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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

2014年9月7日

2014-09-08 23:09:14 | 

紫外線による突然変異は皮膚癌の多くを引き起こす
Ultraviolet light-induced mutation drives many skin cancers, researchers find




「我々の研究によれば、皮膚癌の発症は他の癌とは異なる。たった1つの突然変異が、ゲノム・カタストロフを引き起こす」、スタンフォード医科大学のポールKhavari医学博士は言う。

皮膚扁平上皮癌はヒトで2番目に一般的な癌である。

KhavariたちはKNSTRNの特定の領域が皮膚扁平上皮癌の約20パーセントで変異していることを発見した(黒色腫では約5パーセント)。

「KNSTRNはこれまで癌遺伝子として知られていなかった。KNSTRNは日光によって活性化され、皮膚扁平上皮癌の発症を引き起こす。」



Khavariたちは正常な皮膚と扁平上皮癌のDNA配列を比較して、腫瘍だけで生じた突然変異を探した。

彼らは336の候補遺伝子を発見し、中でも最も頻度が高かった上位2つはCDKN2ATP53だった。それらは扁平上皮癌と関連することがすでに知られていた。

そして3番目に多く変異していた遺伝子はKNSTRNだった。



KNSTRNは動原体の形成を助けるタンパク質をコードする。動原体によって染色体が正しく分離しない場合、娘細胞のDNAの数は余分になるか失われる。

染色体の数が異常な細胞は異数体(aneuploid)として知られ、しばしば機能に障害が起きる。異数体は細胞の合図を読み誤り、不規則にふるまう傾向がある。

異数性は癌の多くのタイプの発症に向かう決定的な早期の段階である。



KNSTRN遺伝子の突然変異は、DNAの狭い範囲の中でのただ1つのヌクレオチド、シトシンからチミンへの特異的な置換に起因した。

この置換は細胞が高エネルギーの紫外線による損傷を修復しようと試みたことを示す。

「この紫外線ホットスポットの突然変異は我々が調査した他の癌のいずれでも発見されなかった」、Khavariは言う。

「それらは皮膚癌だけで生じる。」



紫外線により誘発されるKNSTRN突然変異は、光線性角化症(actinic keratosis)のおよそ20パーセントで発見された(光線性角化症はしばしば扁平上皮癌に進行する前悪性皮膚疾患である)。

しかし、正常な皮膚の122のサンプルではKNSTRN突然変異はまったく存在せず、この突然変異が扁平上皮癌の発症において早い段階のイベントである可能性が高いことを示す。

学術誌参照:
1.皮膚扁平上皮癌における動原体遺伝子KNSTRNの再現性の点突然変異。

Nature Genetics、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140907181722.htm

<コメント>
日光によって変異が起きやすい、ホットスポット(突然変異の多発点)を持つ遺伝子が明らかになったという記事です。


2014年9月4日

2014-09-08 07:27:07 | 

治療不可能な白血病の背後にある遺伝子ネットワークが特定される
Study identifies gene network behind untreatable leukemia, possible treatment target



シンシナティ小児病院メディカル・センターのCancer and Blood Diseases Institute(CBDI)の研究者は、急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia; AML)とその前病変である骨髄異形成症候群(Myelodysplastic Syndrome; MDS)の高リスクおよび悪性の形態を促進する、遺伝子/分子ネットワークを特定した。



今回の研究には、AMLとMDSの特異的な形態である del(5q)、つまり血球の第5染色体の長腕の欠失(deletion)が含まれる。

del(5q)MDSのそれほど悪性ではないタイプの患者では、血液中の骨髄芽球(bone marrow blasts; 骨髄様細胞系で最も早い段階の最も未発達の細胞)の割合は5パーセント未満である。

シンシナティ小児病院CBDIの実験血液学と癌生物学部の教授であるダニエルStarczynowski博士によると、その患者の予後は概して良好である。



「残念なことに、del(5q) のAMLとMDS患者の大部分は骨髄芽球の数が増加し、付加的な染色体の突然変異がある」、Starczynowskiは言う。

「これらの患者の予後は非常に悪く、化学療法と放射線に抵抗性であるため、新しい治療法を発見することは重要である。」



彼らはヒトのAML/MDS細胞とdel(5q)AML/MDSのマウス・モデルで研究を実施し、血球のmiR-146a遺伝子の発現低下がNF-kbのいくつかの成分を含む分子シグナル・ネットワークの活性化につながることが明らかになった。

ネットワークの1つはp62と呼ばれるタンパク質で、細胞の代謝とリモデリング、そしてある種の癌の決定的な調節因子である。

第5染色体にあるmiR-146a遺伝子の欠失はp62の過剰発現につながり、NF-kbのシグナル・ネットワークの持続的な活性化を引き起こす。

これはヒトの細胞とマウス・モデルにおいて白血病細胞の生存と悪性の増殖を促進した。



今回の論文の研究者によると、先行研究のNF-kBを直接阻害する試みは成功しなかった。

代わりに彼らはNF-kBシグナル・ネットワーク内のp62を目標とすることによるNF-kBへの脆弱性と潜在的な回避方法を探すため、マウス・モデルとヒトの細胞においてp62の阻害/ノックダウンをテストした。

その結果、マウス・モデルでは白血病細胞の拡大が阻止され、ヒトのAML/MDS細胞では白血病細胞コロニーの数が80パーセント低下した。

学術誌参照:
1.染色体5q欠失を伴う骨髄様悪性病変は、染色体内NF-κB遺伝子ネットワークへの依存をもたらす。

Cell Reports;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140904131603.htm

