長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『サラブレッド』

2020-07-28 | 映画レビュー(さ)

 『バッド・エデュケーション』が注目を集めたコリー・フィンリー監督のデビュー作は舞台演出家、劇作家という出自が窺い知れる1本だ。再会した女子高生2人組が義父の殺害計画を企てる会話劇であり、『バッド・エデュケーション』でヒュー・ジャックマンから新境地を引き出したようにオリヴィア・クックとアニャ・テイラー・ジョイから緊張感あるテンションを引き出すことに成功している。特にテイラー・ジョイの異貌とも言える美しさが会話劇に映え、女優を撮るセンスも持った映像作家である事がわかる。豪奢な邸宅をロングショットでうろつき回るカメラワークのトリッキーさと奇妙な劇伴はヨルゴス・ランティモスの映画を思わせる気味の悪さであり、フィンリーのレンジの広さにも色めき立った。

 また本作が遺作となったアントン・イェルチンは性格俳優への途上にあり、フィンリーのような演出家との出会いが続けばどんな俳優になったのかと惜しまれてならない。


『サラブレッド』17・米
監督 コリー・フィンリー
出演 アニャ・テイラー・ジョイ、オリヴィア・クック、アントン・イェルチン、ポール・スパークス
 

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