース、フランドル、フランデレン

SAMMSON遺伝子はヒトの悪性メラノーマで特に発現し、印象的なことに悪性皮膚癌の増殖はこの遺伝子に強く依存する
今回の研究結果は皮膚癌の診断と治療の改善へとつながる可能性がある
研究を主導したJean-Christophe Marine教授 (VIB/KU Leuven) とPieter Mestdagh教授 (UGent) は、この結果が一流の科学誌であるNatureに発表されることで大きな騒ぎを引き起こすことが予想されている


ヒトのゲノムを主に占めるのは『ジャンクDNA』、つまりタンパク質をコードしない役立たずのガラクタであると長い間考えられてきた
しかし最近の洞察から実際にはゲノムが多くのノンコーディングRNA/non-coding RNA(タンパク質をコードしないRNA)を作り出し、生物学的なプロセスや疾患において重要な役割を演じることが示されている

Marine教授 (VIB/KU Leuven) とMestdagh教授 (UGent) のラボは現在ノンコーディングRNA遺伝子の癌への寄与について研究しており、中でも彼らが特に興味を持っているのは長鎖タイプのノンコーディングRNA(lncRNA)である


癌におけるlncRNAのスクリーニング
Screening for lncRNA genes in cancer

皮膚癌の発症における特定のlncRNA遺伝子の重要性を評価すべく、VIBラボはゲント大学の小児学部・遺伝医学部medical geneticsと手を組んだ
Pieter Mestdaghが率いるゲントの研究チームが様々なタイプのあらゆる癌で莫大な数のlncRNAの発現について大規模なスクリーニングを実施した結果、
メラノーマ特異的なlncRNAとしてSAMMSONを明らかにした


Pieter Mestdagh (UGent) は言う
「我々の研究では長鎖ノンコーディングRNA遺伝子のSAMMSONがヒトのメラノーマで特に発現し、患者の約10パーセントで重複duplicatedするか増幅amplifiedされていた
そしてSAMMSONはメラニンを作る通常の細胞であるメラノサイトや他の正常な成人組織ではまったく見られなかった
このSAMMSONの独特の発現プロファイルから我々はこの遺伝子がメラノーマの病因において重要な役割を演じているのかもしれないという仮説を立てるに至った」

VIBの研究チームはSAMMSONがヒトの悪性メラノーマ臨床サンプルの90パーセント以上で特に発現しており、良性では発現しないことを確認した
さらに、SAMMSON遺伝子はメラノーマ特異的な転写因子SOX10によって活性化されることも示した


メラノーマのSAMMSONへの依存
Melanoma addiction to SAMMSON

加えて、VIBの科学者たちはメラノーマ細胞がSAMMSONの発現に顕著な依存を示すことを発見した
培養したメラノーマ細胞でSAMMSONの発現を低下させると、メラノーマのタイプに関係なく癌細胞は急速にそして甚だしく死に絶えていったことから『SAMMSONへの依存』という重要な結論に至った

Jean-Christophe Marine (VIB/KU Leuven) は言う
「in vitroとマウス前臨床モデルの両方で、標的を限定するアンチセンス分子を通じてSAMMSONを阻害することによりメラノーマの増殖を劇的に抑制することを我々は示した
重要なことに、癌細胞にエネルギーをもたらすミトコンドリアにSAMMSONはリクルートされることを我々は発見した
これらのアンチセンス分子はSAMMSONの分解を促進することによって活発なミトコンドリアの活力を妨害し、腫瘍の成長を止めた
他の言葉で言えば、SAMMSON依存は明確な弱点であり、
通常の細胞に影響を与えることなく標的治療を通じて戦うことが可能である」


臨床試験に向けた次のステップ
Next steps for clinical trials

SAMMSONがメラノーマ悪性度のバイオマーカーとしてはたらくという仮説をしっかり確認するためにはさらなる研究が必要になるだろう
SAMMSONは良性メラノーマでは発現しないため、その出現はメラノーマの予後を劇的に改善する新たな診断ツールの開発において重要なファクターでありうる

おそらくより重要なことに、ゲント大学、VIB、ルーヴェン・カトリック大学が協力して努力した今回の結果は新しい皮膚癌治療に向けた堅い地盤となる
今回と同じ研究グループがすぐに毒物学的な/中毒の研究を開始する予定であり、現在互いに有益な未来の提携を探るべく様々な工業/産業的な参加者たちindustrial playersと話し合いを始めるところである


http://dx.doi.org/10.1038/nature17161
Melanoma addiction to the long non-coding RNA SAMMSON.