<コメント>
第5染色体が欠失しているMDSとAMLについての記事です。



(5q欠失)miR-146a─☓─┤p62(SQSTM1)→p62/TRAF6相互作用→NF-κB活性化→p62発現

2014年9月5日

2014-09-07 11:42:03 | 

ブラジャー着用と乳癌の間に、関連は発見されない
No association found between wearing bra, breast cancer



集団ベースの症例対照研究(population-based case-control study)では、閉経後女性のブラジャーの着用と乳癌リスクの増加の間に関連は発見されなかった。

「乳癌が先進諸国でより一般的かもしれない理由の1つは、ブラ着用のパターンの差であるという若干の懸念が存在した」、研究者の1人が言った。

「ブラ着用がどれだけ一般的であるかを仮定すれば、我々はこれが焦点をあてる重要な質問であると考えた。」

「ブラ着用が乳癌の危険因子かもしれないと素人のメディアは示唆していた。中には、胸の内外の老廃物の排水がブラ着用によって妨げられるかもしれないと仮定するものもいた。」

記事供給源:
上記の記事は、アメリカ癌学会(AACR)により提供される材料に基づく。

学術誌参照:
1.ブラ着用は乳癌リスクと関連しない: 人口に基づいた症例対照研究。

癌疫学、バイオマーカー及び予防;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140905090615.htm

<コメント>
乳癌の浸潤腺管癌(invasive ductal carcinoma; IDC)と浸潤小葉癌(invasive lobular carcinoma; ILC)については、ブラジャー着用との関連はないという記事です。

大真面目にこういう研究をするアメリカは、やっぱりすごいなぁと思います。

2014年9月5日

2014-09-07 10:52:57 | 

ウィルムス腫瘍の新しい遺伝子突然変異が発見される
New gene mutations for Wilms tumor found



テキサス大学サウスウエスタン・メディカル・センターとダラス小児メディカル・センター癌血液疾患ギル・センターの研究者は、ウィルムス腫瘍の原因遺伝子について重要な発見をした。

ウィルムス腫瘍は小児だけで見られる腎臓癌の一種であり、小児期の尿生殖路の癌としては最も一般的である。

「ありがたいことにウィルムス腫瘍の大部分は治癒するが、より悪性の腫瘍は十分に治癒しない。そして長期の化学療法は有害な副作用がある。

我々が知りたかったのは、ウィルムス腫瘍の遺伝子的原因は何か、そして、標的を特定する治療法の可能性はあるのかということである」、テキサス大学サウスウエスタンのジェームズAmatruda博士は言う。



以前の研究では1つか2つの遺伝子の突然変異を特定したが、この突然変異を持つウィルムス腫瘍はおよそ3分の1だけである。

「他の3分の2にどのような変異があるかを知るため、我々は44の腫瘍DNAを配列決定した」、Amatruda博士は言う。



「新しく発見された遺伝子の中で、最も広く見られ、そしていくつかの点で最も生物学的に興味深かった突然変異は、DROSHAとDICER1という遺伝子である。

これらの突然変異は、細胞の成長の制御に広く関与するマイクロRNAの産生に影響を与える。そしてその主な影響は、let-7というマイクロRNAファミリーに関してであった。」

let-7は細胞の成長を遅らせる重要なマイクロRNAであり、DROSHAまたはDICER1が変異したウィルムス腫瘍ではlet-7 RNAは失われている。それが異常に急速な細胞の成長を引き起こす」、Amatruda博士は言った。



米国癌学会によると、2014年には約510例のウィルムス腫瘍が小児で診断されるという予想である。

ウィルムス腫瘍は腎芽細胞腫(nephroblastoma)とも呼ばれる腎臓の胚芽腫(embryonal tumor)である。それは通常5歳未満の小児で生じ、この年齢層における腎臓腫瘍の92パーセントはウィルムス腫瘍である。

ウィルムス腫瘍の生存率は、1975-1979年の75パーセントから、2003-2009年には90パーセントまで上昇した。

学術誌参照:
1.DROSHAとDICER1の体細胞突然変異は、ウィルムス腫瘍において異なったメカニズムを通してマイクロRNA生合成を損なう。

Nature Communications、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/09/140905113651.htm

<コメント>
医学大辞典にはWT1WT2の変異が原因とあります。

しかしReference10にはWT1等の変異はウィルムス腫瘍の原因の約3分の1とあり、今回はその残りの部分の原因遺伝子のいくつかが判明したという記事です。

10. Ruteshouser, E. C., Robinson, S. M. & Huff, V.
Wilms tumor genetics: mutations in WT1, WTX, and CTNNB1 account for only about one-third of tumors. Genes Chromosomes Cancer 47, 461–470 (2008).
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18311776


関連記事には、別の変異としてPAF1複合体の一部であるCTR9がウィルムス腫瘍の原因遺伝子として挙げられています。

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140807105217.htm

>In six children, from three different families, they found CTR9 mutations that stopped the gene working properly.

>CTR9 is part of a multi-protein complex, known as PAF1, which regulates when genes are switched on and off.

>The PAF1 complex has many essential diverse roles in controlling cellular processes and organ development in the embryo.

>Interestingly, mutations of another gene in the complex, CDC73, have previously been shown to cause cancer, particularly of the parathyroid gland, but also occasionally Wilms tumour.

