神経膠芽腫の治療抵抗性の鍵
Finding keys to glioblastoma therapeutic resistance
カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部の研究者は、神経膠芽腫(glioblastoma)の一部が薬物治療に抵抗する理由の鍵の1つを発見した。
その答えは、腫瘍のDNA塩基配列ではなく、そのエピジェネティック・サインである。
クラーク・チェン医学博士の研究チームは遺伝子シグネチャー比較分析(comparative gene signature analysis)という方法を使用して、約900例の神経膠芽腫の患者から集められた標本の遺伝子プロファイルを調査した。
この方法により研究者は神経膠芽腫の特定の細胞プロセスが「オンにされる」か「オフにされる」かを識別することが可能になる。
これらの細胞プロセスの1つは上皮成長因子受容体(EGFR)である。
分析により、EGFRシグナル伝達は神経膠芽腫のサブセットで抑制されることが明らかになった。
重要なことに、この抑制は「エピジェネティック」な方法による。
EGFRが神経膠芽腫でオフにされると、EGFRシグナル伝達を阻害する薬に非感受性になる。
学術誌参照:
1.G-CIMP(Glioma CpG Island Methylator Phenotype)膠芽腫におけるEGFRシグナル伝達のエピジェネティック抑制。
Oncotarget、2014年8月
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/08/140825185321.htm
<コメント>
G-CIMPというタイプの神経膠芽腫(glioblastoma)がEGFR阻害剤へ抵抗する原因についての記事です。
Abstractを見ると、IDH-1への変異の導入はEGFRとH-Ras発現ならびにリン酸化ERKの蓄積を抑制し、それはそれぞれのプロモーター領域のヒストン3リジンのトリメチル化と関連したとあります。
>Induction of G-CIMP+ state by exogenous expression of a mutated isocitrate dehydrogenase 1, IDH1-R132H, suppressed EGFR and H-Ras protein expression as well as pERK accumulation in independent glioblastoma models.
>These suppressions were associated with increased deposition of the repressive histone markers, H3K9me3 and H3K27me3, in the EGFR and H-Ras promoter regions.
IDHを神経膠腫(glioma)のマーカーとして手術に利用するという記事や、IDHと肝臓内胆管癌との関連についての記事が過去にありました。
癌とエピジェネティクスについての記事も少し前にありました。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/f78a192e491c726241228013d49a2449
>例えば神経膠芽腫(glioblastoma)の患者の場合、DNA修復遺伝子のMGMT(O-6-Methylguanine-DNA Methyltransferase)がエピジェネティックな変異によってサイレンシングされていると、
>アルキル化薬(alkylating agent)という種類の薬に十分な反応を示す。
神経膠芽腫の治療抵抗性についての記事もありました。
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/85fe8a6481054efd3d7171c53e752dad
>昨年の2件の臨床的な試験では、治療の一部として抗・血管新生薬を服用していた神経膠芽腫(glioblastoma)患者は寿命の延長を示さず、中には薬を飲まなかった患者よりも多くの副作用に苦しむ者もいた。