病巣での染色体3p13-3p14の増幅はメラノーマの約10%で生じ、予後の悪さと関連する
メラノーマ特異的な癌遺伝子MITFはこの増幅産物ampliconのepicentreに存在する(1
しかしながら、この増幅産物に存在する他の遺伝子座もまたメラノーマ形成oncogenesisに寄与するのかどうかは明らかではない

今回我々は最近アノテーションされたannotated長鎖非コードRNA/long non-coding RNA(lncRNA)遺伝子のSAMMSONが一致してMITFと共に得られるco-gainedことを示す

加えて、SAMMSONはこの系統特異的な転写因子であるSOX10の標的であり、その発現はヒトのメラノーマの90パーセントで検出可能である

外因的なSAMMSONはクローン原性ポテンシャルclonogenic potentialをトランスにin trans増大させる一方で、SAMMSONのノックダウンは転写的な細胞の状態ならびにBRAF・NRAS・TP53の変異状態に関係なく劇的にメラノーマ細胞の生存能力を低下させる

さらに、SAMMSONを標的にすることはin vitroならびに患者由来の異種移植モデルにおいてMAPKを標的とする治療法に対してメラノーマを感受性にする

機構的に見ると、SAMMSONはミトコンドリアの恒常性と代謝のマスターレギュレーターであるp32と相互作用し、そのミトコンドリアを標的にする機能ならびに腫瘍形成性の機能を増大させる

我々の結果は癌遺伝子SAMMSONへの系統的な依存のサイレンシングが、必須vitalのミトコンドリア機能を癌細胞特異的な方法で中断disruptさせることを示す
したがってこのサイレンシングは非常に有効かつ組織限定的な抗メラノーマ治療応答をもたらすと期待される



http://dx.doi.org/10.1038/nature17161
References

9.Amamoto, R. et al.
Mitochondrial p32/C1QBP is highly expressed in prostate cancer and is associated with shorter prostate-specific antigen relapse time after radical prostatectomy.
ミトコンドリアp32/C1QBPは前立腺癌で発現が高く、根治的な前立腺切除術後のPSA再発時間の短さと関連する
Cancer Sci. 102, 639–647 (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21205079

10.Fogal, V. et al.
Mitochondrial p32 protein is a critical regulator of tumor metabolism via maintenance of oxidative phosphorylation.
ミトコンドリアp32タンパク質は腫瘍代謝の決定的な調節因子であり、酸化的リン酸化の維持を仲介する
Mol. Cell. Biol. 30, 1303–1318 (2010)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20100866

11.Fogal, V. et al.
Mitochondrial p32 is upregulated in Myc expressing brain cancers and mediates glutamine addiction.
ミトコンドリアp32はMycを発現する脳腫瘍で上方調節され、グルタミン依存を仲介する
Oncotarget 6, 1157–1170 (2015)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20100866

12.Fogal, V., Zhang, L., Krajewski, S. & Ruoslahti, E.
Mitochondrial/cell-surface protein p32/gC1qR as a molecular target in tumor cells and tumor stroma.
腫瘍細胞と腫瘍ストロマにおける分子標的としてのミトコンドリア/細胞表面タンパク質p32/gC1qR
Cancer Res. 68, 7210–7218 (2008)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18757437

13.Muta, T., Kang, D., Kitajima, S., Fujiwara, T. & Hamasaki, N.
p32 protein, a splicing factor 2-associated protein, is localized in mitochondrial matrix and is functionally important in maintaining oxidative phosphorylation.
p32タンパク質/スプライシング因子2関連タンパク質はミトコンドリアマトリックスに局在し、酸化的リン酸化の維持において機能的に重要である
J. Biol. Chem. 272, 24363–24370 (1997)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9305894


14.Yagi, M. et al.
p32/gC1qR is indispensable for fetal development and mitochondrial translation: importance of its RNA-binding ability.
p32/gC1qRは胎児の発達ならびにミトコンドリア翻訳に必須である: そのRNA結合能の重要性
Nucleic Acids Res. 40, 9717–9737 (2012)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22904065


15.Hu, M. et al.
p32 protein levels are integral to mitochondrial and endoplasmic reticulum morphology, cell metabolism and survival.
p32タンパク質レベルはミトコンドリアならびにERの形態/構造、細胞の代謝と生存にとって必須である
Biochem. J. 453, 381–391 (2013)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23692256


16.Matos, P. et al.
A role for the mitochondrial-associated protein p32 in regulation of trophoblast proliferation.
栄養膜増殖の調節におけるミトコンドリア関連タンパク質p32の役割
Mol. Hum. Reprod. 20, 745–755 (2014)
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17.Li, Y., Wan, O. W., Xie, W. & Chung, K. K. K.
p32 regulates mitochondrial morphology and dynamics through parkin.
p32はミトコンドリアの形態/構造ならびに動態を調節するが、それはパーキンを通じてである
p32はE3ユビキチンリガーゼのパーキンをオートファジーにより分解させる
Neuroscience 199, 346–358 (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22008525


18.Jiao, H. et al.
Chaperone-like protein p32 regulates ULK1 stability and autophagy.
シャペロン様のタンパク質p32はULK1安定性とオートファジーを調節する
Cell Death Differ. 22, 1812–1823 (2015)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25909887



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2016/02/160229221011.htm
メラノーマはDNMT3b/メチル化によりmTORC2/Rictorを調節して増殖を促進する
DNMT3b↑─┤miR-196b↓─┤mTORC2/Rictor↑→増殖↑

http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.02.010
DNMT3b Modulates Melanoma Growth by Controlling Levels of mTORC2 Component RICTOR