2014年8月28日

2014-09-03 21:19:39 | 

細胞は悪性化する前に腫瘍の形成を感知して成長を停止させる
How premalignant cells can sense oncogenesis, halt growth



突然変異を起こした発癌性H-RASの活性化は、活性酸素種(ROS)の一種である過酸化水素(H2O2)を生成するように細胞を刺激する。

「大部分の人々は、高濃度のROSが与える可能性がある大きな損害について考える」、コールドスプリングハーバー研究所(CSHL)のニコラスTonks教授は言う。

「しかし、今回の研究は、調節されたROSの産生はむしろ有益な役割を演じることを例証する。」



研究チームは、発癌性H-RASに応じたROSの産生が、どのようにシグナル経路を微調整して老化状態に入らせることができるかを示した。

このプロセスの重要な部分は、PTP1Bというタンパク質に対するROSのインパクトである。

Tonksは、約25年前、PTP1Bを発見した。

PTP1Bは他のタンパク質のチロシンからリン酸基を取り除く作業を実施する酵素、つまりヒトには105個が存在するチロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーの1つである。

リン酸塩を加えたり取り除くことは、タンパク質の間でシグナルを送るための主要な手段の1つである。



発癌性H-RASの細胞では、少ないがPTP1Bを不活性にするには十分なROSが産生される。

リン酸塩を除去する酵素のPTP1Bが不活性になると、AGO2(Argonaute 2)という重要なタンパク質はリン酸化されたままである。

その結果、AGO2は、細胞のRNA干渉機構(RNA interference; RNAi)に関与することができなくなる。



正常な細胞において、RNAi機構はp21という遺伝子を抑制している。

しかし、この特異的な状態(H-RASは活性化され、ROSによってPTP1Bは不活性化し、AGO2は脱リン酸化されず、RNAiは無効にされる)では、p21タンパク質は不自然に蓄積し始める。

「これは重要な段階である。p21タンパク質の蓄積は効果的に細胞サイクルを停止させ、細胞が老化状態に入ることを可能にする」、Tonks研究室のMing Yangは説明する。



「これは、我々が5年前に示した仮説の確認である」、Tonksは言う。

「我々は発癌性RASがROSの産生を誘導することを知り、これはPTPの調節につながると提唱した。今回PTP1Bという例を用いて、PTPの不活性化が複雑なシグナル・カスケードの一部としてどのように作用するかについて示す。そのシグナルは最終的に細胞の老化を誘導する。」



「酸化によるPTP1B不活化は、AGO2の作用を妨げる。ROSと遺伝子サイレンシングの明白なつながりを我々は示した。これは他の病理でも観察される可能性がある」、モントリオール大学のブノワ・ボアヴァン助教授は言う。

RNAi機構の活性を保つことにおけるPTP1Bの役割は、重要な影響を持つ可能性がある。

老化に入ることは完全に腫瘍形成を抑えるためには不十分であり、癌がその生存と増殖を促進するように進化するにつれて、発癌性の突然変異は概して増えていく。

しかし、今回の研究は癌患者の遺伝的背景を知ることの潜在的重要性を示す。なぜなら、成長の中断を誘導するために自然に生じるプロセスのための、短いが重要な期間が存在するからである。

記事供給源:
上記の記事は、コールドスプリングハーバー研究所により提供される材料に基づく。

学術誌参照:
1.チロシンホスファターゼ1B(PTP1B)によるArgonaute 2のチロシン393の脱リン酸化は、発癌性RASを誘導された老化において遺伝子サイレンシングを調節する。

Molecular Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140828135521.htm

<コメント>
H-RASV12により増加するROS(hydrogen peroxide; 過酸化水素、H2O2)は、PTP1Bを酸化して不活性化することで、AGO2のチロシン393残基を脱リン酸化できないようにします。

AGO2のチロシン393残基がリン酸化していると、miRNAによるRNA干渉が阻害され、p21は活性化して、H-RASV12による腫瘍促進性miRNAを相殺します。

つまり、H-RASの変異が生じても、ROSを利用することで腫瘍形成を促進するmiRNAを阻害して腫瘍形成を抑制する仕組みです。



ROS─┤PTP1B→AGO2チロシン393脱リン酸化→RNA干渉─┤p21

2014年8月25日

2014-09-03 08:19:47 | 

乳癌転帰を予測する有望なバイオマーカー
New biomarker highly promising for predicting breast cancer outcomes



癌死の圧倒的多数は転移と関連している。

そして「上皮間葉転換(epithelial to mesenchymal transition)」と呼ばれるプロセスは、乳癌の転移を促進する。

腫瘍細胞は上皮細胞の特性(例えば彼らの隣にくっつく能力)を失い、間葉細胞の能力(マトリックスを通過して血流に移動する)を得ることにより、転移が可能になる。

マギル大学のジョージUrsini-シーゲルたちは、上皮間葉転換を経験した乳癌細胞ではp66ShcAというタンパク質がきわめて豊富であることを示した。



「p66ShcAの高い発現レベルは、あらゆる乳癌サブタイプの上皮間葉転換に関する多数の遺伝子の発現と強く関連している」、Ursini-シーゲルは言う。

乳癌は少なくとも5つのサブタイプに階層化される。そして、そのそれぞれは異なる転帰と関連している。

しかし以前の研究では、サブタイプの中に不均一性(heterogeneity)が存在し、それによりサブタイプに基づく転帰の予測は信頼性が低下することが示された。

「p66ShcAは乳癌の分子サブタイプと関係なく、乳癌の悪い転帰を確認するための初めてのバイオマーカーとして役立つかもしれない。」

学術誌参照:
1.p66ShcAは、上皮間葉転換を誘導することによって、乳癌可塑性を促進する。

分子細胞生物学、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140825185834.htm

<コメント>
乳癌の予後の予測に役立つバイオマーカーについての記事です。予後が良いとされる乳管上皮乳癌(luminal breast cancer)でも、一部の患者でしばしば癌死リスクが高まるのは、予後が良いからと強力な抗癌剤を控えることだけが原因ではなさそうだという内容です。p66ShcAはHER2+乳管上皮乳癌においてEMTを促進するとAbstractにあります。

