今さらハリウッドの心無い続編商法に目くじらを立てる事もないだろう。2011年にデヴィッド・フィンチャー監督が手掛けた『ドラゴン・タトゥーの女』の続編だが、監督は『ドント・ブリーズ』を大ヒットさせたフェデ・アルバレス、主演はルーニー・マーラからTVドラマ『ザ・クラウン』のクレア・フォイへと交代したリブート作だ。
闇の必殺仕置き人として世にはびこるDV男どもを成敗し続けていたリスベットがアメリカのミサイルシステムを手にしてしまった事から陰謀に巻き込まれる。フィンチャー版も『八つ墓村』のような定番プロットを超一級の映画術でゾクゾクするようなスリラーへとアップデートしていただけに、物語のつまらなさをいちいち指摘するのは野暮というものだ。アルバレスもフィンチャー版のルックに準じようとしているが敵うはずはなく、トレードマークとも言えるサディスティックな演出が時折、顔を覗かせる程度に留まっている。
むしろ映画化にあたって注力すべきだったのは女性への暴力に対する糾弾だろう。今回の敵、リスベットの双子の妹カミラは父親の虐待によって分裂したリスベットの片割れであり、シルヴィア・フークスが『ブレードランナー2049』に続いて怪演する彼女との対決にもっと力を入れるべきだった。フォイは『ザ・クラウン』のエリザベス女王から巧みな転身だが、燃え上がるような怒りを秘めた初代ノオミ・ラパスや、繊細な2代目ルーニー・マーラに比べるとインパクトに乏しい。新たにTVシリーズの製作が発表されたが、こちらの方がより原作のスピリットを生かせるのではないだろうか。
『蜘蛛の巣を払う女』18・米
監督 フェデ・アルバレス
出演 クレア・フォイ、スベリル・グドナソン、ラキース・スタンフィールド、シルヴィア・フークス
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