 

神経疾患や癌と関連するタンパク質の細胞質での役割

2016-03-24 06:06:16 | 
New cytoplasmic role for proteins linked to neurological diseases, cancers

March 17, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160317151134.htm


(左から右へ、Michael Buszczak博士、大学院生のArnaldo Carreira-Rosario、Varsha Bhargava

Credit: UT Southwestern Medical Center)

テキサス大学(UT)サウスウエスタン・メディカルセンターの研究者は、Rbfox1というRNA結合タンパク質の二つ目の役割を明らかにした
この研究結果は自閉症やてんかん、そしてある種の癌のような、Rbfox1タンパク質と関連する神経疾患や病態についての新たな洞察をもたらす

「これらのデータはそれらの疾患の再評価を促すはずだ
我々が明らかにしたRbfox1の新しい機能が疾患の発症や進行に寄与するのかを調べることになるだろう」
首席著者のMichael Buszczak博士は言う
彼はUTサウスウエスタンで分子生物学の準教授Associate Professorであり、ハモン再生医科学センター/Hamon Center for Regenerative Science and Medicineの一員でもある


Developmental Cell誌で発表された今回の研究は、RNAに結合するタンパク質の一つであるRNA-binding fox(Rbfox)がメッセンジャーRNA/messenger RNA(mRNA)からタンパク質への翻訳を監督overseeすることを示す
研究者はショウジョウバエをモデルとして使うことで、Rbfox1タンパク質が特に翻訳の調節に関与することを示した

Rbfox1タンパク質は、遺伝子をコードするエキソンexonという部分を接合してmRNAを形成するスプライシングsplicingの際に重要な役割を演じることが知られていた
スプライシングは主に細胞の核内で起き、Rbfox1タンパク質の多くも核内に存在する
しかし、Rbfox1タンパク質のバリアントvariantが核外の細胞質にも存在しており、その細胞質での機能は不明だった

「我々は細胞質のRbfox1が特定のタンパク質の産生を抑制することを発見した」
Buszczak博士は言う


UTサウスウエスタン分子生物学の大学院生graduate studentで研究の筆頭著者のArnaldo Carreira-Rosarioは、Rbfox1がmRNA分子の末端の特定の配列elementに結合し、mRNAがタンパク質に翻訳されるのを妨害することを明らかにした
もしRbfox1タンパク質が失われるとmRNAからの翻訳はもはや抑制されなくなり、異常な細胞の増殖、つまり癌につながる

研究者たちは細胞質に存在する形態のRbfox1がショウジョウバエの生殖細胞の発達に必要であることを明らかにした
「このタンパク質がないと生殖細胞は極めて特定の分化段階で止められて、そこでぐずぐず留まるlinger
生殖細胞は成熟した卵へと分化することができない」
医学研究におけるE.E. and Greer Garson Fogelson ScholarでもあるBuszczak博士は言う

この分化の停止によりメスのショウジョウバエは不妊になり、
他の状況では不適切な細胞増殖につながり癌の発端となるunderlie

共著者のMani Ramaswami博士(ダブリン大学トリニティカレッジ、アイルランド)の研究により、
新たに明らかにされたRbfox1タンパク質の機能と、神経の発達・機能との間のつながりが示された
このことはRbfox1の破綻と関連する多くの神経疾患にとって重要な意味を持つ

「Rbfox1の喪失が疾患を引き起こす理由は細胞質でタンパク質の発現を混乱させることによるもので、核内のRNAのスプライシングではないということである」
Buszczak博士は言う

「もしこの解釈が正しければ、問題になっている疾患の治療法をどのようにして開発するのかに関して意味を持つだろう」

※the idea is that: ~ということ


http://dx.doi.org/10.1016/j.devcel.2016.02.010
Repression of Pumilio Protein Expression by Rbfox1 Promotes Germ Cell Differentiation.
Rbfox1によるPumilioタンパク質の発現抑制は、生殖細胞の分化を促進する


Highlights
・ショウジョウバエの細胞質のRbfox1は、卵巣の生殖細胞の分化を調節する
・Rbfox1はmRNAの3′非翻訳領域(UTR)に依存的な方法で(UTRに結合して)翻訳を調節する
・Rbfox1はpumilio mRNAの翻訳を抑制する
・pumilioの異常発現ectopic expression、またはRbfox1の喪失は、生殖細胞の分化を阻止する


Summary
RNA-binding Fox (Rbfox) タンパク質は選択的スプライシング/alternative splicingの調節に関与することが確認されているが、
Rbfoxの特定のアイソフォームは核局在シグナルを欠いており細胞質に蓄積する
スプライシングから独立した細胞質での潜在的な機能は不明のままである

今回我々は細胞質のショウジョウバエRbfox1が生殖細胞の発達を調節し、3′UTRの中にある(U)GCAUGという配列を含むmRNAの翻訳を抑制することを実証する