以前の肺癌の記事ではp66Shcは転移の抑制と関連していましたが(アノイキス抵抗性)、今回は転移の促進と関連しています(EMT)。

p66ShcはERK1/2、p53、ROSへの応答とアポトーシス、細胞の移動、血管新生など様々な機能に関与しているので、細胞の種類と環境によって異なる結果になるということなのでしょう。

Wikipediaの説明もかなり複雑です。

WikipediaのReference[4]のIntroductionにはこうあります。

>p66Shc was originally recognized as an inhibitor of ERK1/2 activity [13].

>Moreover, p66Shc restrains Ras hyper-activation, Rb-dependent proliferation and metastatic feature of lung carcinoma cells [15].


>Paradoxically, p66Shc activates ERK1/2 and enhances proliferation of prostate cancer cells [16].

>As well as, abundant expression of p66Shc was also recognized in many breast cancer cell lines and primary breast tumors with high metastatic potential [17].

>Moreover, p66Shc protein level is induced by steroid hormone in the proliferation of several carcinoma cells and in primary prostate cancers [18].

2014年8月25日

2014-09-02 15:17:03 | 

神経膠芽腫の治療抵抗性の鍵
Finding keys to glioblastoma therapeutic resistance



カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者は、神経膠芽腫(glioblastoma)の一部が薬物治療に抵抗する理由の鍵の1つを発見した。

その答えは、腫瘍のDNA塩基配列ではなく、そのエピジェネティック・サインである。



クラーク・チェン医学博士の研究チームは遺伝子シグネチャー比較分析(comparative gene signature analysis)という方法を使用して、約900例の神経膠芽腫の患者から集められた標本の遺伝子プロファイルを調査した。

この方法により研究者は神経膠芽腫の特定の細胞プロセスが「オンにされる」か「オフにされる」かを識別することが可能になる。

これらの細胞プロセスの1つは上皮成長因子受容体(EGFR)である。

分析により、EGFRシグナル伝達は神経膠芽腫のサブセットで抑制されることが明らかになった。

重要なことに、この抑制は「エピジェネティック」な方法による。

EGFRが神経膠芽腫でオフにされると、EGFRシグナル伝達を阻害する薬に非感受性になる。

学術誌参照:
1.G-CIMP(Glioma CpG Island Methylator Phenotype)膠芽腫におけるEGFRシグナル伝達のエピジェネティック抑制。

Oncotarget、2014年8月

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140825185321.htm

<コメント>
G-CIMPというタイプの神経膠芽腫(glioblastoma)がEGFR阻害剤へ抵抗する原因についての記事です。

Abstractを見ると、IDH-1への変異の導入はEGFRとH-Ras発現ならびにリン酸化ERKの蓄積を抑制し、それはそれぞれのプロモーター領域のヒストン3リジンのトリメチル化と関連したとあります。

>Induction of G-CIMP+ state by exogenous expression of a mutated isocitrate dehydrogenase 1, IDH1-R132H, suppressed EGFR and H-Ras protein expression as well as pERK accumulation in independent glioblastoma models.

>These suppressions were associated with increased deposition of the repressive histone markers, H3K9me3 and H3K27me3, in the EGFR and H-Ras promoter regions.


IDHを神経膠腫(glioma)のマーカーとして手術に利用するという記事や、IDHと肝臓内胆管癌との関連についての記事が過去にありました。

癌とエピジェネティクスについての記事も少し前にありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f78a192e491c726241228013d49a2449

>例えば神経膠芽腫(glioblastoma)の患者の場合、DNA修復遺伝子のMGMT(O-6-Methylguanine-DNA Methyltransferase)がエピジェネティックな変異によってサイレンシングされていると、
>アルキル化薬(alkylating agent)という種類の薬に十分な反応を示す。


神経膠芽腫の治療抵抗性についての記事もありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/85fe8a6481054efd3d7171c53e752dad

>昨年の2件の臨床的な試験では、治療の一部として抗・血管新生薬を服用していた神経膠芽腫(glioblastoma)患者は寿命の延長を示さず、中には薬を飲まなかった患者よりも多くの副作用に苦しむ者もいた。

2014年8月24日

2014-08-30 15:26:51 | 

抗うつ剤を髄芽腫の治療に再利用する
Repurposing anti-depressant medication to target medulloblastoma



シンシナティ小児病院メディカル・センターの癌・血液疾患研究所(Cancer and Blood Diseases Institute; CBDI)を中心とした国際研究チームは、悪性の髄芽腫(medulloblastoma)の原因となる新たな分子経路をNature Medicineで報告した。

彼らの研究は、抗うつ剤を再利用してその新しい経路を目標とすることが髄芽腫との戦いを助ける可能性を示唆する。



「現在の治療は生存率を改善するが、患者は重度の副作用に苦しんできた。そして、腫瘍の再発は治療に抵抗する突然変異を持つ」、CBDI脳腫瘍センターの科学ディレクター、Q.リチャード・ルー博士は言う。