生殖系列germlineの配偶子cystが分化する間、Rbfox1はpumilioのmRNAを標的として不安定化させて翻訳をサイレンシングし、それにより生殖細胞の発達を促進する

pumilioの発現異常は生殖系列の腫瘍形成につながり、その腫瘍には
崩壊break downし、有糸分裂的に活発な単一の細胞single, mitotically active cellへと脱分化した配偶子cystが含まれる


合わせて考えると、これらの結果は細胞質に存在するRbfoxファミリーメンバーが特定の標的mRNAの翻訳を調節することを明らかにする

ショウジョウバエの卵巣において、このRbfox1の活性は生殖細胞が発達状態を逆戻りしないように防ぐ『遺伝子障壁/genetic barrier』をもたらす

Rbfoxタンパク質がmRNA翻訳を調節するという今回の発見は、Rbfox関連疾患Rbfox-related diseasesに関係がある



関連サイト
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=RBFOX1
Entrez Gene Summary for RBFOX1 Gene
RBFOX1タンパク質はアタキシン-2のC末端に結合し、脊髄小脳失調症2型/spinocerebellar ataxia type 2(SCA2)の病理に限定的に寄与する可能性がある
アタキシン-2はSCA2遺伝子の産物であり、SCA2は家族性の神経変性疾患を引き起こす
Fox-1とアタキシン-2はどちらもトランス-ゴルジネットワークに局在する
RBFOX1の異なるアイソフォームをコードする選択的スプライシングによる転写バリアントがいくつか見つかっている

GeneCards Summary for RBFOX1 Gene
RBFOX1/Ataxin 2-Binding Protein 1と関連する疾患として、脊髄小脳失調症2型/spinocerebellar ataxia 2と住肉胞子虫症sarcocystosisがある
 

高脂肪食で癌になりやすくなる理由

2016-03-20 06:06:18 | 
High-fat diet linked to intestinal stem cell changes, increased risk for cancer

March 2, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160302132730.htm

過去十年以上にわたる研究で、肥満や高脂肪食、高カロリー食は様々なタイプの癌の重大なリスク要因であることが判明している
今回ホワイトヘッド研究所とMITコッホ統合がん研究所の新たな研究により、高脂肪食は腸の上皮細胞を癌になりやすくすることが明らかになった


マウスを使った今回の研究は高脂肪食が腸の幹細胞集団の急増を促進し、幹細胞のように振る舞う他の細胞プールも形成することを示唆する(幹細胞とはそれ自身を無限に再生し、他のタイプの細胞へと分化できる細胞のことである)

これらの幹細胞stem cellsと『幹細胞のような細胞stem-like cells』は腸の腫瘍を生じやすいとOmer Yilmazは言う
彼はMITで生物学の助教授assistant professorであり、研究チームの共同リーダーである

「高脂肪食は幹細胞の生態biologyを変化させるだけではなく、非幹細胞集団の生態をも変化させ、それは全体的に腫瘍形成の増大につながる」
コッホ研究所の一員でありマサチューセッツ総合病院の胃腸病理学者gastrointestinal pathologistでもあるYilmazは言う

「これらの非幹細胞は高脂肪食により幹細胞の性質を獲得し、形質転換すると腫瘍形成性tumorigenicとなる」
ホワイトヘッドの一員であるDavid Sabatiniは言う
彼はMITで生物学の教授であり、ハワードヒューズ医学研究所の研究者でもある

Sabatini教授とYilmaz助教授は以前カロリー制限が腸の幹細胞性に与える影響について共同研究を行っており、今回Natureで3月2日に発表される研究で両者は首席著者である


肥満の人々は結腸直腸癌になるリスクが高いことがこれまでの研究で判明している
SabatiniとYilmazのラボでは食事と癌との間の関連を研究しており、今回は結腸癌リスクの上昇の根拠となる細胞メカニズムを明らかにしようとした

「我々は理解したかったのは、
長期の高脂肪食がどのようにして幹細胞の生態biologyに影響し、そしてそのような食事によって誘発された幹細胞における変化がどのようにして腸の腫瘍発生に影響を与えるかということだった」
Yilmazは言う

一生涯ずっと生き続ける腸の幹細胞は、結腸癌を生じるような突然変異を蓄積し続ける可能性が最も高い細胞であることが最近の研究で示された
これらの幹細胞は腸の上皮細胞という裏打ちliningの中に存在し、上皮を構成する様々なタイプの細胞を生み出す

肥満と関連する癌とこれらの幹細胞との間にある関連の可能性を調査するため、研究者たちは健康なマウスに60パーセントの脂肪から構成されるエサを9ヶ月から12ヶ月間与えた
科学者たちによると、この食餌は典型的なアメリカ人の食事よりも脂肪の割合が高い(アメリカ人は20パーセントから40パーセント)
この期間中、高脂肪食のマウスは通常食のマウスよりも30パーセントから50パーセント多く体重が増加し、通常食のマウスよりも多く腸の腫瘍を発症した

これらのマウスは腸の幹細胞にいくつか特有の変化を示すことを研究者は明らかにした
まず一つ目は高脂肪食のマウスは腸の幹細胞の数がより多かったことである
これらの幹細胞は隣の細胞からの入力inputがなくても働くoperateことが可能だった

通常、腸の幹細胞は『ニッチ細胞/niche cells』というサポート細胞によって囲まれており、
それらは幹細胞の活動を調節し、幹細胞にいつ幹細胞自身を再生するかまたは分化した細胞を作るかを指示する
しかしながら、高脂肪食を与えたマウスの幹細胞は通常食のマウスよりも幹細胞が『独力で/on their own』機能することが可能だった
これらの幹細胞をマウスから取り出してニッチ細胞がない状態で培養すると、通常食のマウスよりも容易に『小さい腸/mini-intestines』を生じた

「高脂肪食ではより多くの幹細胞を生じ、それらは微小環境からの入力に依存せず働くことが可能である」
Yilmazは言う

また、研究者は前駆体細胞という別の集団(幹細胞から分化した娘細胞)が幹細胞のように振る舞うことも発見した
この前駆体細胞の集団は通常の二~三日の寿命よりも長生きで、
体外で培養すると小さい腸/mini-intestinesを生じることも可能だった

「このことは実に重要である
なぜなら、腸の幹細胞はしばしば腫瘍を生み出す突然変異を獲得する細胞であることが知られているからだ」
Yilmazは言う

「高脂肪食では古典的な幹細胞が多くなるだけでなく、幹細胞ではない集団が突然変異を獲得できるようになり、それが腫瘍を生じるのである」

研究者はさらに、高脂肪食で活性化する栄養感知経路も明らかにした
この脂肪酸を感知するセンサーはPPAR-δ/デルタdeltaと呼ばれる
PPAR-δは高レベルの脂肪に応じて代謝プロセスのスイッチをオンにして、エネルギー源として通常の炭水化物や糖類の代わりに脂肪を燃焼できるようにする
「事実、PPAR-δアゴニストの小分子は、通常食を与えていても
高脂肪食による動物実験の影響と似たような結果になる」
Sabatiniは言う

この代謝プログラムの活性化に加えて、PPAR-δは幹細胞のアイデンティティに重要な遺伝子セットをまとめてオンにするようだとYilmazは言う
彼のラボは現在これがどのようにして起きるのかをさらに調査しており、
肥満で生じる腫瘍に対する抗癌剤の標的を明らかにできるかもしれないと希望を持っているという


http://dx.doi.org/10.1038/nature17173
High-fat diet enhances stemness and tumorigenicity of intestinal progenitors.
高脂肪食は腸の前駆細胞における幹細胞性ならびに腫瘍形成性を促進する

Abstract
肥満を促進する食事が組織の幹細胞機能ならびに前駆細胞機能をどのようにして調節するのかはほとんど知られていない

今回我々は高脂肪食による肥満が哺乳類の腸のLgr5+幹細胞の数と機能を促進することを示す

機構的に見ると、高脂肪食は腸の幹細胞ならびに前駆細胞においてPPAR-δシグネチャーを強く誘導する
薬理学的にPPAR-δを活性化すると、高脂肪食がこれらの細胞に与える影響が再現された

高脂肪食と同様に、エクスビボex vivoで腸オルガノイド培養に高脂肪食を構成する脂肪酸を投与すると、これらオルガノイド体の自己再生ポテンシャルが促進され、それはPPAR-δに依存的である

特に、高脂肪食ならびにアゴニストによって活性化されたPPAR-δシグナル伝達は、前駆細胞にオルガノイド開始能力をもたらす
強制的にPPAR-δシグナル伝達を誘導すると、これらの前駆細胞は腫瘍抑制因子のAbcが失われるとin vivoで腫瘍を形成できるようにった

これらの研究結果は、食事によって調整されるPPAR-δ活性化が腸の幹細胞ならびに前駆細胞の機能をどのようにして変化させるのかだけでなく、腫瘍を開始する能力をどのようにして変化させるのかという点に光を当てる


http://www.nature.com/nature/journal/v531/n7592/fig_tab/nature17173_F5.html
Figure 5: PPAR-δの活性化は非幹細胞にオルガノイドorganoidならびに腫瘍を開始する能力tumour-initiating capacityをもたらす

i, 腸が高脂肪食へ適応するモデル

機構的に見ると、高脂肪食は腸の前駆細胞がオルガノイドを生じる能力ならびに腫瘍を開始する能力を促進するプログラムを活性化し、このプログラムはPPAR-δを介する
PPAR-δのプログラムの特徴には、β-カテニン標的遺伝子サブセットの誘導が含まれる

P, パネート細胞/Paneth cell(細菌の細胞壁を消化する好酸性の分泌顆粒を含む細胞)
Pr, 前駆細胞/progenitor cell
S, 幹細胞/stem cell
T, 腫瘍細胞/tumour cell