「我々は強力な腫瘍サプレッサーを確認した。それは、悪性の髄芽腫の形態にかかった患者のサブセットを助ける可能性がある。」



彼らはヒトの髄芽腫をモデル化した遺伝子工学マウスを使い、Gαsというタンパク質をコードするGNAS遺伝子を同定した。

Gαsはシグナル・カスケードを開始して、ソニックヘッジホッグ・タンパク質によって引き起こされる悪性髄芽腫のイニシエーションを抑制する。

ヨーロッパと日本では行動療法のためにロリプラムという抗うつ剤が承認されているが、彼らはそれをGNAS遺伝子を発現しないよう設計されたマウスに投与した。

マウスへのロリプラム投与はcAMPという分子のレベルを上昇させ、GNAS-Gαs経路の腫瘍抑制機能を回復した。それにより腫瘍は縮小して、鎮静化した。

また、細胞内のcAMPレベルの上昇はソニックヘッジホッグ阻害剤の効力を増強することが示唆された。



著者たちはcAMPレベルを増大させる作用が癌のタイプに依存するかもしれず、マウスにおける研究結果はヒトに必ずしも当てはまるとは限らないと警告する。

学術誌参照:
1.Gタンパク質αサブユニットGαsは、ソニックヘッジホッグによる髄芽腫における腫瘍サプレッサーである。

Nature Medicine、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140824152337.htm

<コメント>
幼児に多い髄芽腫についてです。

Reference629を見る限りでは、cAMPはPKAを介してGliの活性を調節することでShhシグナルを抑制するようです。


2014年8月22日

2014-08-28 23:18:23 | 

選択的な癌治療のための新しい酵素標的
New enzyme targets for selective cancer therapies



アルバータ大学のクリストファー・カイロ教授と研究チームは、ノイラミニダーゼという酵素の阻害剤を初めて合成した。

インフルエンザ・ウイルスも感染プロセスの一部として同じメカニズムの酵素を使用するが、ヒトの細胞は多くの生物学的プロセスで自らのノイラミニダーゼ酵素を使用する。

ノイラミニダーゼは脳癌の一種であるグリア芽細胞腫(glioblastoma)で過剰に発現することがイタリアのミラノ大学の研究チームによって示されていた。

彼らはカイロの酵素阻害剤をテストし、グリア芽細胞腫の癌幹細胞が正常な細胞に変化したことを発見した。

今回の化合物は薬として使うことはできないが、その主な理由は血液脳関門を突破するように設計されていなかったためであるとカイロは説明する。

ミラノ大学の研究チームは非常に高い濃度で化合物を使う必要があったと彼は付け加えた。



癌細胞で見られる『炭水化物』は、正常な細胞のそれとは非常に異なることを科学者は何十年も知っていた。

例えば、多くの癌は『シアル酸』のような特定の残基の量が異なるか、あるいは同じ残基でも異なる配置になっている。

ノイラミニダーゼ/シアリダーゼ(neuraminidase/sialidase)は、そのシアル酸(sialic acid; ノイラミン酸の誘導体)を遊離させるエキソ型α-グリコシダーゼである。

ウイルスのノイラミニダーゼ酵素に関する研究は多かったが、カイロの研究チームはヒトの酵素の阻害剤を発見した。

「ヒトの細胞でのチャレンジは、4つの異なるアイソエンザイムがあるということである。我々が癌に関与する1つを目標としたくても、間違ったものにヒットすると有害な副作用が起きる可能性がある」、カイロは言った。



アルバータ大学研究チームは、患者から分離される癌細胞のノイラミニダーゼ・アイソエンザイムの役割を研究していたミラノ大学の同僚に連絡を取り、そのアイソエンザイムに特異的な阻害剤をテストするように持ちかけ、今回の発表に至った。

彼らはすでに化合物を改善することを目指して研究中であり、彼らが作り出したインヴィトロ・アッセイのパネルを使って新規または既存の阻害剤をテストしている。

学術誌参照:
1.シアリダーゼNEU4は、グリア芽細胞腫の幹細胞の生存に関与する。

Cell Death and Disease、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140822132932.htm

<コメント>
多形性グリア芽細胞腫(glioblastoma multiforme)から分離された癌幹細胞(glioblastoma stem cell)にシアリダーゼ4阻害剤を投与すると、NANOG、OCT-4、SOX-2、CD133等の幹細胞様の発現が抑制され、ガングリオシド(シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質)であるGD3の合成が減少して生存が低下したという記事です。

この癌幹細胞ではシアリダーゼ4(NEU4)が過剰に発現してGSK-3βを阻害し、SHH/Wnt経路を活性化して幹細胞様の表現型を促進しています。




2014年8月21日

2014-08-27 18:01:46 | 

まれな腎臓癌の配列決定は、テロメラーゼに関わる独特の変化を明らかにする
Sequence of rare kidney cancer reveals unique alterations involving telomerase



ベイラー医科大学を中心とした国際的な共同研究は、珍しい腎臓癌の遺伝子の変化についての手掛かりを明らかにした。

国立衛生研究所の癌ゲノムアトラス主導のプロジェクトは色素嫌性腎細胞癌(chromophobe renal cell carcinoma; ChRCC)の配列決定を完了し、その結果をCancer Cell誌で発表した。

「癌ゲノムアトラスは連邦によって資金助成された国家的な努力であり、癌の多くのタイプの配列をすでに完成させた(例えば卵巣癌、乳癌、肺癌)。現在、このプロジェクトはよりまれなタイプの癌を配列決定するために枝分かれしている」、チャド・クレイトン博士は言う。