赤い点線red dotted linesは、Apcがヌルnullで腫瘍形成能力を持つ細胞を示す
対照群Controlでは幹細胞Stemからのみ腫瘍Tumorが生じるが、
高脂肪食HFDでは幹細胞Stemに加えて前駆細胞Progenitorからも腫瘍Tumorが生じる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2014/12/141201113030.htm
通常は幹細胞が分裂して娘細胞になるが、制御するGREM1遺伝子に異常が起きると、幹細胞の領域から外に出た娘細胞が幹細胞のように振る舞って腫瘍が生じる
そのため、薬剤で癌幹細胞を殺しても娘細胞が幹細胞のように振る舞って癌は継続する

http://dx.doi.org/10.1038/nm.3750
Aberrant epithelial GREM1 expression initiates colonic tumorigenesis from cells outside the stem cell niche.
腸管上皮のGREM1遺伝子の異常によって、そのようなことが起きる
Lgr5が陰性の前駆細胞が、幹細胞の性質を持続・再獲得する
これらは、異所性の陰窩ectopic cryptを形成して増殖し、変異を蓄積して、新生物を生じる



関連記事
https://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150616123917.htm
放射線治療に抵抗する長寿の癌幹細胞集団Lgr5-を結腸癌で発見した
この幹細胞は結腸腫瘍を生じ、腫瘍の成長を支える
これまで結腸癌と関連する唯一の幹細胞集団Lgr5+は放射線に感受性があったため、治療には放射線治療が有効だと考えられていた

http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2015.04.013
Krt19+/Lgr5− Cells Are Radioresistant Cancer-Initiating Stem Cells in the Colon and Intestine.
Krt19+/Lgr5− の細胞は、結腸において放射線抵抗性の癌幹細胞である

 

キナーゼ阻害剤を無効にするバックアップシステム

2016-03-18 06:06:45 | 
Why some tumors withstand treatment

March 16, 2016

https://www.sciencedaily.com/releases/2016/03/160316082948.htm


(MITのGertlerラボ。
左から右へ、Miles Miller, Frank Gertler, Douglas Lauffenburger, Madeleine Oudin

Photo: Bryce Vickmark)

分子標的薬のような新しい抗癌剤は、腫瘍の遺伝子プロファイルに基づいたテーラーメイド治療を可能にする
しかしながら、これらの薬剤がまったく効かず有効ではない患者がいる

マサチューセッツ工科大学(MIT)とマサチューセッツ総合病院(MGH)の新たな研究では、キナーゼ阻害剤という種類の薬剤がなぜ必ずしも腫瘍の増殖を止めるわけではないのかを明らかにする
研究によると、キナーゼ阻害剤は標的を停止させることに成功するものの、細胞を刺激してバックアップ・システムのスイッチも入れてしまい、薬剤によって止められたシステムに取って代わりうるという
研究チームはマウスモデルにおいて薬剤を組み合わせて両方とも妨害することでずっと良い結果をもたらすことも示した

「我々は標的治療への抵抗性に関与する『これまで認識されてこなかったメカニズム』を明らかにした」
MITで生体工学の教授であるDouglas Lauffenburgerは言う

「このメカニズムの存在が臨床患者におけるいくつかのキナーゼ阻害剤への応答の悪さと関連するようだ
我々はこの抵抗性メカニズムに対する薬剤を加えることで、応答しなかった最初の標的薬が作用できるようになることをマウスで実証した」

MITのコッホ統合がん研究所のaffiliate memberでもあるLauffenburgerは、Cancer Discovery誌のオンライン版で発表される論文の首席著者senior authorである
lead authorsはMiles MillerとMadeleine Oudinであり、前者はかつてのMITの大学院生graduate studentで現在はハーバードメディカルスクールのポスドクpostdoc、後者はコッホ研究所のポスドクpostdocである


迂回システム
Bypass system

乳癌や卵巣癌などに対してよく使われるキナーゼ阻害剤は、細胞の成長・増殖・浸潤性を刺激するシグナル伝達経路を妨害することにより作用する
医師は患者の腫瘍が上皮成長因子受容体(EGFR)のような癌を刺激するタンパク質を過剰発現するかどうかを元に、この阻害剤を処方する

しかしながら、これらの薬剤は作用するはずの腫瘍でさえ失敗する可能性がある
そのような失敗のおよそ半分は癌細胞が薬剤の作用を回避できるような遺伝子変異によって生じ、そして残り半分は説明不能であるとLauffenburgerは言う

Lauffenburgerたちは子宮内膜症endometriosis(子宮組織が周囲の臓器へと増殖する)に関する以前の研究を基に、癌細胞がキナーゼ阻害剤を回避sidestepできるようになるバックアップ・システムの存在を疑った
その研究で彼らは浸潤する子宮内膜の細胞が特定の増殖シグナルに『依存addicted』するようになり、事実この経路が他の増殖経路を停止shut offさせることを発見している
最初の経路を停止shut downさせる薬剤は、それらのバックアップ・システムを活性化するという意図しない効果を発揮しうる

MITのチームは同じことが癌細胞にも起きるのかという可能性に興味を持ち、メラノーマとトリプルネガティブ乳癌という二つの悪性癌に焦点を合わせた
それらはしばしばEGFR受容体を活性化させるリガンドによって促進される癌であり、このシグナル伝達は癌細胞が動いて浸潤性になるのを助ける