色素嫌性腎細胞癌はまれなタイプの腎臓癌で、米国では毎年約2,000人が新しく診断される。悪性度は低く、大多数の患者は疾患を生き残る。

「腎臓腫瘍の病理が色素嫌性だと大部分の患者は安心するが、我々はみな色素嫌性腎臓癌が転移して死亡した患者を看護してきた」、ノースカロライナ大学チャペルヒル校ラインバーガー総合癌センターの准教授、Kimryn Rathmell博士は言う。

「今回の報告はこれらの患者を看護する医師にとって信じられないほどエキサイティングである。我々のすべての治療計画は、より一般的な腎臓癌タイプの生物学に基づいていたからである。」



研究チームはベイラーのヒトゲノムシーケンシングセンターで66の腫瘍サンプルを配列決定した。

これらのサンプル上で他のタイプのデータも集められ、遺伝子発現とエピジェネティックなデータを含む塩基配列決定データに統合された。

塩基配列決定した既知の遺伝子に加えて、ミトコンドリアと全ゲノムのDNAも配列決定された。

その結果、サンプルの大多数(86パーセント)は染色体の1つのコピーまたは多くのコピーを失っていた(染色体1、2、6、10、13、17)。

また、染色体3、5、8、9、11、18、21の喪失は頻度が高い(12~58パーセント)として注目された。

科学者は変更されたか失われた遺伝子を探索したが、かなり大きな頻度で確認されたのは2つの遺伝子(TP53とPTEN)であった。



彼らが最も驚いた重要な発見は、チームが「余分な分析」をしたあとだったとクレイトンは言う。

「我々は詳しくエクソームを見る代わりに、全ゲノムを分析した。これは通常はこのようなゲノム研究では実行されない」、クレイトンは言う。

エクソームは全ゲノムのたった1パーセントで、他の99パーセントは研究でしばしば無視される。

「遺伝子ではない部分を観察すると、ずっと多くのことが進行している」、クレイトンは言う。

「例えば、ゲノムの遺伝子を調節する特質は変更されている可能性がある。」



全ゲノムの分析から、研究チームはかなりの量の構造的再編成(ブレイクポイント; 区切り、中断点、ゲノムが連続していない状態)がTERTという遺伝子のプロモーター領域に関与することに気が付いた。TERTはテロメラーゼ複合体の最も重要なユニットをコードする。

テロメラーゼは細胞の『時計』を示す。

「このことは細胞分裂において決定的な役割を果たす。実際、多くの癌細胞でテロメラーゼのレベルは高い。どんなに分裂しても『時』は決して尽きず、細胞は決して死ななくなる。」

影響を受けたのは実際の遺伝子ではなくプロモーター領域であった。

「この異常は遺伝子の中ではないので、全エクソーム分析で拾われない。」

また、今回の研究はミトコンドリアDNA変化の役割と、癌開始に関与する原因となる細胞の役割についての興味深い質問も生じた。



「我々は、他のタイプの癌の調節性領域も調査する必要がある。」

癌ゲノムアトラスのあらゆるプロジェクトからのデータは、研究に世界中の科学者に利用できる。

「この努力は、我々がどのようにして癌を全体として調査するかという大きなインパクトを示している」、クレイトンは言う。

学術誌参照:
1.色素嫌性腎細胞癌の体細胞ゲノム・ランドスケープ。

Cancer Cell、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140821124829.htm

<コメント>
癌の全ゲノム、エピジェネティック、ミトコンドリアなど、すべてのデータを統合した研究についての記事です。

色素嫌性腎細胞癌(ChRCC)は、腎明細胞癌(ccRCC)と比較しても、ミトコンドリアDNAを含めたあらゆる性質が全く異なっているようです。



2014年8月20日

2014-08-24 22:13:32 | 

科学者は、ボブ・マーリーを殺したまれな皮膚癌について、より多くを学ぶ
Scientists learn more about rare skin cancer that killed Bob Marley



末端黒色腫(acral melanoma)は音楽家ボブ・マーリーの死を引き起こした珍しいタイプの皮膚癌である。

マンチェスター大学Cancer Research UKの研究者は、末端黒色腫が遺伝子的に見て他のタイプの皮膚癌とは異なることを発見した。

他の一般的な黒色腫とは異なり、それは太陽の紫外線(UV)が原因ではない。



研究チームは末端黒色腫を有する5例の患者の腫瘍の配列を決定して、他の3例の患者のデータと組み合わせた。

次に彼らは、これらの8つの腫瘍で見られる遺伝子の誤りのパターンを一般的なタイプの皮膚癌と比較した。

その結果、末端黒色腫で見られるDNA損傷のタイプは他の皮膚癌と非常に異なることを明らかにした。

例えば、末端黒色腫ではDNAが断絶して他の箇所と再び結合した跡がかなり多く見られた。これは通常の皮膚癌で見られるDNAの変化が小さいのとは対照的である。

学術誌参照:
1.全ゲノム塩基配列決定ならびに比較分析によって明らかにされる、末端黒色腫の突然変異の負荷量。

色素細胞及び黒色腫研究(2014);

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820123209.htm

<コメント>
末端黒色腫という皮膚癌の遺伝子変異は他の皮膚癌とは異なるという記事です。

少し前にも、DNAの遺伝子がまとめて変異を起こすカティージスについての記事がありました。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/2557d6b78c3d3f44d0182feeb688dfd9

>DNAの突然変異は、ゲノムの全体を通じてランダムに生じる珍しいイベントであると考えられてきた。

>しかしアイオワ大学のアンナMalkova准教授は『切断により誘発される複製(break-induced replication; BIR)』というDNA修復経路が突然変異のクラスター化を促進する可能性があると言う。