研究の結果、EGFRリガンドは癌細胞表面の受容体に結合して細胞の浸潤性を促進する一連の反応を引き起こすだけでなく、正のフィードバック・ループをも活性化することを明らかにした
プロテアーゼという酵素がEGFRリガンドを細胞表面から解放してさらに多くの受容体と結合できるようにすることで、浸潤促進シグナルをさらに強化していた

研究者はそれらのプロテアーゼが 浸潤促進経路を開始する他の受容体 をも切り離すchop offことを発見した
本質的に、癌細胞はEGFRによって促進される経路に依存するようになり、必要としない競合経路を停止させる

「細胞は他の入力を受け付ける能力を持つが、既に一つがシグナルを伝達していると癌細胞は『この上なく幸せperfectly happy』になり、残りを止めてしまう」

結果として、医師がEGFR経路を止めるキナーゼ阻害剤を処方するとそれらのプロテアーゼも止めてしまい、EGFR以外のバックアップ経路が作用できるようにする
それはもはや抑制されることなく仕事を引き継ぐtake over


より正確な予測
More accurate predictions

研究者はこれらの切断された受容体タンパク質が患者の血液サンプル中に検出可能であり、タンパク質レベルはEGFR阻害剤が個々の患者でどれくらい作用するのかと相関することも示した
切断されたタンパク質が高レベルであることはバックアップ・システムが動き出すための潜在能力の多さを意味し、キナーゼ阻害剤は有効ではないだろう
しかしながら、もしこれらのタンパク質レベルが低いと、患者の腫瘍のバックアップ・システムはそれほど強くないことを示唆する

「今回の発見は、長期にわたって臨床的な利益を受け続けるであろう患者と、素早く適応して治療を回避する腫瘍の患者とを、治療の開始時または最初の治療から数日以内に実施する血液ベースのテストによって区別して明らかにするように思われる」
論文の著者の一人であるKeith Flahertyはそのように述べ、この種のテストが実施され始めることを望むという

この研究はさらに、強力なバックアップ・システムを持つ腫瘍の患者にはEGFR阻害剤に加えて二番目の経路を停止させる薬剤を加えることが有益であることも示唆する
候補の一つは現在臨床試験中のAXL阻害剤である
MITの研究チームはマウスの研究で、この薬剤の組み合わせがそれぞれ単独を与えるよりもはるかに有効であることを明らかにした


http://dx.doi.org/10.1158/2159-8290.CD-15-0933
Reduced Proteolytic Shedding of Receptor Tyrosine Kinases Is a Post-Translational Mechanism of Kinase Inhibitor Resistance.

Abstract
キナーゼ阻害剤への抵抗性は、『迂回bypass』シグナル伝達経路の上方調節をしばしばともなうが、この経路はほとんど理解されていない

今回我々は、細胞外のプロテオーム的な適応extracellular proteomic adaptationがシグナル伝達迂回と薬剤抵抗性への経路の一つであることを示す

細胞表面の受容体のタンパク質分解による放出proteolytic sheddingはシグナル伝達活動に負のフィードバックを生じるが、
しかしそれはキナーゼ阻害剤によって阻害され、迂回シグナル伝達を促進する


特にMEKの阻害は、多数の受容体チロシンキナーゼ/receptor tyrosine kinase(RTK)の放出を広く減少させる
RTKには、HER4、METなどが含まれ、最も顕著なのはAXLである(AXLはADAM10とADAM17の基質)
したがって細胞表面のRTKレベルは増大し、細胞分裂促進シグナル伝達は促進される


臨床的なBRAF/MEK阻害剤による治療を受けたメラノーマ患者の無増悪生存期間progression-free survivalは、治療後のRTK放出の減少と逆の相関を示した(RTK放出が減少するほど、無増悪生存期間は延長した)
このRTK放出は血漿plasmaで非侵襲的に計測された

TIMP1を中和することによりプロテアーゼ阻害剤を乱すdisruptと、MAPK阻害剤の効能は改善された
MAPK/AXL阻害剤の組み合わせは異種移植xenograftモデルにおいて相乗作用的に腫瘍の増殖と転移を減少させた

全体的に見て、RTK放出の減少を通じた細胞外のプロテオーム的proteomicな再配線は、抗癌剤への抵抗性においてシグナル伝達を迂回するための驚くべきメカニズムを代表する


<コメント>
切断された他の受容体の破片が多い=EGFRを阻害するとそれらがすべて復活する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ff1b393c3ae61fc80da5b76b70840dc7
「我々がメラノーマ患者で同定した逃走ルートは約15通り存在し、任意の患者で癌細胞がどのルートを使うのかを予測するのは決して簡単ではない」
 