2014年8月20日

2014-08-23 12:27:30 | 

乳癌の再発と化学療法に対する応答を両方とも予測する遺伝子
Novel gene predicts both breast cancer relapse, response to chemotherapy



早い段階の乳癌患者の30パーセントは、転移による再発または他の器官への浸潤を経験する。

また、一部の患者は化学療法に十分に反応を示さない。



A*STAR分子細胞生物学研究所(IMCB)と、国立シンガポール大学(NUS)のシンガポール癌科学研究所(CSIシンガポール)の研究者たちは、それらを予測する遺伝子DP103を発見してJCI誌で報告した。

DP103は転移の乳癌で活性化されるマスター調節因子であり、それは2組の不利なタンパク質を発現する。

1つは転移の原因となり、もう1つは化学療法への感受性を低下させる。



「医師は、治療して6ヵ月たつまで乳癌患者が化学療法に反応を示すかどうかわからない。それは非常に厄介である。なぜなら、化学療法に反応しない者はたいてい、転移による再発に苦しむからである。

我々が発見したDP103遺伝子はこのようなつながりを説明し、医師が適切な治療を選択することを容易にするだろう」、IMCB主任研究員のTergaonkar博士は言う。

研究ではさらに、DP103のレベルを低下させることは癌を封じ込め、腫瘍を縮小し、化学療法に敏感に反応しやすくする可能性があることを明らかにした。

学術誌参照:
1.DEAD(Asp-Glu-Ala-Asp)-ボックスヘリカーゼDP103は、ヒトの乳癌の転移の可能性を明らかにする。

JCI、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140820110624.htm

<コメント>
DP103(DDX20)遺伝子は、NF-κBを活性化してMMP-9を発現させることで乳癌の生存と浸潤を促進することか判明したという記事です。



DP103は乳癌においてポジティブフィードバックで発現が促進されますが、NF-κBを誘導するTNF-αやLPSによっても新規に(de novo)発現が上昇しました(Figure6E)。

MMP-9の発現はAEG-1とFoxO3aにより調節されることが知られています。

http://ta4000.exblog.jp/18120202

>AEG-1のノックダウンは、FoxO3aの濃度上昇およびMMP-9の発現減少と相関した。

2014年8月14日

2014-08-20 15:14:00 | 

ビタミンAによる癌治療を妨害するタンパク質
Protein found to block benefits of vitamin A cancer therapy



レチノイン酸は種々の癌の治療と再発防止を助けるために使われるビタミンAの一種だが、一部の患者では効果がない。

バージニア州立大学(VCU)マッシー癌センターの研究者は、AEG-1というタンパク質が白血病と肝癌でレチノイン酸の作用を妨害することを証明した。

AEG-1はほとんどすべての癌で過剰発現するため、この発見は無数の癌患者の治療に影響を与える可能性がある。



Devanandサルカール博士たちの研究チームは、AEG-1がレチノイドX受容体(RXR)に結合することを証明した。RXR受容体は細胞の成長と発達を調整するのを助ける。

通常、RXRはレチノイン酸によって活性化される。しかし、癌細胞で過剰発現するAEG-1タンパク質はこれらのシグナルを妨害して、腫瘍の増殖を促進する。

学術誌参照:
1.AEG-1はレチノイドXレセプタを調整して、レチノイド・シグナル伝達を阻害する。

Cancer Research、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814124539.htm

<コメント>
腫瘍で過剰発現するAEG-1(astrocyte elevated gene-1 / Metastasis Adhesion Protein)がRXRを介してレチノイドシグナルを阻害するという記事です。

以前にもAEG-1はFoxO3aの発現を阻害することが示されています。

http://ta4000.exblog.jp/18522310

>さらに、臨床上の前立腺癌ではAEG-1の発現が促進され得ることが示されている。
>前立腺腫瘍細胞でのAEG-1の促進はAktの活性化につながり、FoxO3aを抑制してアポトーシスを阻害するのかもしれない。

http://ta4000.exblog.jp/18120202

>AEG-1をノックダウンするとFoxO3a活性が促進され、細胞のアポトーシスを引き起こし、FoxO3aの濃度上昇およびMMP-9の発現減少と相関した。

2014年8月14日

2014-08-20 08:41:20 | 

白血病の理解における重大なブレークスルー
Leukemia: Scientists make major breakthrough in understanding disease



ロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジ(QMUL)の科学者は、急性リンパ芽球タイプの小児白血病につながる遺伝子突然変異を発見した。

今回の研究はダウン症候群の小児たちで実施され(ダウン症候群は20倍から50倍小児白血病になりやすい)、白血病の異なるステージのDNA塩基配列を分析した。

その結果、研究者はRASとJAKという2つの重要な遺伝子の変異を発見した。この変異は正常な血球を癌細胞へと変える。

しかし、1つの変異は他の変異を排除するようである。これら2つの遺伝子は決して同時には変異しない。



ロンドン大学クイーン・メアリー・カレッジの細胞分子生物学の教授、ディーンNizeticは次のようにコメントする。

「我々が知る研究によれば、ダウン症候群の人々は老化が加速する徴候を示し、DNAの損傷の蓄積が早い。しかし逆に、彼らは成人になるとほとんどの一般的な癌から保護されるようである。

また、ダウン症候群の中には他の老化関連の疾患、例えば痴呆、アテローム性動脈硬化症、糖尿病から保護されているように見える人もいる。

従って、ダウン症候群の細胞を調査することは、老化、アルツハイマー病、癌、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、そして他の多くのメカニズムを理解する際に重要な手掛かりを提供するだろう。更なる研究がこの重要な領域で必要である。」