細胞の代謝はin vitroとin vivoで異なる

2016-03-15 06:06:36 | 
Amino Acids Rather than Glucose Account for the Majority of Cell Mass in Proliferating Mammalian Cells

http://www.cell.com/developmental-cell/references/S1534-5807(16)30036-3

癌細胞が増殖するためのエネルギー」の論文のReferencesから



http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18177721
The biology of cancer: metabolic reprogramming fuels cell growth and proliferation.
癌の生物学: 代謝的な再プログラムが癌細胞の成長と増殖に燃料を供給する

http://www.cell.com/action/showImagesData?pii=S1550-4131%2807%2900295-1
Figure 2
炭素の流れは静止状態と増殖する細胞では異なる
Carbon Flux Differs in Quiescent versus Proliferating Cells


静止状態の細胞(左)ではグルコース/glucose(glc)からピルビン酸/pyruvate(pry)へと変換する解糖系の速度が基底状態であり、ピルビン酸はTCA回路で酸化される
細胞は環境や細胞の高分子macromoleculeからアミノ酸や脂肪酸のような他の基質も獲得して酸化する
結果として、ATP(黄色の☆)の大部分は酸化的リン酸化oxidative phosphorylationから生成される

増殖する細胞(右)では、大きく増大した解糖系の流れがATPを細胞質に生成し、細胞質でのNAD+/NADHの比率を低下させる
結果として生じるピルビン酸のほとんどは乳酸デヒドロゲナーゼA/lactate dehydrogenase A(LDH-A)によって乳酸/lactate(lac)に変換され、NADHからNAD+を再生する
このNAD+の再生が解糖系を持続させ、乳酸は細胞外へ放出される
ピルビン酸のいくらかはピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)によってアセチル-CoA(Ac-CoA)に変換されてTCA回路に入り、そこで中間生成物intermediate、例えばクエン酸/citrate(cit)に変換されて高分子の生合成に使われうる
クエン酸は脂肪酸とコレステロールの合成に必要であり、これが分裂後の娘細胞の脂質膜を作る
細胞質に輸送された後のクエン酸はATPシトレートリアーゼ/citrate lyase(ACL)によってオキサロ酢酸と酢酸へと分解され、
結果として生じるアセチル-CoAは脂肪酸合成酵素/fatty acid synthase(FAS)によって使われ、
オキサロ酢酸(OAA)は細胞質の低いNAD+/NADH比を利用して(過剰なNADHを使って)リンゴ酸デヒドロゲナーゼ/malate dehydrogenase(MDH)によってリンゴ酸/malate(mal)に変換される
リンゴ酸は クエン酸-リンゴ酸対向輸送counter transport(逆輸送antiport)によってミトコンドリアに戻されるか、
リンゴ酸酵素/malic enzyme(ME)によってピルビン酸に変換され、NADPHを生成して脂肪酸合成に使われる



http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26853747
Environment Impacts the Metabolic Dependencies of Ras-Driven Non-Small Cell Lung Cancer.
環境はRasをドライバとする非小細胞肺癌の代謝的依存に強い影響を与える

http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2016.01.007


Highlights

・腫瘍の代謝的表現型の決定metabolic phenotypingにより必須の代謝経路を明らかにする
・Krasをドライバとする肺腫瘍は、ピルビン酸カルボキシラーゼpyruvate carboxylaseとピルビン酸デヒドロゲナーゼpyruvate dehydrogenaseを必要とする
・Krasをドライバとする肺腫瘍は、培養細胞よりもグルタミナーゼglutaminaseに依存しない
・腫瘍組織の環境は腫瘍代謝表現型の重要な決定要素である

※ピルビン酸カルボキシラーゼ: ピルビン酸とオキサロ酢酸の相互変換を触媒する。糖新生経路の一つ
※ピルビン酸デヒドロゲナーゼ: 複合体の一つ。複合体はピルビン酸・NAD+・CoASHからアセチルCoA・CO2・NADH2を生成する
※グルタミナーゼ: グルタミンのアミド基を分解してグルタミン酸とアンモニアを生成する


Summary
培養細胞はグルコースを乳酸へと変換し、グルタミンはTCA回路/クエン酸回路の主な炭素源だが、それと同じ代謝表現型が腫瘍内でも見られるかは研究されていない
我々は肺癌のマウスに同位体isotopeで標識したグルコースまたはグルタミンを注入し、腫瘍と正常組織におけるこれらの栄養素の運命を比較した

予想された通り、肺腫瘍はグルコースから乳酸の産生を増大させた
しかしながら、肺腫瘍と正常な肺の両方でグルタミンの利用は最小限minimalであり、正常な肺組織と比較して肺腫瘍ではTCA回路へのグルコースの寄与の増大を示した
グルコース酸化に関与する酵素を消去する実験により、グルコース炭素のTCA回路への寄与は腫瘍形成に必須であることが実証された

これらのデータは、腫瘍による栄養素の利用の理解が癌のin vivoにおける代謝的な依存性を予測できることを示唆する
さらにこれらのデータはin vivoの環境が癌細胞の代謝表現型の重要な決定要素であることを証明するargue



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/8c4f2053e55ed484c872909b1e781086
グルコースは腫瘍がエネルギーとして消費する唯一の栄養素ではなく多くの栄養素の一つに過ぎないことが示唆される
遺伝学的に決定される腫瘍の代謝的な好みは、細胞の環境によってくつがえされうる