学術誌参照:
1.ダウン症候群のRAS変異急性リンパ性白血病の症例は、高頻度でJAK2突然変異を欠如する。

Nature Communications、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140814000952.htm



<コメント>
ダウン症候群(DS)の急性リンパ性白血病acute lymphoblastic leukaemia / acute lymphoid leukemia / acute lymphocytic leukemia; ALL)ではKRAS/NRASとJAK2の突然変異が排他的であったという記事です。

42名のDS-ALLの分析で、RAS変異は15名、JAK2変異は12名で、ほぼ完全に互いに排他的(almost completely mutually exclusive)でした。つまり約3分の2がこのどちらか2つの変異ということになります。

このような排他性は他の癌にも見られるようです。

http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/ab7f83d0f92133abb83530140b509ad7

>EGFR突然変異と、KRASまたはBRAF突然変異の間には、相互の排他性が確認された。

2014年8月12日

2014-08-17 00:12:58 | 

エピジェネティクスの新しい分析で腫瘍の弱点を明らかにする
New analysis reveals tumor weaknesses in epigenetics



癌が遺伝的な突然変異によって引き起こされるが、最近エピジェネティックな変異も癌の一因となることができるということが発見された。

これらの変異を分析することは患者が持つ腫瘍のタイプならびに異なる薬にどのような反応を示すかについての重要な手掛かりを提供する。

例えば神経膠芽腫(glioblastoma)の患者の場合、DNA修復遺伝子のMGMT(O-6-Methylguanine-DNA Methyltransferase)がエピジェネティックな変異によってサイレンシングされていると、アルキル化薬(alkylating agent)という種類の薬に十分な反応を示す。



MITの化学エンジニアは、この種の変異、つまりメチル化(methylation)を検出するための速くて信頼性が高い方法を開発した。

「これらの変異を分析することは非常に難しい。我々はこの分析法を、より簡単で、より安価にしようとしている。それは特に患者サンプルにおいてである」、MIT化学工学(Chemical Engineering)の助教授、ハドリー・サイクスは言う。



いくつかの癌ではメチル基が特定のDNA塩基配列(グアニン塩基の隣にあるシトシン塩基; CpG)に結合して、MGMT遺伝子がオフにされる。

この時、メチル化された塩基にはタンパク質が結合し、RNAへの複製を妨害することによって遺伝子を効果的にサイレンシングする。



メチル化シトシンを検出する現行の手法は大規模な研究では十分に機能するが、患者サンプルに適応するのは難しいとサイクスは言う。

そのほとんどの技術はバイサルファイト変換(bisulfite conversion; 亜硫酸水素塩)という化学的ステップを必要とする。DNAサンプルはバイサルファイトにさらされ、メチル化されていないシトシンを異なる塩基(ウラシル)に変換する。メチル化されたシトシンはそのままである。

しかし、この方法は患者サンプルでは十分に機能しない。なぜなら、どれぐらいの時間バイサルファイトにさらすべきかについて算出するため、メチル化されたDNAがサンプル中にどれくらい存在するかを正確に知っている必要があるからである。

「あなたが限られた量のはっきりしないサンプルしか持っていないと、適切な時間だけ反応を走らせることはさらに難しくなる。メチル化されていないシトシン基の全てを変えたくても、あまり長く実行することはできない。DNAが分解してしまうからである」、彼女は言う。



サイクスの新しいアプローチは完全にバイサルファイト変換を回避し、その代わりにメチル基結合ドメイン(MBD)タンパク質を利用する。本来それは細胞のDNA転写を制御する機構の一部である。

このタンパク質はメチル化されたDNAを認識して結合する。そして、DNAを転写するべきであるかどうかを細胞が決定するのを助ける。



サイクスのシステムの他の重要な成分はバイオチップである。それは何百ものDNAプローブでコーティングされたガラス・スライドで、プローブは研究対象の遺伝子の配列と相補的である。

DNAサンプルがこのチップにさらされると、標的配列とマッチングするどんなDNA鎖でもバイオチップ上でトラップされる。



次にスライドをMBDタンパク質プローブで処理する。MBDプローブがトラップされたDNA分子に結合すれば、それは配列がメチル化されていることを意味する。

DNAとMBDタンパク質の結合の検出は、MBDタンパク質を蛍光色素に結合するか、光によりヒドロゲルを形成する感光性の分子を持たせること等による。



MITチームは現在、他の癌に関連する遺伝子メチル化を検出するため、バイオチップ・プローブのDNA塩基配列を変えて装置を改造している。

また、彼らはMBDタンパク質のさらに優れたバージョンを作成し、より少ないDNAで済む装置を設計しようと考えている。

現行バージョンでは十分な組織を得るために外科生検をする必要があるが、針生検で実行できるようになるように改良したいと望んでいる。

学術誌参照:
1.メチル基結合ドメイン・タンパク質を使用して、ハイブリダイゼーション・ベースのエピゲノムタイピングの感度を評価する。

The Analyst、2014;

http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140812163531.htm


※colorimetric: 比色定量の。基準色と比較して色の濃度を調べる

<コメント>
癌とエピジェネティクスについての記事です。

関連記事には、癌のマウスモデルとヒトの癌サンプルではエピジェネティックな面が異なるというものがあります。

http://www.sciencedaily.com/releases/2013/12/131205142220.htm

>DNA methylation, was found to be significantly different
> between mouse models of medulloblastoma and primary medulloblastoma human samples.